【当事者参画】町民みんなでつくる「越える学校」

秋田県五城目町

 五城目町では、PTAが主体となって始まったワークショップをきっかけに教育委員会が対話の場を数多く主催し、町全体に発信(ファシリテーターとして地域おこし協力隊を起用)し、そこから生まれた建築コンセプト「越える学校」を合言葉に学校づくりを進め、さらには新しい小学校と周辺エリアを拠点とした世代を越えた学びの活動へと継承しています。
 
※バリアフリー整備に特化した取組ではありませんが、学校を取り巻くステークホルダーとのやり取りの中で、いかに学校づくりに活かしていったのかといった観点でその方法等について参考としてまとめたものです。

当事者参画の実施方針・位置づけ

  • 施設の耐震不足と老朽化、土砂災害の危険性があることを理由に、町で唯一の小学校を移転改築する方針が決定。

  • 町民一人一人の声を町に届けることで、未来の住民に胸を張れるような小学校建設に役立ててもらいたいという想いから、PTAの主催で最初のワークショップを実施。その後も教育委員会の主催で様々なテーマについて複数回のワークショップを実施。

  • 施設完成前から、新校舎内に整備される地域図書室を核とする“地域に開かれたエリア(生涯小学校エリア)”の活用方法等、完成後の学校の使い方についても検討を重ねた。

  • 対話の記録は、「ごじょうめ未来ノート」としてまとめ、教育委員会がリーフレットを作成し町内に発信した。

当事者参画の方法

  • スクールトークという地域住民が参加するワークショップと教職員ワークショップを開催した。

当事者の人選

  • スクールトークは、誰でも参加可能なワークショップであり、町広報やホームページ、チラシを作って住民の参加を求めた。参加方式は、事前申し込み型ではなく、飛び入り参加型とした。

  • スクールトークには、地域住民、保護者、障害を持つ子どもやその保護者、町外の方を含め、延べ1,000人参加した。

  • 教職員ワークショップは小学校の教職員が参加した。

  • プロポーザルにおいて設計者は、当初、児童や教員からの意見聴取を考えていたが、町長の意向などもあり、参加者の幅が広がっていった。

ファシリテーターの人選

  • 地域の教育コンサルタント業者に依頼し、対話の運営に関する知見を有していた地域おこし協力隊をファシリテーターに起用したことで、参加者の考えを深められるような対話を進めることができた。

  •  完成までの約2年10か月間に10回以上のワークショップの場を設け、保護者や近隣住民、教職員はもとより、一緒に学校づくりを考えてくれる人々が幅広く参加した。

  • スクールトークのリーフレット

  • スクールトークで行ったワークショップの様子

当事者参画の実施時期

  • 学校の移転改築決定から完成まで、誰でも参加可能のワークショップ(スクールトーク)を10回、教職員ワークショップを3回開催。

当事者参画の内容

(ワークショップの取組内容)

  • 意見交換の場としてワークショップを行ったが、その前段には毎回必ずテーマに沿った先進事例の紹介や講演をセットにして行った。学校づくりに関する知識や経験が豊富な有識者を講師に招き、参加者に学校づくりとは何か考えてもらう機会や先進事例を紹介し学校空間の工夫等を知ってもらう機会を設けている。学校は住民にとっても、思い入れや思い出が多いため、既存のイメージから一旦離れて、新しい環境を考えてもらうことを意識した。

  • 基本設計時は、未来の学習環境を考える場と、地域の学校をどのようにすり合わせるかを中心に考えた。実施設計時には、工事が始まるまでの間に、話し合ったことが風化しないように、設計内容や話し合いの内容を浸透させる場を設けた(模型の展示会や現地案内など)。工事開始後は、今後新しい学校で、どの様なことが展開されるか話し合い、イメージと熱量を持続するように心がけた。

  • 教員に対しては、従来の学校施設に対するイメージを捨ててもらえるように意識し、先進事例の紹介や、新しい指導要領などを説明し、対面型授業や管理効率よりも学習空間の質を考えてもらえるように心がけた。

  • 地域のワークショップは、小さな話題から考えず、大きな話題を切り口にした。RC造か木造かという話題ではなく、「どのような子供に育ってほしい?」や、「地域のこれからは?」といった課題を設定し、教育感をつくり上げていった。

  • バリアフリーやインクルーシブ教育に関する議論として、誰でも過ごせる空間を意識して作ってほしいという要望があった。配置計画上は、インクルーシブという言葉で、特別支援と普通教室を隣接させる流れがあるが、教員から、社会がインクルーシブになっていないので、現実的には、違いを乗り越える力がインクルーシブの第一歩だという意見があり、あえて、距離を取る配置とした。バリアフリーも同様で、学校の規模や児童生徒の障害の状況を踏まえ、特別支援の教室は1階ではなく、2階に配置することとした。

  • 施設の完成から約2年後、ワークショップの参加者からの「町民も何か学校に参加できる形がよい」という意見が基となり、新校舎と周辺エリアを拠点として、全町民を対象に0歳から100歳以上でも通える学びの場とする社会教育講座「五城目みんなの学校」を開催した。その際、校内の図工室や階段教室も会場として活用している。運営の一部を地元企業に委託しており、教育委員会や教職員の人事異動があっても活動の継承が円滑となっている。

  • 「五城目みんなの学校」は基本的にワークショップと同様に誰でも参加できるようにしている。学校教育の目標が社会・地域の課題を解決する人材の育成であり、生涯学習も同様に社会の課題解決を目標としている。様々な参加者が混ざり合いながら、よりよい学びの環境を継続的に作っている。
  • 地域図書室「わーくる」で開催した 「みんなの学校」の様子

  • 小学校の「階段教室」で開催した 「みんなの学校」の様子

当事者参画を通して得た気づき・感想

  • 意見聴取も大事ではあるが、設置者側の考え方を直接住民に伝えることも大きな役割だと感じた。当初は住民側に行政への不信感もあったが、行政も考えているということが伝わり、徐々に、円滑にコミュニケーションをとることができるようになった。ワークショップには信頼感や安心感を醸成する役割があると感じる。
  • ​ワークショップの開催により、学校とは、様々な人がかかわって出来ていると、参加者は改めて気づくことになった。教員には教員の、保護者には保護者の当然と思っていることが相互に理解しているわけではないことに気づいた。
  • また、それぞれの感覚が違っていても目標や理想を共有していくことが良い学校をつくるスタートであると気づいた。

  • バリアフリーに関しては、説明をしっかりと行い、建物の包摂性を感じてもらうことが、住民の満足度の差になると感じる。

参画後の意見調整

  • 教育委員会が中心となり、調整しながら設計者に指示を出した。また、決まったことや、叶えられない要望等は全体の報告会という形で、理由も含め、全て住民に説明した。

  • 学校の図書室を地域に開放してほしいという要望があったが、それを採用すると、図書メディア機能を学校の中心にする基本的なコンセプトが損なわれるという問題があった。地域と学校の役割を話し合う中で、周辺の都市公園の中心となる部分を図書室にすることとした。結果として、学校用地だけでなく、周辺施設全体を学校の用地のように考えることになった。設計当初は図書室の地域開放は予定していなかったため、当初の設計案から、配置計画を大幅に変更した。
  • 校舎外観(手前の緑地(五小パーク)は都市公園区画となっている)

  • 教室とワークホール