学校施設は、多くの児童生徒等が一日の大半を過ごす学習、生活等の場であることから、安全で豊かな環境を確保することが必要不可欠である。従って、地震発生時においては、児童生徒等の人命を守るとともに、被災後の教育活動等の早期再開を可能とするため、施設や設備の損傷を最小限にとどめることなど、十分な耐震性能を持たせて学校施設を整備することが重要である。
学校施設は、地域住民にとって最も身近な公共施設であり、また、児童生徒等のみならず地域住民の学習や交流の場ともなり、さらに、地震等の災害発生時には地域住民の応急的な避難場所としての役割も果たすことが求められる。このため、地震や余震発生時に、児童生徒、避難住民等の避難場所として必要となる機能も十分に果たすよう整備することが重要である。
学校施設については、地震発生時の児童生徒等の安全確保、被災直後の応急避難場所としての機能等を考慮し、新増築、改築、耐震補強といったすべての整備に共通して、重要度係数の採用や設計地震力の割増など、十分な耐震性能を確保する設計を行うことが重要である。
また、その際、内陸直下の地震を発生させる活断層や、広範囲に大きな影響を及ぼす海溝型地震により当該地域に予測される地震動の大きさを考慮することも重要である。
地震発生時における児童生徒等の人的被害を防止するためには、耐震化優先度調査及びそれに基づく耐震診断又は耐力度調査を早急に実施することにより、個々の学校施設の耐震性能を的確に把握した上で、当該地域に予測される地震動の大きさも考慮し、倒壊又は大破する恐れのある危険度の大きいものから優先的に改築や耐震補強といった耐震化事業を実施していくことが重要である。
学校施設の耐震診断の基準としては、各々の学校施設の特性に適合したものを選択することが重要である。
鉄筋コンクリート造の校舎については、ラーメン構造のものが多いことから、一般的には、「2001年改訂版既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準・同解説」(財団法人日本建築防災協会)における第2次診断によることが適切である。ただし、当該建物の構造特性によっては、第3次診断も併用して総合的に耐震性能を判定することや、第1次診断により耐震性能を簡略的に評価することも考えられる。
また、屋内運動場に係る耐震診断の基準としては、「屋内運動場等の耐震性能診断基準(平成8年版)」(文部科学省大臣官房文教施設部)によることが適切である。
学校施設の耐震化を計画的に推進していくためには、その重要性及び緊急性について、教育委員会をはじめとして、財政部局、建設部局、防災部局等の行政関係者(学校法人の場合は事務部局関係者。以下同じ。)、教職員、保護者、地域住民等の関係者間で理解を促進していくことが重要である。
このためには、地方公共団体等の設置者は、所管する学校施設の耐震化優先度調査や耐震診断の結果、並びに、耐震化推進計画を策定した場合はその内容及び検討経緯等について、学校関係者に対し公表した上で、耐震化事業の緊急度等について幅広い合意を形成していくことが重要である。
地方公共団体等の設置者は、学識経験者や専門技術者とも連携の上、「学校施設の非構造部材等の耐震点検に関する調査研究(報告書)」(社団法人日本建築学会)等を参考として、屋内運動場や校舎等における天井材、電気・機械設備機器、外壁や内壁等のいわゆる非構造部材等についても早急に耐震点検を行い十分な耐震化対策を講じることが重要である。
地方公共団体等の設置者は、所管する学校施設の耐震化を推進する場合、「学校施設整備指針」を踏まえ、学校施設の質的向上に係る課題についても併せて十分に検討し、学校施設として総合的な整備計画を企画・立案することが望ましい。
地方公共団体等の設置者は、所管するとりわけ新耐震基準施行(昭和56年)以前に建築された学校施設について、耐震化優先度調査、耐震診断、改築、耐震補強その他の耐震化に係る施策を順次推進していく必要がある。
このためには、第2章で述べる既存学校施設の耐震化推進計画策定上の留意事項を十分に検討した上で、耐震化に関する個別事業の緊急度や年次計画等を内容とした耐震化推進計画を早急に策定するなど、計画的に学校施設の耐震化を推進していくことが重要である。
大臣官房文教施設企画・防災部参事官(施設防災担当)付
-- 登録:平成21年以前 --