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はじめに |
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平成7年11月に学校等における防災体制の充実に関する基本的考え方等につづいて取りまとめた第一次報告に引き続き、阪神・淡路大震災の被害状況を踏まえ、地震対策を中心に、各学校が児童等の安全を確保するために必要となる対応策についてより詳細に検討。
各学校でいざというときに適切な対応がなされるためには、教育委員会等及び各学校において、日ごろから必要な準備を整えておくことが必要であるが、本報告はその際の参考例となるよう、 学校防災に関する計画を策定する場合に盛り込むべき事項、 防災教育を充実させる上で留意すべき事項、 地震が発生した場合に児童等の安全を確保するために教職員が果たすべき役割等に関して、基本的な事項を取りまとめたもの。
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学校防災に関する計画作成指針 |
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1 |
学校防災に関する計画の目的等 |
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児童等の発達段階、地域の実情、過去の災害発生事例等を踏まえながら、 学校の施設・設備等の点検・整備、児童等の学校生活等における危険の発見・除去体制の整備、 児童等が災害から自らの生命を守るべく安全な行動をとる能力や態度を育てる計画的な指導体制の整備、 災害が発生した場合に適切な緊急措置を講じる体制の整備を主たるねらいとして学校防災に関する計画を作成することが必要。
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2 |
学校における防災のための体制 |
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<防災組織の例> |
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学校安全委員会又は防災委員会(平常時) |
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委員長
(校長) |
総務担当 |
施設・設備点検担当 |
防災教育担当 |
避難訓練担当等 |
救急・救護担当 |
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学校防災本部(災害発生時) |
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本部長 |
総括班 |
安否確認・避難誘導班 |
安全点検・消火班 |
救護班 |
救急医療班 |
保護者連絡班 |
応急復旧班 |
避難所支援班
(当該学校が避難所となった場合) |
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3 |
日ごろから講じておくべき措置 |
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(1) |
施設・設備の管理及び点検・整備 |
ア) |
施設・設備の管理 |
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<施設・設備管理の例> |
・ |
テレビ、棚、書架、薬品庫等の転倒防止措置の実施や救助袋、消火栓、消火器等の防災上必要な設備、器具・用具の配置図の掲示等を実施。 |
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イ) |
定期、日常及び随時の安全点検の実施 |
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<安全点検の例> |
・ |
安全点検の実施計画(チェックリストを含む。)を作成し、施設・設備の全般及び防火施設等について定期点検を実施。 |
・ |
学校及び学校区域内の地形・地盤等の条件を検討し、災害発生時における被害等について予測し、日ごろから対策を立てておく。 |
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(2) |
防災教育の実施 |
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学校において、安全教育の一環として、児童等の発達段階に即して防災対応能力を身に付けることが重要(『 防災教育の充実のための指針』の中で詳述)。 |
(3) |
情報連絡体制の整備 |
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学校と教育委員会、災害対策担当部局との間の情報連絡手段・体制を整備するとともに、教職員間、学校と保護者・児童等との間の情報連絡体制を整備。 |
(4) |
学校安全度の評価・改善 |
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学校の施設・設備、防災体制等について総合的な点検を行い、安全度の評価・改善を実施。 |
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<安全度評価の項目例> |
施設・設備の点検・整備、 当事者の防災リテラシー、 協力体制等 |
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(5) |
非常用物資の備蓄管理 |
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学校施設の一部を備蓄場所として提供する場合、災害対策担当部局、教育委員会等と協議した上、管理場所、備蓄物資の内容、管理者、管理方法等についてあらかじめ定めておくことが必要。 |
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4 |
災害時における児童等の安全確保方策 |
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(1) |
発災時別の教員の緊急対応方策 |
(2) |
保護者との連絡、引渡し方策 |
(3) |
学校の施設・設備の被災状況の点検 |
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(『 児童等の安全確保等のための教職員の対応マニュアル作成指針』の中で詳述) |
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5 |
避難所としての運営方策等 |
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避難所に指定されている学校や、災害の規模・程度、地域の実情等により避難所となることが予想される学校については、避難所となる場合の運営方策に関して定めておくことが必要(『 児童等の安全確・保等のための教職員の対応マニュアル作成指針』の中で詳述)。 |
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(1) |
運営体制 |
(2) |
初動体制 |
(3) |
避難所としての施設の使用について |
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6 |
学校教育再開へ向けての対応 |
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(1) |
応急教育計画の策定 |
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学校教育活動が正常に実施されるまでの間、被害の状況等に応じ休校、短縮授業等の応急教育を実施することを定めておく。 |
(2) |
教科書、学用品等の確保、衛生点検等 |
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児童等が必要とする教科書、学用品等の供給を受けられるよう、被害状況の正確な把握を行うとともに、校内や通学路の安全点検、施設・設備の応急補修、衛生点検を実施すること等を定めておく。 |
(3) |
PTSD等心の健康問題への対応 |
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外傷後ストレス障害(PTSD)等の問題についても理解を深めておく。 |
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7 |
PTA、地域との協力 |
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(1) |
PTAとの協力 |
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災害の状況等によっては、学校だけでは十分な対応を図ることが困難な場合も考えられるため、児童等の安否・所在の確認、学区内の被災状況、通学路の点検・安全確保、教科書・学用品等の支給に関し、PTAの協力を得るよう努める。 |
(2) |
地域の自主防災組織等との協力 |
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安全の確保や学校が避難所となる場合の円滑な運営を図るため、地域の自主防災組織、ボランティア組織、地域医師会、学校医等の協力を得るよう努める。また、学校において非常用物資の備蓄を行う場合には、それらの管理についても協力を得るよう努める。 |
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防災教育の充実のための指針 |
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1 |
防災教育の推進体制 |
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防災活動の内容には、家庭や地域と深くかかわっているものが多いだけに、家庭・地域社会と連携しながら取り組むことが極めて重要。
したがって、学校においては、日ごろから家庭や地域社会と密接な連携協力を図りつつ、児童等に対する防災教育を推進することが必要。
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2 |
各学校における防災教育に関する指導の在り方 |
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学校、家庭、地域社会の連携協力を図り、防災教育を効果的に進めるためには、各学校における防災教育のねらいや重点などを明確にし、それらを学校の教育課程に位置付け、教育活動全体を通じて、体系的・計画的に指導することが必要。 |
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1 |
災害時における危険を認識し、日常的な備えを行うとともに、状況に応じて、的確な判断の下に、自らの安全を確保するための行動ができるようにする。 |
2 |
災害発生時及び事後に、進んで他の人々や集団、地域の安全に役立つことができるようにする。 |
3 |
自然災害の発生メカニズムをはじめとして、地域の自然環境、災害や防災についての基礎的・基本的事項を理解できるようにする。 |
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災害時における状況に応じた行動として、いわゆる非常事態の下で生き抜くための知恵などを身に付けておくことも望まれる。
また、災害時には、ボランティアの活動が社会機能の回復に重要な役割を果たし得るものであり、防災教育の柱の一つとして、ボランティア教育の取り組むことが必要。 |
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(2) |
防災教育の重点 |
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防災教育を効果的に推進するために、各地域に共通する内容と地域の特性や実態に応じて指導する内容とに分けて重点を置くべき内容を検討することが必要。
また、各学校において、児童等の発達段階に応じて、各教科等のそれぞれに応じた指導を行うとともに、それらの関連を図り、児童等一人一人の災害に適切に対応する能力が確実に身に付けられるように配慮することが必要。(報告では、学校種別ごとの各教科等における取扱いの一例を記述。) |
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3 |
避難(防災)訓練の充実の視点 |
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学校における防災教育を考えるとき、学校は、児童等が集団で学習し生活を営んでいる場であるという特質にかんがみ、災害時に児童等の集団が安全に避難できるよう、日ごろからの避難訓練が重要。 |
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(1) |
学校での避難訓練の改善 |
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学校での避難訓練は、年間を通じて計画的に実施することが必要。
その際、あらゆる場面を想定して行うことが必要。特に、学校の立地条件を入れることは、避難訓練を実施する上で重要。 |
(2) |
家庭等、地域社会と連携した学校での防災(避難)訓練の改善 |
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児童等の登下校時における避難訓練の効果を高めたり、学校が地域の避難所となった場合などに備えるためには、地域ぐるみの防災(避難)訓練を実施し、災害時の対応について訓練を積んでおくことが必要。 |
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4 |
教職員の防災教育に関する指導力及び災害時における対応力の向上策 |
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防災教育を充実するためには、教職員の研修等の充実改善、指導資料の作成や対応力の向上策等を検討しておくことが必要。 |
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(1) |
研修の充実、指導資料の作成等 |
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研修内容を考える上で、災害時の児童等の心の健康及びボランティアヘの教職員の対応能力について留意することが必要。 |
(2) |
応急処置の技能の習得など災害発生時の対応力の向上 |
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災害時における児童等の安全を守り、被害を最小限にとどめるため、教職員の応急処置の技能の習得など災害発生時の対応力を向上することが求められる。 |
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5 |
防災教育の具体的な進め方 |
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計画的に防災教育を進めるため、休業土曜日や日曜日などを活用した家庭や地域が主体となる地域の防災活動の展開なども十分考慮して、効果的で継続的な防災教育を行うことが必要。 |
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(1) |
防災教育の指導内容の整理 |
(2) |
指導計画の作成 |
(3) |
副読本、視聴覚教材等の作成・活用 |
(4) |
開かれた学校づくり-地域ぐるみの防災教育の推進 |
(5) |
教職員研修の実施 |
(6) |
防災教育改善のための評価と改善 |
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児童等の安全確保等のための教職員の対応マニュアル作成指針 |
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1 |
災害発生時の学校における応急対応体制の整備 |
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(1) |
学校防災本部の役割についてあらかじめ検討を行うとともに、教職員の各班への割り振り、担うべき業務等について周知しておくことが必要。 |
(2) |
発災の時間帯等によっては全教職員が参集できるとは限らないため、対応可能な教職員の数、被害の状況等に応じて柔軟に対応することが可能な緊急の応急的指揮システムの整備を図ることが必要。 |
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<応急的な学校防災本部の例> |
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2 |
児童等の安全確保方策 |
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(1) |
在校時の場合 |
ア) |
校内放送等による指示 |
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発災後速やかに教頭等が校内放送で冷静な対応を呼びかけるとともに、周囲の状況等の情報の伝達等を適宜実施。なお、校内放送が使用できない場合には、ハンドマイク等により教職員が分担して速やかに対応を図ることが必要。 |
イ) |
各教科等の学習中に発災した場合 |
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在室している教室の状況に応じ、地震の発生と同時に机の下へ待避させるなど、教職員が大きな声で明確に指示。 |
ウ) |
休憩時間中に発災した場合 |
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教科等の学習中の場合に比べて指示や人員の把握がしにくい時間帯であることを踏まえて対応。 |
エ) |
部活動等の自発的活動中に発災した場合 |
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休憩時間中の場合に準じて対応。 |
(2) |
学校外の諸活動時 |
ア) |
遠足、社会科見学等の活動中に発災した場合 |
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地理や建物の構造等に不案内、津波・崖崩れなど学校における場合とは異なった危険に遭遇、電車・バス等で移動中に発災といった可能性があること等を踏まえて対応。 |
イ) |
修学旅行、林間学校等により宿舎に滞在している場合に発災した場合 |
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夜間の睡眠中あるいは停電時には、建物の構造に不慣れなことから特に混乱が生じやすいこと、火気使用中の場合は、火災発生の恐れがあること等を踏まえて対応。 |
(3) |
登下校時 |
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学校へ避難するか、家へ戻るかなどをはっきり決めておいたり、通学路で危険の多い場所、安全な場所をよく確認しておくなどの対応を図ることが必要。 |
(4) |
夜間・休日等 |
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学校が児童等の安否を速やかに確認するため、学級担任が各保護者に連絡するとともに、校長等の管理職等に状況を報告。 |
(5) |
保護者との連絡及び保護者への児童等の引渡し |
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災害発生後、児童等を保護者に引き渡すことが適切であると判断される場合には、児童等の安全を確認した後、児童等の引渡しにつきあらかじめ定めた方法で速やかに保護者と連絡。 |
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児童等の引渡しカードをもとに人員確認を行うとともに、保護者に引き渡す場合には、カードに引渡しを受けた保護者及び教職員が確認の署名。 |
(6) |
学校の施設・設備の被災状況の点検 |
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施設・設備の被災状況を点検するとともに、教育委員会等の実施する応急危険度判定を早急に受けることが必要。 |
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3 |
学校が避難所となる場合の運営方策等 |
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(1) |
避難所の運営方策 |
ア) |
運営体制 |
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災害対策担当の職員が配置されるまでの間、避難所運営に係る業務に対応することを想定した体制とするとともに、具体的な対応方策について定めておくことが必要。この場合、児童等への対応と避難者への対応とが同時に求められる場合も想定しておくことが必要。 |
イ) |
初動体制 |
<初動時に必要な業務の例> |
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校長をはじめ各教職員が早急に参集できず、避難所の運営を当初の計画通りに行えない場合であっても、参集できた教職員により、少なくとも次のような業務を行うことが必要。 |
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a |
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校内にいる児童等の安否確認、避難誘導 |
b |
避難者の受入れ、誘導 |
c |
救命・救急措置 |
d |
教育委員会、災害対策本部等との連絡、情報確認 |
e |
避難者への情報伝達 |
f |
備蓄物資の配給 |
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(2) |
教職員の対応方策 |
ア) |
児童等が在校している場合 |
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児童等の安全の確保を第一に対応。また、被害の状況等を踏まえながら校長の指揮監督のもと避難所の運営に協力。 |
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発災直後 |
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・ |
児童等及び教職員の安否を確認。 |
・ |
負傷者の救護。 |
・ |
児童等の避難終了直後、被害状況を点検し、あらかじめ定めてある順位に従って、体育館、校庭等を開放し、避難所として使用。 |
・ |
備蓄してある水、食料、毛布等の物資の分配、仮設トイレの設置。 |
・ |
災害対策本部に避難所の状況、児童等を含めた避難者の概数、必要な救援物資の種類・数量等を適宜連絡。 |
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災害対策本部による管理への移行前 |
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・ |
避難所内の自治組織を立ち上げ指導。 |
・ |
避難者名簿の作成。 |
・ |
自治組織、地域の自主防災組織、ボランティア組織等と協議しながら、避難所運営の役割分担を決定し、共同で業務を実施。 |
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災害対策本部による管理への移行期 |
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災害対策担当の職員が派遣された時点から、教職員は学校教育活動の早期再開に専念するため、避難所運営に係る業務を災害対策本部、避難者の自治組織、地域の自主防災組織、ボランティア組織等に順次委ねる。 |
イ) |
児童等が在校していない場合 |
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教職員は主として避難所の運営に協力することが可能となるが、教職員が学校教育活動の早期再開に向けた職務に従事することができるようにするため、避難所の運営が主として災害対策担当職員や避難者の自治組織等によって担われる体制を順次整えることが必要。 |
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