南極地域観測事業

第52次南極地域観測隊越冬隊の現況(6月~11月)

○気象・海氷状況

 6月

 一日中太陽の出ない極夜の生活の中、曇りや雪の日が多く、4回のブリザードに見舞われるなど、荒れた天気となった。降雪の深さの月合計も4月以来3か月連続で100cmを超え、月最深積雪は6月として歴代2位の126cmを記録した。

 7月

 15日に極夜が明け、上旬の半ばと中旬後半から下旬前半にかけて荒れた天気となった他は、比較的晴れや曇りの日の多い穏やかな天候で、気温・風ともにほぼ平年並みに経過した。

 8月

 天気は周期的に変化した。気温は中旬にかけて高めに経過し、月平均気温では歴代10位の高温となった。1日の降雪と降雪の深さの月合計は共に8月としては2006年以降で最大となった。スカーレン近傍に大きなクラックが幾本も走っていることが判明したため、今次越冬中の海氷上からのスカーレンへの接近は断念した。

 9月

 中旬の半ば及び下旬の前半を除いて良い天気の日が多かった。気温は上旬と下旬は平年より高かったが、中旬は平年値より4℃も低く経過した。月最深積雪は、52次としては最も深く、9月としても歴代2位の128cmであった。

10月

 中旬は天気が周期的に変化したが、上旬と下旬を中心に好天が持続し、総じて穏やかな天候となった。このため、月平均気温は歴代第2位の低温(-16.2℃)を記録した。

11月

 22日から一日中太陽の沈まない白夜となった。好天が持続し、気温も上昇、26日には2月20日以来、9か月振りに最高気温がプラスとなり、夏らしい穏やかな天候となった。
海氷上のパドル(融雪の水たまり)はまだ見られないが、積雪はかなり緩んできており、所々に裸氷が出現し始めている。海氷上の各ルート上のクラック・プレッシャーリッジについて、氷厚は十分であり、雪上車の通過に問題はない。

○基地活動

 野外活動中の事故を想定したレスキュー訓練は極夜前にすべて完了した。また、6月2日には、国内と連携した非常時対応訓練を怪我人が発生した状況を設定して実施した。冬至を中心に6月20日から24日までをミッドウインター週間とし、これまでの越冬隊の歩みを振り返り、越冬後半に向け英気を養った。8月に入り、冬明け後の野外活動が本格的に始まった。9月21日には、10月のみずほ旅行中を想定した少人数での消火訓練を実施した。10月4日から19日にかけて越冬中唯一の内陸オペレーションとなるみずほ旅行を行い、54次以降のための内陸への燃料輸送等を実施した。また10月末にはDROMLAN用滑走路整備を、北の浦海氷上及びS17で実施した。西オングル島の福島ケルンにて慰霊祭を挙行し、越冬終了までの安全を祈願した。10月下旬から、待望のアデリーペンギンやナンキョクオオトウゾクカモメが姿を見せ、一気に春から夏を迎えている。
 11月には今シーズンのDROMLANの運用も始まり、9日には昭和基地沖の海氷上滑走路に給油のためバスラ―ターボ機が着陸した。乗員・乗客合わせて13名が来島し、2月18日の最終便以来越冬隊員以外の人と接する初めての機会を得た。月初めからは24時間2交代体制での本格除雪を開始するなど、隊全体としても、また各部門でも53次隊を迎える作業を本格的に開始している。

○観測

 観測装置や光学観測棟の空調の不具合が発生したが、対策を講じるべく関係者間で原因究明に努め、現在特段の問題はなくおおむね順調に経過している。宙空部門では、3月以来続けてきたオーロラの光学観測を10月15日で終了(悪天のため、実際の終了は13日)し、11月から大型大気レーダーエリアでの除雪・砂撒き作業を本格的に開始した。気水圏部門の観測装置の不具合は減ってきているものの、依然発生しておりその都度対処している。地圏部門では11月にVLBI実験を他部門の協力を得て実施した。生物部門ではペンギンセンサスを基地近辺10か所のルッカリーで実施した。
 気象部門では、9月23日以来欠測となっていたS16(P50)の気象ロボットについて、7日に修理を行い復旧した。

○設営

 観測棟でのブレーカー遮断事故やプロパンガスボンベ交換時のガスの漏洩、発電機の電源切替え時の不具合などがあったものの、特段の問題はなく各部門ともおおむね順調に経過している。
 自然エネルギー棟の内装工事は52次越冬期間中に予定していた作業を10月でほぼ完了した。
 11月からは本格除雪・手空き総員による砂撒きに加え、装軌車の整備、各棟の雨漏り等の補修等を行っている。また、DROMLAN運航に伴い、合計5回(4回は昭和基地、1回はS17)の燃料供給を行った。53次隊より依頼のあった沿岸施設の点検修理・燃料等物資の補充作業等は、11月中に全て完了した。持ち帰り物資・廃棄物の調査・処理方法の検討及び梱包作業は、来るしらせ接岸に備え継続して実施している。

○その他

 5月から隊員全員が定期的に講義を行う南極大学を開催し、8月26日に最終講義後閉講式を実施した。また毎月、南極教室・FM局の取材対応、アマチュア無線クラブによる国内イベント対応などの情報発信を、国内との連携をとりながら行い、特に南極教室は11月22日(姫路市立船津小)の交信を以て52次としての対応を全て終了した。
 本格除雪の開始に伴い、11月から隊としてのイベントを実施していないが、有志によるイベントを休日に行うなどして、多忙な時期に英気を養えるよう、工夫に努めている。

お問合せ先

研究開発局海洋地球課

極域研究振興係
電話番号:03-5253-4111(内線4144)、03-6734-4144(直通)

-- 登録:平成25年02月 --