南極地域観測事業

第15回外部評価委員会議事概要(案)

1.日時

平成23年9月1日(金曜日)14時~17時

2.場所

文部科学省 旧文部省庁舎2階 第2会議室

3.出席者

 

 委員 池島大策 早稲田大学 国際教養学部 教授

今中忠行

立命館大学 生命科学部生物工学科 教授


門永宗之助

Intrinsics 代表


河野 健

海洋研究開発機構 海洋環境変動研究プログラム
プログラムディレクター


瀧澤 美奈子

科学ジャーナリスト


富樫 茂子

産業技術総合研究所 評価部 首席評価役


深尾 昌一郎

福井工業大学 電気電子情報工学科 教授


矢野 州芳

三菱重工業株式会社 船海技術総括部 主席技師


若土 正曉

北海道大学 名誉教授


渡邉 啓二

防衛大学校 システム工学群機械工学科 教授

説明者

佐藤 夏雄

国立極地研究所副所長

白石 和行

国立極地研究所副所長
  長妻 努 独立行政法人 情報通信研究機構 電磁波計測研究所研究マネージャー
  平石 直孝 気象庁 観測部 計画課 調査官
  川嶋 浩二 気象庁 観測部 南極観測事務室長
  河瀬 和重 国土地理院 企画部 国際課長

 

及川 幸四郎

海上保安庁 海洋情報部 環境調査課 主任環境調査官

事務局

 井上 諭一

文部科学省 研究開発局 海洋地球課長

 

 小池 良高

 文部科学省 研究開発局 海洋地球課 極域科学企画官

4.議事

【1】議題に入る前に、事務局より委員の出欠状況と事務局の人事異動、議題及び配付資料の確認があった。

また、前回の議事概要(案)について、資料(1)に基づき説明があった。議事録概要(案)について、修正、意見がある場合は、9月8日(木曜日)までに事務局に報告をいただきたい旨連絡があった。

【2】議題1.南極地域観測第7期計画の評価について

 事務局より資料2-1および2-2に沿って評価方針について説明があった後、定常観測のヒアリングを開始した。主な意見は以下のとおり。
 
若土委員
 これまで定常観測が果たしてきた役割は非常に大きい。これからもずっと継続して実施していただきたい。

若土委員
 気象観測を強化するために基地周辺の気象観測施設が必要とは具体的に説明して欲しい。

気象庁 川嶋南極観測事務室長
 航空の安全のため、S16の航空機離発着場所に恒常的なロボット観測が必要である。また、S16周辺で行われる野外観測をサポートするための気象予測に現地の観測情報が必要であり、施設整備を計画している。

池島委員
 気象観測について、南極上空のオゾンが80年代に急激に減ったが、92年以降低いレベルで安定している要因は何か。増えることは無いのか。

気象庁 川嶋南極観測事務室長
 国際的に議論されているが、気象庁で明確な答えは持っていない。今後また増える時期までこのままの状態が継続すると予測されている。

池島委員
 海洋物理化学観測について、最近の海洋汚染の度合いは如何。

海上保安庁 及川主任環境調査官
 海洋汚染物質の急激な変化は見られていない。もっと詳細に調べる価値はあると思う。

若土委員
 測地観測について、何年くらい継続しているのか。基準点測量は何点か決めて実施しているか。大きな変動は見つかったか。

国土地理院 河瀬国際課長
 1956年から実施しており、数十点設置している。南極大陸では我が国の様なたくさんのプレートがぶつかり合って地震を起こすような現象は見られていない。大陸移動の兆候なども見られていない。

河野委員
 海上保安庁の汚染調査は50次の打ち切り以降どうなっているか。

小池極域科学企画官
 「しらせ」が新しくなった際、船の観測機器の整備状況により観測が困難になったため、現在文部科学省で検討中である。

瀧澤委員
 多方面の科学者が興味を持つような観測が含まれているが、観測データが閲覧できる形で提供されているか。例えば気象庁の提供の頻度が年1回公開となっているが、どのような仕組みで必要な研究者の元にデータが渡るのか。

気象庁 川嶋南極観測事務室長
 年一回の公開は、南極観測報告というCD-ROMである。隊員が帰国した際、1年分のデータを積み足した物をCD-ROMにし、300程度の関係機関に送る。該当する研究者には漏れなく届いている。

今中委員
 どの分野でも構わないが、50年定点観測をしたことで顕著に変わっていること、面白い事、危険だということは無かったか。

気象庁 川嶋南極観測事務室長
 気候の平年値を30年平均で作成している。前回の統計と比べると、観測値に大きな変化は無かった。温暖化と言われているが、南極についてはさほど上昇は無かったと分析している状況である。

独)情報通信研究機構 長妻研究マネージャー
 電離層の高度が、ほんのわずか下がり傾向にある。定量的な評価についてはさらに解析を進めている段階である。

深尾委員長
 長期にわたって着実に観測データをとり、科学者だけでなく、一般の人に分かる言葉で発信することが大事だと思うが如何。

海上保安庁 及川主任環境調査官
 潮汐に関して、昭和基地の験潮データは7時間遅れではあるが、インターネットで一般に公開されている。

国立極地研究所より研究観測について資料4-1、2、3に沿って説明があった。
主な意見は次のとおり。

若土委員
 国立極地研究所の評価委員会で評価されたているのに当委員会は何を評価すれば良いのか。評価するための材料として、自己評価資料を持ち帰り、良く読んで評価をするという理解で良いか。

小池極域科学企画官
 国立極地研究所で行っているのはあくまでも自己評価である。外部の方に評価してもらうのがこの外部評価委員会の任務である。委員には資料4-1に国立極地研究所の自己評価を踏まえて、評価意見を記載する作業をお願いしたい。本日の資料は机上資料を含めて各委員に送付する。

門永委員
 評価にギャップがあることについて説明願いたい。例えば重点プロジェクトのサブテーマ1では資料4-2で5段階評価の真ん中になっているが、資4-3ではSになっている。

白石国立極地研究所副所長
 資料4-2の評価は自己評価である。

佐藤国立極地研究所副所長
 輸送のトラブルなどで計画通り実施出来なかったため、国立極地研究所の担当者の判断ではほぼ計画どおりという判断であった。しかし、国立極地研究所の外部評価委員は致し方ないことであり、他で十分以上に成果が出たのでS評価を与えたと説明を受けている。

若土委員
 国立極地研究所の外部評価とこの外部評価委員会の結果があまりにも食い違う事態が頻繁に起きると良くないと思うが如何。

小池極域科学企画官
 この外部評価委員会の評価は本部総会に提出することになる。評価報告書に資料4-1を付けて提出される。

富樫委員
 評価の基準について、国立極地研究所のBでは、達成度がやや不十分となっており、本評価委員会のBではおおむね良好となっているが、それを認識した上で評価するということで良いか。

小池極域科学企画官
 そのとおりお願いしたい。

深尾委員長
 自己評価の資料は専門家が読んでも分かりにくい。一般の人が分かりやすいように書くことはできないか。

白石極地研究所副所長
 本来資料4-1の実績・評価欄に資料4-3のエッセンスを書き、自己点検欄に資料4-2の総合評価を整理して記載すべきであるが、極地研究所の委員会から間が無く、今回はこの形で提出している。

今中委員
 各評価委員の専門に近い分野と離れた分野とあるが、科学者として色々な文書やそれに対する判断を見て、自分なりの判断を記載して良いか。

深尾委員長
 限られたメンバーで全ての領域をカバーするのは無理なので、高い見識で書いて頂きたい。

河野委員
 重点プロジェクトを学問分野を横断した形で大きなものをとらえるところがポイントということであったが、それにより一つ前の時期に比べて何か顕著な成果や結果に結びついたと考えているか。また、この期間にはIPYがあったが、IPYにおける日本のプレゼンスはこれまでに比べて高かったのか。もしそうなら、その理由は何か。

佐藤国立極地研究所副所長
 分野横断型になったことにより計画を立てる段階から情報を共有し、互いの研究を理解出来たことは次期にも繋がる大きなステップである。
 研究面では海洋圏、生物圏、大気圏の結合が目に見える形で成果が得られた。硫化ジメチルが如何に大気に入ったり、水に入っているか等が始めてデータとして捕らえられた。
 中空圏に関しては、本格的にはPANSYでの観測により成果が出ることが期待されるが、この時期の研究がⅧ期での成果に繋がっていると考える。
 IPYに関しては、予算が付かない中、日本とスウェーデンのトラバースで両国が共同観測したことが目に見える成果と言える。

若土委員
 極地研究所があえてモニタリング観測を実施しているねらいは何か。

白石国立極地研究所副所長
 元々モニタリング観測は他の省庁で定常的にやるべき観測で、引き受け先が無い物を極地研究所が担当している。研究の中で、長期的に見ないと結果が出ないという主張が有る物が多く、その項目が増えてきた。
 第6期の外部評価で、定常観測やモニタリング観測を見直し、整理すべきとの指摘もあり、第8期からは非常に厳密な定義づけをした。例えば、採るべき観測項目は世界的にスタンダードされたものであり、長期的に採るべきもの。速やかにデータを公開するなどのクライテリアを設けており、現在はこの定義を採用している。

若土委員
 極地研究所としてモニタリング観測をどう位置づけて、個々では無く、全体としてどう新しいことを見いだし、次のステップに繋げるかという明確な見通しが欲しい。具体的にステップアップすることが必要だと思う。
 
渡邊委員
 各省庁や極地研が行っている観測の連携はどうなっているか。

佐藤国立極地研究所副所長
 例えば気象庁の気温、風等のデータを極地研の太陽活動のデータを組み合わせて、その相関を調べたり、NICTの電離層観測と極地研のオーロラ活動、地磁気の活動の相関を調べたりしている。定常観測のデータを極地研究所の研究者が使わせて貰っている。

門永委員
 評価方法に関して、極地研究所の外部評価では、自己評価よりも評価委員の評価が高いものがある。その理由を探す必要があるが、必ずしも資料から読み取れない。この点今後の評価の進め方はどうなるか。

小池極域科学企画官
 各委員には事前に評価票を提出して頂き、次回の第16回評価委員会で検討する。その際、さらに各省庁や極地研究所に質問を流し、第17回評価委員会までに回答を受けることは可能である。

 続いて極地研究所白石副所長より設営計画について資料4-1、2、3に沿って説明があった。
 主な意見は以下のとおり。

矢野委員
 環境保全の推進について、漏洩検知システム機能が完成していないとの記載があるが、その理由は如何に。

国立極地研究所石沢設営業務担当マネージャー
 漏洩検知センサーに問題があり、現在原因を調査中。

矢野委員
 廃棄物の処理方法を検討していると言うことだが、現状は単純に焼却して埋めているということか。これからどうする計画なのか。

国立極地研究所石沢設営業務担当マネージャー
 当時は規制が無かったため、使い古しの観測機や車両を埋めたが、一部海岸に押し出しているため、海に出ないように遮蔽するか、撤去して持ち帰るか、今後の手だてを検討中である。

矢野委員
 比較的海岸近くに埋め立て地が作られていたということか。遮蔽壁のようなものを作るつもりなのか。

国立極地研究所石沢設営業務担当マネージャー
 埋め立て地は海岸そば。パイルなどを打って流出を止めることなどを検討しているが、その場合作業量がかなり多くなってしまうので、それが可能かどうかも含めて検討中。

 続いて事務局より、資料5に基づき今後のスケジュールの旨説明があった。概要は以下のとおり。
 今回、第15回外部評価委員会でヒアリングを実施し、9月25日頃までに結果を事務局へ提出願う。この間に委員からの質問等を受け付け、フィードバックすることも可能。第16回外部評価委員会で各委員が作成した評価結果(案)や評価意見(案)を踏まえて議論。ここでの議論を踏まえ、必要に応じて評価結果(案)や評価意見(案)を修正し、総論、観測プロジェクトごとの総括的な評価結果(案)を作成。17回外部評価委員会では外部評価結果(案)を仮決定。その後CSTP指摘事項等に関する評価を提出頂き、18回外部評価委員会でフォローアップ、指摘事項の評価意見取りまとめ等を行う。また、第17回と第18回の間に開催する本部総会で外部評価書の仮案を報告する。

若土委員
 今日のディスカッションもベースにし、資料4-2、4-3を元に資料4-1の評価結果を委員が記載し、提出するということで良いか。

小池極域科学企画官
 そのとおりお願いしたい。

続いて事務局より、資料6に基づきCSTPが実施した大規模研究開発評価のフォローアップ対応について、資料7に基づき評価担当表について説明があった。
主な意見は次のとおり。

渡邉委員
 11月10日に開催される本部総会にはCSTPの指摘事項は報告されず、今回の委員会の対象事項が報告されるということか。
また、その位置づけは如何に。文部科学省外へ出るのか。

小池極域科学企画官
 総会には資料4-1をまとめ、総括表を付けて報告する。
 CSTPのフォローアップについては評価書を見て評価することになるが、特にそれ以外に提出することは無い。
深尾委員長
 出来るだけ一般の人が分かりやすい記述が望ましいと考える。

―了―

お問合せ先

研究開発局海洋地球課

極域研究振興係
電話番号:03-5253-4111(内線4144)、03-6734-4144(直通)

-- 登録:平成25年02月 --