平成23年4月15日(金曜日)14時~17時
文部科学省 旧文部省庁舎2階 第1会議室
委員 | 池島大策 | 早稲田大学 国際教養学部 教授 |
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今中忠行 |
立命館大学 生命科学部生物工学科 教授 |
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門永宗之助 |
Intrinsics 代表 |
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河野 健 |
海洋研究開発機構 海洋環境変動研究プログラム |
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瀧澤 美奈子 |
科学ジャーナリスト |
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富樫 茂子 |
産業技術総合研究所 評価部 首席評価役 |
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深尾 昌一郎 |
福井工業大学 電気電子情報工学科 教授 |
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矢野 州芳 |
三菱重工業株式会社 船海技術総括部 主席技師 |
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若土 正曉 |
北海道大学 名誉教授 |
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渡邉 啓二 |
防衛大学校 システム工学群機械工学科 教授 |
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オブザーバー |
白石 和行 |
国立極地研究所副所長 |
工藤 栄 | 南極地域観測隊第51次隊副隊長 兼 越冬隊長 | |
大塚 英明 | 南極地域観測隊第52次隊副隊長 | |
山岸 久雄 | 南極地域観測隊第53次隊隊長 | |
土井 浩一郎 | 南極地域観測隊第53次隊副隊長 兼 越冬隊長 |
【1】議題に入る前に、事務局より委員・出席者の紹介があった。
【2】議題1.委員長の選任について
事務局より、福井工業大学教授:深尾委員に当委員会の委員長を依頼したい旨提案があり、全会一致で了承された。
【3】議題2.外部評価委員会ついて
事務局より、議題及び配付資料の確認の後、外部評価委員会について説明があった。主な質問は下記のとおり。
深尾委員長
この委員会では、極地研究所そのものの評価を行う必要があるのか。
小池企画官
南極観測事業の評価を行うことが目的であり、極地研究所そのものの評価は本会議の対象とはならない。
【4】議題3.南極地域観測事業の現状について
事務局より、南極地域観測事業の現状について説明があった。主な質問は下記のとおり。
若土委員
定常観測とモニタリングの住み分けについての整理について確認したい。
白石副所長
南極地域観測第Ⅷ期計画から、南極で長期間にわたって観測を行う分野で定常部門の研究機関が担当する定常観測と、それ以外で極地研究所が担当するモニタリング研究観測の分野を、基本観測としてまとめた。内容についても重複部分がないように精査した。
若土委員
こうした区分を行うのには、何か理由があるのか。
白石副所長
予算の違いによる。
深尾委員長
海上輸送部門経費には、「しらせ」乗組の自衛隊員の給与も含まれているのか。
小池企画官
「しらせ」運航とヘリに係る必要経費、乗組員の航海手当、南極手当が含まれている。給与(本俸)は含まれていない。
深尾委員長
南極観測の歴史について、大型の受信アンテナの整備により、衛星データを南極で受信できるようになった。設営部門の整備であり、学術的な成果ではないが、これを通じて大きな成果を上げており、成果の一つとして項目の追加を行うべきである。
深尾委員長
プロジェクト研究観測のなかに、隕石による地球型惑星の形成とマントルの進化過程との記載があるが、隕石を調べるとマントルの進化が理解できるものなのか。
白石副所長
直接は関係しないが、地球型惑星の一部が隕石に含まれている場合があり、関連性から研究対象となりうる。ただし、マントルの進化過程に関する研究課題と隕石による地球型惑星の形成については、別の研究テーマである。
瀧澤委員
第7期計画の重点プロジェクト研究観測の中の地球環境システムの研究と、小規模な研究観測として、一般プロジェクトの中の地球環境変動システムの解明という区分けがなされているが、規模の違いによる区分なのか。
白石副所長
重点プロジェクトに関しては、極地研究所が主導して計画したものであり、一般プロジェクトは、研究者からの希望に基づき計画したものである。
若土委員
萌芽研究観測は、今後重点プロジェクトに必ず措置されるものなのか。重点プロジェクトにとして採用するには、萌芽研究を経由しないと認められないのか。
白石副所長
そうではない。たまたま第7期の萌芽研究観測であった大型大気レーダーが第8
期の重点研究観測となった実績がある。
深尾委員長
萌芽研究をいくつか行い、その中から有望なものを大型プロジェクトとして育てる方法がうまく働いていると思われる。今後も続けていただきたい。
門永委員
国際共同観測で、日本の役割とはなにか。独自観測で、世界に誇れる成果はあるか。
白石副所長
オーロラ研究については、日本が先行しているといわれている。外国基地も含めたネットワークを構築し、観測している。近年独自に行った大型研究としては、ドイツと協定を結び実施した航空機を利用した研究観測、スウェーデンと共同で行った内陸トラバース観測などがある。
門永委員
各国目的が異なるが、個別のテーマを共同で実施しようとするものと、国際的に一緒に行おうとする共同研究に日本が参加するという2種類がある理解でよいか。
白石副所長
そうである。国際的な観測網の1つとして日本が参加しているものがあるが、南極は地球物理学的な観測点が非常に少なく、昭和基地は多種類の観測を行う特色のある基地であり、国際的に重要である。
矢野委員
南極では資源開発に関連した事業は行わないのか。
白石副所長
環境保護に関する南極条約議定書のなかで、鉱物資源の探索は明確に禁止されているため、実施できない。
深尾委員長
温暖化で海氷が融けだすと、北極の資源争奪戦が激しくなる。条約で保護されているが、南極ではそうした心配は本当にないのか。
池島委員
21世紀の中ごろに、議定書の見直し時期がくる。現状として、それを見越して準備している見方と、南極といういろいろな意味で価値の高い場所を守っていくことが大切だという見方が拮抗している。
今中委員
南極における微生物資源の取り扱いはどうなっているか。研究成果の帰属について発見した研究者やその国が主張することはできるのか。
山内副所長
現在、南極条約会議のなかで、生物有用遺伝情報の探索に関する規制の必要性についての論争が続いている。意見は拮抗しており、結論は出ていない。
若土委員
極地研究所で行っている大学院教育について、今後も南極観測事業が継続していくために、夢を持った若手研究者を育成する必要がある。極地研究所として何か考えはあるか。
白石副所長
法人化以降、南極観測隊員が全て国家公務員である必要はなくなった。国家事業である南極観測事業を大学院学生が担うことに異論もあるが、実際の研究を通じて研究者として成長していくものである。大学院学生の身分のままでも南極観測事業に従事できるように法人化以降努めており、毎年数名が参加しているのが現状である。
深尾委員長
ポストドクターの学問分野における就職先については、全学問分野でその不足が問題となっている。極地科学のように分野が限られると、将来の見通しに不安を抱く学生も多いかと思われるが、現状はどうか。
白石副所長
南極に限らない問題であるが、南極に特化してしまうと、就職先が少ないのが現実である。現在極地研究所に在籍しているポストドクターの人数は20名程度である。任期付きの助教として公募をかけるが、採用人数は多くはない。
矢野委員
北極に関する観測で、南極観測事業のように定常的に実施しているものはあるか。
山内副所長
20年位前から極地研究所で北極に関する研究を実施し、北極環境研究センターが作られたが、予算状況・人的資源の不足から、大規模な事業は行われてこなかった。南極と比較して行きやすい場所であるため、大学など色々な機関が少しずつ研究活動を行う時代が長く続いている。オールジャパン体制で北極研究を進めていこうという動きがあり、今年度から実施される予定である。
【5】議題4.外部評価の基本的な考え方について
事務局より、外部評価の基本的な考え方について、極地研究所より、極地研究所の評価システムについて説明があった。主な質問は下記のとおり。
門永委員
極地研究所に置かれている南極観測評価委員会と南極観測審議委員会には、外部委員が含まれているのか。
白石副所長
両委員会は外部委員のみで構成されている。
小池企画官
本部に置かれている外部評価委員会については、事業を実施している極地研究所とは別に、本部としても外部評価を行うべきであるという基本問題委員会の「意見のとりまとめ」に基づき設置されている。
白石副所長
極地研究所が責任を持って実施している部分に関しては、南極観測評価委員会で評価を実施するが、各省庁が担当している定常観測は極地研究所では評価できない。本部が直接携わる部分についても極地研究所の評価対象外である。
渡邉委員
外部評価が重複してしまう点については、前の委員会でも問題となった。極地研究所の自己評価システムのやり方について外部評価委員会で評価する事が目的であると理解している。
富樫委員
国立極地研究所の法人としての評価は別におこなわれるのか。
白石副所長
情報・システム研究機構としての法人評価は別に実施される。定常観測が予算全体に占める経費は4パーセントである。予算全体の65パーセントが「しらせ」とその搭載ヘリに関する経費であるが、その部分に関しての評価は今まで実施されていない。
深尾委員長
極地研究所が実施する評価と本委員会で実施する評価については、重複する箇所はあるかもしれないが、より高い所から全体を評価し、相補的な関係になっている。
重複箇所があるかも知れないが、この体制で実施したい。
【6】議題5.今後の評価の進め方及び評価方針について
事務局より、今後の評価の進め方及び評価方針について説明があった。主な質問は下記のとおり。
門永委員
4段階評価だと、良いか悪いのかはっきり示されるため、よい方法だと思う。
矢野委員
評価の回答を出すまでの日程はどのようになっているか。
小池企画官
極地研究所では8月位までに評価をまとめるため、9月以降から本部総会の11月中旬までが評価期間になる。
深尾委員長
各委員に専門分野に関連する部分を分担して依頼することとなるかもしれない。
極地研究所の自己評価に関するもの、定常観測を行っている各省庁のプレゼンテーションを実施して頂きたい。
渡邉委員
極地研究所の評価については、それぞれの専門部会で評価している。極地研究所のの評価方法について適切であると認めるのならば、プレゼンテーションは不要なのではないか。
若土委員
極地研究所の自己評価書を読んだだけでは評価ができない。研究の内容については評価しないことになるのか。
渡邉委員
研究内容について評価するのではなく、学術水準を高めたか・国際貢献を通じて我が国の存在感を高めることができたかについてなどを見るのがこの委員会であると考える。
若土委員
前回の委員会ではそうした方法で評価を行ったのか。
渡邉委員
前回はまだやり方が定まっておらず、そうした方向で評価されたと考える。
若土委員
研究内容について理解していないと、評価を行うことができない。各委員の専門分野に近い部分を分担して、評価を行う必要がある。
深尾委員長
評価を行ううえで、学問の背景について理解していることが大事であり、直接担当の研究者の意見を聞くことは大切である。
渡邉委員
極地研究所の自己評価を含めた全体の評価を行うことで、評価を公的なものにしていくことになるのであろう。プレゼンテーションの実施についても、研究内容の理解のため、情報発信が充分かどうかを判断するうえで有用であろう。プレゼンテーションについてはいつ頃になりそうか。
小池企画官
9月以降となる見込みである。
門永委員
極地研究所で実施する評価については、既に外部委員が事後評価を実施したものである。それに対して再度、外部評価委員会で評価を実施することになるのか。
小池企画官
前回の評価がその形で実施されており、今回も同様な方法で提案させて頂いた。
富樫委員
何のための評価を行うのかきちんと考えないと、評価のための評価となってしまう。
外部委員も入れて評価されてきたものであるので、うまく活かす方法を考えて欲しい。
深尾委員長
可能な限り極地研究所の負担にならないよう、効率よく実施したい。
【7】議題6.総合科学技術会議の大規模研究開発評価について
事務局より、総合科学技術会議の大規模研究開発評価について説明があった。主な質問は下記のとおり。
深尾委員長
外部評価委員会の報告書がそのまま送付されるのか。それとも一部修正が加えられるのか。
小池企画官
報告書を踏まえて回答するが、先方からの指示により抜粋するようなことも考えられる。現在先方に確認中である。
今中委員
総合科学技術会議は、非常に重要な会議である。外部評価委員会で、慎重に評価を行い、南極観測事業の必要性がよりはっきりするようなものにする必要がある。
【8】議題7.その他
今中委員
南極観測事業だけではなく、大学でもそうであるが、現在の日本は評価をやり過ぎており、実施する方、される方と疲弊しているのが現状である。できる限り負担にならないよう、お互い配慮して評価を行いたい。
若土委員
昔の南極観測事業は、探検の要素が強く、観測を行うことで十分に評価された。50年の観測の継続により、観測可能なデータはだいぶ蓄積された。
これからの目標は、今まで得られたデータを元に科学として進化させていくこと。
そして、新たな研究の新天地を探す必要があると思う。
藤井所長
50年の観測事業の蓄積から、初めて言えることはたくさんある。大学共同利用機関法人として、南極観測事業がより開かれたものになるよう、可能な範囲で努力している。観測体制、航空機の活用など、南極観測事業の大きな枠組みについても、議論し、意見を頂くような機会が欲しい。
「しらせ」乗員枠の拡大を利用して、公開利用研究の枠を設けたり、中期計画の中で機動的に研究を行えるよう、公開利用研究という枠を設けたり、工夫している。
矢野委員
観測隊員の選考には、どういった制度があるのか。
白石副所長
研究者は自分の研究で申請を行う。設営隊員は依頼、公募で選考している。
渡邉委員
国家的な事業を進めて行く場合は、研究者の跡を継いでいく人が育たないといけない。「しらせ」を利用した方法だけでなく、航空機を活用した輸送、短期間だけ研究に従事できるような仕組みを作ること、それを後押しするのが外部評価委員会の役割であると思う。総合科学技術会議で強くアピールできるようなものになるよう、知恵を出していく必要性がある。
―― 了 ――
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-- 登録:平成25年01月 --