平成22年10月25(月曜日)10時~12時
文部科学省旧庁舎2階第1議室
北川 源四郎 | 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 統計数理研究所長 | |
小池 勲夫 | 国立大学法人 琉球大学 監事 | |
野本 敏治 | 財団法人 溶接接合工学振興会 理事長 | |
安岡 善文 | 独立行政法人 国立環境研究所 理事 | |
藤井 理行 | 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立極地研究所長 | |
白石 和行 | 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立極地研究所副所長(極域観測担当) | |
佐藤 夏雄 | 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立極地研究所副所長(研究教育担当) | |
山内 恭 | 南極地域観測隊第52次隊長 兼 夏隊長 兼 文部科学省科学官 | |
宮本 仁美 | 南極地域観測隊第52次隊副隊長兼越冬隊長 | |
堤 雅基 | 南極地域観測隊第52次隊副隊長兼越冬副隊長 | |
藤原 智 | 国土地理院 企画部 国際交流室長 | |
土井 元久 | 気象庁 観測部 計画課 南極観測事務室長 | |
成田 学 | 海上保安庁 海洋情報部 海洋調査課 主任海洋調査官 | |
長妻 努 | 情報通信研究機構 電磁波計測研究センター 宇宙環境計測グループ 主任研究員 | |
藤本 真美 | 外務省 国際協力局 地球環境課 外務事務官 | |
事務局 | 堀内 義規 | 文部科学省 研究開発局 海洋地球課長 |
石﨑 宏明 | 文部科学省 研究開発局 海洋地球課 極域科学企画官 |
白石極地研究所副所長より、第21回南極観測実施責任者評議会(COMNAP)について報告があった。
山内第52次南極地域観測隊長より、第31回南極研究科学委員会総会(SCAR)について報告があった。主な意見は以下のとおり。
氷床下の湖沼に関する掘削プロジェクトとは何か。
発端はロシアのボストーク基地の地下に大きな湖があったことである。まだ掘削は湖には到達していないが、それは汚染を防ぐため現在止められているためだが、様々な評価を行いほぼ認められ、ここ1、2年で掘削を再開することになると言われている。ボストーク基地の地下以外にも南極氷床下に多くそういうところがあることが最近判明しており、アメリカ・イギリスでも掘削するという動きがある。
白石極地研究所副所長より、第51次南極地域観測隊越冬隊の現況について報告があった。主な意見は以下のとおり。
骨折事故の話が出たが、シートベルトはしないのか。
雪上車では、いつどんな時に氷の割れ目に落ちるかもしれないので、逃げ出すために通常シートベルトはつけていない。シートベルトがあった方が良いという議論も事故の後出たが、今のところ着けるという結論には至っていない。
事故の際、他の同乗者は大丈夫だったのか。
骨折したのは助手席にいた隊員である。運転者と2名で乗っており、比較的平坦なところを走行していた。事故の際は、ホワイトアウト気味で氷の表面がよく分からない状況であった。
事故が起こると、治療が南極では完全には出来ない。
骨折事故が短期間で2回続くというのは非常にまれなケースであるが、大事故につながらないよう、現地では真剣に検討会を行っていると聞いている。
山内第52次南極観測隊長及び白石極地研究所副所長より、第52次南極地域観測隊-行動実施計画-について説明があった。主な意見は以下のとおり。
海鷹丸の乗船者の同行者として入れると同行者が30名くらいとなる。もともとの同行者の定義は、研究以外の目的で行く者を言っていたと思うが、それが段々研究者が同行者に占める割合が多くなってくるとおかしい気がする。本当の同行者もいると思うが、観測隊員ではない観測に従事する人たちには、別の新たな名前で定義しないと、違ったイメージを与えてしまうのではないか。
同行者という言葉は、比較的最近使われだした言葉であるが、もともとは南極観測事業、昭和基地を中心とした「しらせ」で行く隊、その隊員以外で行く人のことを呼んだ。昔はオブザーバーという言葉を使っていたが、その同行者が段々色々なタイプの人が行くようになり、平成18年に同行者の類型について本部で決定した。現在もそれが生きている。ただし、新「しらせ」以降の新しい観測船時代の南極観測事業のあり方を検討した時、同行者の類型の見直しについても話題となったが、しばらくは現行のまま運用することになっている。これだけ同行者のバリエーションが増え、人数も増えてきているので、見直すべきではないかと思う。
公募利用研究に関して、ポリニヤでの観測を行う人が入っているが、「しらせ」の帰路途上での観測となるのか。
はい。
帰路の観測であれば、例えば、「しらせ」の接岸時期が遅れたりして後半の活動が大幅に短縮された場合、せっかく乗ったのに何もできずに帰ってくることになる。南極という地理的な事情がある以上、仕方ないことであるが、他の観測に比べて非常に長期間拘束される。それでは困るという人が増えてくるのではないか。
何を優先するかは難しいところである。復路のケープダンレー沖観測のために乗船しているため、これがないと研究を実行せずに帰国せねばならない。他の観測もあるが、日程が絞られた場合でも3日間は何とか確保したいと考えている。それ以外のアムンゼン湾での地質等の調査については、昭和基地にいる間にある程度の観測が可能であるので、少し我慢していただき、係留系等の観測に時間を割くような調整を行っている。
情報・システム研究機構で、ザバティカル制度が作られ、南極観測事業も利用することができる。今回2名の夏隊員がザバティカル制度を利用して参加している。
ザバティカル制度は誰もが応募できるという制度ではないはずだが。
機構の所属者が利用するのではなく、外部の方を機構に迎え入れるものである。
今回は2人が応募されたが、枠は何人くらいあるのか。
3人である。
年間予算が機構全体で決まっているが、現時点では応募があれば比較的対応できるはずである。
初年度であり、前年度から公募が不可能であった。予算確定が昨年度末であり、初年度は周知が不十分であったと思われる。
来年度以降、ザバティカル制度は原則6ヶ月以上ではないといけないが、対応は大丈夫であるか。
少し足りないが、前後の期間に滞在し、研究に従事していただければ。
PANSYの建設と自然エネルギー棟の建設は、大きな事業である。その割に設営担当の人数がそれほど増えていない気がするが、問題ないか。
自然エネルギー棟の建設は、主に夏隊設営が担当し、PANSYは観測系で担当する。夏隊同行者として技術者と建設担当が各会社から来てもらうことを計画している。
石﨑極域科学企画官、松田南極観測支援班長及び白石極地研究所副所長より、第53次南極地域観測隊及び「しらせ」行動計画について説明があった。主な意見は以下のとおり。
航路を変更することとヘリコプターの運用の2つの課題が出たが、極地研究所からの説明では、航路変更に関する部分では東経110度線を優先し、110度から150度までは53次隊に限りやむを得ないとのことであった。これは53次隊に限る一時的な扱いとなるのか、それとも今後ある程度固定化されてしまう見込みなのか。
今回は53次に限った話として提案している。今後、予算の状況が不透明であるが、観測計画上必要ということであれば、シドニー経由に戻していきたいと考えている。
予算の都合上、やむを得ない処置であると思われる。単年度であれば接岸ができない可能性は少ないが、ヘリコプターを1機とすることは、現在の予算状況では2機体制に戻ることが難しいと思われる。長期にわたり1機体制が続くとなると、ある年には接岸できない事態も考えられる。そうした問題点についてどのように考えているのか。
厳しい予算状況が続くことが予想される。今後は基本的に南極観測事業については省内もマイナス2%で調整していける前提で考えている。その前提に立っても、調整が難しくなる時期が来ることも予想されるため、輸送問題調査会議、航空機分科会で検討していく必要があると考えている。
現状のままだと、28年度、29年度も航空機1機となる可能性がある。それ以前に、パイロットがいない状況になる。旧「しらせ」とS61ヘリコプター体制のときは、3機体制であったので、2機南極へ持って行くと、1機を日本で修理し、パイロットの養成・訓練を行っていた。旧「しらせ」25年間で1度だけ接岸できなかった時にも、2機あったため、物資輸送が可能となった。
今後、予算が削減されていくと、パイロット要員養成ができない。修理のため1機しか南極へ持っていくことが出来ない。2機あってもパイロットがいないという状況が続くこととなる。併せて22年度予算をベースにして削減されていくと、船の修理費にも影響が及ぶ。既に23年度の予算ではある程度、船の検査項目を削っているため、今後さらに削減されると、さらに削減項目が増え、万全の体制で船が動けるか危惧されることになる。
パイロットの養成に関して、自衛隊では南極で運用するヘリの同型機を何機持っているのか。パイロット養成を南極のチームの中で行う前提での説明であるが、自衛隊全体の中でパイロットの養成はできないのか。
現在は行っている。同型機である掃海ヘリが実戦配備前のため、掃海ヘリの訓練の一部を削って実施している。今後掃海ヘリが実戦配備されると、輸送ヘリに訓練を割ける時間がなくなる。
予算の状況によって、ヘリコプターの運用等に大きな制約が生ずる可能性があるが、国立極地研究所としては現時点でどのように考えているのか。
輸送問題調査会議で検討しているので、詳細はそちらに従う。ただ、50年間以上継続して南極観測を実施しているが、長らく船1隻、ヘリ2機で昭和基地を往復するというのが基本的パターンであった。公開利用研究や同行者、観測隊の多様化する調査、観測計画の要求により、今までの体制のままでは今後困難が生ずるであろうことはヘリの問題がでる以前から言われていた。
そのため、南極へのアクセスの多様化について、航空機も含めて検討していた。そうした全体像をもう一度構築する作業が不可避であると考えている。来年度、再来年度については予算の状況によって軽々しく言えないが、現実的な対応をしなければならないと思っている。
輸送問題調査会議でも議論したが、突然であったので、長期計画までは議論することができなかった。まず53次に限ってはやむを得ないという結論となり、将来の問題については再度輸送問題調査会議で全体的な議論を今後進めて行きたいということとなった。
53次隊については、この形で認めざるを得ないと思う。将来的にどうしていくかについては、国立極地研究所を中心に中長期的にきちんと考えていく必要がある。
仕方がないと思う。将来の予算が見えないため、長期計画を立てにくいという事実があるが、53次隊に限っていうと、観測計画を承認することはやむを得ない。
国立極地研究所に関する予算は増加しているようだが、この予算を配分することはできないのか。
国立極地研究所で要望している特別経費分の予算は、運営費交付金という全体の中で措置されるものである。南極観測事業費は各省庁からの要求内容を取りまとめ、移し替えるものであり、明確に費目が異なるものである。そのため、国立極地研究所の予算を防衛省に移し替えることはできない。
国立極地研究所では、見かけ上4億5千万円増の要求をしているが、第8期計画を年次的に進めるにあたり、ドームふじの建て替え、内陸部の輸送などを見越し、雪上車の開発を行いたいと思い、こうした計画を作成している。南極観測事業全体で50億円近い予算であるが、その約7割は輸送問題に係っているということになる。
現在の53次隊の観測計画案の状況について、委員の先生方にご理解をいただきたい。極地研究所の方で引き続き中長期的な検討をして、この委員会にフィードバックしていただきたい。
藤井極地研究所長より第53次南極観測隊長及び副隊長候補者について説明があり、了承された。
―― 了 ――
研究開発局海洋地球課
-- 登録:平成24年02月 --