南極地域観測第Ⅶ期計画 [5]

5.観測支援体制の充実
 南極という厳しい自然環境下において、南極地域観測が安全且つ計画的に行われ、所期の目的を達成するためには、綿密に検討された観測計画に加え、隊員の採用、訓練、必要となる物資の調達等国内での準備、輸送及び南極での設営等観測活動を支援する体制が効果的に機能する必要がある。ただし、今後とも国民の理解を得つつ観測事業を推進していくためには、効率化を始めとして、適宜支援体制を見直して行く必要がある。

5.1.観測隊の安全で効率的な運営
 南極地域観測事業は安全を最優先にして行われねばならない。
 平成16年度の国立極地研究所の法人化を契機に、国家公務員に加え多様な人材の参加が可能となったことに鑑み、隊員編成にあたって公募等に柔軟に取り組んで、優秀な隊員を適所に配置するとともに、効果的な訓練、安全教育等を実施する。また、隊員と同行者等の位置づけ(同行者の費用負担を含む)を整理する必要がある。
 一方、国内での準備作業、現地への輸送、基地設備の保守、内陸トラバース旅行の形態等についても安全で効率的な運用に努める。
 さらに、南極観測基地においては、効率的な隊の活動のため、隊員の安全確保上も重要な通信機材、設備について技術の進歩に応じた整備を行う。

5.2.「しらせ」後継船による運航体制の確立
 南極地域観測事業を円滑に遂行するために最も重要なことの一つは、現地と日本との間の輸送体制である。第7期は現有の「しらせ」とその後継船就航までの過渡的な時期であり、後継船による新たな輸送体制を確立することが求められる。従来の画一的な運用、行動形態にとらわれず、いかに弾力的な運航を可能にするかが課題である。年次毎の観測船の運航計画の策定には少なくとも2年以上前からの周到な準備が必要であるが、関係省庁の協力のもとに観測事業計画に即した合理的な航海日程を組むような体制とする。また、通常の観測船ではなしえない海氷域での観測活動において後継船が能力を発揮できるように、観測機器の充実を図って行く。

5.3.航空機の利用
 日本の南極地域観測事業において、航空機観測と人員物資の迅速な輸送の両面にわたって、航空機の利用に対する期待は大きい。また、過去10年間のうちに、各国の南極における航空機利用に大きな進歩が見られた。わが国では、第6期の間に、長年にわたって観測や小規模輸送に利用してきた小型単発固定翼機が使命を終えるとともにドイツとの国際共同観測や東南極で活動している11カ国の国際共同事業「ドロンニングモードランド航空網計画(DROMLAN)」として、双発中型固定翼機による観測と人員輸送が実現した。特に第6期に始められた第2期ドームふじ深層掘削は航空機を最大限に利用した計画であり、わが国の南極観測における航空機利用の大きな転機となった。また、昭和基地以外の地域での行動にも航空機を利用することが可能になった。
 第7期では、航空機観測や小規模輸送に航空機を利用するために、DROMLAN等の国際運航組織や観測船との連携による合理的で安全に十分配慮した航空機の利用を図ってゆく。特に、DROMLAN開始後、5年を経る2007年には、国際評価を実施する予定になっているため、その結果を今後の航空機運用の検討に反映させる。

5.4.海洋観測専用船の利用
 第6期計画において、我が国の南極地域観測事業史上初めて海洋観測専用船を傭船した観測を実施した。こうした外国船の傭船による観測航海や、第46次観測及び第47次観測で実施した東京海洋大学「海鷹丸」の共同観測航海は、「しらせ」では果たせなかった機動的な海洋観測を可能にし、地球環境問題や国際共同観測への対応に大きな成果をあげた。「しらせ」を引き継ぐ後継船による海洋観測では、砕氷能力を生かして、海氷で覆われた海域の観測に重点を置く計画であり、海氷で覆われていない海域から海氷縁までの海域における観測には、観測専用船の必要性は更に増しており、今後とも海洋観測専用船の利用拡大を図っていく必要がある。

5.5.新しい観測拠点の展開
 IPY2007-2008の一環として、ベルギーが国際観測拠点(夏基地)をセールロンダーネ山地に設置することを計画している。観測基地の国際共同管理は、国際共同観測の発展や南極観測への新たな参入国との協調のために、世界の南極観測国が今後、真剣にとりくむべき課題である。
 さらに、広大な南極地域で観測調査するためには、無人観測点の充実が求められる。電力の保持や観測機の保守等解決すべき課題は多いが、年々、目覚しい勢いで改良が進んでいる。近年の科学技術の成果を取り入れた最新の観測機器を備えた無人観測点を展開し、広域的な観測を行う。このことにより、最小限の人的資源の投入で効率的な観測が可能になる。


4.設営計画の概要へ 6.国際的な共同観測の推進へ

-- 登録:平成21年以前 --