学校法人会計問答集(Q&A)第17号
平成17年6月13日
日本公認会計士協会
これまで、学校法人会計基準(以下「基準」という。)における注記事項は、1減価償却額の累計額の合計額、2徴収不能引当金の合計額、3担保に供されている資産の種類及び額、4退職給与引当金の額の算定方法、5翌会計年度以後の会計年度において基本金への組入れを行うこととなる金額の5項目とされてきた。これらは学校法人の財政及び経営の状況を判断するに当たり重要な情報であるため注記事項とされてきたものであり、広く実務に定着してきた。
しかしながら、少子化の進展など昨今の学校法人を取り巻く社会経済情勢の変化に伴い、学校法人の諸活動も多様化が進み、学校法人にも財務状況の透明性の確保や説明責任の明確化が求められてきた。このような社会の要請を受け、今般、学校法人会計基準の一部が改正され、注記事項の充実が図られたものである。
そこで本問答集は、基準により明記された注記事項及びこのほか考えられる注記事項をできるだけ網羅的に取り上げることにより、実務の参考となるよう具体的な記載例を取りまとめたものである。
「学校法人会計基準の一部を改正する省令」(平成17年3月31日 文部科学省令第17号)により、注記すべき重要な会計方針及びその変更並びにその他財政及び経営の状況を正確に判断するために必要な事項は、具体的にはどのような内容でしょうか。
計算書類には、基準第34条の規定に従い、次の事項を脚注として記載する。
上記の重要な会計方針及びその他財政及び経営の状況を正確に判断するために必要な事項には、「学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成について(通知)」(平成17年5月13日17高私参第1号以下「第1号通知」という。)に基づき、以下の項目を記載する。なお、具体的に掲げた項目以外にも、重要な会計方針及びその変更並びにその他財政及び経営の状況を判断するために必要な事項については、学校法人の規模等によって一概に金額基準を示すことはできないが、学校法人の資産総額若しくは帰属収入や消費支出又は消費収支差額などに照らして重要な影響を与える場合やその事項に重要性がある場合には、財政及び経営の状況を正確に判断するために記載することとなる。
その他財政及び経営の状況を正確に判断するために必要な事項
Q1に掲げた注記事項は、必ず記載しなければならないのでしょうか。
基準第34条に規定されている注記事項は、基準第35条に示す第6号様式に事項が定められており、該当がない場合であってもその事項と該当がない旨の記載をしなければならない。
重要な会計方針のうち、引当金の計上基準には、徴収不能引当金及び退職給与引当金に係る計上基準を必ず記載し、これら以外の引当金を設定している場合には併せて必ず記載する。また、その他財政及び経営の状況を正確に判断するために必要な事項のうち、学校法人の出資会社に係る事項は、「学校法人の出資による会社の設立等について(通知)」(平成13年6月8日13高私行第5号)により、該当がある場合に必ず記載しなければならない。
なお、引当金の計上基準以外の重要な会計方針及び学校法人の出資による会社に係る事項以外のその他財政及び経営の状況を正確に判断するために必要な事項については、重要性がある場合に記載するが、この場合の「重要性」は、注記項目が計算書類に与える影響額又は学校法人の財政及び経営の状況に及ぼす影響により判断する。また、これらは、該当がない場合あるいは重要性がない場合については、項目自体の記載を要しない。
注記事項は必ず貸借対照表の末尾に記載しなければならないのですか。例えば、収支に関わる注記事項について、資金収支計算書又は消費収支計算書の末尾に記載してもよいですか。
注記事項の記載箇所は、基準第34条に規定する事項については、貸借対照表の末尾に一括して記載する。
その他の事項については、関係する計算書類の末尾に記載することが適当であろう。しかし、注記の項目によっては、複数の計算書類に関係するものもあり、これらを一覧できるよう一括して記載する方法が便利な場合もある。どちらに記載するかは、注記事項の種類、数、関係する計算書類などによって判断し、より分かりやすい方法によるべきであろう。
したがって、収支に係る注記項目で、基準34条に規定する事項については、貸借対照表の末尾に一括して記載し、その他の事項については、個別に判断することとなる。
重要な会計方針の注記はなぜ必要なのですか。
会計方針とは、計算書類の作成に当たって、その財政及び経営の状況を正確に判断するために採用した会計処理の原則及び手続並びに表示の方法をいう。計算書類の作成に当たって採用する会計方針は、それぞれの学校法人について必ずしも同一ではなく、一つの会計事象や取引について複数の会計処理が認められており、その中から一つの会計処理を選択適用している。したがって、重要な会計方針としてどのような手続等を採用しているかを計算書類に注記することによって、計算書類の信頼性を高め、計算書類の前年度との比較を可能とするものである。
なお、いったん採用した会計方針は毎年度継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。
引当金の計上基準は、具体的にどのようなものですか。
引当金とは、将来の特定の消費支出であって、当年度の負担に属する額を当年度の消費支出として計上したときの貸方項目であり、その発生が当年度以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積もることができる場合に計上される。引当金の計上基準については、金額的重要性のみならず、科目の重要性があるため、計上の理由、計算の基礎その他の設定の根拠を記載することとなる。基準に示されている引当金は、徴収不能引当金及び退職給与引当金であり、具体的記載例は以下のとおりである。なお、会計年度末に引当金残高がない場合においても会計方針として引当金の計上基準を注記することとなる。
その他、学校法人が計上している引当金がある場合には、これらに準じて取り扱うものとする。
徴収不能引当金
退職給与引当金
有価証券の評価基準及び評価方法の注記は、どのように記載するのですか。
基準第25条において、「資産の評価は、取得価額をもってするものとする。」と規定されており、有価証券の評価基準は原価法である。また、評価方法については定めていないが、先入先出法、総平均法、移動平均法等がある。
このように、評価基準には選択の余地がないが評価方法には選択の余地があるので、有価証券の評価に関する会計方針として、評価基準と評価方法を一体として注記し、その内容を明らかにするものである。なお、学校法人の処理する勘定科目のいかんを問わず、保有するすべての有価証券の帳簿価額を合計した金額に重要性がある場合には、当該事項を注記する。
高等教育局私学部参事官付
-- 登録:平成21年以前 --