2.基本金の組入れ

2.基本金の組入れ

2‐1 学生寮は基本金対象資産となるか

Q

  当学校法人は、学生寮を建設し、寮の運営管理はすべて学生の自主に委ねていますが、この施設は、第1号基本金組入対象資産として、組入れの対象になるのでしょうか。

A

  学校法人が、当該資産について、その諸活動の計画に基づいて、永続的に、必要な資産と判断したときは、第1号基本金組入対象資産となる。詳細については、1‐1を参照のこと。
  なお、第1号基本金組入対象資産の範囲については、「昭和49年2月14日文部省通知、文管振第62号「基本金設定の対象となる資産及び基本金の組入れについて(報告)」(以下「昭和49年2月文部省通知」という。)」を参照。

2‐2 机、椅子等の補充は、基本金組入れとなるか

Q

  教室の机、椅子等の補充の場合でも基本金対象資産として組み入れなければならないでしょうか。

A

  教室の机、椅子等は少額重要資産といわれ(「昭和49年2月文部省通知」を参照)、教育研究用機器備品とし、基本金組入れの対象としなければならない。
  なお、機器備品の取替え、補充などの場合の基本金にかかる処理については上記文部省通知及び3‐4を参照のこと。

2‐3 その他の固定資産は基本金組入対象資産となるか

Q

  貸借対照表の「その他の固定資産」に計上されている資産は、基本金組入対象資産となるでしょうか。

A

(1)借地権、電話加入権、温泉権

  基準第29条、第30条によれば、学校法人の諸活動の計画に基づき必要な資産で、その資産を継続的に保持する計画のあるものは、基本金組入対象資産とされているので、借地権、電話加入権、温泉権、水利権等のその他の固定資産であっても、上記の条件に該当するものは、第1号基本金組入対象資産として把握すべきである。

(2)減価償却引当特定預金(資産)

  減価償却引当特定預金(資産)は、一般に保有する減価償却資産の取替えのための取替資金としての積立てと考えられるので、基本金組入対象資産とはなり得ない。

(3)退職給与引当特定預金(資産)、収益事業元入金

  退職給与引当特定預金(資産)は、その支払いに充てるために積み立てられたものであり、また、収益事業元入金は、投資を目的とする資産(「昭和49年2月文部省通知」1‐(1)参照)と同一に考えられるので、基本金組入対象資産とすべきでない。

2‐4 特別寄付金の基本金組入れ

Q

  固定資産取得のための使途指定のもとに受け入れた特別寄付金について、特別寄付金の受入年度と実際に固定資産を取得した年度が異なる場合基本金組入れの取扱いはどのようにすればよいでしょうか。

A

  第2号基本金は、理事会等の決議に基づく組入計画によって組み入れるのであるから、固定資産取得のための使途指定がされた寄付金を受け入れても、直ちに、第2号基本金の組入れをすることはない。ただし、取得するものとして指定された固定資産が第1号基本金の組入対象資産であり、かつ、金額が重要である場合には、理事会などの決議を経て、組入計画を作成し、第2号基本金として組み入れることが適当である。(学校法人委員会報告第32号参照)

2‐5 取得資産の代価が未払いのときの組入れ

Q

  校舎の改築(契約額2,800)と機器備品(価額80)の購入をし、現在使用中ですが、資金繰りの都合で支払いが次年度以降になります。当年度の基本金としてよいでしょうか。

A

  基準の第30条第3項に、「固定資産を借入金(学校債を含む。以下この項において同じ。)又は未払金(支払手形を含む。以下この項において同じ。)により取得した場合において、当該借入金又は未払金に相当する金額については、当該借入金又は未払金の返済又は支払(新たな借入金又は未払金によるものを除く。)を行った会計年度において、返済又は支払を行った金額に相当する金額を基本金へ組み入れるものとする。」という規定が設けられた。(昭和62年基準改正)
  したがって、当該未払金相当額を当年度の第1号基本金として組み入れることはできず、未組入高となる。次年度以降の支払った年度で、当該未払金の支払額相当額を基本金に組み入れる。

2‐6 未組入高の決定

Q

  基本金組入れは、その基本金組入対象資産の取得源泉が借入れによってまかなわれた場合又はその代金が未払いの場合には、当該借入金又は未払金の返済又は支払いを行った会計年度において、返済又は支払いを行った金額相当額を基本金へ組み入れることと規定されておりますが、この規定により未組入れとする場合には、当該借入金又は未払金がある場合には、その額を必ず未組入額として繰り延べなければならないでしょうか。

A

  「帰属収入のうちから組み入れた金額を基本金とする」(基準第29条)ということは、学校法人の自己資金で取得した固定資産の額を基本金とするということである。したがって、固定資産の取得資金が、借入金又は未払金などの他人資金によっている場合には自己資金による取得とはいえないので、借入金又は未払金などの相当額を未組入額として繰り延べることになる。次年度以降において当該借入金などの返済又は支払額相当額は、自己資金により取得したことになるので組入れすることとなる。ただし、2‐7のような例もあるので注意されたい。

2‐7 未組入高の計算(その1)

Q

  校舎の改築をしましたが、下記の場合には未組入高はいくらになるでしょうか。

新築校舎代 1,000
内訳  
第2号基本金に係る自己資金 200
上記以外の自己資金 500
借入金 300
除却した旧校舎に係る基本金 600

(未組入高はないものとする。)

A

  未組入高を算定するには基本金と資金との対応関係を次にように考える必要がある。新校舎に係る基本金要組入額1,000‐除去した旧校舎に係る基本金600‐第2号基本金からの振替額200=要組入高200
  新築校舎の基本金で既に組み入れられているのは、除却した旧校舎に係る基本金額600と第2号基本金として組み入れられている200(第1号基本金に振り替えられる。)であり、差し引きした200が組み入れられていないこととなる。
  一方、資金は、第2号基本金に係る自己資金200が積み立てられてあり、残りの800の資金が自己資金と借入金によりまかなわれている。
  図で示すと次のようになる。

既に基本金に組み入れられている

  上記のうち、基本金と資金とは(b)の対応関係が明確になっていないが、未組入高の算定の際には既に基本金に組み入れられている分について取崩しをしないものとし、組み入れられていない200についてはその金額の範囲内で基準第30条第3項により借入金による未組入高として翌年度以降に繰り延べる額を算定する。
  したがって、借入金は300あるが組み入れられていないのは200であるので、200が借入金による未組入高となる。(注)
  (注)末尾「参考資料」参照

2‐8 未組入高の計算(その2)

Q

  前問の場合、借入金の残高は300であり、200が借入金による未組入高となっています。当該借入金の返済を毎年30ずつ行い、10年で完済する予定ですが、次年度以降は基本金にいくら組み入れたらよいでしょうか。

A

  当該校舎に係る基本金未組入額がある場合には、次年度以降、借入金返済額に相当する金額を未組入額を限度として基本金に組み入れることになる。
  未組入高の組入れに当たっては、当年度の借入金の返済から優先して行うことを原則とし、したがって、組入れは毎年30ずつ行い7年目の30のうち20の返済で未組入高の組入れが終了することとなる。

2‐9 前年度からの未組入額

Q

  基準の改正省令施行の際、改正前の第30条第2項の規定により、基本金への組入れが昭和63年度以後の会計年度に繰り延べられている金額の取扱いについてはどうなるのでしょうか。
  また、省令施行前に、借入金相当額について既に基本金へ組み入れていた場合はどうなるのでしょうか。

A

  昭和63年度に繰り延べられた未組入額の取扱いについては、改正後の基準第30条第3項の規定により、当該借入金(学校債を含む。)又は未払金(支払手形を含む。)の返済又は支払(新たな借入金又は未払金によるものを除く。)を行った会計年度において、返済又は支払を行った金額に相当する金額を基本金へ組み入れることとなる。
  また、既に基本金へ組み入れた分については従前のとおりであり、修正の必要はない。「昭和62年8月31日文高法第232号「学校法人会計基準の一部改正について(通知)」」(以下「昭和62年8月文部省通知」という。)3施行に当たり留意すべき事項3‐(2)を参照。

2‐10 未組入れと借入金(未払金)

Q

  基準第30条第3項によれば「借入金又は未払金の返済又は支払(新たな借入金又は未払金によるものを除く。)を行った会計年度において、返済又は支払を行った金額に相当する金額を基本金へ組み入れる」とありますが、下記の場合はこれに該当するでしょうか。

  • (1)借入契約を更新したとき。
  • (2)A銀行から借り入れ、B銀行に支払ったとき。
  • (3)未払金を銀行借入れで支払ったとき。

A

  「新たな借入金又は未払金によるものを除く。」とは、新たな借入金又は未払金を資金とする既存の借入金又は未払金の返済又は支払いを除外する趣旨である。
  したがって、上記のように実質的な返済又は支払いでないものは基本金に組み入れる場合に該当しない。

2‐11 消費収支差額と未組入れ

Q

  基本金対象資産を取得したが、全額組み入れると大幅な消費支出超過となり、対外的信用にも影響を及ぼすので、当年度消費収支差額が零となる計算で組入れを行い、残額は未組入れとして処理したいのですが、これでよいでしょうか。

A

  根本的には、基本金対象資産を取得する際の、財政措置そのものが「対外信用に影響を及ぼす」ような方法で行われたところに問題がある。[質問]の「処理」は、この財政措置の欠陥を計算書類の上で糊塗しようとするもので認容できない。必要なことは、財政措置を改善することが先決であり、事前に第2号基本金への組入れを計画的に実施していくことが期待されている。
  [質問]の処理は、消費収支の調整に必要な消費収入額をまず決定し、その残余の帰属収入をもって、基本金組入額を決定しようとする方法であって、これは、消費収支計算の方法(基準第16条)に反するものである。

2‐12 建設仮勘定と基本金組入れ

Q

  現在校舎を建設中で、この工事関係の支払額は建設仮勘定で処理されています。
  工事完成は次年度の予定ですが、基本金組入れの時期は、工事引渡しを受け精算振替の時でよいでしょうか。

A

  建設仮勘定は、固定資産であるという認識を前提とすれば、自ずから理解されよう。
  基準第30条第1項第1号に該当する限り、建設仮勘定への支出年度にその支出額を組み入れることになる。
  次年度以降の工事完成年度には、建物等の建設総額から、前年度までに組入れ済みの建設仮勘定相当額を控除した額が基本金要組入額となる。なお、基本金明細表の記載方法は5‐3を参照のこと。

2‐13 特定預金(資産)の積立てと第2号基本金の組入れ

Q

  数年先に高額な固定資産を自己資金により取得することを計画し、基本金組入計画に従い基本金組入れを行う場合、固定資産取得のための特定預金(資産)を計画額と同額だけ積み立てることが必要でしょうか。

A

  第2号基本金組入れは、高額な固定資産の取得に係る基本金の組入れが取得年度に集中してその年度の消費収支計算を乱すことのないよう、取得に先行して、基本金組入計画に従って年次的・段階的に行うものである。
  第2号基本金の組入れの目的は、将来の高額な固定資産の取得に備えてその取得資金を用意することにあることに照らし、相当する資産を保有しておくこととなる。
  したがって、基本金組入相当額を、その組入計画に即した具体的名称を付した「○○引当特定預金(資産)」として保有することが必要である。

2‐14 第4号基本金の部門別組入れについて

Q

  第4号基本金の組入れに関して、法人全体で組入額を計算するのかあるいは部門別に組入額を計算すべきであると考えるのかどちらでしょうか。

A

  第4号基本金の恒常的資金の組入れは法人全体で計算するのが原則であり、その結果、部門別に120/100を超過したり又は不足することは止むを得ない。ただし、会計単位及び資金が部門別に独立している場合は第4号基本金の計算を部門別に行うこともできよう。

2‐15 担保差し入れ資産と組入れ

Q

  甲法人は、借入金の担保に差し入れた固定資産について、「当該資産は、半ば債権者の所有である」との見解で、いまだに基本金の組入れを行っていません。担保の有無にかかわらず、組入れを行うべきものと考えますがどうでしょうか。

A

  基本金の組入れは、対象資産を取得したとき又は対象資産の取得に充てる金銭等について行われる。担保の有無が基本金組入れに影響を及ぼすものではない。なお、担保に供されている資産については、貸借対照表(注記事項)及び借入金明細表(摘要欄記載事項)の記載要件となっていることに留意されたい。

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