専門職大学院

参考資料2 「大学院における高度専門職業人養成について」(平成14年8月5日 中央教育審議会)(答申)-概要-

はじめに

(1) 科学技術の高度化、社会・経済・文化のグローバル化などにより、社会が多様に発展し、国際的競争も激しくなる中で、これまでの知識・技術や発想、思考の枠組みだけでは認識できない問題や解決不可能な問題が多く生じてきている。
 21世紀は「知」の時代とも言われるが、複雑化・高度化したこれらの問題の解決のためには、今まで以上に多様な経験や国際的視野を持ち、高度で専門的な職業能力を有する人材が多く必要とされるようになってきている。それらの人材は、社会経済の各分野において指導的役割を果たすとともに、国際的にも活躍できるような高度な専門能力を有することが期待され、そのような高度専門職業人の養成が、今強く求められるようになっている。

(2) このような高度専門職業人養成については、平成10年に大学審議会が「21世紀の大学像と今後の改革方針について」の答申の中で「特定の職業等に従事するのに必要な高度の専門的知識・能力の育成に特化した実践的な教育を行う大学院修士課程の設置を促進する」ことを提言し、同答申を受けて、平成11年に高度専門職業人の養成に特化した大学院の修士課程(専門大学院)が制度化された。
 この専門大学院としては、平成14年度現在で経営管理や公衆衛生などの分野で6研究科・専攻が設置され、それぞれの分野で高い評価を受けつつある。

(3) しかし、高度専門職業人養成を質量共に充実させることに対する社会的要請が様々な分野において急速に高まっており、各分野の特性に応じた柔軟で実践的な教育をより一層充実させる観点から、現在の専門大学院制度を、その位置付けの明確化を含め、更に改善、発展させることが求められるところとなっている。

(4) また、平成16年度からの開設が予定されている法科大学院の構想の検討においても、修了要件や教員組織などの点で、現行の大学院制度とは異なる新しい大学院として議論が進められており、これらの議論を踏まえた新たな大学院の枠組み作りが求められている。

(5) このような状況を踏まえ、平成13年4月の文部科学大臣からの「今後の高等教育改革の推進方策について」の諮問においても、職業資格との関連も視野に入れた新しい形態の大学院の整備の在り方についても検討することが求められている。

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第1章 基本的な考え方

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2 高度専門職業人養成への期待

(1) しかしながら、近年の科学技術の進展や急速な技術革新、社会経済の急激な変化と多様化、複雑化、高度化、グローバル化等を受け、大学院における社会的・国際的に通用する高度専門職業人養成に対する期待が急速に高まってきている。このような社会的要請は、特定の職業の実務に就いたり、職業資格を取得する者の養成についてのみならず、既に職業に就いている者や資格を取得している者が、更に高度の専門的知識や実務能力を修得できる継続教育、再教育の機会の提供に対するものも含め、様々な分野で高まってきている。

(2) 我が国におけるこうした高度専門職業人養成に対する課題と期待に適切にこたえていくためには、特定の職業等に従事する上で必要となる高度の専門的知識の習得や能力の育成等の実践的な教育を充実させることが極めて重要である。

3 専門大学院の制度と課題

(1) こうした大学院における高度専門職業人養成の推進の一方策として、平成11年に、高度専門職業人養成に特化した実践的な教育を行う大学院修士課程として専門大学院制度が創設された。平成14年度現在、経営管理、会計、ファイナンス、公衆衛生、医療経営の分野において、6大学に6研究科・専攻が設置されている。これらの専門大学院においては、国際的に活躍できる高度専門職業人養成のための積極的な教育が展開されており、その取組は社会的に高く評価されている。

(2) しかし、今後、社会的なニーズの更なる高まりが予想される高度専門職業人養成を様々な分野において一層促進し、各職業分野の特性に応じた柔軟で実践的な教育を展開していくためには、制度面での位置付けの明確化も含め、現行の専門大学院制度を更に改善し、発展させていく必要があるとの要請が高まっている。

(3) すなわち、専門大学院制度は、現行の修士課程の中の一類型として位置付けられているため、その大学院で修得させる職業能力のいかんにかかわらず、標準修業年限は2年とされている。また、従来の大学院修士課程における研究指導、修士論文との関係から、修了要件として特定の課題についての研究の成果の審査に合格することを制度上課し、これについて個別の課題についての研究の実施に対する指導を行うこととしていること、この指導のために相当数の研究指導担当教員の配置を求めていること等、従来の大学院の枠内で制度設計がなされている。このような制度の枠組みが、さらに、様々な分野でその求められる能力に適した高度な専門職業人を養成するための実践的な教育を展開していく上で制約となることも指摘されている。

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5 高度専門職業人養成に特化した新たな大学院制度の創設の必要性

(1) 以上のことから、今後、国際的、社会的にも活躍する高度専門職業人の養成を質量共に飛躍的に充実させ、大学が社会の期待に応じる人材育成機能を果たしていくため、現行の専門大学院制度を更に発展させ、様々な職業分野の特性に応じた柔軟で実践的な教育を可能にする新たな大学院制度を創設する必要がある。
 このような大学院においては、実務者の教員の参画等による実務界との連携・交流により実践的な教育の実現を図るとともに、第三者による評価の導入により変化に応じた柔軟で質の高い教育を保証していくことが求められる。

(2) また、この新たな大学院の修了者に対して授与する学位についても、修得した能力を適切に表すため新たな学位を創設することが適切である。

第2章 専門職大学院制度の創設

1 目的・役割

(1) 現行の学校教育法においては、大学院の設置目的は、「学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥をきわめて、文化の進展に寄与すること」(学校教育法第65条)とされており、高度専門職業人養成という目的・役割が必ずしも明確に位置付けられていない。

(2) このため、大学院の目的・役割の一つとして、「高度で専門的な職業能力を有する人材の養成」を法令上明確に位置付けるとともに、当該目的に特化した大学院の課程として専門職学位課程を創設する。

(3) 専門職学位課程を置く大学院は、当該課程に関し、専門職大学院と称することができる。

(4) 専門職大学院は、現在の専門大学院の役割を発展させ、修業年限や教育方法、修了要件等の制度を「高度専門職業人養成」という目的に一層適した柔軟で弾力的な仕組みとするものであり、現行の専門大学院を包摂するとともに、その枠組みを更に広げた新しい形態の大学院として創設する。
 なお、既に設置されている専門大学院を専門職大学院として位置付ける際、設置認可手続を要せず移行できるような措置を講じるなど、専門職大学院制度の導入に当たり、既存の専門大学院に対する十分な配慮が必要である。

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4 専攻分野

(1) 専門職大学院は、社会の各分野において国際的に通用する高度で専門的な職業能力を有する人材の養成が求められる各般の専攻分野で設置が期待される。国家資格等の職業資格と関連した専攻分野だけでなく、社会的に特定の高度な職業能力を有する人材の養成が必要とされている専攻分野、国際的に共通の水準の人材養成が必要とされるような分野等における設置が考えられる。現時点で、既に専門大学院として設置されている経営管理、公衆衛生・医療経営などのほか、法務、知的財産、公共政策(行政)、技術経営などの分野で高度専門職業人養成に特化した大学院が構想されている。更に、将来的にはより広い分野で多様なニーズが増大していくことも想定されることから、専門職大学院の設置の対象は特定の専攻分野のみに限定しないこととする。

(2) また、特定の専攻分野に従事する高度専門職業人を養成するだけでなく、実際に社会で活躍する職業人に更に高度な専門性、最新の知識・技術を身に付けさせるための継続的な学習の機会を提供することも、専門職大学院の重要な役割である。

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8 第三者評価制度

(1) 本審議会は、別途、大学の質の保証に係るシステム全体の在り方について検討し、国による事前規制を最小限のものとし、事後チェック体制を整備するとの観点から、大学の教育研究活動等の状況について、国の認証を受けた第三者評価機関(認証評価機関)が自ら定める評価の基準に基づき、大学を定期的に評価し、その基準を満たすものかどうかについて明らかにし、評価結果を踏まえて大学が自らの改善を図ることを促す制度の導入が必要であるとの結論に達した(中央教育審議会答申「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について」参照)。

(2) 専門大学院には高度専門職業人養成という目的に応じた教育水準の維持向上を積極的に図るため学外者による評価が義務付けられている。専門職大学院についてもその目的にかんがみ、外部の客観性のある評価を受け、その質の維持向上を図っていくことが重要であり、専門大学院における外部評価制度を更に一歩進め、各専攻分野ごとに大学関係者やその職業分野に従事する者などが関係する認証評価機関による継続的な第三者評価を受けるものとする。

(3) 専門職大学院を評価する第三者評価機関については、今後、多様な分野で整備され、国際的通用性のある評価がなされていくことが必要である。しかしながら、現時点ではそのような第三者評価機関は我が国に育っておらず、また、分野によっては海外の国際的な評価機関を活用することが有益な場合もある。したがって、第三者評価制度の導入に当たっては、このような第三者評価機関の整備充実の状況等を踏まえ、特定の分野においては海外の評価機関等の評価を認めるなど、適切な配慮方策が必要である。

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高等教育局専門教育課

-- 登録:平成22年11月 --