第2章 公営企業型地方独立行政法人に適用される会計基準及び注解 第12節


前ページへ 次ページへ

12節 区分経理の会計処理

90 区分経理に係る会計処理の原則
1  法第21条第3号イからリまでに掲げる事業のうち、二以上の事業を行う公営企業型地方独立行政法人にあっては、それぞれの事業ごとの財務諸表(以下「事業別財務諸表」という。)と、公営企業型地方独立行政法人全体の財務諸表(以下「法人単位財務諸表」という。)を作成しなければならない。この場合、公営企業型地方独立行政法人の業績評価に当たっては、法人単位財務諸表を基本とする。
2  同一環境下で行なわれた同一の性質の取引等に係る会計処理の原則及び手続きは、原則として公営企業型地方独立行政法人単位で統一するものとし、合理的な理由がない限り事業ごとに異なる会計処理の原則及び手続きを適用することは認められない。

91 法人単位財務諸表の体系及び様式
1  法人単位財務諸表の体系は、次のとおりである。(注61)
(1) 法人単位貸借対照表
(2) 法人単位損益計算書
(3) 法人単位キャッシュ・フロー計算書
(4) 法人単位行政サービス実施コスト計算書
(5) 法人単位附属明細書
2  法人単位財務諸表の様式については、原則として「第4節財務諸表の体系」から「第10節附属明細書及び注記」に定めるところによる。ただし、法人単位貸借対照表の資本の部の利益剰余金については、内訳科目を設けず合計額のみを表示することとする。

注61>法人単位財務諸表の体系について
 事業ごとに、区分して経理することが要請されている公営企業型地方独立行政法人においては、事業ごとに利益の処分又は損失の処理を行う必要があり、法人単位損益計算書に表示される当期総利益をもとにした利益の処分又は損失の処理は予定されていない。このため、法人単位財務諸表には、利益の処分又は損失の処理に関する書類は含めないものとする。

92 法人単位財務諸表作成の基準
 法人単位財務諸表は、全ての事業別財務諸表を合算するほか、次により作成しなければならない。
(1) 法人単位貸借対照表及び法人単位損益計算書においては、事業相互間の債権と債務及び事業相互間の損益取引に係る費用と収益とを相殺消去し、公営企業型地方独立行政法人としての資産、負債及び資本の額並びに費用、収益及び損益の額を示さなければならない。
(2) 事業相互間の取引によって取得したたな卸資産、固定資産その他の資産に含まれる未実現損益は、その全額を消去しなければならない。ただし、譲渡した事業の帳簿価額のうち回収不能と認められる部分は消去しないものとする。
(3) 法人単位キャッシュ・フロー計算書においては、事業相互間のキャッシュ・フローは相殺消去し、公営企業型地方独立行政法人としてのキャッシュ・フローの額を示さなければならない。
(4) 法人単位行政サービス実施コスト計算書については、事業相互間の取引に係る費用と収益とを相殺消去し、公営企業型地方独立行政法人としての行政サービス実施コストを表示しなければならない。(注62)

注62>法人単位行政サービス実施コスト計算書における事業相互間の取引の相殺消去について
1  事業相互間の取引が例えば、物品の売買、有償での役務の提供等対価性のある取引である場合は、費用と収益とを相殺消去する。
2  事業相互間の取引が、贈与と認められる取引である場合、当該贈与に係る費用又は収益は、そもそも事業別行政サービス実施コスト計算書において、損益計算書の費用又は控除すべき収益には含まれないことに留意する。

93 共通経費等配賦の原則
1  各事業の費用及び収益は、各事業が経理すべき業務に基づき合理的に帰属させ、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。
2  各事業に直接賦課することが困難な共通経費については、合理的な配賦基準に従って配賦しなければならない。また、配賦基準は、毎期継続して適用する必要があり、みだりに変更してはならない。なお、配賦基準を変更した場合は、その内容、変更の理由及び当該変更が財務諸表に与えている影響の内容を注記しなければならない。(注63)

注63>共通経費の配賦基準について
1  共通経費の配賦基準は、設立団体の規則で定められる必要がある。
2  各事業に直接賦課することが困難な共通経費には、総務部門、経理部門等公営企業型地方独立行政法人全体の業務を所掌している部門の経費のほか、これらの部門に関連して生じた雑益、法人全体として課税される消費税等が含まれる。
3  共通経費の具体的な配賦基準としては、例えば、次のような基準が考えられる。
(1) 共通部門の給与費について、各事業に属する職員に支給する給与総額の割合により配賦する方法
(2) 事務所借料について、各事業に属する部門の占有面積の割合により配賦する方法
(3) 納付消費税について、事業別に算定した納付消費税額の割合により配賦する方法

94 財務諸表の開示方法等
1  事業ごとに区分して経理することが要請される公営企業型地方独立行政法人においては、法人単位財務諸表の後に事業別財務諸表を作成し、これらを一体のものとして開示しなければならない。
2  財務諸表の注記は、法人単位財務諸表及び事業別財務諸表のそれぞれに適切な注記を行わなければならない。
3  公営企業型地方独立行政法人の事業内容等の実態から複数の事業単位で経理される業務を一括してセグメント情報として開示する必要がある場合には、事業区分に係わらずセグメント情報を作成するものとする。この場合には、当該セグメント情報は、法人単位財務諸表に添付するものとする。
4  法人単位財務諸表には、「第75附属明細書」に定めるもののほか、次の事項を明らかにした法人単位附属明細書を添付しなければならない。(注64)
(1) 各事業単位の経理の対象と事業相互間の関係を明らかにする書類
(2) 貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書及び行政サービス実施コスト計算書のそれぞれについて、事業ごとの金額を表示する欄、事業相互間の取引を相殺消去するための調整欄及び法人単位の額を示す欄を設け、法人単位財務諸表と各事業別財務諸表の関係を明らかにする書類
(3) 事業別の利益の処分又は損失の処理に関する書類について、事業ごとの金額を示す欄及び合計額を示す欄を設け、事業ごとの利益の処分又は損失の処理の状況と全ての事業を合算した額を並列的に示す書類
(4) 法人単位貸借対照表及び損益計算書において、相殺消去された事業相互間の債権と債務及び事業相互間の損益取引に係る費用と収益並びに消去された事業相互間の取引に係る未実現損益の内訳
(5) 法人単位キャッシュ・フロー計算書において相殺消去された、事業相互間のキャッシュ・フローの内訳

注64>附属明細書について
 事業別財務諸表に添付すべき附属明細書は、法人単位財務諸表に一括して添付することにより、重複するものについては省略することができる。なお、この場合、法人単位財務諸表に添付する法人単位附属明細書には事業別の内訳を明らかにしなければならない。


前ページへ 次ページへ


 

-- 登録:平成21年以前 --