令和2年度障害のある学生の修学・就職支援促進事業委員会 委員長所見

 このたび、障害のある学生の修学・就職支援促進事業委員会は、本年7月に申請のあった3件の事業に関して審査を行い、2件を採択することとした。
 選定された2件の事業は、これまで構築してきた大学等とのネットワークを活用しつつ、さらなるネットワークの拡大・強化を図っていくものであり、全国のどの大学でも事業に関わることができる広域性や、障害学生支援のための知見やノウハウの共有など、我が国の高等教育機関における障害学生支援の充実が見込める取組となっている。

 今回残念ながら選定されなかった取組においても、その内容は、地方の小・中規模の私立大学等における修学支援のスタンダード化を目的とする特徴的なものであったものの、取組の具体性等の観点から採択には至らなかった。今一度、関係大学や団体・企業等と議論を行い、学内資源の活用等により、可能な限り取組の推進、連携体制の構築に取り組んでいただきたい。また、採択された取組への参加についても検討願いたい。

 今回選定された2件の取組の関係大学におかれては、委員会が求めた改善に関する意見については着実に対応し、計画を確実かつ迅速に実行していただきたい。また、特に事業を実施する上では、
・代表校及び連携校においては、特定の学内組織任せにならないよう、学長の強いリーダーシップにより大学として組織的に事業に取り組むこと。
・連携校、参加校にとどまらず全国の多くの大学等と連携し、特に、小規模大学や障害学生支援に課題を抱える大学に手を差し伸べることができるプラットフォームを形成すること。
・積極的に事業の内容を全国の大学・学生、産業界、自治体等に情報発信すること。
・補助期間終了後も確実に事業を推進できる体制を構築すること。
・補助金を適正に管理し、執行すること。
をお願いしたい。

 我が国の大学等における障害のある学生への支援は、現場における個別の対応によるところが大きく、これらの積み重ねにより、手法やノウハウが蓄積されてきた一方で、進学・修学支援、就職支援、教職員の理解促進、情報公開、教育環境の調整等、大枠では各大学で共通の課題を抱えている。特に、障害のある学生への出口段階での支援が進んでいない現状がある。これらの課題の克服には、各大学等がそれぞれ単独で取り組むだけでは限界がある。
 このため、選定された取組に関係する大学等においては、より多くの大学や関係機関が連携するプラットフォームを形成していくことで、すべての大学等における障害学生支援の取組を更に充実させていく一翼を担うものだという自信と気概のもと取組を全力で進めていただきたい。これにより、多様な学生一人一人の特性や希望、状況を踏まえたきめ細かな学生支援の充実が高等教育機関全体として図られることを期待している。

 なお、文部科学省においては、採択された2件の事業のみでは、「障害のある学生の修学支援に関する検討会報告」第一次まとめ、第二次まとめで示された課題のすべてに対応することは困難であるという認識のもと、障害学生支援に関する施策の推進等により一層努めていただきたい。
 


令和2年9月1日
障害のある学生の修学・就職支援促進事業委員会委員長
柏倉 秀克

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高等教育局学生・留学生課