国際バカロレアの普及促進に向けた検討に係る有識者会議(第3回)議事録

1.日時

令和4年12月19日(月曜日)9時30分~12時30分

2.場所

Web 会議システム(ZOOM)

3.議題

(1) これまでの議論の整理及び取りまとめ骨子(案)について
(2) その他

4.議事

【岩崎座長】  
 これから国際バカロレアの普及促進に向けた検討に係る有識者会議の第3回を開催いたします。
 まず、事務局から議事と配付資料の確認をお願いいたします。
 
【事務局(出口)】 
 事務局より議事と配付資料の確認をさせていただきます。
 本日の議事次第でございますが、「これまでの議論の整理及び取りまとめ骨子(案)について」と、「その他」の二つの議題を予定しております。
 また、資料は1と2、参考資料は1から3までを事前に送付させていただいております。もし不足等がございましたら、事務局までお申しつけくださいませ。
 
【岩崎座長】
 特に不足はございませんでしょうか。もし何かございましたらお知らせいただければと思います。
 それでは、議題1「これまでの議論の整理及び取りまとめ骨子(案)について」に移ります。
 事務局から資料1の説明をお願いいたします。
 
【事務局(出口)】
 それでは、資料1を事務局より説明させていただきます。
 今、御覧いただいておりますのが、取りまとめ骨子(案)でございます。これまでの御意見をまとめさせていただきまして、これまでお示ししてまいりました検討事項案の四つの柱に沿って整理をさせていただきました。
 これは現時点での案でございますので、本日の御意見なども踏まえながら、さらにブラッシュアップをしていきたいと思っております。そして、年度内の最終取りまとめを目指してございます。
 まず、全体構成は1頁目のとおりですが、Ⅱの取組と状況については、課題を認識した上でまとめさせていただきたいと思います。
 そして、Ⅲは各事項における基本的な考え方を整理したものです。
 そして、最後の具体的な推進方策として、今後につなげていければと考えてございます。
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 こちらは、「はじめに」ということと、「日本における国際バカロレア普及の取組と課題」ということで書いております。1ポツに「日本の目指す教育とIB」ということで、平成30年度以降順次実施されております学習指導要領で育成を目指す資質・能力は、IB教育の理念と共通していること等を書かせていただいております。
 また、丸で二つの文章を箇条書きしてございますけれども、最終的には、文章を肉づけしていくようなイメージでございます。
 その下に、委員からいただきました主な意見ということで、箇条書きして、四角で囲っております。このような流れで、ほかの項目も進んでまいります。
 2ポツの「これまでの取組」は、時系列でまとめたものでございます。直近のものでは、平成30年度に文科省のIB教育推進コンソーシアムが設立されたということで、本年度が最終年度となります。
 3ポツの「日本におけるIBの普及状況と成果」は、9月30日時点の数字を入れてございます。最終的な数字はアップデートしつつ、データをもう少し増やしていく予定です。
 (2)の「大学における活用状況」も同じく、68大学ということで書いております。
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 (3)の「IB教員養成等の状況」に関して、IBの公式ワークショップはコロナ禍で日本語でのオンライン受講が可能となりました。また、IB教員養成課程を開設している大学は、4大学から8大学に増加したという状況です。
 (4)の「国際バカロレア普及の成果」として、コンソーシアムでのシンポジウム、セミナー等々を通じた情報発信、相談対応等によって、全国的にIBの認定校が増加しています。また、IB校が増えたことで、各地域の国立大学でのIBを活用した入試の導入も増加したという状況が見られると思います。
 4ポツの「IB普及の課題」に関しては、課題が四つほど並びます。
 その中の一つ目でございますが、国際バカロレアの普及という点。こちらはIB認定校以外の学校へのIB教育の好事例の波及、また、認定校がない地域への普及、そして、PYP、MYP、DPの連続したIB教育を受けることができる環境作り、このようなことが課題として皆様に認識されたかと思っております。
 その下の箱の中には、委員の皆様からいただいた具体的な御意見を記載しております。
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 課題の二つ目として、そもそもの点ではございますけれども、「国際バカロレアに対する理解促進」という点。IBの理念・教育手法・教育効果等について幅広いステークホルダーにおける理解が足りていないという御意見もあったかと思います。
 そして、課題の三つ目は「IB認定校における教員の確保」という点。これは切実な御意見としてたくさん頂戴したと思っております。人事異動に伴うIB教員の安定的な配置、こちらは特に公立学校での様子と思っております。また、言語以外の科目を英語で教授する外国人教員の獲得、また、採用された後の継続的な雇用も非常に難しいと。そして、IB機構から提供されております公式ワークショップについても回数を増やしてほしいという声もいただいております。
 課題の四つ目でございますけれども、「IB生の進路」として、国内大学でのIBを活用した入試の導入促進、また、試験の実施期間やスコアの配慮など、IBの事情を考慮した柔軟な実施をしていただければというお声も頂戴いたしました。また、海外大学への進学を目指される上で、進路指導のノウハウもなかなかないということで、そのような負担軽減なども含めて課題と認識しております。
 このような課題がある上で、Ⅲの「国際バカロレア推進の基本的な考え方」として、今までお示ししてまいりました検討事項四つについて考え方を整理いたしました。
 一つ目が1ポツの「幼小中学校段階でのIBの普及」。こちらは少し繰り返しになりますけれども、PYP、MYPは学校全体で実施するため、全教員、生徒等のIBに関する理解が深まる。また、MYPの学びはDPに進学する上でも継続性の観点から非常に有効である。また、DPに進学をされない場合であっても、学びの探究ということで非常に有効だという話もございました。そして、IB教育の好事例を普及することで、IB認定校がない地域でもIB導入の検討を促進すると。
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 教育課程において、IB教育の考え方を取り入れることも、探究的な学びを教育実践で行うことができる教員の輩出に有効だと思います。
 また、2ポツ目は「高等学校段階(DP)でのIBの普及」。PYP、MYPと重なるところがございますので、そういう点は再掲と右側に括弧で書かせていただきました。学校教育法の第1条に定める学校でのIB導入が増加しており、今後も継続して推進することが必要だと思っております。また、IBの認定校内において、IB以外のコースでのIBの教育の実践や生徒さんのIB科目の履修も促していければと思っております。DPならではということでは、IB認定校の事情に応じた海外大学への進学を促進ということもあります。
 続きまして、3ポツ目は「大学入試でのIBの活用促進」。IBの認定校は増加しておりまして、引き続きIB生の進路の選択肢を拡大することが必要であろうと思います。また、そのためには、好事例等を皆さんに共有していただいて、大学の理解を促進すると。その場合、大学入試の実施時期や要求スコア、出願時の負担等の考慮が必要かと思っております。
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 その上で、IBを活用した入試は当然必要だと思っておりますけれども、入学後の対話型の授業などでIB生の能力が発揮できるような環境の提供も必要ではないかと思っております。また、国内学生だけでなく、海外からも優秀な学生さんを呼び込むことが大学のグローバル化にも非常に有効だと思っております。
 最後の4ポツ目は「IBの教育効果等の把握・検証」ということで、今まで述べておりました様々な点については、IBの教育効果等の可視化が必要だというお声も頂戴いたしましたので、量的な把握に加えまして、好事例の積み上げが重要と思っております。また、こういった教育効果を把握して、発信をすることで、高校段階までの学校でのIBの普及や大学入試でのIBの活用促進につないでいければと思います。
 続きまして、最後に、「国際バカロレアの今後の具体的な推進方策について」です。ここが今後に向けた取組として、こちらの会議で提言いただくような内容になってまいります。
 全体といたしましては、IB教育の効果や好事例を波及させることで、初等中等教育の発展に資するとともに、IBの導入促進につなげる。また、IBを活用した大学進学を拡大するほか、IBの教育効果等を把握・発信することで、IBのさらなる普及につなげ、好循環をつくり出す。これが全体的な方針かと思っております。
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 具体的にはですけれども、1ポツ目の「PYP、MYPでのIBの普及」については、今までも申し上げてきましたとおり、好事例の普及等、また、二つ目の丸にあるようなネットワークの形成、そして三つ目、IB認定校を中心としたIB教員の輩出によるIB教育の人材確保を促進、また、大学の教員養成課程や教員研修においてIB教育の考え方が活用されるよう促進できればと思っております。
 2ポツ目の「高等学校段階でのIBの普及」。こちらも幾つか重複しているものについては割愛いたしますけれども、四つ目の丸、IBコース以外でのIBの教育実践を活用した授業改善等、また、IB認定校での外国人教員の確保、また一番下は、IBを活用した海外大学進学のための情報提供(進路指導の在り方や奨学金等)というものがございます。
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 3ポツ目の「大学入試でのIBの活用促進」でございますけれども、こちらもIBの教育効果や受入れ実績がある大学での好事例を発信して、ほかの大学でのIBを活用した入試の拡大を促進する。また、大学入試の実施時期、出願時の負担軽減等の検討も促進する。そして、海外のIB生を受け入れている大学での入試やカリキュラム等の事例も、ほかの大学に共有して、検討を促進したいと考えております。
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 最後に4ポツ目は「IBの教育効果等の把握・検証」ということで、このような教育効果を把握して発信することで、IBに対する理解の促進ができると思っております。今回の有識者会議でも、いろいろデータをお示しできたことで議論が活発になったと思っておりますので、基礎的なデータは非常に大事であると思っております。そういう意味で基礎調査としては、国内外のIB認定校に対する実態調査、国内外の大学でのIBを活用した入試に関する実態調査、IBの教育効果に関する調査、IB教員に関する調査があります。こういったデータをできるだけ国内でも集めたいと思うのですけれども、国際的なカリキュラムでございますので、各国との比較、各国における状況を把握するためには、IB機構との協力が必要と思ってございます。
 以上が資料1全体の簡単な御説明になります。
 そしてもう1点、事務局からの情報提供になりますけれども、文科省の委託事業で行っておりますコンソーシアムの活動の中で意見やアドバイスなどをいただく会として、関係者協議会というものがございます。岩崎座長、坪谷委員、荻野委員には、こちらにも御参加いただいておりまして、先週12月13日の会議で出た意見として、4点ほどポイントとしてお示しできればと思います。
 一つ目は交流人事の話、二つ目は教員の加配の話、三つ目は大学との接続の話、そして四つ目は教員の学びを続けていくというお気持ち、この4点がいろいろコメントとしていただいた中でまとめられるものと思っております。
 具体的に幾つか御紹介させていただきます。IB認定校は増えているのに、出口であるIB入試が増えない。増えてはいるけれども、まだ足りないのではないかと考えられる。また、海外大学進学に関する指導の経験がない。外部機関の活用なども考えていらっしゃいますけれども、予算繰り等に苦労しているという具体的なお話がございました。
 また、IB教員の加配、教員が足りないことが深刻でございますので、それを検討してほしいというお声。また、IB校間での教員の交流人事が進むとよいというお話がございました。また、加配は実際にはなかなか難しいかもしれないというところは御理解されながらですけれども、IBを国として進めていることがより分かると、各地域にも取組を積極的に勧めやすいというお話がございました。また、IB教育に大学が期待する、企業が求めるような人材像がございますけれども、そういった点でも課題発見能力は非常に重要なポイントになってまいりますので、小学校からぜひ育まれるべき力だというお声がございました。私立では、DPに進むに当たりまして、進学コースを明確にされた上で実証されているケースがございますけれども、進路の保証がある中でのIBの教養を身につけるという取組をされていらっしゃいます。その場合、最大の特色は第二言語の習得で、常に日本語で考えながらほかの言葉、言語での論文作成やプレゼンができ、幼稚園から高校段階での長い期間であれば、第二言語で高度な思考を求める教育が可能ではないかという現場のお声もございました。
 また、DPの教員の育成が課題で、DPでは海外大学の1年生レベルの教科指導力が、専門性も含めて必要になると言われておりますけれども、それを教員の方々が身につけていく点について、先生同士での切磋琢磨や常に学び続ける姿勢、そして生徒さんたちが御自分を越えていくところまで育てていく上で、先生自身も学ぶという認識が非常に大事だというお声がございます。また、質の高い教員になる方々は、大学でそれだけ力や姿勢を持った学生さんでいらっしゃって、そういう意味で教員養成課程で大変な授業などを受けてらっしゃるのですけれども、それでもなかなかいっぱしのIBの教員になるのは難しいと。そしてIB校に入った後、日々の努力とか生徒さんとの触れ合いから学んでいく必要があると。
 その上で教員の交流人事についても、IB校同士はもちろんですけれども、IBに関心のある先生も混じっていただきたいと。IBをやりたいと思っていても、なかなか実際では導入が進んでいないところが多いですが、自分自身はIB校で教えたいというお声もあると聞いております。また、文科省に対しては、自治体以外からの財政支援や、教員研修にIBの授業研修も含められないかという声がございました。また、学部を出てすぐにIBの教員になられるときは、負担が大きいので、教科の指導力がございますベテランの先生と一緒にOJTで学べる環境を作る配慮が必要、また、IBの教員に限らず、IBに関する研修が新学習指導要領との関係では有効なのではないかということがございました。
 長くなりましたけれども、事務局からの説明は以上となります。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。
 それでは、事務局から説明がありました資料1について、皆様から御意見をいただきたいと思います。
 大変恐縮ですが、前回欠席された竹内先生から一言お願いしたいと思います。竹内先生、いかがでしょうか。
 
【竹内委員】
 まず、前回欠席ということで、大変御迷惑をおかけいたしました。前回発表する予定だったのですけど、欠席となってしまいまして申し訳ございません。
 私のほうに課せられたテーマは、大学入試でのIBの活用促進とIBの教育効果の把握と伺っておりましたので、それを準備しました。前回会議の議事録や今の資料も拝見させていただいて、重なってしまう部分もあるかもしれないのですけれども、2点申し上げさせていただければと思います。
 大学入試でのIBの活用促進に関して、前回私がこの場で御報告したかったのは、大学入試では学力の3要素のバランスを非常に重視していまして、知識・技能、思考・判断・表現、それから主体性や多様性ですけど、大学によって実情はいろいろあるかと思いますが、なかなか全部の資質を兼ね備えた入試を実施するというのが非常に難しい状況ではないかと、私自身は認識しています。
 その中で、IBの10の学習者像を見ますと、この学力の3要素と親和性が高いのではないかと私自身は認識していまして、この認識を広げていくと、IBに対する理解がより深まっていくのではないかというのが1点です。
 もう1点が、大学入試でのIBの活用についてです。自分自身のこれまでの経験も踏まえてですが、一人でも多くの大学の先生方にIBの教育現場を見ていただくことが欠かせないのではないかと。IBのよさはいろいろ書かれていて、そのとおりだと私も思うのですけど、1回見るかどうかが非常に大きい。しかもその見るというのが、短時間ではなくて、1日どっぷり漬かってというか、生徒さんと交流しながら見るという活動が非常に重要です。そのためには何が必要かというと、今までコンソーシアムや各高等学校様がイベント等でIBの周知活動をかなり促進されていると思うのですけど、今後の段階としては、各イベントをする際に、IBを活用した入試を実施してほしい大学の関係者を指名して呼ぶ、来ていただいて見る機会を作る、そういう仕組みが必要ではないかと、私自身は認識しています。
 この話を御説明したいと前回思っていましたので、冒頭申し上げさせていただきます。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございます。
 これから求められる学力に親和性の高いIBの現場を、大学関係者、大学教員の方々にぜひ参与観察のような形で、見ていただいて、理解するという仕組みづくりをしてほしいという、とても具体的な御提言だったと思います。
 この点も含めまして、山口先生もしくは黒田先生、大学の立場から何かございますでしょうか。
 
【山口委員】
 山口でございます。ただいま竹内先生がおっしゃったことは大変重要だなと思って聞いておりました。
 我々が現場の先生方に納得感を持っていただいた上で、IBの普及を進めていくためには、まず我々がしっかりと語れることと、実際に見ていただくことが非常に重要だと思いました。
 日頃からそういう機会を提供していただくとか、今もおっしゃったようなイベントで、実際に模擬的に触れられるような機会を与えていただけるのは非常にありがたいことだなと、共感いたしました。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございます。
 黒田先生、いかがでしょうか。
 
【黒田委員】
 ありがとうございます。
 今、竹内先生から御提案のあった、IB教育を理解してもらうために大学に見てもらうということもあると思うのですけれども、大学側だけではなくて、ほかのIB教育を行っていない学校の教員の方々がIB教育に触れられる、理解する機会をつくっていくことが重要なのではないかなとも思いました。
 大学側の意見というよりも、今回どのような提言を行っていくのかというところですけれど、大きな方向性としてIB教育の普及を考えるときに、これまでは認定コースを増やしていくことが非常に大きく取り上げられてきたわけです。もちろんそこの部分もこれから考えていかなくてはいけない。特にIB認定校のない地域については、モデル的な意味もありますし、ある意味で選択肢として提供していくというところで、認定校をつくっていくことは重要なアプローチだとは思うのですけれど、今回の提言の中でより強くやっていかないといけないことは、IB教育を真の意味で普及していくというか、つまり認定校数を増やしていくだけではなくて、日本の普通の高校教育の中に、もしくは普通教育の中に、IB教育の理念やグッドプラクティスをどのように普及していくかを考えていくことかなと思います。
 そのアプローチの一つとして、竹内先生が御提案になったようなIB教育の見える化を進めていくことがあるのだろうと思いますし、既に報告書の中にも盛り込まれていましたように、教員養成課程とか教員研修の中でIB教育を紹介するような機会を入れていくことも位置づけられるのではないかなと思いました。
 具体的にどういう形で普及をしていけるのか、もう少しアイデアがあるといいかなと思います。私にはアイデアがないのですけれども、例えば具体的なところとして、さっきの見える化のところも、認定校の間のネットワークということがあったのですけれど、認定校ではないところとIB校をどういうふうにつなげられるのかについて、既存のネットワークの中にIB教育をプレゼンテーションしていけるような機会を持つとか、例えばWWLとか以前のスーパーグローバルハイスクールのイニシアチブみたいなグローバル人材をうたっているところについて、そこでは例えばSDGsなんかを組み入れるような形でグローバル人材の育成について考えておられると思うのですが、IB教育という一つの体系みたいなものを紹介することによって、よりそちらの取組も高度化されていくこともあるかもしれないと思いますし、何かそういった具体的な方向性でIB教育の普及を、認定校を増やすというアプローチだけではなくて、考えていくことが必要なのかなと思いました。
 以上です。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。教育の新しい方向性に向けての改革の視点を、IBも含めて提示するという積極的な御発言だったかと思います。
 文科省のほうで今の御意見を受けて、何かアイデア等ございますでしょうか。
 
【事務局(出口)】
 ありがとうございます。
 今後の取組にはなってまいりますけれども、今もコンソーシアムを中心に様々なネットワークをつくっていただいたり、そのネットワークが広がっていくようなシンポジウムとか、ホームページ上でのオンラインカフェのようなものも形成いただいているのですけれども、今、黒田先生からもお話があったとおり、IB認定校ではない方が、よりカジュアルな形で入ってきやすくなるような取組もネットワークとして必要かなと思います。そして、認定校同士の間でも、一部の方とは情報交換できているけれども、もうちょっと大きなところに聞いてみたい、投げかけてみたいところも広がるよう、ネットワークの使い方もよりうまく機能していけばいいかなと思います。
 また、ほかのグローバル関連施策との連携についても、ぜひ意見交換していきたいと思いますし、SGHやSGUのように高等学校や大学とかでグローバル教育をされているようなところが、IBをどのように取り入れているのかといった点もフォローアップしながらやっていきたいと思っております。
 ありがとうございます。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。
 山口委員から手が挙がっておりました。よろしくお願いします。
 
【山口委員】
 骨子案の書きぶりについてコメントさせていただいてもよろしいですか。
 
【岩崎座長】
 はい、どうぞ。
 
【山口委員】
 ちょっと気になっていたのが最初のところですけれども、Ⅱの「日本における国際バカロレア普及の取組と課題」の1ポツ目の「日本の目指す教育とIB」と書いてある部分ですが、日本の学習指導要領あるいは日本がやっている教育とIBは合致しているということが書いてあるんですね。この書き方は、学習指導要領がIB側に寄ってきたような感じだという認識を書きたいのかなと思うのですが、今のままですと、日本の教育の方向と一致するのであれば、なぜIBを普及させる必要があるのかが出てこない。もちろん「はじめに」というところで、これまでの成長戦略とか中教審の教育政策等々を入れながら、IBを戦略的に普及させていくということは書かれるのでしょうけれども、ここの書き方が非常に気になりました。成長戦略あるいは教育政策の観点からのIBの普及ということがあって、それを多様な人材あるいは今後の社会で活躍できるような人材の才能をが育まれていくという話があった上で、日本が目指す教育がIBの方向性と合ってきているという話になるのかなと思った次第でございます。
 以上です。
 
【岩崎座長】
 貴重な御指摘かと思います。ありがとうございます。
ここでの議論は、日本の国内の学習指導要領の枠組みを超えて、成長戦略、グローバル人材育成といった広い視点も含まれると思われますので、事務局のほうで報告書の表現を工夫されるということでよろしいでしょうか。
 
【山口委員】
 よろしくお願いします。
 
【岩崎座長】
 村上課長、お願いします。
 
【村上課長】
 ただいま山口先生から大変本質的な御指摘をいただいたわけでございます。ポイントは先生がおっしゃったとおりだと思いますけれども、非常にテクニカルなところだけ申し上げますと、なぜ高校の学習指導要領とIBの読み替えが可能になっているかと言えば、それはすなわち重なるからだという説明は、制度上はせざるを得ないです。ここは御理解いただければと思います。
 もう一つ、目指すところ、出来上がりの資質能力は同じなので、アプローチとか方法論が違うという説明になるのではないかと個人的には思っています。
 それに加えて、日本語を母国語としない方々にも親和性があるということで、実はここをどう書くかは非常に悩ましいところでございます。IBを導入している学校が都市部のインターナショナルスクールを中心とした極めて例外的な存在であるという位置づけであれば、ここは問題になりません。ただ、これを全国に、例えば全県に高等学校段階でDPを設けるということになって、そういったところが必要だと仮に議論をするのであれば、ここはかなり本質的な部分に関わってくる。さらに、DPが英語DPなのか、日本語DPなのかによって、ニュアンスが変わってきます。
 丁寧に書こうとするといろいろ書かないといけないので、大まかなところだけ書かせていただくとこういうことになるということで、もちろんこれで完全にオーバーラップして、学習指導要領をやっていればIBをやらなくてもいいのではないかというわけではないのは当然のことだと思いますので、その辺りは多少工夫をさせていただきたいと思っております。
 以上です。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございます。IBの教育の理念は、学習指導要領で育成を目指す資質能力と同じ方向性であるというニュアンスで書いていただけるとよろしいのではないかとの御意見かと思います。非常に本質的なところではありますが、この報告書の冒頭でもありますので、表現を工夫していただければと思います。
 そのほかに、先ほどの点に関しましては、大学における教員の方々への機会提供とともに、認定校と認定校以外のネットワーク化や、スーパーサイエンスハイスクール、スーパーグローバルハイスクール等、様々な試みがありますので、そういった学校間のネットワーク化を含めて考えていただきたいという御意見だったかと思います。
 この提言につきまして、高校の先生方に御意見を伺いたく思いますが、宮田先生、いかがでしょうか。
 
【宮田委員】
 高校の立場から話をすると、中等教育学校なので、小学校や中学校と高校の先生方に普及啓発という視点はかなり強くあったのですけれども、大学関係者に来ていただいてIBの授業を見てもらうという視点は、私個人も含めて抜け落ちていたので、貴重な御意見だったと思っています。
 また、普及啓発というところで言いますと、例えば中学生、あるいは中学、高校の教員に来ていただいて、授業を実際に見てもらうということはやっているのですけれども、やはりイベント的な感じになっていて、なかなか数多くの先生方に見てもらうという形が取れないのが現状です。今年本校のMYPとDPのコーディネーターが近隣の中学校に呼ばれて、話をする機会をいただいたところです。こういうことをきっかけにして、本校は札幌市内の全域から通学しているので、いろいろなところに逆にこちらから出向いて、いろいろな方と話をしていくことが重要と感じました。
 それからもう1点ですけど、先ほど学習指導要領のお話が出たのですが、例えば初等中等教育局との連携はどうなっているのかが知りたいところです。これもこの資料のところで順番にお話ししたいと思ったのですけど、6頁の2ポツの「高校段階(DP)でのIBの普及」について、1回目2回目の議論ではなかったのですけれども、DP生が外部試験が終わった後に、学習指導要領上の必履修科目を履修しなければいけないという状況が本校にはあります。例えば留学時に一括して単位認定する制度がありますので、ここがちょうど中等教育局との連携だと思うのですけれども、例えばDP生が学習指導要領上の必履修科目を一括認定されるというような制度をつくっていただけると、DP生の負担が少し軽減されるかなと思っているので、ここの有識者会議のいろいろな議論が初等中等教育局とどのような形で連携しているのかを知りたいです。
 すみません、以上です。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。
 それでは、初等中等教育局との関係性について、事務局からお願いいたします。
 
【事務局(出口)】
 事務局より、現状及び今後に向けて御説明させていただきます。
 この会議については毎回、省内関係部署に連絡をしております。バカロレアの普及は幅広い取組になってございますので、初等中等教育局に限らず、高等教育局も含めて声をかけて、我々の取組で閉じないように、この活動、議論をしているということも含めて知ってもらえればと国際課として思っておりまして、我々の取組、先生方の御意見はいろいろな形で伝えさせていただいております。
 その上で、今いただいた一括認定の話などは、何ができるかを今この場ではお答えできませんけれども、問題意識として、現場の声として先生方がお持ちだということはぜひ我々も認識して、議論していきたいと思っております。ありがとうございます。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございます。
 今のお話について、宮田先生、よろしいでしょうか。
 
【宮田委員】
 はい、ありがとうございます。
 
【岩崎座長】
 では、続きまして、荻野先生、いかがでしょう。
 
【荻野委員】
 荻野です、よろしくお願いします。
 IB教育の横展開は困難が大きいという話は、1回目にさせていただいたのですけれども、今回認定校以外に普及させる手立てというところで、黒田先生から例えばWWLであるとか、もう制度としてなくなってしまいましたけれどもSGHであるとか、既存施策との連携について、私も全く同感です。
 今、私どもの学校はSSHの指定校になっております。いわゆる5年で1期で、テーマを設定しまして、更新をしていく。また、いわゆる社会的なニーズに合っていなければ、5年終わったところで落とされていく。そういったことになっているのですけれども、私どもはSSHの認定校になりまして、IB教育を核に据えて、SSH事業を展開していくという設計で、今、1期2期と来ているわけですけども、当初はSGHの学校でもありました。そうしますと、SGHでするミッション、SSHでするミッションが非常に限定されてしまったのが非常に残念なところです。本校の場合は、いずれにせよIBが核になりまして、それで両事業を展開していましたので、「それはSSHの話ではないですよね」「それはSGHの話ではないですよね」といった、かなり縦割り的な解釈を文科省の側でされて、非常にこちらとしては歯がゆい思いをしていたし、また、現在もしているということです。
 サイエンスの概念は当然広まってきて、新しい学習指導要領やIBでも教科横断的な取組が必要とされていて、文系的なテーマであってもサイエンティフィックな思考が非常に重要視されていて、そういうところはIBでも当然ど真ん中に来ている問題でもありますし、新しい学習指導要領でも当然ど真ん中に来ている問題ではあるとは思うのですけれども、もともとSGH、SSHがそういったスタートであったために、SGHがなくなった今、SSHがともするといわゆる理工系の大学にどのくらい合格者を出したかということが、SSHの一種の評価につながっているということで、非常に理解のあるSSHの審査をされる方もいらっしゃる一方で、ごく少数ですが、非常に限定的に排除をするような発言をされる方もいて、私どもとすると非常に戸惑っているところです。
 IB校であることのよさをSSHに普及させていくことをミッションと信じて、これからも進んでいきたいのですけれども、ぜひそういったところにも御配慮いただきたい。社会の中で生きる学問で、生徒を育てるんだと、サイエンティフィックなものの見方ができる生徒を育てるんだと、そういったところは積極的にSSHの認定を受けていくというところをぜひ御理解いただきたいと、また、そういった社会をつくっていただきたいと思います。
 そこが、まず、第1点でありまして、認定校以外にIBを広げる手立ては、今現在もかなりあると思います。ただものの見方を変えることによって、もっとここのところが円滑になる手立ては幾らでもあるのではないかというところが、現場にいて感じるところであります。
 それから、実はこの会議を1回、2回とやってまいりまして、心に刺さっている言葉が幾つかあるわけですけども、そのうち全部話していると時間もかかってしまいますので、一番大きく心に刺さっている言葉は、宮田先生が1回目におっしゃられた言葉です。IB校から先生たちが異動したがらないという問題です。これは私も同感です。IB校は一種先生方にとって本当に自分のキャリアを深めていく、あるいは自分の教員としてのミッションを完遂していくための大きなステージになっていることは事実です。それほどすばらしい場所だと言えば、すばらしい場所です。もちろん生身の人間がやることですから、様々な課題があることもあろうかと思いますけども、やはりこれは本音だと思います。
 私どもは私どもの教員に、あるいは本校に研修に来ている他県からの教員に、1年終わったところでアンケートを取りますと、非常に教員の教えることの満足度が高い学校になっております。そして、「できればずっといたい」とおっしゃられる先生も結構います。私どもの学校は国立の学校ですから、異動は原則ありません。ですから、先生たちは満足だと思いますけれども、ただ、ここで閉ざされた社会にいるということで言えば、私としては不満です。もっと人事交流を活性化させるべきだと思っています。
 ただ一方で、ここ3年ほどの本校の状況をお話ししますと、実は驚くような方たちが本校の採用試験を受けてくださっています。他県で指導教諭をされていた一定の指導力のある方が、「本校でぜひ教えたい」、あるいは他県や他地域でIB教育を実践されている現場の先生が、「異動があるので、異動のない本校で仕事をしたい」、あるいは特にお若い先生は、「自分にとって成長できる職場で教えたい」、「そこでキャリアを深めたい」ということで、本校を志願される先生が増えてきております。実際昨年度は、他県のIB校で授業経験のある方1名を採用することができました。そういった意味では、私どもの学校はある種、教員採用の神風が吹いている状態です。
 IB界は、大学も含めまして、かなり人事の需給バランスが崩れています。私どもにとってはいい先生をお招きするいい機会になっているのですけれども、横展開といった場合に、これでいいのかという思いもあります。横展開が難しいと言った私の理由は、ここにあるんです。IB校を経験した教員が一人で知識伝授型の教育を実践している他校に異動して、その学校を変えることの自信のなさみたいなものが表れているのではないかと思います。そういった意味では、もっとIB的なものを広めていきたいのですけども、その手立ては、先ほどのSGH、SSHの話でもありますように、今ある制度を活性化、充実化させていくことの中に答えがあるのではないかなと思っております。
 関係者協議会では人事交流という話も出ました。私どもも人事交流のプログラムのある他府県には、積極的にうちの先生を鍛えてほしいので、若手の先生を送っています。ただ、人事交流がソリューションであるとは考えておりません。3年したら戻ってきます。公立の先生方の学校もそうでしょう。そこでは、また異動という問題があります。ですから、人事交流は一時しのぎにはなると思いますし、学校が活性化するという点はあるのですけれども、教員の異動については、各県に1校しかないIBスクールの先生を各県でとどめおくことだけがソリューションなのか。全国あるいは全世界にあるIBスクールの間で、教員の交換を継続的に行うことが、日本のIB教育の波及効果という点で、認定校以外の学校も、時間はかかるかもしれませんけれども、大きなベネフィットを受けるのではないかとも考えております。
 そもそも教育委員会は、各県に1校しかないIB教育を指導、助言するのに、本当にふさわしい場所になっているのだろうかと。これは1校しかないので、なかなか的確な指導ができない。1回目に、ある教育委員会の方が、「校長を支援する組織をつくっている」とおっしゃっていました。私は素晴らしいことだなと思いました。しかし、そういった学校を支援する、校長を支援するのは、各県1校しかないIB校教育をつかさどっている教育委員会だけでは、死角が多過ぎるのではないかなと思っております。そういった意味で文科省が果たす役割は大きいと考えています。
 教員養成も、大学がやればいいということではなくて、IB校がどうしたら教員を養成できるのかという点も含めて、もっと大きなフレームから考えるべきではないかなというのが、私がこの会議に2回ほど出させていただいた感想であります。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。荻野先生は関係者協議会にも御出席であり、またいろいろなお立場で実際に長くIBの現場にもいらっしゃいますので、傾聴に値する御意見だったと思います。
 続きまして、髙野先生、いかがでしょうか。
 
【髙野委員】
 まず、大学の先生方にIB生の様子を見ていただくというのは、非常に効果があると思います。実際地元の高知大学の先生方にTOKの授業を見ていただいたのですけれども、こんな授業をやってみたいとおっしゃっていました。ただ、現状として、近年多くの学校訪問を受け入れておるのですけれども、新たにIBを導入したいという教育委員会の方とその対象となる高校の方がほとんどですので、ぜひ大学の先生方に本校にも多くお越しいただきたいと思っています。
 それから、いわゆるSSH、SGH等の授業ですけれども、できれば生徒の活動を支援していただくような何か仕組みがあると、非常にありがたいです。と言いますのは、県によって違うと思いますけれども、高知県の場合、生徒の旅費は県費では認められておりません。借り上げバスまででございます。そうすると、バス移動ができるところに活動範囲がどうしても限定されるのですけれども、高校生同士が全国的にいろいろな情報共有をしたり、昨日は防災イベントを生徒がCAS活動で行って、ほかの県立高校の生徒も招いて活動したりしました。そういった活動をすることで、IB教育が目指している評価の学習と実際の社会とのつながりをIB校でない学校の生徒が認識することで、おのずと先生方も認識せざるを得なくなっていくのではないか。どうしても教員サイドで動くことが検討されるわけですけれども、教員は子供の成長が何よりもうれしゅうございますので、そういったところで結びついていけば、横展開の一つのきっかけになるのではないかと考えます。
 それから、一つぜひお願いしたいことがあります。先日岡山大学のサビナ先生と意見交換をする機会があったのですが、岡山大学ではIB校卒業生のサポートに力を入れているというお話がありました。ただIB入試という制度を設けてIB生を受け入れるだけではなく、学び方が違うIB生ならではの悩みもあるということをお伺いして、そういったところのメンテナンスがしっかりできている大学には、高校としてもぜひ送りたいと。その辺りの情報共有などもいろいろな場面でしていただけると、日本の大学を選択するIB卒業生が増えてくるのではないかなと思います。
 以上でございます。ありがとうございます。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。
 竹内先生からIBの現場を見てほしいとのお話があったわけですが、IBの教育は大学の教養課程に匹敵するという感想を持たれる方も多く、高知大学の先生がIBを教えてみたいという感想があったとすれば、見るだけではなく、IBのスキームで高校生を教えてみる体験をされるのも面白いかと感じたところです。
 特に山口先生が専門とされる物理学の素粒子の理論などは若い学問とよく言われておりますが、大学側からそういう優秀な生徒さんのいるところに出かけていき先取り学習をしていただく一つの枠組みとしてIBの現場に大学の先生がコミットするのも一考かなと感じたところです。
 それでは、長谷川先生は大学人であるとともにIBを高所から見ていただいているわけですが、いかがでしょうか。
 
【長谷川委員】
 先ほど来お話を伺って、大学の教員がIB校を訪問するのは非常に大事なことだと思いますが、同時に双方にとってもそれなりに敷居の高い部分があって、お見合いを設定するにはいろいろな条件を整えないといけません。
 普及ということで、アイデアの一つですけれども、どこが主体となって制作するかは議論すべきだと思いますが、ぜひプロモーションビデオのようなもの、例えば10分バージョンや肉づけした30分バージョンなど、誰もが見ることのできるようなプロモーションビデオは非常に有効ではないかと思います。取り分けIB校に進学しようと思っている生徒、あるいは保護者の方が「こういう教育だったらぜひ進学させたい」と。あるいは先ほど来話題になっている大学教員などに、その30分だけでも付き合ってもらうと、IBというのはこういう制度で、こういう目的でということをコンパクトかつ具体的に示せるようなプロモーションビデオは非常に有効ではないかと思います。
 ぜひビデオの中では、IBの在校生、あるいは卒業生――これまで何回かIB関係のシンポジウムに参加しましたけれども、社会で活躍している卒業生が振り返ってIB教育の有効性を発言されるのは、非常に説得力があったので、卒業生、それから大学で受け入れてきて、IB生の長所を知っている大学の教員とかの生の声も含めて、プロモーションビデオの中で紹介できればいいと思いました。
 どの団体や組織がこれを制作するか、予算をどうするのか等、いろいろ問題はありますけれども、コンソーシアムあるいは教育委員会等で話題にしていただければと思いました。
 以上、具体的な提言をさせていただきました。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。プロモーションビデオの制作という非常に具体的に検討できるような内容かと思います。
 それと、髙野先生からは岡山大学の例として、大学側のサポート体制の確立、あるいは荻野先生からSSHなどの先進的な国内の高校の取組との調和というのでしょうか、チューニングをどうするかというお話があったと思います。
 以上の3点について、事務局から何かコメントはありますでしょうか。
 
【事務局(出口)】
 いろいろアイデアをいただいて、ありがとうございます。
 まず、プロモーションビデオについては、予算も含めてどのような形でというのはあろうかと思いますが、直接は聞きに行けなくてもビデオならということもあるでしょうし、説明も通り一遍のものでなく臨場感のある、雰囲気が伝わるようなもので、それぞれの方の声も具体的に聞けて、英語でも聞けるといいなと、お話を伺いながら思ったのですけれども、何ができるかは具体的に検討していきたいと思います。
 SSHやSGHは、制度として縦割りなところがあって、解釈的なところで悩ましいという話がございまして、申し訳ないなと思うところです。一方、サイエンティフィックな観点というのは、文理を越えた形で、文系・理系ということではなく、物事の考え方という意味でIBは共通的なものだと思いますので、そこがなぜ批判的な発言をされてしまうのかなと、個人的に理解に苦しむところではあるのですけれども、具体的なお話を改めて伺わせていただければと思います。ありがとうございます。
 もう1点、岡山大学では、大学生のサポート体制ということで、これは国内大学の学生さんもそうですけど、海外から来られる方も含めて、カリキュラムを手厚く丁寧にされてらっしゃるというのが印象でございます。そういうやり方があることをまだ知られていない側面もあろうかと思いますので、そこはこれからまだ改善の余地があり、伸びしろかなと思っております。具体的な取組を知ることができれば、取り入れてみようと思う大学もあるのではないかと思いますので、そこは情報発信という点で一緒にやっていければと思います。ありがとうございます。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。
いろいろな具体の話をしますと、改善していくと望ましいとされる方向性が、この委員会等を含めて提示されるわけですが、いずれにしても前に進んでいる感がありまして、その大きな立役者である坪谷先生に、今までの議論を含めて何か御意見等をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
 
【坪谷委員】
 岩崎先生、ありがとうございます。また、骨子をまとめてくれた事務局の皆様、本当に御苦労さまでした。ありがとうございます。
 一方、この骨子の中では、DPにおいて英語を標準言語にしなくてはいけないと、2科目縛りに関しては触れておられない点からも、IBが、ESL――英語を第2外国語として学ぶプログラムではないのにもかかわらず、この呪縛と言いますか、誤解と言いますか、この問題は根深いなと感じたところもあるんですよ。先生方は御承知のように、IBというのは国を越えて21世紀型の学力、つまり学ぶ力、伸びる力、考える力、実行する力をつけるプログラムだという位置づけで、海外の大学では入学審査の段階でも何語でIBを学んできたのかというのは一切問題にされない。それがフランス語であろうが、スペイン語であろうが、ドイツ語であろうが、中国語であろうが、全くそこに対しては問題にならない。大学により、その国がどこの国になるのかによって、例えば英語圏であれば、米国系であれば、TOEFLのスコアを出してくださいとか、英国系であれば、IELTSを出してくださいといった大学もあるのですが、これは別に英語圏だけではなく、そうしたところはあるのですけれども、そこが問題ではないといった、この呪縛、この誤解をどのように解決していけばいいのかなということを、私自身も自分の能力不足も思いながら考えていたところでございます。
 今後の方針としては、今まで議論があったように、教授言語の問題にして、英語で教える学校なんていうことを表に出しますと、広がっていきませんので、そうではなくて、IBの中で育てる、学ぶ方法、学ぶ力、また、先生方の教える力、これを含めて、どうすればそれぞれの地域でIBから学べることを教育の中に取り入れていくことができるのかといった観点から考えていくことが大切なのではないかと思います。
 最後になるのですけれども、IBは大学の教養課程に匹敵するような内容を生徒が学んで、大学に入ってきているような気がするとお感じになられる先生方もおられますが、もともとの立ち位置がヨーロッパでできたプログラムでございます。ヨーロッパは猫も杓子も大学に行く必要は全くなくて、大学にはそういう資質を持っている学生が行くわけですけれども、そういう資質を持った学生は、ヨーロッパの大学は3年で終わるという立てつけの中でできておりますので、入ってくる段階で、いわゆる日本や米国型の4年制の大学の教養課程のところは既に終わっていて、それは大学では教えなくていい、基礎知識として持っているよということで設計されたプログラムです。したがいまして、DPの生徒は、日本の大学の教養課程における基礎的な部分は既に終わっているというのが最初からの立てつけであったという点が一つあるかと思います。
 そして、長谷川先生がおっしゃっておられたように、私はこの誤解や呪縛から解く方法は、もちろん文科省に音頭を取ってもらいながら、IBの教育がつける力とは、学際的に考える力、そして一生伸びていく力だということを長谷川先生がおっしゃったように、一般の方々に対してプロモーションしていくところに少し力を入れていくと、さらによいのではないかと思いました。
 どうもありがとうございました。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございます。
 一巡した形になりますが、どなたかそれぞれの先生方の御意見に対してコメント等ありますでしょうか。
 それでは、私も最後に話をさせていただきます。
 私は関係者協議会にも出ておりまして、最初に出口室長のほうから御紹介がありました、荻野先生や坪谷先生も御一緒の会議であります。
 荻野先生からも御紹介があった、教員の異動と教員が成長する場としてのIB校ということに対して、以前もお話ししたと思いますけれども、やはり教員が成長する、継続的に学習する場としての、IB校の存在は非常に大きいと感じています。教員の方々は概して指導者であるということを意識することが多いかもしれませんけれども、自発的に生涯にわたって学習する生徒を育てる、創発的な学習へと導くという意味では、指導するというよりは、生徒に対しファシリテーター的立場へと意識を変える必要があると思っているところです。
 関係者協議会でも出ましたけれども、教員が一緒に学習するという姿勢を持って、教室、学校が学習する組織としての文化を有することが非常に重要ではないかと思いました。教員の方々、特にDPに関しましては、今、坪谷先生からお話があったヨーロッパ型の大学は異なるかもしれませんが、アメリカの大学の教養課程レベルの授業を行うとか、新しくイノベーティブな教育環境をこの日本の中で生み出していくんだという気概をぜひ教員の方々のマインドセットとして持っていただきたいし、そういう研修があるといいなと思いました。
 それからもう1点は、同じ学校種であっても国公私立という横の広がりもありますし、大学と小中高のつながりという学校種の垣根を越えてネットワーク化すること、特に学習コミュニティーを形成するという制度自体をつくることが望まれると思っています。それには柔軟で有機的なネットワークづくりが必要なわけですけれども、このネットワークづくりに、将来的には、国内にとどまらず、海外の学校とのネットワーク化も視野に入れる必要があることも感じたところです。その理由は、中国のIB校を視察したときに、DP生がアメリカのIB姉妹校で夏の間短期留学をし、CASを中心に履修して、お互いその内容を認定しDP課程を修了させるというプログラムを行っていたことの紹介があったからです。SSHという枠組みはなかなか制度的に固いみたいですけれども、そういった予算があるところでIB校を導入する場合には、海外のIB校との連携といった方向性もあるかと思ったところです。
 このIBの有識者会議は、新しい教育を生み出すような創発的なアイデアを出す場にもなっていると思います。事務局が誠意をもって報告書案をつくられておりますけれども、よりよい報告書、その報告書に基づいて日本の教育がより豊かで未来志向の教育ができるよう、ぜひこれからも御意見等をいただければと思う次第です。
 私からは以上です。
 それでは、何か追加でコメント等がある先生はいらっしゃいますでしょうか。よろしいでしょうか。
 
(追加コメントなし)
 
【岩崎座長】
 それでは、続きまして、村上課長から一言お願いしたく思いますが、いかがでしょうか。
 
【村上課長】
 岩崎先生、ありがとうございます。
 すみません、本日別の会議と重なっておりまして、冒頭30分ほど不在で、大変失礼をいたしました。
 委員の先生方から貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。
 御案内の先生方もいらっしゃるかと思いますが、現在、内閣官房の教育未来創造会議におきまして、来年の2次提言に向けて様々な議論が行われているわけでございます。その中でも教育の国際化、特に大学を中心としてではありますけれども、いわゆる高度外国人人材の日本への招致、そのための教育環境も含めた生活環境の整備という話、あるいはそれにとどまらず、日本人自身がこれから海外に打って出ていくような人材を育てるためと、いろいろな切り口から議論がなされているわけでございまして、その中でも当然このIBの話は、様々な形で議論の俎上に上っておるわけでございます。
 ただ、他方で、ただいまも何人かの委員の皆様方からございましたけれども、IBについて持たれている世間的、一般的なパーセプションはかなり多様です。一つには本当にステレオタイプ的な、坪谷先生もおっしゃったように、それをやったら英語が話せるようになって、海外のどこにでも行って、外資系の企業あるいは海外で働いてというイメージから、そうでないものまで様々あって、なぜ日本の教育に今後IBが重要になるか、必要となってくるのかという御主張をされる際に何を前提にしているのか、要はそこで前提とされているIBの姿とは何なのかというところがかなりばらけています。教育未来創造会議は内閣官房の会議でございまして、私ども文部科学省の会議ではございませんが、経済界あるいは教育界の方々の様々なIBに関する御発言を外から見ておっても、なかなか収れんしないなと感じております。IBをもっと広げようといったときに、それは英語DPを想定しているのか、それとも日本語DPを想定しているのか、あるいは海外大学に進学することを想定しているのか、国内での英語入試を想定しているのかによって、全く答えは違ってくるはずなのですが、その辺りが恐らく関係者の中でも、まだはっきりしていない。本日お集まりの先生方はIBに深く関わっておられるわけですから、そういったことについては当然百も承知で御議論いただいているわけでございますけれども、もうちょっとスコープを広げますと、必ずしもそうではないです。
 そういった意味でも、今回本有識者会議で御議論いただいている中心的なプロットなわけですけれども、どうやってIBのコニュニティーの外の方々にIBの本質なり目指すべきところを理解していただくのか、それによって、仮に教育界に限定するにいたしましても、IBに対するパーセプションをもう少し収れんさせていく必要があるのではないかと強く思っております。それなしで進めるべきだといいましても、実はでき上がったものは、いやいや、それを目的としたIBを広げる段階ではないよということに、下手をするとなりかねないのではないかと思っております。
 そういうことを申し上げましたのは、先ほど荻野先生等からも御指摘がありましたけれども、広げていくといったときに非常に難しいのが、実は学習指導要領との関係を除けば、IBは制度が問題になっているということではないですよね。要は制度的な何か狭路、隘路があって、IBができないわけではなくて、恐らく実体としては、大学側からどういうふうに受け止められるか、保護者からどういうふうに受け止められるか、はたまた特に英語DPを実施する場合の教員養成とか、プラスアルファで必要となってくる財政的な負担をどうするのかというような話であって、何か法律を変えなければできないというものではないですね。だからこそ、なおさら人によって見方が違ってくるわけです。何を申し上げたいかと申しますと、想定しているIBの姿によって、例えば全国一律の公立学校、全県にIB校が1校か2校できなければいけないという前提に立てば、当然公財政負担をどうするか、ただ、公立である以上、公平性の問題が出てきたり、あるいは国ではなくて、主体はあくまでも設置者である都道府県なり市町村になりますから、都道府県議会とかで、きちんと知事とか教育長が説明できるかという話になるわけですね。そこで、「うちの県ではこういうことでIBを広めたい」と、仮に知事なり教育長が議会で語れたときに、そこで語られるIBとは何だろうと。そこも恐らく、今、47都道府県にお尋ねすると、かなりまちまちです。
 先週たまたま機会がありまして、東京都立国際高校にお邪魔をして、東京都教育委員会の幹部の方から様々なお話を伺ったのですけれども、想像以上に海外志向で、私のほうから「IBコースの規模の拡大を検討されるのだったら、日本語DPについてはどうお考えですか」とお尋ねをしたところ、「本校は海外進学をメインに置いていますから、あまり広げても仕方ありません」とのことでした。では、そういう文脈で都知事が語られるIBと、例えば広島の叡智学園を前提に語られるIBとでは、全くその意味合いが違ってくるものですから、もう少し議論の積み重ね、日本の教育でIBが今後さらにどう必要になるかについては議論が必要で、そのために今IBが導入されている学校で、どういう姿で何が行われているのかについて、より広く情報発信をさせていただくというのが当面肝要なのかなと、先生方のお話を伺いまして思っておりました。
 いずれにいたしましても、いただきました御意見は、取りまとめにも反映させていただきたいと思います。
 また、先ほど初等中等教育局との連携について御質問がございました。この会議も初等中等教育局の人間が傍聴しておりますし、また、この審議をまとめさせていただく過程でも、省内関係部署とも相談をしながら進めさせていただきたいと思っておりますので、どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。
 一定の数が増えてくると、ある程度は多様な形がでてきますから、整理して類型化することも今後必要になっていくかと思った次第です。
 続きまして、議題2「その他」について、事務局より御説明をお願いします。
 
【事務局(出口)】
 事務局より、資料2「今後のスケジュール(案)」を御説明させていただきます。
 今御覧いただいておりますとおり、本年度中に取りまとめの作成を予定しておりまして、年内は本日の会議で終了となります。また、1月以降の御都合については、既に皆様方の御予定をお伺いしておりますけれども、今後の開催日程や回数については座長と相談させていただきながら、改めて御連絡させていただきたいと思ってございます。
 また、次回会議につきましては、本日いただきました御意見等を反映して、取りまとめ(案)として事務局から御提案させていただければと思っております。
 そして、本日の議事録についても、追って作成の上、御確認の連絡を差し上げたいと思っております。
 事務局からは以上となります。
 
【岩崎座長】
 今日で最後ではありませんし、またまだ議論すべき残された論点があるかと思います。ぜひ今日御記憶のうちに何かありましたら、事務局にお伝えいただきたく思います。それとともにいろいろな議論を踏まえて、さらに具体的な取組ができるような御提案、アイデアがありましたら、次回の会議でぜひ御発言いただければと思います。
 それでは、本日の会議は以上といたします。朝早くから御参集いただきまして、どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――

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