国際バカロレアの普及促進に向けた検討に係る有識者会議(第1回)議事録

1.日時

令和4年10月17日(月曜日)16時00分~19時00分

2.場所

Web 会議システム(ZOOM)

3.議題

(1) 運営規則の決定について
(2) 国際バカロレアの普及促進に係る取組と現状について
(3) 主な検討事項(案)について
(4) 有識者ヒアリング
(5) その他

4.議事

※議題1:運営規則の決定について(非公開)
 
【岩崎座長】
 それでは、議題2、国際バカロレアの普及促進に係る取組と現状についてに入ります。
 事務局から資料3の説明をお願いします。
 
【事務局(出口)】
 それでは、私、事務局から資料3について説明をさせていただきます。
 国際バカロレアについてということで、有識者の委員の方々に改めて説明するということは必要ないのかもしれませんけれども、改めてポイントだけ御説明をさせていただきます。
 国際バカロレア機構が1968年から提供している国際的な教育プログラムでございまして、高校レベルに相当するものはDP、中学校レベルに相当するものはMYP、幼・小学校レベルに相当するものはPYPと、おのおのプログラムが設定されてございます。
 批判的思考や幅広い知識の探究スキル等を育成する特色的なカリキュラムといたしまして、双方向・協働型授業によって、グローバル化に対応した資質を育成する教育プログラムです。特に高校レベルのDPでは、国際的に通用する大学入学資格、IB資格が取得可能となってございます。
 政府の文書でございます、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画、こちらは令和4年6月に閣議決定されたものでございますけれども、こちらにおいて、IB認定校等を2022年、本年度までに200校以上にするという目標を掲げてございます。9月末現在では184校となってございまして、200校に迫る勢いということで、徐々に増えているということを大変うれしく思っております。
 このような国際バカロレア(IB)でございますけれども、この推進の意義といたしまして三つを大きく掲げてございます。グローバル人材育成、初等中等教育の質の向上、国際的通用性の三つでございます。
 一つ目については、国際的な視野、また、将来の社会課題に対応するグローバル人材を育成するという点。
 また、二つ目については、IBと日本の教育政策では高い親和性がございますので、そこで主体的、探究的な学びを行っていただくという点。
 そして、三つ目については、IB資格を活用した国内外への進路の多様化、大学の国際化に貢献するという点がございます。
 このような意義を掲げながら、当初は、2013年から日本語DPを導入、こちらでIB機構との協力の下、DPの一部科目について、日本語での授業、そして最終試験の受験を可能にするということで、IB教育を実施する学校や教員の負担の軽減を図ってまいりました。
 また、2017年からは高等学校学習指導要領との読替えを行ってまいりました。これによって、両方を履修することによるIB生や学校等の負担を軽減できる。そのようなものにも支援をしてまいりました。
 加えて、2018年度からは、IB教育推進コンソーシアムの設立、こちらはIBの普及促進活動を行うことを目的といたしまして、IB校等へのきめ細やかな支援体制を構築してまいりました。
 具体的には、地域の実情を踏まえたコンサルティングやセミナー等を通じた情報交換等の促進などが挙げられます。
 
 次のページは国際バカロレア認定校等数の推移となってございます。色分けについては、黄色が候補校、グレーがDP、オレンジがMYP、青がPYPとなっております。一番右側が9月30日時点の数となっておりまして、トータルが184校でございます。
 基礎資料集のほうに他のデータも載っておりますので、必要があればそちらも御参照いただければと思います。
 続きまして、ほかの会議の動きも御紹介させていただければと思います。
 次期教育振興基本計画に向けて、中央教育審議会のほうの教育振興基本計画部会において、本年3月よりこれまで8回開催をされております。その中で検討されております考え方(案)のほうから、グローバル人材育成について抜粋したものを掲載させていただきました。読んでいただければお分かりになる点は非常に多いと思いますが、国際バカロレアを学んだ学生さんたちに期待されるような活躍、そういうものが書かれているかなと思っております。
 例えば、1つ目の丸、2行目後半、グローバルな立場から社会の持続的な発展を生み出す人材として、地球規模の諸課題を自らに関わる問題として捉えるということでしたり、また、二つ目の丸、1行目、日本や外国の言語や文化を理解し、日本への愛着や誇りを持ちつつ、グローバルな視野で活躍するための資質・能力の育成が求められている。こういったところが国際バカロレア機構のカリキュラムで学んだ学生さんたちも共通してくるようなところかなと思っております。
 また、この会議も含めて様々な場で、グローバル人材、グローバル化という点について議論がなされておりますので、今まさにこのような有識者会議において、国際バカロレアの普及促進はどうあるべきかと議論いただくことは時宜を得たものと思っております。
 
 IB校以外の学校からのIBに対する期待の声、また、IB校からIB校以外の学校へのIB教育の好事例の波及に向けた取組、これについて少しコメントをいただいておりますので、次のページで御紹介させていただきます。
 一つ目ですけれども、IB校以外の学校からの期待の声ということで、授業改善のためにIBの授業を見学したい。
 また、知識の理論の指導事例を総合的な学習の時間で活用したい。
 また、IBの効果や好事例を情報収集した上で、その上でIBの教育手法を授業に導入したいということなどがございます。
 また、IB校からの発信といたしましては、自治体内外からの学校見学を積極的に受け入れていらっしゃいます。
 また、初任者研修など自治体内の教員の方が必ず受講する研修にIBを取り入れているというところもございます。
 そして、IB校の教員の方々の中には異動される方もいらっしゃいますので、転勤先の学校でもIB教育の好事例を取り入れた授業、こういうものを行っていただければということを促しているというようなこともございました。
 このように現場の声を聞く上でも、ぜひIB教育の好事例の横展開、こういうものが求められているなと思うわけですし、また、そのためには幅広い学校での教育に取り入れてもらうための方策を検討する必要があると考えております。
 そして、IB教育の効果や好事例を幼稚園段階から大学まで幅広く波及させることでIBの導入促進にもつなげていくと、こんなことが考えられると思います。
 このようなことを踏まえまして、第1回、本日でございますけれども、引き続き、様々な観点で、皆様から御意見、御議論いただければと思っております。
 私からは以上です。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。それでは、この資料3に関しまして御意見等ございましたら、リアクションから手を挙げるを押していただきたく思いますが、ここまではいかがでしょうか。大丈夫でしょうか。何かありましたら、続いての御説明の後に併せて御意見、御質問いただければと思います。
 それでは、続いて、議題3の主な検討事項(案)について移ります。
 まずは事務局から資料4の説明をお願いします。
 
【事務局(出口)】
 資料4、国際バカロレアの普及促進に向けた検討に係る有識者会議における主な検討事項(案)として説明をさせていただきます。
 上の3行、この辺りが全体的な流れをまとめたものになっておりますけれども、読み上げます。
 IB教育の効果や好事例を波及させることで、初等中等教育の発展に資するとともに、IBの導入促進につなげる。また、IBを活用した大学進学を拡大するほか、IBの教育効果等を把握・発信することで、IBのさらなる普及につなげ、好循環をつくり出すということで、全体をまとめながら好循環をつくり出すような取組を進めていければと思っております。
 具体的には、丸1 から丸4 に書かせていただいておりますが、丸1 が幼小中学校段階(PYP、MYP)でのIBの普及についてでございます。幅広い学校での教育に取り入れてもらうためにはどんなことをやったらいいのかと。例えば各地域の公開授業やアドバイザーの方々を通じて、IB校以外の学校にもIB教育の効果や好事例を波及。また、生徒への教育という観点ではもちろんでございますけれども、こういう教育を通じて、教員の方々もIBを通じて成長されているというお話も伺っております。
 二つ目、高等学校段階(DP)でのIBの普及ですけれども、こちらの具体例といたしましては、公開授業やアドバイザー、また、このほか、大学入試でのIBの活用状況等の情報を発信することで、様々な方々に御活用いただけるのではないかと思っております。
 本日の有識者会議では、この1番、2番、これについて特に御議論をお願いしたいと思っておりまして、そのため、この後、有識者の方々からヒアリングを実施させていただければと思っております。
 また、続きまして、丸3 番、こちらは大学入試でのIBの活用促進、進路の多様化のための方策ということで、具体的な御意見をいただければと思っております。令和3年12月現在では、IBを活用した入試を行っている国内大学は68大学ございます。この大学の名前も基礎資料のほうには入ってございますけれども、こういう様々な大学で具体的にどういうような取組を行っているのかというようなお話もぜひ聞かせていただければなと思っています。
 また、最後、丸4 番ですけれども、IBの教育効果等の把握、検証ということで、どういう観点で調査をしていけば、その調査データなどが生かされてくるのかという調査項目も含めて御意見をいただければと思っております。そのような意見を踏まえながら、来年度、調査研究などもできれば実施していきたいと思っております。
 また、今、御説明させていただいている主な検討事項(案)については、事務局でたたき台として作成させていただきましたけれども、これそのものについても御意見を後ほど伺えればと思っております。
 事務局からは以上です。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。先ほど、資料3でIBに関する基本的な情報について御提示いただきまして、今、資料4として我々に付託されました検討事項の案を御提示いただきました。
 丸1 、丸2 を中心に今日はヒアリングをするわけですけれども、これまでの事務局の説明に対して、御意見、御質問がある委員の方はいらっしゃいますでしょうか。よろしいでしょうか。随時、ヒアリングの後にでも御質問等いただければと思いますが。この丸1 、丸2 に関してヒアリングを行うわけですが、この検討事項の案も含めて、私どもは検討を付託されているということでございます。
 まずは、それでは、この丸1 、丸2 を中心に、本日、有識者ヒアリングを行いまして、その後、まとめて御意見、御質問等を伺う形とさせていただきます。よろしいでしょうか
御協力ありがとうございます。それでは、議題4、有識者ヒアリングに移ります。
 事務局から流れの御説明をお願いします。
 
【事務局(出口)】
 承知いたしました。有識者ヒアリングの流れを御説明させていただきます。
 発表時間は、皆様、各15分ということで、ぜひこの時間は守っていただければと思います。発表者の方々については、本日、香美市教育委員会から白川教育長、田村指導主事にお越しいただいております。また、高知国際高等学校校長、髙野委員、こちらのヒアリングも引き続きよろしくお願いいたします。高知県の取組として、お二方御発表された後に、まとめて質疑を3分程度取らせていただきます。その後、札幌開成中等教育学校校長、宮田委員、こちらもよろしくお願いいたします。その後、質疑を3分程度挟みまして、仙台育英学園高等学校秀光コース教頭、石田先生、本日はありがとうございます。よろしくお願いいたします。その後、質疑を3分程度という流れで説明させていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
【岩崎座長】 
 ありがとうございます。それでは、今事務局から御説明のあった流れで、非常に時間、タイムマネジメントを厳格にしないと難しい運営になるので、御発表の方々は各15分ということを守っていただきたく思います。どうかよろしくお願いいたします。
 それでは、最初に、香美市教育委員会の白川教育長、田村指導主事、よろしくお願いいたします。
 
【田村指導主事(香美市教育委員会)】
 よろしくお願いいたします。資料のほうを共有させていただきます。
 
【白川教育長(香美市教育委員会)】 
 皆様、こんにちは。教育長の白川景子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。私のほうからは、このプレゼン資料の3枚目までにつきまして、香美市がどういう教育を行いたいのか。どうして導入したのか。公立学校でございますので、人事に関する課題は何かと、この3点につきまして簡単に御説明をさせていただいた後、詳細につきまして、実践を田村のほうから話をさせていただきたいというふうに考えております。
 それでは、まず、1ページ目でございます。
 香美市におきましては、まちづくりは人づくりという精神の下、「郷土を愛し、未来を拓く人づくり」をコンセプトに、香美市にある教育資源を最大限に活用する教育施策を取っております。併せて、社会が急速に変化している中におきまして、香美市の子供たちがしっかりと探究力を伸ばす教育を進めることによって、香美市を持続可能なまちとしてつくっていってほしい、人として育ってもらいたいというところで教育を展開してございます。その中におきまして、IB教育は、こうした私どもの施策の中核を担う役割を持ち、十分に子供たちの力を伸ばしていけるものだというふうに確信をいたしまして、導入を進めたところでございます。
 基本理念の下に示してございます丸四つ、この四つが、香美市の理想とする子供像、学習者像でございますけれども、これと、IBの10の学習者像もぴったりと重なるというところにすごく強みを感じたところでございます。
 では、なぜ香北中学校区なのかというところでございますけれども、まず、1点目につきましては、既にこの香北中学校区、大宮小学校、香北中学校の1小1中が香北町という町にございます。ですから、小中一貫教育を視野に入れた教育を導入していきたい。しかも、そこは探究の学びでつないでいきたいという思いがございましたので、校区としても非常に適切であるというふうに考えました。
 併せて、外国語教育や総合的な学習の時間でございますとか、食育教育などの推進に比較的早期から取り組んでございましたので、IBを取り入れることに先生方も大きな抵抗はない、むしろ喜んでやっていただけるであろうというところも見通しておりました。
 最後に、規模的にも非常にいい規模でございまして、児童数166名、生徒数60名といった小中一貫の学校の中で、地域を、ローカルを教材とし、グローバルな考え方を身につけさせることにも適しているというふうに考えました。
 やはり課題となってまいりますのは、公教育というところでございますので、人事異動がつきものでございます。IB教育に一定、造詣の深い教員を毎年毎年異動で代わっていくということにはなりませんので、5年から7年のスパンで、まず、その教員の育成を図っていく必要があるというところです。
 そういうことから申しますと、メリットとしてはそこに掲げました3点、デメリットといたしましてはそこに掲げました4点、これらのことは現在課題となって取り組んでおるところでございます。
 それでは、実践に移ります。簡単ですみません。以上です。
 
【田村指導主事(香美市教育委員会)】
 続きまして、IB導入による児童の変容ですが、高知県立高知工科大学が香美市にありまして、そちらの協力の下、令和2年度の大宮小学校、IB教育を導入した年の小学4年生が小学6年生になるまでの3年間を追跡したところ、IB教育を中心に置いた教育によって、子供たちの変容というところが大きくこの4点で見られたということです。まさしくIB教育が目指す力というものをしっかりと子供たちはこのような形で見せてくれたということが分かろうかと思います。
 続きまして、IB導入に当たり関係者で調整する上での課題というところでお話をさせていただきたいと思います。
 連携の体制におきましては、この四つ、学校、保護者、地域、自治体が一緒になってIB教育をつくっていくという視点で考えたときに、まず、学校には学校長の理解とリーダーシップというものが非常に大事となりまして、香美市教育委員会がまずIB教育をしっかりと理解し、学校と手を取り合って進めていく、そういった意味で学校長の存在というものは非常に大事でございました。
 自治体とありますが、本市は、人づくりはまちづくりという視点で取り組んでおりますので、議員さんの理解を得ながらのしっかりとした自治体の応援というものは十分だったかと思っております。
 そして、地域なんですけれども、大宮小学校・香北中学校合同の学校運営協議会、育てたい子供の姿を共有し、学校教育に参画してくださる方々、そして、地域学校協働本部といいまして、実際の学校の教育活動に直接実動部隊として支援をしてくださる方々、この組織がありましたので、まずはIB教育を導入する上でも、学校運営協議会と協議をし、お互いが腹を割らせた形でIB教育をスタートすることができたというところです。
 しかしながら、課題としましては、やはり保護者の声です。そこに書いてあるような保護者の心配事というものはやはり避けては通れないものがありました。数多くの方々が賛成で応援型ではあったんですけれども、やはりこういった意見に対して、いかに保護者さんに理解をしていただきながら進めていけるかというところが課題でした。
 その中で、学校と地域が手を取って教育を進めていく中で、保護者IBアンバサダーチームというものが結成されました。こちらは、保護者の有志が集まって、小学校と中学校合同でIB教育を応援していこうじゃないかということで、様々な広報誌に小学校、中学校の活動を掲載したり、そして、地域の中で保護者も地域も巻き込んで、ワークショップを主催したりしながら、保護者と地域をしっかりとつなぐことによって、保護者の理解というものも少しずつ進んできております。また、子供たちが変化している、成長している姿を間近に見ながら、保護者の方々は少しずつ不安が払拭されているというところです。
 続いて、IB教育の広がりということで、非IB校にIB教育の導入事例を波及させる取組としまして、本市のほうでは、昨年度の実績になりますけれども、IB教育に係る研修会を次のように行っております。
 中でも、市の教職員を対象としたものが4点ございまして、校長会、教頭・研究主任会、こちらのほうは、やはり学校の核となる管理職や研究主任を対象として、実際にIB教育の実践を大宮小学校等で見ていただいて、その後、どのような力が求められてきているのか、研究協議等を行ってまいりました。
 香美市立教育研究所研究発表会というのは、毎年1回、全教職員を対象に行っておるものです。IB教育の実践を大宮小学校、そして候補校である香北中学校、2校に毎年発表してもらっていますが、昨年度で2回目を迎えております。1年目、2年目と、先生方に感想を書いていただくのですが、こちらは昨年度の感想となっており、非IB校の教員が、自身の実践を重ね合わせて、IBの考え方の重要性を感じています。見ていただくと、下から三つ目、学習指導要領とは全く違う教育内容ではないとか、最後にもありますけれども、身につける資質・能力は同じであるというところから、先生たちの声から、IB教育と国が目指す学習指導要領の親和性というものを感じているということを改めて私たちも感じたところです。
 これらを踏まえまして、今年度は、気付きというところになります。特に総合的な学習の時間を核としたカリキュラムマネジメントと書かせていただいておりますが、教員にとって非常に一番近しく感じられる、この総合的な学習の時間にIB教育の考え方を取り入れるというのは、ハードルが低いというか、取り入れやすいというところがあろうかと思っています。
 来年度は、右側に行きまして、協働研究というところにさらに一歩進んでいきたいと考えています。
 学び研と書かせていただいておりますが、既存の研究会がございます。各中学校区にあります小中合同での研究会になるのですが、そちらの生活・総合的な学習の時間部会を活用しまして、IBの考え方を取り入れた単元構想をつくっていきたいと考えているところです。
 それができますと、今度は実践・共有というところにつなげ、自校での実践を学び研で共有していくというところで、香美市全体にIB教育の考え方を広げていく。そして、各校の学びを深めていきたいと考えているところです。
 最後になりますが、公立学校である以上、教育長も申しましたとおり、異動というものはつきものです。その中で、大宮小学校と香北中学を持続可能なIB教育にしていくという視点と、IBの考え方を取り入れた非IB校への普及と、両方の視点で考えたときに、持続可能なIB教育につきましては、学校運営を支える、香美市国際バカロレア教育研究機構というものを立ち上げたいと考えているところです。
 これまで御尽力いただいたバカロレア教育の関係者の方々、有識者の方々を構成メンバーとしまして、この組織を立ち上げることによって、学校長を支える、そして学校を学校長が支えるというふうな、うまくサイクルが回るようにしていきたいと考えているところです。
 併せて、地域と学校をつないでいくというところでは、今後も保護者IBアンバサダーチームのお力を借りながら進めていきたいと考えているところです。
 そして、IBの考え方を取り入れた実践というところでは、先ほど説明させていただきました、既存の研修会でしっかりと広げていきたいです。
 こちらの両輪がしっかりとうまく絡み合うことによって、香美市の教育の質の発展というところにつながっていくのではないかと考えているところです。
 以上、早口になりますが、こちらで終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 
【岩崎座長】
 白川教育長、田村指導主事、ありがとうございました。とてもすてきな内容で、すぐに質問したいところですけれども、一応流れとしましては、次に、同じ高知県内の取組として、高知国際高等学校校長の髙野委員から発表をお願いいたしたいと思います。その後に併せて先生方の質問と御意見を伺いたく思います。
 それでは、髙野委員、お願いいたします。
 
【髙野委員】
 承知いたしました。それでは、画面共有をさせていただきます。
 高知県におけるIB教育の導入についてということで、お話をさせていただきます。
 まず、本校の概要ですけれども、本校は併設型の中高一貫教育校になっております。中学校の入学定員80名を3クラス展開しております。高校のほうは、グローバル科80名、2クラスと、普通科200名、5クラスの1学年7学級規模の学校です。全校生徒で、定員規模で言いますと1,080名の学校になると。
 中学校のほうは2018年に始まりまして、高校は2021年の4月に始まりましたので、現在、高校2年生までが在籍をしております。
 中1から高1までがMYPのプログラム、それから、高1の11月から高3の10月までがディプロマプログラムを行っておりますけれども、現在、ディプロマプログラムを行っている生徒は、高2生が21名、高1生が12名というような形になっております。
 この高校のグローバル科の中にDPコースと探究コースというのを置いておりまして、これは高校1年の段階から選択しますが、このDPコースのほうがディプロマプログラムを行うコースです。探究コースのほうは、高1までMYPを行った後は、通常の学習指導要領の内容を行っていくという流れになっております。
 IB導入に当たり、関係者で調整する上で課題となった点等についてですが、本校の場合は、平成26年10月に高等学校再編振興計画を策定しましたが、その中で高知市内の大規模校を統合して導入を目指すことになりました。この統合自体は、高知県はですね、高知市に大体4割ぐらいの中学生が集まっていますので、中山間地域の高校は残し、そして市内の学校を先を見据えて統合するということで、こちらのほうはかなりいろんな議論があったのですが、国際バカロレアを導入するということについては、皆さん、おおむね賛成ということで、非常に感謝をしておるところです。
 そして、導入をしていくに当たりましては、坪谷委員も委員に入っていただいていますが、高知県グローバル教育推進会というものを平成26年の秋から立ち上げまして、いろいろな御意見をいただきながら認定に至っているということです。
 そして、また、県民の皆様に広く御理解いただくために、シンポジウムや、それからワークショップ、こういったものも、ちょうど国の御支援も頂いてできましたので、多くの方に御参加いただくことができております。そのほか、具体的に学校を紹介するための体験セミナーですとか学校説明会等々、回数を重ねております。
 県内でIB校以外の学校にIB教育を波及させるための取組ですが、まず、県として非常にありがたかったのは、IB公式ワークショップが無償の期間がございました。なので、これには本校に在籍する教員以外も、累積すると100名を超える教員がIBワークショップに参加することができたので、このことは理解を深める上でも非常に大きかったのではないかと思います。
 それから、本校主催の授業研究大会を年1回開催しております。今年も11月に開催する予定で県内外にお知らせをしておりますが、今、ちょうどコロナで、なかなか県外からお越しいただくことはできておらず、昨年も県内の中学校、高校の先生方に多く御参加していただいて開催することができました。
 それから、MYPになりますけれども、サービスアズアクションですとかパーソナルプロジェクト、それから、ディプロマプログラムのTOKなどの成果発表会を開催しておりまして、これには他校の先生方も御参加いただいておりますし、保護者の方にも御自分のお子様の姿を見ていただくと。このことが非常に理解につながっていくと考えております。
 また、高校のほうでは教育研究会の組織がございまして、教科ごとに研修会を行っております。私は理科教員なので理科の大会に出ております。観点別が高校も今年からスタートしたのですが、その発表は本校の教員が行うようになっております。
 それから、高校段階でIBコース以外での活用事例ということですが、普通科や、あるいはグローバル科の探究コースにおきましても、ATLスキルを意識した授業を展開するように授業改善に取り組んでいるところです。
 それから、総合的な探究の時間のプログラムにつきましても、将来的には、いわゆるTOKの縮小版であるとか、あるいはExtended Essayの縮小版といったものを普通科の生徒にもやらせたいというふうに考えております。
 現在は、さらにその簡易版というような意識づけで、グローバルシチズンシッププロジェクトというものを実施しておるところです。
 それから、やはりIB科目をできるだけ取らせてあげたいというふうなことも考えておりまして、現在、グローバル科の探究コースの生徒もTOKは選択できるようにしていますが、例えば、英語とかそういったものは普通科でもいけるのではないかなということは考えておるところです。
 これは授業の中においても、このATLスキルを前の黒板に貼り出しまして、この写真は普通科の授業の様子なんですが、こういったところを意識して授業に取り組んでいきましょうということで、全ての授業で進めております。
 地域間連携ということで、今日は香美市教育委員会の御発表がさきにもありましたけれども、実は本校のほうが先に走っておりましたので、本校からユニットプランの資料提供ですとか、あるいは国際中学校から既に香北中学校のほうに1名異動をしておりますので、そういった人事異動による人事交流といったことも少しずつですけれども進めております。
 また、他の都道府県との連携としては、この後発表される札幌開成さんはじめ、公立のIB校のコーディネーターのオンライン会議を定期的に行っておりますし、本校は東京学芸大附属国際中等教育学校様のほうに派遣研修をもう平成26年からずっとお願いをしているのですが、本校も今年度、熊本県の八代中高さんから、教員研修として、2か月間、コーディネーター候補の方を受け入れる取組などを進めておりますし、また、生徒交流のほうも、埼玉の大宮国際さんのほうに模擬国連に行く等、進んでおります。
 そして、人事異動等によるメリット、デメリットですけれども、まず、メリットとしましては、やはり本校の教員がほかの学校に異動もしておりますので、そういうところで、IBの成果として、指導と評価の一体化、そういったものを広めていけるのではないか。
 そして、本校に転勤してきた教員がIBの手法を学ぶことができる。
 ただ、デメリットとしましては、やはり教員を育成していく体制の維持が困難で、今現在はできるだけティームティーチングを導入していただいてOJTを進めていますが、県全体の生徒数が今減っていますので、本校にTTをつけるだけの余力がなかなか少なくなっていると、そういったところが課題ではないかと思います。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました、髙野委員。
 意見交換は追って時間を取りますけれども、ここまでの二つの御発表についての事実確認等に関しまして、質問等ございますでしょうか。いかがでしょうか。
 じゃあ、何もないということであれば、私、一つ質問なのですが、香美市の中学校区が三つあるという中で、一つがIB校で、一つがイエナプランで、一つがカリキュラムマネジメントと、三つ比較して行われているという理解でよろしいでしょうか。
 
【白川教育長(香美市教育委員会)】
 比較といいますか、実は香美市は三つの町村が合併をいたしました。これは13年前になりますけども。そのときから、もう既に地域の状況、実態といったものが大きく違ってございまして、それぞれの地域の特性を生かした新しい学校づくりを目指したいと考えたところでございます。
 ですけれども、ベースは、探究的な学びによって自分の思いや願いを社会に出たときに実現できる子供を育てていくということが、香美市の持続可能なまちづくりに貢献できるというふうに考えましたので、それなりの特徴に合わせたプログラムになってしまったということです。
 ただ、やはり根底といいますか、ベースはIBのプログラムの考え方が中心となっております。特に総合的な学習の時間などからスタートして、横に広がりをつけていきたいというふうに考えておるところでございます。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。口火を切らせていただきました。どなたかほかに御質問はございませんでしょうか。
 黒田委員、お願いします。
 
【黒田委員】
 ありがとうございます。ちょっと内容に触れるようなことでもよろしいでしょうか。事実確認ということだけではないのですけれど。課題について伺いたいのですが、先ほど、導入の課題について御説明いただいてありがとうございました。その中に費用のことというのが入っていなかったと思うのですが、その導入のときの、例えば、そのスイスに払う費用とか何かそういったことが課題にならなかったかということと、それから、ほかのユニットコストといいますか、その学生当たりにかかる費用というのが、IBじゃないものとの比較で高くなってしまうというような可能性があるのかなと思うのですが、そういったことが何か公平性というような観点で問題にならなかったかということを伺えますでしょうか。よろしくお願いいたします。
 
【岩崎座長】
 それでは、香美市、続いて高知国際高等学校の順でお願いします。
 
【白川教育長(香美市教育委員会)】
 詳細については田村のほうから御説明いたしますけれども、やはり合併をした時点で、特にその香北町ですとか物部町というところは、一定の負担というか、いろいろなデメリットも考慮されながら、香美市として新しいまちづくりをしていきましょうというところで、一定、その子供たちへの教育支援というのはしっかり保障していくべきであろうという、市全体の意識の統一はございました。
 具体的に、田村のほうから。
 
【田村指導主事(香美市教育委員会)】 
 導入に当たる予算というところにつきましては、1年目は市の完全な一財と言われる予算、市の単独の予算でしていたんですけれども、2年目から、ふるさと納税を活用させていただくようになりまして、ふるさと納税により、特にそこのことについては問題になるということは全くありませんでした。
 冒頭にお話もさせていただいたように、人づくりはまちづくりというところで、教育でまちを活性化していくよというところが大きなうちの取組になりますので、そういった意味でも、予算のところは特に大きな問題にはなっていません。
 配分の公平性につきましても、3中学校区の大規模から極小規模の様々な地域にある学校がありますので、そこに合わせた取組に予算は充てているということによって、特別IB教育だけが光っているという感じはないと認識しております。
 以上です。
 
【岩崎座長】
 黒田委員、よろしいでしょうか。
 
【黒田委員】
 ありがとうございます。
 
【岩崎座長】
 じゃあ、続いて、髙野委員、お願いします。
 
 
【髙野委員】
 公立学校でIBを導入するというのは、地方においても、都会に住んでいなくてもこういったIB教育の機会を提供することができるということに、まず意義があるというところが前提でございます。確かにコストはかかるのですが、高知県の場合、例えば、農業高校、工業高校、それから水産高校、そういったところにもかなりの予算を投入してやっていますから、やはりその高知県が今後産業振興の中で海外の方とも対等に渡り合える人材も要るよねと。もちろん、水産業を担う人、農業を担う人もいるよね。そういう中での一つのカテゴリーとして捉えていただけているものだというふうに私は理解をひとつしています。
 それから、本校の場合は学区がないですので、高知県にお住まいの生徒さんであればどなたでも受験をしていただいている。ただ、幾らでも定員を増やすということは、やはりそのほかの市町村の中学校、あるいは高校とのバランスもありますので、その中でこういった数字になっているということで、基本的には全部県の税金で本校の場合は行っておりますので、個人的にその最終試験を受けるとかいうときにはもちろん個人負担になるのですが、授業料の中で御負担いただくということはありませんので、どういった御家庭の経済状況であってもこういったチャンスがあるというところで進めさせていただいております。以上でございます。
 
【岩崎座長】
 黒田委員、よろしいでしょうか。
 
【黒田委員】 
 ありがとうございました。
 
【岩崎座長】
 公立の学校にとって根本的なテーマの質問だったと思います。
 ほかにございますでしょうか。荻野委員、お願いします。
 
【荻野委員】
 御説明ありがとうございました。今お聞きしていまして、香美市の校長を支える組織について非常に興味深くお聞きしました。意外とこの部分でおざなり感がありまして、私も校長を務めていまして、教育内容については、様々な支援の情報が入ってくるんですけれども、校長を支えてくれるという点では、公立学校の場合には教育委員会、私どもの場合には東京学芸大学になるのですが、なかなか組織的にやってくれるというところがですね。そういう視点はとてもいい視点だなというふうに考えてお聞きしました。
 校長を支えると言いますと、とかく、人、物、金と、経営の3要素である人、物、金を相談ということになりがちだと思うのですが、こちらのネーミングを見ていますと、国際バカロレア教育研究機構とあるため、どちらかというと、人、物、金というマネジメントよりも、もっと内容に関わることなのかなという感じもします。
 もし、私が聞き漏らしていたら大変申し訳ないのですが、これはどんな形で校長を支えるという構想なのでしょうか。大変興味深く聞かせていただきました。お願いします。
 
【岩崎座長】
 香美市の方、お願いします。
 
【白川教育長(香美市教育委員会)】 
 お答えになればよろしいのですけれども。基本的には、やはり香美市におきましても、まだIBを導入したばかりでございまして、小さな課題から大きな課題まで、校長が思い悩むことというのは決して少なくはないわけでございます。それこそ人材育成についてもそうです。
 けれども、そのIBの非常に有効な教育を子供たちの力とするために、どういうふうにPDCAを回していけばいいのかとか、あるいは地域の方々への一層の理解、それから支援を賜るにはどういう方法があるのかといったようなことの課題をまずは共有し合える同志といいましょうか、そういう考え方の、内容もしっかり分かっていながら、共有して、共に解決していくという人々の存在がとても重要ではないかというふうに考えました。
 併せて、学校のPDCAがうまく回っていかないときにはこういう方法でやったらうまくいったというような、そのIB校ならではのノウハウ、これまでの蓄積をお互いに共有し合ってアドバイスができていく、そんなところを今は目指しておるところでございます。
 すみません、以上でございます。
 
【荻野委員】 
 ありがとうございました。期待していますので、また教えてください。
 
【岩崎座長】 
 よろしいでしょうか。ほかはよろしいですか。髙野委員、お願いします。
 
【髙野委員】 
 私も教育委員会にいたり、学校にいたりして、自分が教育委員会にいるときは頑張って支えてきたつもりなのですが、自分が学校に来ると誰が支えてくれるんだという心配もあったものですから、本校も参考までに事例を共有します。本校は学校運営協議会を今年から立ち上げまして、本来、学校運営協議会って、地域の方とか保護者の方が委員で入るのですが、うちの場合は、この有識者会議の委員でもある、坪谷委員と竹内委員が実は学校運営協議会の委員で、ほとんどIBの専門家へお願いして、私どもの取組について、いろいろ御助言いただく、あるいは学校の方向性がIB校としてより良い方向に向かっていることを、保護者に向けて権威づけをしていただくといった形で学校を支えるための学校運営協議会というものを今年スタートさせています。以上でございます。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。荻野委員、よろしいでしょうか。
 
【荻野委員】
 ありがとうございました。大変参考になりました。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。それでは、いろいろ刺激的でありましたので、ほかにも御質問が多くあるかとは思いますが、まずは一通り、ほかの委員の方々の御発表を伺いたく思います。
 それでは、次に宮田委員から、こちらも公立になりますが、札幌開成中等教育学校の取組について御発表をお願いいたします。
 
【宮田委員】
 市立札幌開成中等教育学校の宮田でございます。
 それでは、私から、札幌市におけるIB導入に関わることについて説明をさせていただきます。まず、IB導入の経緯について説明させていただきます。
 本校は中等教育学校として設置されておりますけれども、この中高一貫教育に関わることが計画に位置づけられたのは、平成15年(2003年)に札幌市立高等学校教育改革推進計画になります。
 本校の前身となります札幌開成高校におきましても、二つ目にあります、全日制国際科学科、正式には、理科、数学、英語に特化した専門学科としてコズモサイエンス科が設置されました。現在も、本校の後期課程はコズモサイエンス科というふうになっております。
 この札幌市立高等学校教育改革推進計画に位置づけられた中高一貫教育ですが、様々な検討を経て、平成23年(2011年)、札幌市中高一貫教育校設置基本構想が発表され、その設置形態を中等教育学校とし、開校をその4年後の平成27年度(2015年度)というふうになりました。
 この基本構想には、育てたい生徒像を、6年間の連続した学びを生かして、札幌で学んだというアイデンティティーを持ちながら、将来の札幌や日本を支え、国際社会で活躍する知徳体のバランスの取れた自立した札幌人の育成として、その育てたい力として、生徒のなぜだろうという素朴な疑問から出発し、生徒自らが課題を設定し、多面的に物事を捉えたり、情報を収集分析し、強化したりすることなどを通して、課題発見、解決力や思考力、判断力を育てるとともに、考察した内容をまとめ、それを発表したり討論したりするなど、共に学ぶ仲間と深め合う取組を通して豊かな表現力を育成する。また、各教科の学習や特別活動等を通して、自らの将来の社会的自立や生き方を主体的に考え、自らの将来を切り開く力を育てる。これらの力を育てることにより、変化の激しい現代社会を力強く生きていくための自立の基礎力を育てるということにしました。
 平成25年(2013年)に策定された札幌市まちづくり戦略ビジョンにおきましても、産業人材創造戦略に、将来を担う創造性豊かな人材の育成として創造性を育む教育プログラムの充実が盛り込まれたところです。
 これを受けまして、先ほど、育てたい力として三つの力を挙げましたけれども、このことを実現するために、既存の教育方法ではなく、IBの教育プログラムを活用することが最善であるということになり、平成26年(2014年)に策定された札幌市教育振興基本計画に、本校がIBのプログラムを活用して課題探究的な学習の推進に関わるモデル研究をすることになり、現在に至っております。
 次に、導入に関わる課題ですけれども、まずは教員数が挙げられました。本校は1学年4学級として、定数のほかに、加算、加配をいただき、学校運営を進めることとしました。
 現在は、前期、後期合わせて74名の教員がおりますが、そのうち9名が外国籍の教員です。当初は、グローバル人材育成推進員(GEA)として外国籍教員を採用しており、計画的に採用してきましたが、最終的には9名まで採用することができました。現在は、GEAは終了しておりますけれども、外国籍教員9名を維持しております。
 一番の課題は、英語以外の教科・科目についての人材発掘が困難を極めたということです。導入時も同様ですけれども、昨年度の例を挙げますと、DPの音楽を担っていた外国籍教員が母国に帰ることになり、代わりに外国籍で音楽を指導できる教員の発掘に乗り出しましたけれども、学校、札幌市教育委員会で数名の外国籍の方と面談を行いましたが、公立学校として難しいことですが、条件面で折り合わずに、最終的には、日本人で音楽と英語の免許を持っている教員が札幌市立学校にいたことから、その方に今年度から本校で指導をしていただいているところです。
 また、現在働いている方の雇用の維持としても、外国籍教員は、職名は教諭ではなく常勤講師として勤務していただいております。それも1年間の契約となっており、身分の不安定さがありました。
 札幌市教育委員会では、昨年度から、一定の勤務条件をクリアした外国籍教員に、教員採用選考検査の受検を認め、合格した場合、正規の教員と同じ労働、勤務条件としたところです。
 また、施設・設備につきましても、DPの外部試験を行うための部屋の確保に困難を極めたということも当初聞いておりますけれども、これは解決できたところです。
 また、札幌市や札幌市教育委員会の計画により、潤沢ではありませんけれども予算づけが行われること。それから、市民に理解をしていただくため、札幌市民ホールでのフォーラムの開催や学校で学校説明会などを数回開催しました。
 計画にもありますように、札幌市立学校への普及啓発をすることによって、市民への理解を図ることとしているところです。
 次に、その札幌市立学校への普及啓発ですけれども、計画にありますように、本校は課題探究的な学習のモデル校となっており、札幌市教育委員会主催の研修の講師を担っております。今年度は、中学校教員向けと高等学校教員向けの研修にそれぞれ2名ずつ教員を派遣し、研修の講師を担っております。
 また、小中学校の教員の研修会である札幌市教育研究推進事業、高校の教員の研修会である札幌市立高等学校教科別研究協議会において、それぞれの教科に分かれての研修を行い、各研修において実践報告を行っております。
 また、教員の人事異動についても、本校での教育実践のノウハウを異動先で実践することや、本校から管理職になる方も多く、学校運営、学校経営という視点でも本校での実践の普及啓発をしていただいております。
 本校では、1年生から4年次生までは全員MYPのプログラムを対象としております。また、5年次生、6年次生の希望者はDPを選択できることになっています。
 5、6年次生のDP選択者以外の生徒は、Inquiry Programmeと題して、本校独自のIPコースを設定し、DP以外の生徒はIPコースを選択しています。
 IPの運用については、これまで、4年次生までのMYPと、今年度、高等学校も新しい学習指導要領が入りましたけれども、来年度5年生、いわゆる高校2年生相当に新しい学習指導要領が入りますので、その学習指導要領を踏まえながら行うこととして、現在、方針等をしっかり定め、来年度から本格的に行うこととしております。
 IPでは、特にDPのコア科目であるTOK、Extended Essay、CASについてそれぞれのエッセンスを活用して科目を設置しております。
 最後のスライドですけれども、最後に教職員の人事異動についてお話ししたいと思います。
 本校では、前期籍の教員が前期課程の授業だけを、後期籍の教員が後期課程の授業だけを教えるのではなく、例えば、高校から異動してきた教員が中学校1年生の授業を受け持ったり、また、その逆に中学校から異動してきた教員が例えば数学Ⅲを教えたりと、籍に関係なく授業を持ってもらっています。
 ただし、異動については、基本的には異動してきた校種に異動することになり、その期間が前期課程で、新採用及び現職採用は3年程度、この現職採用というのは、札幌市は北海道にありますので、道内の公立学校に勤務していて、札幌市立学校の学校以外から異動して札幌市立の学校に勤務する者を現職採用と呼んでいます。この新採用と現職採用は3年程度、それ以外の教員については5年程度で異動の対象になります。後期についてもそのような形になっています。
 前期籍の教員の異動サイクルが早いことから、ここ数年は毎年15名ほどの教員が入れ替わりをしております。その人事異動に対してのメリットとしては、課題探究的な学習を進める上でのIBのノウハウを他の札幌市立学校への普及啓発がより進むこと、また、IBを経験する教員が増えていくことということです。このIBを経験する教員が増えることについては、新しく着任した教員を含め、自校での工夫として、時間割を工夫して毎週月曜日を午前授業にして、午後、教員研修の時間に充て、IBの教育プログラムの教員への普及啓発について時間を割いているところです。
 逆にデメリットとしては、異動のサイクルが早いことから、IBの経験値が低いこと。その経験値を上げるために、コーディネーターの業務が増えていること。また、DPを担う日本人教員についての育成の計画性、専門性の確保、直接での人事異動ではありませんけれども、先ほどお話ししました外国籍教員の確保については、退職などの際にはその確保に困難を極めているところです。
 今年度、開校8年目を迎え、昨年度、MYPの評価訪問を受け、今年度は、来年2月にDPの評価訪問を受ける予定でございます。そのため、今、その準備を進めているところでございます。
 DPの導入から5年がたちますけれども、これまで10名ほどで推移してきたDPの生徒数も、来年度の5年次生、現在の4年次生ですが、20名を超える希望者が出てきております。DPの運営について、教員の確保、授業の持ち方、授業教室の確保など、新たな課題も出てきており、その課題の解決について現在取り組んでいるところです。
 以上、雑駁ですけれども、札幌市の取組についてお話しさせていただきました。御清聴ありがとうございました。
 
【岩崎座長】
 宮田委員、ありがとうございました。公立学校としては非常に早い段階から導入されて、実績を積み上げてきていただいた札幌開成中等教育学校の取組についての御発表、具体的ないろんな課題も含めて御発表いただきました。
 ここまで公立校の取組についてお話を伺いましたが、宮田委員の発表に御質問等ございますでしょうか。
 山口委員、お願いいたします。
 
【山口委員】
 東北大学の山口と申します。御発表どうもありがとうございました。
 一つ興味深く伺ったのは、数学とか、あるいは理科ですね、そういったところに力を入れているという認識でよろしいのでしょうか。
 
【岩崎座長】
 宮田委員、お願いします。
 
【宮田委員】
 前身の札幌開成高校のときからスーパーサイエンスハイスクールの指定校になっていまして、本年度、3期目の指定を受けて、今年度から5年間、また指定を受けながら、理科教育、数学教育を進めているところです。
 2期目の指定の最後は中学校3年生からの取組をしていたところだったのですが、今年度は中学校1年生段階からSSHの取組をスタートさせるという計画を持っているところです。
 以上です。
 
【山口委員】 
 ありがとうございます。続けて質問させていただいてよろしいですか。
 
【岩崎座長】 
 お願いします。
 
【山口委員】
 私、どうしても、国際バカロレア、あるいはグローバル人材といいますと、文系・理系の分け方には必ずしも賛成しないのですが、文系色が強い部分というふうに特に国内では思っているんですが、こういった科学とか数学、そういったところも取り入れた取組というのは非常に重要だなというふうに思っております。
 その上でなんですけども、この生徒さんたちの進学する分野とか、あるいはそのキャリアはどういう形になっていますでしょうか。
 
【岩崎座長】
 お願いします、宮田先生。
 
【宮田委員】
 御質問ありがとうございます。
 理科、数学に特化するというと、自然科学に特化してという形に思われるかもしれませんけれども、例えば、社会科学とか人文科学とか、そういう科学全般について取組を進めているところです。IBのノウハウを使いながら、その論理的な思考力を培うと、そういうスキルを身につけるためには、やっぱりその自然科学だけではなくて、社会科学、人文科学も有効であるということで、科学全般について取組を進めています。
 御質問にありました大学進学の部分ですけれども、ここはコズモサイエンス科のSSHの取組はあるんですけれども、総じて理系の大学のほうへ進学が多いというわけではなくて、多岐にわたっています。英語も特化しておりますので、理科、数学、英語を特化しておりますので、例えば、その英語に関わる大学に進学する生徒もいます。それから、社会系の課題に対して、データを分析しながら課題研究等も行っておりますので、ですので、そういう方面の研究を行った生徒は、例えば、その経済学部とか経営学部とか商学部とか、そちらのほうにも進学している生徒がいます。
 
【岩崎座長】
 よろしいでしょうか。
 
【山口委員】
 どうもありがとうございます。
 
【岩崎座長】
 理系でIBは、進学含めてなかなか実数がないというような御懸念だったように感じました。
 
【山口委員】
 いや、むしろ、こういった取組は非常に重要なのではないのかなという意味で質問させていただきました。それで、多岐にわたった進学状況であるということも伺うことができまして、ありがとうございます。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。村上課長、お願いいたします。
 
【村上国際課長】
 まず、ちょっと遡って恐縮でございます。最初の香美市の教育委員会様の御発表の関係で、2点ほどお伺いしたいことがございます。
 要するに、これは市町村合併に伴って旧自治体の区分ごとに恐らく中学校学区が三つあるというようなことではないかというふうに理解しているのですけれども、その際に、御案内のとおり、公立の小中学校は、これはいわゆる就学指定によってどこの学校に行くというのは、基本的には住んでいる住所によって決まってくるわけでございます。
 そういたしますと、そういう仕組みの中でその特色のある教育をやるといったときに、極端な言い方しますと、この香北中学校の校区、それからその校区内にある大宮小学校において、ここにたまたま住所があるので、大宮小学校ではIBですよというふうに言われたときに、その辺りについて、その保護者の方が、いやいや、IBとかじゃなくて、例えば、隣の中学校区の一貫教育がいいとか、そういうその御希望のようなもの、声というのは果たしてあるのでしょうか。特に学校運営協議会を設置されておられる、いわゆるコミュニティースクールということだと理解しておりますので、そうしますと、教育課程の基本的な編成方針等についても、この運営協議会に諮るという仕組みになっておるかと思います。
 その辺りで、実際の保護者の方々、住民の方々等の受け止めというのがどういったものであるかということを教えていただければと存じます。すみません。
 
【岩崎座長】
 よろしくお願いいたします。
 
【白川教育長(香美市教育委員会)】
 今の御質問のところが一番気を遣った点でございました。それで、公教育の中でIB教育を取り入れますけれども、全ての教育課程をIBのプログラムで実施をしておるということではございません。カリキュラムマネジメントを行いながら、新学習指導要領に定められた学習内容とミキシングしながら教育課程を組んでいきます。
 そうした中で、育てたい子供像というのは、冒頭にもお伝えをいたしましたように、自ら課題を持ち、自分の考えを協働で多様な人々と話し合い、そして納得解や最適解を見つけるだけじゃなくて、そこに行動に移して新たな問いを見つけていくという、そういう学習サイクルを確立させていくということを大切に考えてございましたので、そういったところで御理解をいただきながら取り組んでいるところでございます。
 以上です。
 
【村上国際課長】
 ありがとうございます。すみません、岩崎先生、今の関係でもう1点だけちょっとお尋ねをさせていただきたいと思うのですけが。
 
【岩崎座長】
 お願いします。
 
【村上国際課長】
 いわゆる市町村立の義務教育小学校ということであるわけなのですけれども、例えば、香美市さんでのこういった取組を、それ以外の公立の義務教育小学校にといったときに、市との関係、それから県との関係があるかと思うのですね。
 先ほど御説明いただきました資料の中で、17ページでございます。県と市ということで、それぞれ教育研究所の秋季連絡協議会だとか、市の校長会だとか、主任会というような書き方をしてあるのですが、例えば県教委の指導主事さんとか、教科ごとのいわゆるその県の主催の研修会だとか、あるいは自主的な教科ごとの研究協議会が小学校でございますね。こういったところとの位置づけというのはどんな感じなのでしょうか。
 
【岩崎座長】
 お願いします。
 
【白川教育長(香美市教育委員会)】
 位置づけってどういうことでしょうか。
 
【村上国際課長】
 関係といいますか、例えば、県の研修会や教科ごとの研究協議会の場で、実際のIBの取組について御発表する、そういったところはおありなのでしょうか。あるいは、ひょっとすると、県教委のその指導主事のほうからお声がかかって、教育研究所のその研究授業なんかでその事例として取り上げる。高知の場合、附属もあるわけですから、そういったところで、例えば、研究授業の一つの題材として取り扱う。その市の中での取組というところを超えて、県との関係で、どういうその位置づけに置かれているかということをお伺いできればと。
 
【白川教育長(香美市教育委員会)】
 頻度でいえば、すごく多いというところではございませんけれども、新しい教育の在り方として、子供たちに求められている資質・能力の育成において、こういった学習展開が非常に有効であるというところで、県のほうで発表させていただいたりというようなことがあります。
 
【村上国際課長】
 分かりました。どうもありがとうございました。お邪魔をしまして、大変失礼いたしました。
 
【岩崎座長】
 村上課長、よろしいでしょうか。今の御回答で。髙野委員、何か補足することとかございますか。
 
【髙野委員】
 私、教育委員会の立場としては高校のほうなので、直接、義務の研修ということは存じ上げないのですが、ただ、本校でも中学校の先生方がたくさん来ていただいて、その本校の実践を見ていただくとともに、やはりどういうふうに、うちも学習指導要領の内容を学習している。ですから、結局、中身は一緒なので、どういうアプローチなのかというところで、非常にその市町村の先生方にも興味を持っていただいているところです。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。突然お願いしまして、申し訳ありません。
 それでは、お待たせしました。竹内委員、御質問お願いします。
 
【竹内委員】
 先生方、どうもありがとうございました。貴重な御発表をありがとうございました。大変参考になりました。
 2点あるのですが、一つは、札幌開成の宮田先生のお話の最後のほうで、これまで、DP生は10人前後で、今は20人以上の希望者が出られているという話を最後いただいたのですが、これは要因として、これまでの取組で地域の理解が深まったのか。あるいは、学校様のほうで何か分析をされているものがあったらお聞かせいただけないでしょうか。
 
【岩崎座長】
 じゃあ、まず、1点目ですね。宮田委員、お願いします。
 
【宮田委員】
 今、卒業世代が、二つの学年が今年の3月に卒業して、今の5年生までがDPの4期生になります。今の5年生までは10名ほどでDP希望生としてDPを選択しているのですが、学校の取組としては、異学年交流等で、いろいろと他の学年の授業だとか、あるいは取組だとか、それから成果発表会だとか、そういうことを異学年交流という形で、授業を見せ合うというか、見に行くというか、そういうことを実施しています。
 また、二つの学年が卒業しておりますので、DP生の進学先等も公になってきています。そういうことを踏まえながら、次年度の5年生、今の4年生が20名をちょっと超えたところで希望をしているところです。
 それで、今、実はそのDPの外部試験を行う部屋はマックス20名という形になっていて、その20名を超える希望者をどういうふうにするのかというのが、実は今、課題になっていて、どうしたものかというのは、札幌市教委ともちょっと相談しながら対策を立てているところです。
 以上です。
 
【竹内委員】
 ありがとうございました。
 
【岩崎座長】
 竹内先生、今の回答はよろしいですか。
 
【竹内委員】
 宮田先生、ありがとうございました。もう1点、香美市教育委員会の先生方にお聞きしたいのですが、小学校4年生、5年生、6年生で3か年でお取組をされたというお話を伺って大変参考になったんですけども、この3年間の取組によって、この小学6年生が今までと違った、ちょっと言葉を選ばずに言うと、原石の発見、あるいは、6年生の後、これまでと違ったような中学への進学先とか、これまでお取組されたことによって、生徒さんが過去と異なるような進路先とか、そういった変容がもしあったら教えていただけないかと思うんですけども。
 
【岩崎座長】
 お願いします。
 
【田村指導主事(香美市教育委員会)】
 進学につきましては、大宮小学校、香北中学校と進学していきます。時々、その大宮小学校のほうから国際中学校へという流れがあり、あと県外のIB校に今年も進学を希望している子供もいるというところが現状ですが、大きくは、小学校から中学校へということで、9年間IB教育でつなぐというところです。
 先ほど、原石というお話もありましたけれども、小学校から中学校まで、教育長も言いましたけれども、地域と世界、社会というものをしっかり往還しながら子供たちが学んでいくということから、中学校に入ってからの成長が特に著しいです。
全国学力・学習状況調査結果にも児童生徒の成長がはっきりと表れています。児童生徒質問紙の回答から、「主体的・対話的で深い学び」に関する項目の肯定回答が、同一集団において小学校から中学校にかけて大きく伸びています。そのことが、教科の調査結果にも良い影響を与えています。別の学力調査の意識調査においても、特に中学校で「学習方略」、「非認知能力」、併せて「主体的・対話的で深い学び」に関する項目の肯定回答の伸びが著しく、同じく教科調査の結果も伸びております。このことからもIBのフレームワークを活用した学びは、子供たちの学ぶことへの意欲や興味関心を高めるとともに自立した学習者へと導くものであると捉えています。
 併せて、小学校時代ずっと不登校だった子供たちが、ここでIB教育に出会って、子供が学校に来るようになって、いい影響を周りの子供たちに与えているというような事例もあります。以上です。
 
【竹内委員】
 どうもありがとうございました。
 
【岩崎座長】
 よろしいでしょうか。
 じゃあ、荻野委員、お願いします。
 
【荻野委員】
 よろしくお願いします。宮田先生、先生ありがとうございました。
 私、DPを実施している学校の外国人の教員の、外国籍の方のいわゆる正規雇用というのは大きなテーマだと思っています。その中で、ちょっとざっくばらんにお聞きしたいのですが、今、正規教員になられた方が3名いらっしゃるという説明がありましてね。大体非常勤、常勤講師のときには大概こういった教員の方は授業、特に英語で行う場合などジョブ型雇用と言われる形態になると思うのですが、正規雇用になりますと、いわゆるメンバーシップ雇用と言われるような、普通の教員と同じように、分掌も持ち、部活もやりといった形態なのでしょうか。それとも、いわゆるジョブ型雇用はそのまま移行しているのかどうなのか、ほかの先生方との仕事の分担はどうなのかなというのが一つ目です。
 二つ目は、先ほどあった人事異動のことなのですが、いわゆる新採用等の場合には3年、5年というルール、これが外国人教員についても適用されるのかどうなのかという辺りもお聞かせいただけるとありがたいなと思っています。よろしくお願いします。
 
【岩崎座長】
 お願いします。
 
【宮田委員】
 御質問ありがとうございます。
 まず、一つ目の御質問ですけれども、職名は実は変わらず、教員採用試験に合格をしても、教諭ではなくて、常勤講師のままです。ただ、労働条件とか給与の条件は一般の正規の教員と同じで、まず、給与表は一般教員と同じ給与表になります。ですので、若干ではありますけれども、給料が高くなっているということです。
 それから、働くほうですけれども、御質問にありましたように、正規の教員と同じですので、分掌の仕事、業務を持ったり、担任を持ったり、部活動を持ったりをしています。ですので、一般の教員と同じ勤務条件というか、労働条件という形になります。
 それから、二つ目ですけれども、これまで市教委からは示されていませんけれども、いずれは試験に合格した外国籍教員の人事異動もあり得るという話は聞いていますけれども、それは、例えば何年後からとか、といった形では、まだ教育委員会のほうからお話はありませんので、しばらくは本校にずっといるかなというふうに思っているところです。
 以上です。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。荻野先生、いかがでしょう。
 
【荻野委員】
 ありがとうございます。難しい法律的な問題もいろいろあるのだと思うのですが、実質上、外国籍の方が、安定的に身分の保障をされながらDPで力を出していくにはどういう労働環境が必要なのかというのは、やはり大きなテーマじゃないかなというふうに思いました。ありがとうございます。
 
【岩崎座長】
 ちょっと時間が押しておりますけれども、非常に委員の先生方の御関心を喚起するプレゼンだったということかと思いますので、黒田委員、恐縮ですけど、手短にお願いいたします。
 
【黒田委員】
 すみません、手短に。
 毎年15名の先生方が異動されるということなのですが、その外に行かれた先生、もしくは来られてIBを教えなくちゃいけなくなった先生方というのはどんな感想を抱かれるのかというところを、感触なりありましたらば教えていただければと思います。
 
【岩崎座長】
 お願いします。
 
【宮田委員】
 御質問ありがとうございます。
 まず、異動されてきた方は、まず、戸惑いがあるというふうに。要するに通常の学校でやられているその授業スタイルと全く違うスタイルを4月から進めなければいけませんので、そこのギャップに驚きを感じている教員の方、異動された教員がたくさんおられると思います。
 先ほど言いましたように、前期籍の先生方は異動のサイクルが早いので、やはり教員研修とかを進めながらいろいろなことをやっているのですが、なかなかやっぱり、さて、身につけたことを次に向けて発揮するというときに異動になってしまうというような形のことが最近は多く見受けられます。
 また、異動をした後の異動先のことですけれども、やはりここでやったいろんなそのIBの教育プログラムのノウハウを、実際に異動先でいろいろ試しているというふうに伺っているところです。ただ、聞くところによると、異動先に一人で行っても、例えば、一人でその異動先の学校の授業改善を行うというのは現実的にはやはりなかなか難しいというふうに言っている異動した教員もおります。
 ですので、今、教育委員会にちょっとお願いをしているのは、例えば、複数の教員を同じ学校に異動させるだとか、あるいは、前年度行った学校に、さらに同じ学校に異動させるだとか、そういう工夫をして、一つの学校に複数、そのIBの教育プログラムのノウハウを知っている人間がいるという状況を何とかつくっていただけないかなというふうに市教委にはお願いをしているところです。
 以上です。
 
【黒田委員】
 ありがとうございました。
 
【岩崎座長】
 黒田先生、よろしいですか。
 
【黒田委員】
 ありがとうございました。
 
【岩崎座長】
 それでは、続きまして、私立学校である取組について、仙台育英学園の石田先生より御発表をお願いいたしたく思います。よろしくお願いいたします。
 
【石田(仙台育英学園)】
 よろしくお願いいたします。じゃあ、画面共有をさせていただきます。
 仙台育英学園の石田です。
 本校は、IB導入の経緯というのは、2013年に閣議決定されて日本語DPが始まったタイミングで、うちの学園長というか校長、理事長が判断いたしまして、日本で最初の日本語DPを導入した一条校ということで始めました。うちと沖縄尚学さんが最初ということになります。
 本校は七つのコースがありまして、3,000人以上のマンモス校の高校と、あとは、中高一貫教育校と併設型がありまして、秀光中学校というのも持っております。こちらは50名ちょっとの少人数の中学校ということになります。
 ということで、MYPとDPが認定されております。DPは2015年に始めまして、5年後の評価訪問も終わっております。MYPが2018年に認定をいただきまして、これが来年度に評価訪問をされることになっております。
 校内IBコース以外でのIBの好事例の活用ということですが、うちは、私がおります秀光コースというところと、外国語コース、今まで私もいたのですけれども、そちらの2コースでIBをやっているということになるのですけが、別の特進コースという、進学を重視した、大学を一般入試で受験するような生徒が多いコースのほうの総合的な探究の時間に、DPのコア科目でありますTOKの授業を導入しております。これが去年から始めまして、2年目ということになります。
 また、七つのコースがあるというふうに申し上げましたが、本当にそれぞれ文化が全く違うコースがありまして、今年、甲子園でも優勝するような野球部があるフレックスコースだったりだとか、そういうところもありますが、その七つのコース、いろんな教員が積極的にIBのワークショップを受けて、IBのノウハウを身につけるというようなことをやっております。
 IBのワークショップも、本学園を会場として行ったり、公立の学校さんや教育委員会の方が日本中から授業見学に来られました。
 地域での他校との連携ということで、公立でやっていらっしゃる仙台二華高等学校がIBを導入するときも、本校に来ていただいて、いろいろノウハウを共有いたしました。また、コーディネーター同士も、毎日のように質問をいただいたりして、どんなふうにIB認定のための資料を提出するのかというようなことの交流もしておりますし、IBコンソーシアムの方も入っていただきまして、IBの成果発表ということもやらせていただきました。
 また、生徒の科目のCASの一環としては、東北インターナショナルスクール、こちらもDPは英語でやっていますけれども、そこと仙台二華さんと協働でビーチクリーンという海辺のごみ拾いをやったりというようなことで、一緒にやらせていただいたりしております。
 また、ホライゾン学園の仙台小学校でPYPをされているわけですけれども、そちらとは連携してオンラインのIBセミナーというのを毎年行っています。また、こちらのホライゾン学園さんのサマースクールのお手伝いということで、これも生徒のCASの活動の一環で、そちらもさせていただいたりしています。また、地域の保育園とか、あと、生徒自身の母校の中学校でTOKの紹介をするというようなことも生徒がCAS活動としてやっております。
 また、この好事例やノウハウの横展開に関する取組ということですが、コースのグランドデザイン、こちらは秀光コースのものなのですが、秀光中学校コースのほうにATLスキルを活かしております。または学習者像ですね。IB学習者像もここに盛り込むという、もともと学校の理念ともリンクするところが多かったということももちろんあるのですが、ATLスキルを生かすということにも役立てております。
 また、高校のほうでも、もう観点別評価を入れなくてはいけないということで、このような評価基準というのを学校として取り組んでつくったわけなのですが、この際もATLスキルを生かすような形でつくりました。
 評価観点が左側欄の、このような思考力、判断力、表現力というところにコミュニケーションスキル、メディアリテラシースキル、批判的思考スキルを入れたりだとか、あと、知能、技能というような欄のところでは、コミュニケーションスキルと情報リテラシースキル、あと転移スキルなどというような形で反映させているというのはIBをやった成果ということになるかなというふうに思います。
 また、IB教育を行う上での教員の学びということなのですが、やはりスチューデントセンターの授業というようなこととか、あと、形成的評価というようなところは、最初、取り入れたときには、本当に先生方の意識改革をするのが大変なことだったわけなのですが、実際、IBを行う場合は当然のことながら、あと、他コースですね。IBを行っていないコース、または、同じコースの中でもIBプログラムでない授業にもこういったノウハウを取り入れているというようなところが見られます。
 また、教員の協働会議ということで、IBの先生方は、ずっと会議、教科横断型ということも必要ですし、そういったコラボレーションがとても求められるということがありますので、毎月1回は行っているというようなことになります。認定をもらうまでは、本当に毎月どころか毎週のように勉強会というか、そういうようなことも行っておりました。
 そして、各科目ですね。Job-A-Likeといって、歴史なら歴史の先生方だけが集まって、横のつながりというか、全国のIBの学校が情報交換をしたり勉強会をしたりってするものが、各科目があるわけなのですが、そういったものに先生方も参加したり、うちの学校も会場にさせてもらったり、あとは、コーディネーターネットワークミーティングというのも行ったりというようなことで、最近は本当にオンラインが多かったんですけれども、そういったものも積極的にやるというような形で、やはりIBは横のつながりで他校の先生方からいろんな情報をいただいたり、こちらも教えることによっていろいろ成り立っていくことも多いので、そういったことは大切にしてやっているということがあります。
 スライドは以上ですが、先ほど、進学のことがあったかと思うのですが、地元の大学のことでちょっとお話をさせていただきますと、本日も東北大の副学長の先生がいらしていただいておりますけれども、6期生になる本校のIB卒業生が文学部のほうに進学させていただきました。それは総合型の入試ですけれども、IBのやはりスキルを測っていただいて、TOKのプレゼンテーションを提出してというようなことがありましたので、IBのスキルを見ていただいているのかなというのもあります。
 あと、宮城教育大学には一般で受かった生徒もいます。あと、秋田の国際教養大学はグローバル・ワークショップ入試というもので進学させていただきました。これは5期生です。
 これは1期生のお茶の水大に行った子もそうだったのですが、やはり、IBのスキルですね。IB入試ではないのですが、IBで常に行っているような、お題を何か出されて、グループディスカッションをして、自分たちでも調べて、最終的にレポートのような形で、論文的にアカデミックなライティングで仕上げるというようなものだったので、生徒たちも、ほかの生徒たちは本当に大変そうだったみたいだけれども、私たちは常にやっている、授業で全くやっているのと同じ形式でやっていただいたので、とてもやりやすかったというようなことを話しておりました。
 そういったところを見ていただける入試というのがどんどん増えて、大学のほうでも行っていただけているというのが非常にありがたいなというふうに思っております。
 私の発表は以上になります。ありがとうございました。
 
【岩崎座長】
 石田先生、ありがとうございました。意見交換は追って時間を取りますが、石田先生の発表に質問はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 山口先生、お願いいたします。
 
【山口委員】
 東北大の山口です。石田先生、どうもありがとうございます。
 仙台育英は、私も地元ですのでよく存じ上げておりますけれども、このIB教育についてはどのぐらいの規模感になっているのか。生徒とか、あるいはどのぐらいの先生が関わっていらっしゃるのかということを教えていただけると、もう少しイメージが湧いてくるかなと思いまして、質問させていただきました。
 
【石田(仙台育英学園)】
 ありがとうございます。
 外国語コースと秀光コースと二つで行っているというふうにお伝えしたかと思いますが、今年から、外国語コースは全部英語でやるという形で、秀光コースのほうでは日本語デュアルでやるというような形で分けるような形にしました。外国語コースのほうでは、教科ごとなので、10人ぐらいの外国人のネーティブの教員と、今までと同じぐらいの日本人の教員がいるというような形ですね。今、過渡期で、半分に分かれて行き来しているということです。秀光コースでも、やはり教科ごとになりますので、大体6プラス、コア科目三つということで、10人ぐらいの教員が関わって2学年というようなことになっております。10名ちょっとです。少人数でやっておりますので、その程度でやっております。
 
【岩崎座長】
 山口委員、よろしいでしょうか。
 
【山口委員】
 ありがとうございます。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。髙野委員、お時間があるということなので、先に御意見等がありましたら何かお話しいただければと思いますが、いかがでしょうか。
 
【髙野委員】
 すみません、ちょっと時間の都合で失礼します。大学のその受皿というのはとても大事なことだと思って、また、次の機会にそういったお話もいただけると思いますので、そのときにまた意見を言わせていただきます。すみません、今日は途中で退席して申し訳ございません。以上で失礼させていただきます。ありがとうございました。
 
【岩崎座長】
 どうも御発表、ありがとうございました。髙野委員には大変お世話になりました。
 これでヒアリングは以上になります。御発表いただいた皆様、本当にありがとうございました。この後は休憩を挟んで、委員の先生方に御意見をいただくことになりますが、5分間休憩をさせていただきます。
 
(休憩)
 
【岩崎座長】
 時間になりましたので、再開いたします。
 ここからは、委員の先生方に、資料4と、先ほど事務局で御説明いただいた検討事項(案)の丸1 と丸2 、つまり、幼小中学校、高等学校という、学校中の段階でのIBの普及、それを幅広い学校での教育に取り入れてもらうための方策を検討するという、検討事項(案)の丸1 と丸2 について、各委員から御意見をいただくということになっております。
 それで、名簿順に、各委員に二、三分程度で一言ずつコメントをいただければと思います。私のほうは名簿順に委員を指名するということを承っておりまして、先生方におかれましては、この検討事項の案自体の御意見も含むと、この丸1 、丸2 の案自体も検討するということを含めまして御意見をいただければと思います。
 それでは、荻野先生、よろしくお願いします。
 
【荻野委員】
 よろしくお願いします。
 本日はありがとうございます。要するに、横展開をしていくということなのかなというふうに思います。新しい学習指導要領が中学では昨年から一斉実施、高等学校では今年度から学年進行でという中で、かなりのIBのその学びが、IBの教育が必要とされる、直に必要とされるような環境があるというふうに思っています。理念であるとか方法であるとか、例えば、主体的で対話的で深い学びであるとか、評価の問題であるとか、社会に開かれた教育課程であるとか、あるいはカリキュラムマネジメントであるとか、IBがある意味ではノウハウを蓄積してきた部分はたくさんあると思います。
 その入り口の、類似性の可能性と、日々の学校での授業、といったところでは非常に可能性が高いのですが、なかなかその先の出口のところの大学との接続とか、あるいは大学入試であるとかが、現場にいますとちょっと見えないと。可能性はあるが、その可能性がどういう形をもって学校の中で展開されていくのか。あるいは、IB的なものをしっかり導入していきたいという考えがあるものの、実際に教育が実践されて行くと、授業の仕方や出口戦略といった点で、共感した気持ちがズレていくことが心配される。その意味で横展開することの困難は大きいと見ております。
 そんな中で、じゃあ、何から始めようと。もうできることから始めるしかないと思います。例えば、私どもの学校では、先ほど高知国際さんもおっしゃっていましたけども、年に一度ですけれども、公開研究会をやって、たくさんの方に来ていただいている。あるいは、学校の先生を1年間お預かりして、うちの在り方を見ていただいている。様々なことで広めていくということです。やはりその構造的な導入した後の様々な仕組みがうまくかみ合っていかないと、なかなか横展開は難しい部分もあるのかなというのが実感ですので、「幅広い学校での教育に取り入れてもらうための方策の検討」という点を真剣に考えていくべきだと考えます。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。
 
【岩崎座長】
 続きまして、黒田先生、お願いします。
 
【黒田委員】
 ありがとうございます。
 私、国際教育の専門家のつもりなのですが、IBについては、制度ぐらいしか知らなかったものですから、今、岩崎先生の本とかで一生懸命勉強をしているところです。ほかにもいろいろ読んでみたのですが、こういった国際的な英語の文献もちょっと読んでみて、本当のIBの教育の質のよさといいますか、可能性というのはどれでも書いてあることで、実証もされているなというふうに理解いたしました。
 ですので、今回のこの検討会において、今、審議事項についてもコメントしていいということだったものですから申し上げさせていただくと、前回のときには、まだ明確にどういう方向で、つまり、その認定校等の200校が目標だったけれど、よりまた、これから増やしていくとかいう方向性も可能性の一つとしてはあるのかなというふうに思っていたのですが、そうではなくて、幅広い学校での教育に取り入れてもらうというような方向性を検討していくということに非常に賛成です。というのは、どうしてもその認定校という形ですと、先ほどちょっとコストにこだわって伺っていたのですが、もちろん、今までのところはコストについての問題が大きく起きていないということだと思うのですが、やはり、例えば学級のサイズであるとか、様々な問題があって、その認定校を増やすというアプローチだと、どうしてもそのターゲットが限られてしまうかなというふうに思いました。
 なので、もちろんある程度認定校を増やしていくことにも意味が当然あると思うのですが、それだけではなくて、一般的な学校の中にどのようにそのIBのよいプラクティスを取り入れてもらうのかというような観点で、この検討会、有識者会議が方向性を出していくということに非常によかったなというふうに思っております。それがこの審議事項についてのコメントです。
 もう一つ、これをどうやって進めていくのかということについてなんですけれど、例えば、先ほど宮田先生からお話のあった、ほかの学校に二人以上のような形で移っていただくとか、そういったことも一つのやり方。もちろんその先生方が変わっていくということが一つの契機だと思いますので、それをどういうふうに力のある形でサポートしていけるかというようなアプローチもあるのかなというふうに思いますし、それだけではなくて、先ほどの公開授業であったりとか、少しオーガニゼーションな形で、県教委であったりとか、もしくは教育センターのようなところで、このIBのやり方の普及ということについてプログラムをつくっていただくというようなことも、少し組織的な形でやっていくということが必要なのかなというふうに思いました。
 それから、もう1点だけ、すみません、大学、特に教育学部とか教育大学の役割なのですが、こういった幼小中、それから高校段階でどうやって普及させていくかということを考えるときに、もちろんその横展開ということもあると思うのですが、やっぱり教員養成機関の中でそのIB教育をどういうふうに教えていくかということについても、今まではそのIBの資格というところでフォーカスされていたのかもしれませんが、そうではなくて、一般の教員養成の中にそのIBのやり方ということを入れていくということも組織的に行っていくことができれば、こういった目的が達成される、達成の可能性があるではないかというふうに感じました。
 以上です。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。非常に具体的なお話だったと思います。
 それでは、髙野先生は御用事があって御退席でしたので、竹内先生、いかがでしょうか。
 
【竹内委員】
 失礼いたします。
 今日お話を伺って、あるいは資料を拝見して改めて感じたことが、やはり裾野を広げる大切さというところでございます。
 どういうことかといいますと、IB校の校数の推移を見ていくと、増えているということは大変いいことだと思うのですが、その内訳を見ますと、DP校のほうがMYP校よりも多いという現状があるかと思います。
 この現状に対して、私がよくIB校の先生方から伺う声としては、もちろん、IB校認定校によって各事情が異なると思うのですが、MYPの教育は全員に対して行い、その中で、希望者に対しDP教育を行っていくというスタイルが比較的多いのではないかなというふうに感じております。
 そう考えますと、やはり、MYP校を増やしていくということが一つ考えられると思いますが、その際に、横展開と同時に、やはり現DP校からMYPへの波及、もちろん一貫校であればそういったことができると思うのですが、それ以外にも、地域において、DP校がIB教育のよさを、地域の中学校や小学校、それから教育委員会のほうに、こういった書かれているような取組を通じて共有していくことで、MYP校が増えていけば、それがやがてIB生の増加につながり、全体の規模の拡大につながっていくのではないかなというのが、私自身の今日の問題意識です。
 以上です。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。それでは、坪谷先生、いかがでしょうか。
 
【坪谷委員】
 まず、公立の小中一貫校での香美市の取組というのは、ほかの自治体の皆さんとか、また、韓国でも大変注目を集めているということを一言付け加えさせていただきたいと思います。
 大学入学準備コースのDPは、今、竹内先生がおっしゃったように、例えば、特進コースとか、理系コースとか、文系コースとか、様々ないろんなコースがある中での一つという位置づけですので、もしかすると、どうしてもその小さい枠の中に収まってしまうのかなというところが懸念しているところです。
 だけど、PYPとMYPは全校の生徒が受けなくてはいけないという縛りがありますので、したがって、全教員も理解が進むと。それに伴い、保護者も地域の方も巻き込んで新しい文化が生まれるというところが大変大きいと思います。小中学校はその市町村の教育委員会、高校は県の教育委員会というところで分かれているところから、少なくとも中高一貫校でやっていただきたいなと思いながらも、難しい点は多々あるかと思うのですが、やはり、少なくともMYPから進めていただくという形を取ると大分変わってくるんじゃないかと思います。
 しかし、今日の先生方の発表ですと、フルディプロマの生徒以外のほかのコースの生徒もATLのスキルの獲得をやっていらっしゃるとか、TOK、EE、CASなどに取り組んでおられるということで、そういったことも私は非常にすばらしいなというふうに思うとともに、また、ほかのIB校との連携をしていらっしゃる。これが一つの学校の枠を超えていらっしゃるということで、おのずとそういう動きになっていらっしゃるのは、やはり皆さん、MYPとかから始めていらっしゃるというところが一つあるのかなと思います。
 この先、フルディプロマの生徒でなく、ほかの生徒も、科目の選択、いわゆる読み替える科目をIB方式でやるのか、従来型でやるのかということを、生徒が1科目でも2科目でも選んでいくことができるというふうに挑戦なさるという高知国際のお話も大変期待するところだなと思っているところです。
 でも、こうやって、今日、私も皆さんのお話をお聞きしてすごいなというふうに思ったのですが、そういった取組をやっていらっしゃって、その結果、どんなことが起きているのかということ、まだまだそれを知っている人があまりいないと。それをどう発信していくのか、その結果、どういうふうになっているのかということを、もっともっとたくさんの皆さんに知っていただくということの必要性があるのかなというふうに思う次第です。
 それが、IBの認定校は目指さないけれども、その手法からいろいろ学びたいとか、この横の展開をしていくということに、この波及をどういう風にしていったらいいのかということを具体的に、例えば、それはコンソーシアムが方向性を書いてそういったことをやっていくのか、もしくは中教審のほうでもお話をしていただくのかとか、どういう手法が一番効果的なのかということを、この会議のほうで具体的に先生方のお知恵を借りながら決めていくことができたら、次の一歩につながっていくのではないかと、私自身は期待で胸がわくわくしております。
 以上でございます。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。仕組みとかの話も、今後どういうプロセスを踏んで政策化していくかというお話にも言及していただきました。
 続きまして、長谷川先生、いかがでしょうか。
 
【長谷川委員】
 長谷川です。
 本日、いろいろお話を伺いまして、とりわけ私自身の知識が、DPのほうについてはある程度知っていたのですが、本日、特に香美市のMYPの話を伺って、非常に教育効果が高いということがよく分かりました。
 これまでの先生がおっしゃったように、DPだけじゃなくて、MYPから裾野を広げていくということが非常に重要である。すなわち、今回の審議事項(案)の中でも丸1 の幼小中高校段階でのIBの普及というのは非常に重要なテーマだろうというふうに改めて認識しました。
 黒田先生もおっしゃっていたとおり、認定校数を増やすということだけが目的ではなくて、むしろIB的な教育の理念や方法論をIBの認定校ではない一般の教育の中にどう普及させていくかということは大変重要だと思いました。
 それで、これも先生方の繰り返しになりますけれども、どうやって広げていくかというときに、一人ではなくて、やはり仲間をつくって広げていくというのは非常に効果的だと思います。別の分野で、こういう新しいものを普及させるにはどういう方法が適切かという数理モデルがあるのですが、やっぱりその数理モデルでも、同志がつながって島をつくって、その島の大きさを増やしていくというのが非常に有効だということが数理生物学でよく言われますが、まさしく、同志が一緒になって普及させていくという方法を考えていただければと思います。
 これまで、この3年間、コロナということで、対面での交流というのは少なかったのですが、だんだんそのバリアが解けてまいりましたので、高知の取組が隣接の四国全体に広がっていくとかですね。これまで空白地帯があるということが度々指摘されてきましたけれども、そういうものを埋めるような取組というのもぜひ進めていただければなというふうに思いました。
 以上でございます。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。今回の幅広い学校での教育に取り入れてもらうための方策というところで、同志がつながって島になっていくというような、非常に示唆に富んだ御意見がありました。
 それでは、宮田先生、いかがでしょう。
 
【宮田委員】
 宮田です。
 私の学校は札幌市立の学校ということで、公立の学校です。公立の学校として考えると、IBの認定校というのはなかなかハードルがまだまだ高いかなというふうに感じています。
 予算の部分は、今回札幌市の場合は、札幌市教育委員会、その大本の札幌市のいろんな計画の中に、この中等教育学校、それからIBのプログラムを活用するということが計画の中に盛り込まれましたので、予算的なところのバックアップはその計画にのったことによって裏づけをされましたので、予算の問題についてはクリアできているのかなというふうに思っています。これが単独で何かIBの認定校をという形になると、予算の部分については非常に厳しいかなというふうに感じています。
 また、公立の学校なので、様々制約があります。例えば、その教員数の問題、先ほどもちょっとお話しさせていただきましたけれども、今、全国的にその教員の働き方改革というふうに呼ばれていますけれども、やっぱりその評価の時期だとかは、なかなかやっぱり時間外、それから休日も含めて、生徒の評価を見なければいけないという、そういう時期で、業務がかさんできているという非常にタイトな時期があります。
 ですので、教員数を増やしていただきたいというのは、本当に人事協議のときにもお話はしますけれども、なかなかその定数という制約があるので、そこを崩していくのは一学校としてはなかなか難しいかなというふうに感じているところです。
 また、他の先生方からもお話がありましたように、私の学校は中等教育学校ですので、6年間で教育活動ができています。ですので、全生徒がMYPで学び、全教員がそれに関わっています。それを経た子供たちがDPを選択している。それから、DPを選択しなくても、MYPをベースとして、先ほど言いましたように、IPコース、DP以外の学校独自のコースを選択しても、MYPをベースとした、準IBといいますか、そういう教育活動ができています。
 ですので、このDPだけだという形になるよりは、MYP、DP、まずDPの前にMYPをやっているのが、生徒にとってのいろんなスキルの獲得については非常に有効かなというふうに実際に勤務していて思うところです。
 教員の異動のサイクルが早いって先ほどお話ししたのですが、他の学校に異動したいというふうに希望を出して異動する教員はほとんど実はいないです。異動してきて、今までの授業だとか、今までの教育活動の転換を図られるのですが、私たちは、先生方がこういうことをやりたいと、こういうことをやってみたかったんだという、そういうことを実践できる学校であります。
 ですので、先ほど、最初に忙しいという、働き方改革という話をしましたけれども、でも、忙しいけれども、ここで長くやりたいという教員が非常に多くて、そこは学校としても私としても管理職としても非常にうれしい限りです。
 ですので、ちょっと丸1 、丸2 から外れるかもしれないのですが、先生方を養成する大学なども、例えばそのIBに近い指導法を、カリキュラムに盛り込むだとか、大学のほうのカリキュラム改革といったものもあればいいかなというふうに思っているところです。
 すみません、ちょっと雑駁ですけれども、以上でございます。ありがとうございます。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました、宮田先生。ほかの学校に異動したいという教員はいないということは、大変魅力的な教員の勤務環境なんだなということを、IBのことなのか、宮田先生の力量なのか分かりませんが、非常に感銘を受けました。
 
【宮田委員】
 私の力量ではなくて、本当にこれまでいろんな先生方のバックアップもあって、札幌市教育委員会のバックアップもあって、いろんな、少しわがままな部分もさせていただきながら、先生方が仕事を粋にできる環境が整えてもらっているというところが一つのところかなというふうに思っているところです。ありがとうございました。
 
【岩崎座長】
 トリになりますが、山口先生、お願いします。
 
【山口委員】
 どうも、山口です。
 私自身は国際バカロレアに関しては専門家ではございませんので、本日はいろいろなお話を伺って大変勉強させていただきました。ありがとうございました。的外れになるかもしれませんが、以下、感想めいたことをお話しさせていただければと思います。
 国際バカロレアは、よくグローバル人材の育成という観点で話されることが多いと思います。それはそれで非常に重要なのですが、むしろ、本質的なことは、国際とか、あるいはグローバルとかいった観点を離れたとしても、今日お話に出てきたような、ATLとかTOKと、自らの知識をもとに考えていくことができる、コミュニケーションスキル、協働スキルと併せて課題発見、課題解決ができる人材を育成するということが、重要なことだと思います。
 そういったIBの理念、あるいは方法というのは、ある種の普遍性を持っていると言えるかと思います。ですが、必ずしもそのことは一般的には認識されていないのではないかと思うところです。先生方がいろいろ努力されているところだと思うのですが、こういった理解を深めた上で普及を図っていくと、この理念について普及を図っていくということは非常に重要なのかなと思いました。
 また、宮田先生に最後に御指摘いただいた点、大学のほうについても、やはり改革が必要だというのは全くそのとおりだと思います。IBを対象にしたような大学入試で受け入れるというだけではなくて、ややもすると、その知識伝授というのが中心となっているような日本の大学教育とか、あるいはカリキュラムがこのままでいいのか。あるいは、IBの学生をしっかりサポートするような体制、そういったものが十分ではないのではないかということは、しっかりと大学の中でも考えていかなければならないのかなと思った次第です。
 ちょっと感想めいて恐縮ですけれども、以上です。よろしくお願いします。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございました。委員の一員として、わたくしからもこれまでの議論を取りまとめてお話ししたいと思います。
 検討事項の案の丸1 と丸2 に関し、幅広い学校で国際バカロレアの教育を取り入れてもらうための方策を検討することはおおむね御了承いただいたと理解しております。国際バカロレアの教育内容や教育理念が普遍性を有すると仮定した場合、このことを一般に認識されるよう理解を深め普及する方策をこの会議で検討することは有意義と感じました。
 その上で、国際バカロレアの内容として日本の教育の中で取り入れていただきたいと思う視点を幾つか述べたいと思います。
 1点目は、国際バカロレアという新しいプログラムを日本の教育制度に入れることは、小中一貫校、中高一貫校という異なる学校種のつながりをもたらし、公立と私立、あるいは日本の学校と国際学校との間に有機的なつながりをもたらす契機であることに気づかされました。
 国際バカロレアという共通言語を有することで、今まで関係性を持ちえなかった学校の間に連携がもたらされ、かつ、新しいプログラムを導入するために、教育委員会、教員、地域、保護者との間に、教育学的にいうところの学習する組織、みんなが学び合おうとする組織体が出来上がっていることを知り、国際バカロレアが日本の教育におけるイノベーションのきっかけになるのではないかと思いました。
 2点目は、それでは何が問題になるかを考えますと、日本の伝統的教育は教員と生徒の間での指導関係、上下関係が強く、かつ大学入試を目的としたテクニカルな知識に焦点化されることが多いと感じるところです。
 一方で国際バカロレアは、生徒と教員が対等で、教員がファシリテーターという立場になることによって、教員も生徒も主体的自発的に双方の興味、関心に基づいて学習でき楽しそうだと感じます。
 課題は、日本の教育制度や教員の意識改革、マインドセットをどう変えていくかということかと思います。
 このことは、一人ではできず、国際バカロレアの教育を経験した人たちの数が増え、学校を超えた有機的なつながりを通じ醸成されてはじめて可能になっていくのだろうと思います。そして、そのような学習共同体にあっては、新しい教育の受益者としての子供たちが、よりよい人生を送るため生涯にわたって主体的に学習できるような知的体力を身につけることが可能になるのではないか、と感じたところです。 
 ということで、全ての委員の先生方の御意見を、コメントをいただきまして、今後の資料となって出てくることと思います。皆様、御意見をありがとうございました。
 それでは、もう一つあります。各委員の意見に対しての質問や意見がある方は挙手をお願いしますということで、フィードバックをする機会があるようです。どなたか御意見等はさらにございますでしょうか。
 
 (挙手なし)
 
 次回は高等教育のお話になりますが、教育課程は連続したプロセスでありますので、次回のヒアリングも含めて、この問題、丸1 から丸4 については、先生方には高所から御検討いただきたいと思います。
  それでは、事務局から、まず連絡事項をお伝えいただければと思います。それでは、皆さんのお手持ちの資料9についてお願いいたします。
 
【事務局(出口)】
 それでは、事務局より資料9について説明をさせていただきます。
 今後のスケジュール(案)となりますが、第1回、こちらは本日、長時間にわたり御議論いただきましてありがとうございました。
 そして第2回、これは11月24日、木曜日、13時から16時で、皆様にも確保をお願いしております。長時間にわたりますが、よろしくお願いいたします。こちらの第2回でも、有識者の方のヒアリング、また、残る3番、4番についても主な検討事項(案)についてということで御議論をお願いできればと思っております。
 そして第3回、こちらは12月19日、月曜日、朝早く、9時半から12時半となってございますが、こちらでこれまでの御議論いただいた内容の整理、また、取りまとめ骨子案についてということで議論いただければと思っております。
 年が明けて1月以降になりますけれども、この辺り、ちょっとまだ回数など、議論の状況を見ながらとなってまいりますが、数回程度開催をいたしまして、本年度中に取りまとめをさせていただければと思っております。
 事務局からは以上です。
 
【岩崎座長】
 ありがとうございます。
 それでは、最後に室長から御挨拶をお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。
 
【事務局(出口)】
 本日は長時間にわたりまして、様々な御意見、また事例等について御紹介いただきまして本当にありがとうございました。多岐にわたり、そして様々皆さんがいろんなことを考えていただきながら、課題の解決、そして取組がどのように結果として生きてくるのかという点もいろいろ教えていただきまして、本当に勉強になりました。そして、これを今後にやっぱりつなげていかないといけないというふうに思っておりますので、また、さらに有識者会議で議論が続きますけれども、引き続き御協力をお願いできればと思います。
 本日はどうもありがとうございました。
 
【坪谷委員】
 ありがとうございました。
 
【岩崎座長】
 それでは、本日の会議は以上といたします。非常に協力的に御発言いただきましてありがとうございました。
 次回は、高等教育の件と、それから評価の件になります。また忌憚のない御意見をいただければ幸いです。本当にありがとうございました。
 
【一同】
 ありがとうございました。

―― 了 ――
 

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