今般の死傷事故を受け、校外活動の実施に当たって留意いただきたい点等を通知しますので、今回のような痛ましい事故が二度と発生することの無いよう、対応の徹底をお願いします。
8文科初第58号
令和8年4月7日
各都道府県教育委員会教育長
各指定都市教育委員会教育長
各都道府県知事
附属学校を置く各国公立大学法人学長 殿
各文部科学大臣所轄学校法人理事長
小中高等学校を設置する学校設置会社を
所轄する構造改革特別区域法第12条第
1項の認定を受けた各地方公共団体の長
文部科学省初等中等教育局長
望月 禎
文部科学省総合教育政策局長
塩見 みづ枝
文部科学省高等教育局長
合田 哲雄
学校における校外活動の安全確保の徹底等について(通知)
令和8年3月16日、京都府内の高等学校における校外活動中に生徒に死傷者が出る重大な事故が発生しました。学校の管理下での教育活動の最中に、決してあってはならない事故が起きてしまったことは極めて遺憾です。
学校における校外活動を実施するに当たっては、事故防止等に万全の措置が必要です。学校における校外活動時を含めた児童生徒の安全の確保については、学校保健安全法第29条において各学校で「危機管理マニュアル」を作成することが義務付けられており、文部科学省としてはこれまでに、学校のマニュアル作成の参考となる「学校の危機管理マニュアル作成の手引」(平成30年2月)等を示してきたところです。また、修学旅行等における安全確保にあたり留意いただきたい点等については、関係の通知等において示してきたところです。
上記の事故については、現在、その詳細な調査等が進められているところでありますが、今後の各学校における校外活動の実施に当たり、今回の事故を受け、改めて、安全の確保のために配慮いただきたい点や教育活動として適切に計画・実施していただくに当たって留意いただきたい点等を下記のとおり通知しますので、今回のような痛ましい事故が二度と発生することの無いよう、対応の徹底をお願いします。
各学校の設置者におかれましては、本通知の趣旨を踏まえ、本年度の学校における校外活動の実施に当たり、改めて安全性が確保されているか、その実施内容が適切であるかについて確認いただくとともに、必要に応じて見直しを図っていただくようお願いいたします。
高等学校等については、社会全体で高校教育の支援を行っていく観点から、本年4月に新たな高等学校等就学支援金制度が開始され、その適切な実施とともに、その教育活動や学校運営に対し期待と責任が求められています。各都道府県知事にあっては所轄の私立学校及び学校法人において適切な運営がなされるよう、必要な指導・助言を行っていただきますようお願いいたします。
加えて、都道府県知事において上記の対応等を行う上では、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和31年法律第162号)第27条の5の規定により、教育委員会に対し、学校教育に関する専門的事項について助言又は援助を求めることができることから、必要に応じ、教育委員会の助言又は援助も得つつ、適切に対応いただくようお願いします。
これらのことについて、各都道府県・指定都市教育委員会にあっては所管の学校及び域内の市区町村教育委員会に対して、各都道府県知事にあっては所轄の学校及び学校法人に対して、国公立大学法人の長にあっては設置する附属学校に対して、各文部科学大臣所轄学校法人理事長にあっては設置する学校に対して、株式会社立学校を認定した地方公共団体の長にあっては認可した学校に対して周知いただきますとともに、適切な対応がなされるよう、特段のご配慮をお願いします。
記
1.学校における校外活動時の安全の確保について
学校における校外活動時を含めた児童生徒の安全の確保については、学校保健安全法に基づき、危機管理マニュアルの作成が義務付けられており、文部科学省としては、特に校外活動等の安全の確保について、以下の通り参考資料等を示している。
改めて、以下資料等を参考に、各学校の「危機管理マニュアル」の記載内容を点検いただき、必要に応じて改定等を行っていただきたい。その際、「学校の『危機管理マニュアル』等の評価・見直しガイドライン」及び同ガイドラインに掲載されているチェックリストも活用しながら、各学校の「危機管理マニュアル」に沿った実際の学校における活動を徹底し、校外活動時の安全確保に万全を期していただきたい。
※「学校安全資料「生きる力」をはぐくむ学校での安全教育」(平成 31年3月改訂2版)
・校外学習や学校行事については、綿密な計画の作成と安全の確認、児童生徒等への事前の安全に関する指導の十分な実施及び教職員体制が通常と異なる場合の役割分担、緊急事態が発生した場合の連絡方法等の確立などについて検討し、必要な対策を実施すること(第3章第3節2(2)校外活動時等における事故等発生時の留意点)
※「学校の危機管理マニュアル作成の手引」(平成30年2月)
・校外での活動を行う場合は、事前に現地の状況や気象情報などを十分に把握すること
・悪天候などで活動を変更又は中止する場合を想定し、事前に代案を決めておくとともに、活動中は気象情報に配慮すること
・児童生徒等が教職員から離れて活動する場合などは、児童生徒等から教職員への報告体制や学校、保護者、関係機関等への緊急連絡体制を整備すること(以上、第3章-2【2】校外活動時に事故等が発生した場合の留意点における事前の対策を参照)
・障害のある児童生徒等が在籍する場合には、伝達方法の整備や避難経路・避難体制の整備など、障害のある児童生徒等の特性に応じた内容となるよう留意すること(第3章-10 特別支援学校等における留意点を参照)
※「学校の『危機管理マニュアル』等の評価・見直しガイドライン」(令和3年6月)
◆ 校外活動における危機未然防止対策
(1)事前の検討・対策
遠足、社会科見学、移動教室、修学旅行、その他の校外活動について、児童の安全確保の観点から以下の点についての事前の検討・対策を講じることとする。
・校外活動先における地域固有のリスク(津波・土砂災害などの自然災害、その他の事故・災害の危険性)を調査し、これを可能な限り軽減するとともに、想定される事故・災害等が発生した場合の対応を検討すること
・事前の下見で、現地で被災した場合の様々なリスクや、活動場所近くの利用可能な施設・設備等(AED 配置場所、病院・警察署等)を調査するとともに、これを活動計画や活動のしおりに反映させること
・訪問先・宿泊先・旅行代理店等関係者との安全確保に関する事前調整を行うこと
・引率教職員間での連絡方法、引率教職員と在校教職員との定期的な連絡の方法について検討すること
・災害発生時の避難経路・避難場所、情報収集手段等について確認し、全引率教職員間の共通認識とすること
・緊急時の連絡体制(医療機関、学校、保護者)を整備し、確実に機能するかを事前に確認すること
・一人で避難できない児童への対応について検討すること
加えて、今般の事案を踏まえ、修学旅行等においては、利用する旅客運送の安全確保(例:関係事業者における業務運営上必要な登録や保険加入の有無等)について、予め確認すること等も重要である。
特に、船舶により旅客を運送する事業には、海上運送法の許認可の取得が必要となっているところである。海上運送法の許認可を取得した事業者については、安全管理規程において発航基準等を定め地方運輸局等に届出し、経営の責任者、運航管理者、船長等は安全管理規程を遵守することが義務づけられている。このため、特に修学旅行等において船舶を利用する場合には、海上運送法の許認可を取得した事業者を選定すべきである。船舶運航事業者に係る海上運送法の許認可の取得の有無については、船舶を運航する地域の地方運輸局等にお尋ねいただければ確認することが可能であり、また、船舶運航事業者の安全対策への取組状況を検索できる「旅客船事業者の安全情報検索サイト」を活用することで確認することも可能である。なお、船舶の利用時点では情報が変更となっている場合があるため、最新の情報については、地方運輸局等又は事業者へ確認することが望ましい。
2.旅行・集団宿泊的行事(※)における留意点について
(※)中学校・高等学校学習指導要領では「旅行・集団宿泊的行事」、小学校学習指導要領では「遠足・集団宿泊的行事」と規定されている
学習指導要領上、「特別活動」の中の「学校行事」に位置づけられる修学旅行等の「旅行・集団宿泊的行事」に該当するものは、平素と異なる生活環境の中にあって、見聞を広め、自然や文化などに親しむとともに、校外における多様な集団活動を通して、よりよい人間関係を築くなどの集団生活の在り方や公衆道徳などについての体験を積むことができるようにすることを目的とする意義ある教育活動であるが、一方で、このような多様な活動の重要性を踏まえつつ、校外を集団で行動すること等に伴い、絶えず事故等の発生の余地をはらんだものであることを改めて教職員間で強く認識し、児童生徒等の安全を確保するための対応を徹底する必要がある。
このことから、学校においては、前記1に加え、その実施に当たり、特に以下のことに留意いただきたい。
・ 計画・実施に当たり、その実施のねらい、教育的意義を明らかにするとともに、これらの内容や行程等の詳細について、児童生徒や保護者に対し予め十分に説明し、不利益が生じることがないようにすること。
・ 事前の実地調査や関係者間での打合せなどにより、経路、交通機関、行程の確認や現地の最新の情報等の把握に努め、安全に実施するために必要十分な情報を予め確認すること。
・ 引率教職員の数は、必要十分な体制とするとともに、引率責任者を明確にするなど、その指導組織や事務分担を明らかにし、常に児童生徒を掌握し、秩序ある行動と安全が保てるよう、配慮すること。引率責任者は、計画作成の中心となり、また、その実施にあたっては、的確に状況を判断し、予期しない事情の変化に際しては、日程、経路、目的地を変更することや、引率教員の体制を見直すこと等、臨機応変の措置を取ること。
・ 関係業者を利用する場合には、関係業者に過度に依存することなく、学校が主体性をもって旅行・集団宿泊的行事の安全確保につき万全を期すること。なお、関係業者については信用度等を十分に調査したうえで利用し、また、これと不明朗な関係をもつことのないよう厳に注意すること。
・ 加えて、旅行・集団宿泊的行事の実施に当たっては、児童生徒への事前の安全指導の徹底を図ること。
学校の設置者においては、平素から、各学校に対して、旅行・集団宿泊的行事のもつ意義と留意点についての理解の徹底を図るとともに、各学校が作成した計画について、その日程、目的地、見学先、経路、交通機関等を十分検討し、特に、児童生徒の安全と健康の保持上無理なく適切なものとなるよう必要な指導を行っていただきたい。さらに、万一、事故等緊急の対応が必要な場合、すみやかな対応がとれる体制を整えていただきたい。
その他、小学校、中学校、高等学校の学習指導要領解説(特別活動編)や、「小学校、中学校、高等学校等の遠足・修学旅行について」(昭和43年10月2日付け、文初中第450号文部省初等中等教育局長通達)、「修学旅行における安全確保の徹底について」(昭和63年3月31日付け、文初高第139号文部事務次官通達)などを参照いただきたい。
3.適切な教育活動の実施について
高等学校等における教育活動については、これまで教育基本法第14条第2項で「特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動」が禁止されていることに留意することや、多様な見方や考え方のできる事柄、未確定な事柄、現実の利害等の対立のある事柄等を取り上げる場合には、生徒の考えや議論が深まるよう様々な見解を提示することなどが重要であり、特定の事柄を強調し過ぎたり、一面的な見解を十分な配慮なく取り上げたりするなど、特定の見方や考え方に偏った取扱いにより、生徒が主体的に考え、判断することを妨げることのないよう留意することなどを示している(「高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について(平成27年10月29日付け、27文科初第933号初等中等教育局長通知)」)ところであるが、これらの考え方に基づき教育活動を行う必要があることは、義務教育諸学校等においても同様であることは言うまでもない。
このことを踏まえ、各学校においては、旅行・集団宿泊的行事等を含む教育活動について、上記の趣旨に照らして適切に行われているか、適切に計画されているかについて、改めて確認し、必要に応じて見直しを図るとともに、児童生徒や保護者等の十分な理解を得るために、教育活動の趣旨や具体的な内容等について事前に十分な説明を行っていただきたい。
また、学校の設置者においては、こうしたことが各学校において適切に行われるよう、必要な指導を行っていただきたい。
【別添資料】
資料:高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について(平成27年10月29日付け、27文科初第933号初等中等教育局長通知)(抜粋)