学校で児童生徒等の重大事故等が発生した場合、救急要請することに加え、適切な応急手当等を行うことが重要です。また、有事の際に躊躇せず対応するためには、消防等の協力を得つつ、応急手当の手法等について実習を通じて学んでおくことが効果的です。このたび、教員養成段階・現職段階それぞれにおいて、消防本部等との連携のポイント等を整理しましたので、実習を通じた学修・研修の機会の確保について、積極的に取り組んでいただくようお願いします。
6教参学第14号
令和6年6月3日
各都道府県・指定都市教育委員会学校安全担当課長
各都道府県私立学校主管課長
附属学校を置く各国立大学法人担当課長
構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた
各地方公共団体の学校設置会社担当課長 御中
各文部科学大臣所轄学校法人担当課長
教職課程を置く各国公私立大学長
教職課程を置く各指定教員養成機関の長
文部科学省総合教育政策局教育人材政策課長
後藤 教至
文部科学省総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課長
安里 賀奈子
心肺蘇生等の応急手当に係る取組の実施について
先般、児童が小学校の学校給食を喉に詰まらせて窒息する事故が発生しました。こうした事故の発生時には、児童生徒等の命を守るため、直ちに救急要請するとともに、AEDの使用も含めて、心肺蘇生等の応急手当を迅速かつ適切に行うことが重要です。
応急手当に関しては、第3次学校安全の推進に関する計画(令和4年3月25日閣議決定)において、教員養成段階における学校安全の学修の充実の主要指標として「教員養成機関における、AEDを用いた実習を含む一次救命措置(BLS)の実施状況」(参考1)が掲げられており、また、現職段階の研修についても、文部科学省から「自動体外式除細動器(AED)の適切な管理等について(令和5年11月30日事務連絡)」(参考2)等において、緊急時の一次救命処置が迅速かつ適切に行われるよう、日頃から訓練を行うこと等について呼びかけているところです。
一方で、文部科学省の調べによると、教員養成段階において必修となっている授業においてAEDを用いた実習を行っている大学は全体の11.7%、一次救命処置に関する内容(具体的な内容の座学や実習等)を含んでいる大学は全体の31.1%となっており、このうち、「教育に関する社会的、制度的又は経営的事項(学校と地域との連携及び学校安全への対応を含む。)」に該当する授業においてAEDを用いた実習を行っている大学は全体の1.2%、一次救命処置に関する内容(具体的な内容の座学や実習等)を含んでいる大学は全体の5.7%(参考3)となっています。
また、現職段階においては、各学校(幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校等)において、教職員を対象としたAEDの使用を含む応急手当の実習を行っている割合は84.4%、教育活動中の子供の重大事故を想定した職員向けの訓練等を実施している割合は53.4%(参考4)となっています。
消防庁統計によれば、一般市民が心肺停止を目撃した際、応急手当を実施した場合には、しなかった場合と比較して、1か月後生存率が約2倍、事故後の社会復帰率が約3倍、さらに、AEDを使用し除細動を実施した場合、使用しなかった場合と比較して、1か月後生存率が約3.5倍、社会復帰率が約4.1倍になることが示されています。(参考5)
従って、教職員が児童生徒等の重大事故等に遭遇した場合に、救急要請することに加え、救急隊到着までの間、適切な応急手当・AEDの使用を行うことが重要と言えます。
こうした状況を踏まえ、教員養成段階・現職段階それぞれにおける応急手当に係る取組の推進にあたって御留意いただきたいことを下記のとおり周知します。
大学の教職課程で学ぶ学生が将来教職に就いた際、また、現職の教職員がいざというときに躊躇せず対応できるよう、AEDを用いた実習を含む応急手当に係る取組について、よろしくお取り計らいいただきますようお願いします。
なお、本通知の内容は消防庁と協議済みであり、全国各地の消防本部に周知するとともに、教職員等に対する応急手当講習の実施について協力を依頼していることを申し添えます。
記
1.教育機関と消防本部等との連携等について
【共通事項】
学校の管理下において事故等が発生した際、学校及び学校の設置者は、児童生徒等の生命と健康を最優先に迅速かつ適切な対応を行うことが重要であり、そのためには、学校の体制を整備し組織として対応できるようにしておくとともに、教職員が一次救命処置の方法や心構えについて適切に理解を深め、習熟しておくことが必要です。
これらは、各地域の消防本部・消防署等が実施する応急手当講習により実技実習を含めて学ぶことができます。いざというときに躊躇せず対応するためには、実習を通じた学びが効果的であるため、現職の教職員はさることながら、教職課程で学ぶ学生が、「教育に関する社会的、制度的又は経営的事項(学校と地域との連携及び学校安全への対応を含む。)」の授業等教育実習の事前指導、また授業外の取組においても、こうした講習などを通じて学ぶ機会が得られるよう、消防本部等と連携した計画的な取組について積極的に御検討いただくようお願いします。
【取組の参考となる事例】
● 教員養成段階
大阪教育大学では、「学校安全」教育活動の一環として、教員免許状を取得する者は、普通救命講習等を必修とし、全学学生を対象に「普通救命講習会」(心肺蘇生法等)を実施している。この「普通救命講習会」の講師は、大阪南消防組合による「応急手当普及員講習」を受けた教職員が務めており、受講すると「普通救命講習修了証」が交付される。
・普通救命講習(※大阪教育大学ホームページが別ウィンドウで開きます)
● 現職段階
宮城県では、各学校において消防署等から外部講師を招いて「応急手当に関する研修」を実施するなどし、心肺蘇生やAED使用についての基礎的な知識や技術を身に付けるとともに、事故発生時の校内での安全管理体制について教職員間で共通理解を図っている。
・応急手当(心肺蘇生、AED使用を含む)に関する研修 (救命アクションカードの活用)(PDF:310KB)
2.消防本部等との連携の際のポイントについて
(1)相談の際の留意点
【教員養成段階】
・学生向けの講習受講を希望する場合、希望する日程、所要時間、講習内容をおおよそ検討のうえ調整ください。(別添1:応急手当講習の種類)
・消防職員が大学等に出向いて講習を実施することを依頼する場合、大学の学部学科等でまとめて実施できるよう工夫をお願いします。
【現職段階】
・学校の教職員向けの講習受講を希望する場合、希望する日程、所要時間、講習内容をおおよそ検討のうえ調整ください。(別添1:応急手当講習の種類)
・消防職員が学校等に出向いて講習を実施することを依頼する場合、できるだけ1つの学校に地域の教職員が集まる等し、まとめて実施できるよう工夫をお願いします。
(2)相談先
各地域で体制が異なる場合がありますが、実情に応じて窓口の案内を受けることができます。
【教員養成段階】
・大学の設置者(大学、法人等)からの相談は、所轄市町村の消防本部まで連絡してください。
【現職段階】
・学校の設置者(教育委員会、学校法人等)からの相談は、所轄市町村の消防本部まで連絡してください。
・各学校からの相談は、最寄りの消防署まで連絡してください。
(3)補足
【共通事項】
・「応急手当普及員講習」を受講すると、他の教職員等へ知識・技術を直接伝達するまで習熟が可能です。また、地域によっては、受講者自ら「普通救命講習」を開催し、修了証の交付ができるところもあります。
・教職課程で学ぶ学生や現職の教職員には実習を含む「応急手当講習」の受講を推奨しますが、全員で講習受講の時間が取りにくい場合等には、消防庁Webサイトで公開しているe-ラーニング「応急手当WEB講習」で座学部分を事前受講するなど、効率的に活用することも考えられます。(別添2:e-ラーニング「応急手当WEB講習」)」
・e-ラーニング「応急手当WEB講習」(※総務省消防庁ホームページが別ウィンドウで開きます)
【担当】
(教職課程における取組について)
総合教育政策局教育人材政策課
教員免許・研修企画室教職課程認定係
電話:03-5253-4111(内線:2453)
(現職教師等に関する取組について)
総合教育政策局男女共同参画共生社会学習・安全課
安全教育推進室学校安全係
電話:03-5253-4111(内線:2966)
安全教育推進室 学校安全係