令和5年度宇宙航空科学技術推進委託費の採択課題の決定について

令和5年8月21日

文部科学省では、令和5年度宇宙航空科学技術推進委託費について、公募及び所要の審査を経て採択課題を決定しましたので、お知らせいたします。


宇宙航空科学技術推進委託費では、宇宙航空利用を新たな分野で進めるにあたって端緒となる技術的課題にチャレンジする研究開発、宇宙航空開発利用の発展を支える人材育成等を実施してきました。令和2年6月に閣議決定された宇宙基本計画においては、これらの取組が引き続き必要であるとされました。加えて、令和4年3月に内閣府宇宙政策委員会宇宙科学・探査小委員会において、大学等を中心とした人材育成のあり方に関する検討が行われ、「我が国の宇宙産業の拡大、小型コンステレーション時代を見据えた大学等を中心とした人材育成のあり方について」が取りまとめられました。同報告書では、宇宙分野における人材育成について、「従来型の座学中心の教育による物事の本質的理解とともに、総合工学に求められる統合されたシステムの実現に向けプロジェクト実施を通じ、実践的な教育を組み合わせていくことが必要である。」「このような取り組みが「研究室レベル」で行われてきており、Institutionalizeされた機関(大学レベル)としての活動ではなく(中略)持続性に欠け、失敗経験から得られる知見等が蓄積されない」等といった指摘が成されています。これを踏まえ、令和5年度からは、宇宙航空人材育成プログラムにおいて、従来の『人文社会×宇宙』分野越境人材創造プログラム、『AI・デジタル化×宇宙』技術革新人材育成プログラムのように高い専門性を有する人材の育成を進める「専門人材育成」、ならびに、システム全体を理解し到達ビジョンを持って、先端的かつ複雑化したプロジェクトを牽引できる人材の育成を進める「アーキテクト育成」を新設し、3つのプログラムにおいて、宇宙航空開発利用の新たな可能性を開拓するための取組を行い、さらに裾野を拡大することを目的としています。

1. 公募プログラムの概要

(1) 宇宙航空人材育成プログラム

主に科学技術に関心のある大学院生、大学生、高等専門学校生等の学生を、宇宙航空分野に係る高い専門性を有する人材や、多岐に渡る分野の知識・経験を有し、システム全体を理解し到達ビジョンを持って先端的かつ複雑化したプロジェクトを牽引できる人材として育成するための基盤を構築・強化し、次世代の宇宙航空人材育成を促進する。

【専門人材育成】
衛星・ロケット・航空機等の先端研究・技術開発、国際的な宇宙ビジネス展開や宇宙活動ルールの形成、AI/IoT/ビックデータ等の最新のICTの宇宙分野への応用等が可能な、宇宙分野の高度な知識・技術や他分野の専門知識を併せ持った研究者・技術者等について、講義やセミナー、ワークショップ、海外交流、体験学習や小規模プロジェクトによるPBL(Project Based Learning)の実施、及びそれらを統合したカリキュラム構築や教材作成、指導者養成といった取組を通じて、年間十数人~数十人程度の規模で育成できる基盤の構築・強化を推進する。

【アーキテクト育成】
複雑かつ高度に統合されたシステムの実現が求められる「総合工学」としての宇宙航空分野において必要とされている、多岐に渡る知識・経験のもと決断・判断を下し、到達ビジョンを持ってプロジェクトを牽引できる「アーキテクト」としての素質を有する人材を、年間数十人程度の規模で育成できる基盤の構築・強化を推進する。
座学等を通じた本質理解に加えて、設計・開発から打上げ・運用といった実践的なプロジェクト全体を1~2年程度で経験できるような機会を、大学等の研究室レベルにとどまらず学部・学科や産学官連携部門の参画、他の研究機関や民間企業、海外機関等との連携によって創出・提供することにより、将来的に宇宙航空研究開発機構 (JAXA) や大学等の研究機関、産業界等において、プロジェクトマネージャやサブシステム担当のリーダーといった役割を担い先端的かつ複雑なプロジェクトを牽引し得る人材の育成を促進する。

(2) 宇宙航空脱炭素技術等創出プログラム

航空機の水素燃料・電動化技術や機体軽量化・効率化による温室効果ガス排出量の抜本的低減に資する技術といった、宇宙航空分野における脱炭素化に資する技術の開発・高度化や、衛星から得られたデータの利活用をはじめとした宇宙航空分野と異分野の技術シーズ・ニーズのマッチングによる、農林水産業や気候変動、環境、交通・物流等の様々な分野における脱炭素化への取組を推進することで、将来的なカーボンニュートラルの実現及び宇宙航空分野の新たな可能性開拓に向けた価値創出・提供を目指す。

(3) 宇宙探査基盤技術高度化プログラム

宇宙における探査活動において、月を目指す各国の動きが活発化している背景を踏まえ、我が国が強みとする地球低軌道の超小型衛星開発等で培われた大学等の技術を活用し、月探査に必要な超小型探査機等に係る以下のような基盤技術の開発や分野間での共有・利用を促進する。

  • 測位(航法)・通信系: 将来の超小型探査機に搭載可能な地球-月以遠の間の測位・通信を可能とするための技術開発(高周波無線通信技術、超小型通信機、高効率・軽量アンプ、超小型衛星用アンテナ、月測位インフラの構築及びそれを生かした深宇宙超小型探査機通信系システムの開発 等)
  • 推進系: 将来の超小型探査機に搭載可能な地球静止軌道から月以遠に航行するための技術開発(Kick Motor、電気・化学推進 等)
  • ミッション系: 国際競争力のある汎用ミッション機器の開発(深宇宙向け超小型探査機に搭載可能な高機能観測センサ、高解像度カメラの開発 等)
  • バス・システム系: 深宇宙探査向けの標準化システムバスの開発、衛星実装のためのインテグレーション技術、その他主要システム技術の開発(様々なミッションに対応可能な汎用標準化システムバス、月科学ミッション用の高機能標準化システムバス、電源系等サブシステムの小型軽量化技術 等)
  • その他: 上記以外の、超小型探査機等による将来の月・月以遠の探査や有人宇宙活動に貢献する基盤技術の開発(放射線耐性に関する技術、地上設備に関する技術、大型・軽量・展開性を有する宇宙構造物に関する技術 等)

 

2. 決定までの経緯等

公募実施期間:令和5年2月24日(金曜日)~令和5年4月25日(火曜日)

提案件数:17件(うち宇宙航空人材育成プログラム【専門人材育成】1件、うち宇宙航空人材育成プログラム【アーキテクト育成】6件、宇宙航空脱炭素技術等創出プログラム3件、宇宙探査基盤技術高度化プログラム7件)

3. 決定した採択課題等

外部有識者(別紙1)から構成される審査評価会での審査結果を踏まえ、採択課題(別紙2)を決定しました。

お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課 宇宙航空科学技術推進委託費事務局

電話番号:03-5253-4111(内線4151)