世界トップレベル研究拠点プログラム(WPIプログラム)平成19年度拠点構想進捗状況に対するコメント 世界トップレベル研究拠点プログラム委員会 東京大学

世界トップレベル研究拠点プログラム委員会は、平成19年度における拠点構想の進捗状況に対して、以下のようにコメントします。

ホスト機関名 東京大学
ホスト機関長名 小宮山 宏
拠点名 数物連携宇宙研究機構(IPMU)
拠点長名 村山 斉

1.進捗状況全般に関する認識

東京大学数物連携宇宙研究機構(IPMU)は卓越した「目に見える」拠点を短期間に立ち上げることに成功した。そこには、現在日本に存在しない革新的な手法がある。他の4拠点と違い、IPMUは現在日本に存在しないような全く新しいグローバルな研究機関に成長していくであろう。これは、全く新しく真にグローバルなものである。このような革新的要素は、拠点長のユニークな研究バックグラウンドによって実現したものである。拠点長の影響力とリーダーシップは世界的に評価されている。

このような初期の成功を認めると共に、原点に戻りWPIプログラムの大きな目的の一つである研究組織のシステム改革について考えるべきである。IPMUを成功させることは、この改革を進める絶好の機会である。もしIPMUが成功しなければ、改革につながる大きなチャンスを見逃すことになるであろう。東京大学は、IPMUの目標を達成させるため、強力に支援する必要がある。

2.改善すべき事項

IPMUも成長する過程において、困難がないわけではない。日本人の主任研究者の多くは他研究機関や他部局によって雇用されている(兼任)。彼らはその雇用によって負う義務をIPMUの活動より優先するし、所属の研究機関に忠実である。それは、拠点長が主任研究者に対しリーダーシップを発揮できないような状態が発生することを暗示している。

IPMUを理論研究で世界が一目置く研究所に成長させるには、柏キャンパスでコアになる理論研究者を雇用し、兼任よりもむしろ専任研究者をより多く確保できるよう努力すべきである。さらに、柏キャンパスに外国人の若い主任研究者を招聘する努力も必要である。

東京大学はIPMUを世界的な「目に見える」拠点とするため、特に次の側面で努力が必要である。

  • 1) IPMUに関与する主任研究者の講義の時間及び管理運営義務を削減するよう努めること。
  • 2) IPMUに所属する研究者が大学院生を確保することを可能とする。
  • 3) IPMUを大学の組織に組み込むための特別な方策をとること。そうでなければ、IPMUは孤立し、それゆえ、拠点をホスト機関内に形成するWPIプログラムの目的である、大学を変革させるという役割を達成できない危険性がある。

3.その他の指摘事項及び意見

その他プログラム委員から下記のような意見がありました。

  • 1) IPMUはゼロの状態からここまで発展してきた。このことを踏まえ、あまり人事に関する数値目標に対するプレッシャーを与えるべきではない。
  • 2) 日本と文部科学省は研究機関間の共同研究を発展させるため、1人の研究者が複数の研究機関で働きやすい環境を整えるべく、人事管理面における制度改革を促すべきである。
  • 3) 数学者と物理学者を融合させることは重要ではあるが、非常に困難である。これを達成するための拠点長のビジョンはどのようなものであろうか。
  • 4) IPMUは少なくともセミナーや、その他の活動をインターネット(ビデオストリーミング、スカイプなど)で公開するべきである。そうすることで、より広い視聴者に情報を届け、サテライトや大学の他の部局、さらには世界中のよく似た分野の研究機関などとの議論を促進することができる。
  • 5) IPMUが発展することは、東京大学、ひいては日本に変革をもたらすためにも重要である。

-- 登録:平成21年以前 --