国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA) 1拠点構想等の概要(物質・材料研究機構)

ホスト機関名 独立行政法人物質・材料研究機構
ホスト機関長 岸 輝雄
拠点長 青野 正和
事務部門長 藤田 高弘
拠点構想の名称 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点構想
拠点名称 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA)
拠点構想の概要 「持続可能な発展」は21世紀の人類にとって最大の課題である。この課題の解決に我が国が大きい貢献をしうる研究分野は材料科学である。本拠点は、材料研究の重要性とその推進における国際協力の必要性の観点に立って立案された。その目標は、国際的に開かれた環境の下に内外の優れた研究者を結集し、我々の新しい材料開発技術体系であるナノアーキテクトニクス(nanoarchitectonics)に基づいて、持続可能な発展に必要とされる新材料を開発し世界に提供することにある。この目標を達成するため、多国籍、多分野の国際性豊かな研究者集団を組織し、自由闊達な雰囲気の下、総勢約200名の陣容で研究を推進する。
対象分野
  • 対象分野名
    材料科学
  • 融合分野
    主として化学、物理学を融合して研究を推進する。
材料はすべての科学技術を基盤として支える土台であり、かつ我が国が最も優位性を発揮しうる分野でもある。21世紀の産業および社会生活が材料に依存し続けることは自明であり、「持続可能な発展」が材料開発のイノベーションなくしては実現できないことは明らかである。まさに材料開発は人類の生命線といえよう。本研究拠点では、21世紀が求める新材料の開発を推進するため、我々がナノアーキテクトニクスと呼ぶ新しい材料開発技術体系を開拓することにより、材料研究におけるパラダイムシフトを達成する。ナノアーキテクトニクスは、ナノ構造すなわち原子や分子の集団としてのナノスケールの構造ユニットを意図した配列に配置させるための技術体系であり、ナノテクノロジーがナノサイエンスの域を脱して実用にまで発展するために不可欠な技術分野である。また、ナノアーキテクトニクスは材料科学、物理学、化学などに幅広く関係する典型的な学際分野に位置するものである。
研究達成目標

21世紀が必要とする新材料の開発は材料開発のパラダイムシフトなくしては実現できない。本研究拠点では、そのパラダイムシフトを、原子や分子の集団としてのナノスケールの構造ユニットを意図した配置に配列させるための新たな技術体系であるナノアーキテクトニクスによって開拓する。ナノアーキテクトニクスに基づいた材料開発によって達成しようとしている研究目標は、

『21世紀の持続可能な社会の実現に必要な革新的材料の開発』

である。より具体的には次の3つを目標とする(例として示したものは研究を集中する課題)。

  • 1)環境、エネルギー、資源に関わる新技術のための革新的材料の開発
    • 例:
      • 超伝導材料(薄膜超伝導ダイヤモンドなど)
      • 電池関連材料(全固体2次電池材料など)
      • 触媒関連材料(可視光活性光触媒など)
  • 2)情報通信を革新するナノエレクトロニクスのための革新的材料の開発
    • 例:
      • 量子情報デバイス材料(新しい量子ビット材料など)
      • 原子エレクトロニクス材料(原子スイッチの新材料など)
      • フォトニックデバイス材料(疑似位相整合素子など)
  • 3)診断、治療、再生に関わる新技術のための革新的材料の開発
    • 例:
      • DNAチップ材料(ナノピラーアレイチップなど)
      • バイオマテリアル(高生体親和性再生材料など)
拠点運営の概要 本拠点は拠点長のリーダーシップが強く発揮できる意思決定システムを基本とし、拠点長には拠点内での運営全般に関する大幅な権限を付与する。さらに、本拠点の運営面での重要な特徴は、NIMSの若手国際研究拠点(ICYS)の趣旨を継承し発展させる点にあるので、本拠点においてはICYSの経験を活用し優秀な多国籍の若手研究者を集めメルティング・ポット的な研究環境を構築する。メルティング・ポット的な環境に触発された若手研究者の自由な発想を最大限に尊重することで研究にイノベーションを起こす。また、この環境を若手研究者の育成のために活用し、NIMSの将来を担う若手テニュア研究員を育成する。
拠点を構成する研究者等
  • 主任研究者 27人(外国人 10人)
  • 研究者総数 167人(うち外国人 84人)
  • 拠点(中核)構成員総数 209人(うち外国人 90人)
  • いずれも、最終達成時期 2011年
  • サテライト機関
    筑波大学、東京理科大学、ケンブリッジ大学、カリフォルニア大学(UCLA)、ジョージア工科大学、フランスCNRS
  • 連携機関
    中国科学院物理研究所、韓国KAIST、マックスプランク研究所、カレル大学(チェコ)、カリフォルニア大学(UCSB)など
環境整備の概要 拠点の環境整備としては以下のような措置を講ずる。
  • 1種々の事務手続きに関する支援や実験の支援などを充実し、研究者が研究に専念できる環境を構築する。とりわけ、本拠点は参画する研究員の半数は外国人であるために、外国人研究者が言葉の障害なく研究に没頭できるような英語の公用語の運営体制を完璧に整備する。
  • 2外部から招聘した研究者が直ちに自身のラボを立ち上げることができるように、スタートアップ研究資金を支給する。
  • 3ICYSのこれまでのリクルート活動のノウハウを活かして、世界中から優秀な若手研究者を確保する。また、筑波大学との連携、国際連携大学院などを通じて大学院生等の確保と研究指導の拡充を図る。
  • 5NIMS本体とは異なる弾力的な給料システムを構築し、優秀な研究者を正当に処遇する。
  • 6本拠点の研究活動のために全体で約10,000平方メートルのスペースを確保する。
  • 7材料研究分野での世界のトップ拠点としての存在感を示すために、国際研究集会を年に1回開催する。
世界的レベルを評価する際の指標等の概要

評価指標としては、インパクトの高い成果(有名雑誌への投稿論文数)、世界トップレベルに相応しい研究者の割合、外国人研究者の数、外部資金の獲得総額、民間企業との共同研究の件数、出願特許ならびに取得特許の件数、特許の実施状況、招待講演の数、学会賞等の受賞状況などを用いる。また、ISIによる材料分野における研究機関単位の論文被引用数ランキングも研究機関を評価する一つの有力な指標であろう。

本拠点のホストであるNIMSは、材料分野の過去10年間の論文被引用数ランキングで世界12位に位置している。しかし、最近5年間の統計を取ると世界6位に順位がアップする。これは独立行政法人となった以降にNIMSの研究が著しく活性化していることの証しである。本拠点における先鋭的な研究活動によってNIMSを強力に牽引することで、この順位をさらにアップさせ、事後評価時において世界3位(国内1位)を目指す。これは単独の研究機関としては世界トップとみなすことができる順位である。

研究資金等の確保 近年の3年間において、拠点の中核を構成する主任研究者が研究代表者となった外部資金の総額として1年あたり約10億円を獲得した実績をもつ。また、それらの主任研究者への運営費交付金からの充当額の総額も、平均で1年あたり8億円程度となっており、世界トップレベルの研究を推進するにたる直接費を有している。また、平成19年度に関しても、文部科学省の拠点事業などを含む外部資金の獲得に成功しており、これまでの平均獲得金額の維持、あるいは、それを上回る資金の獲得は可能であると考えられる。
ホスト機関からのコミットメントの概要 本拠点は、1材料に関する基礎・基盤研究を化学や物理との分野融合を図りつつ実施する先端的研究実施組織、2国際的・学際的雰囲気の下で、材料研究の次代を担う研究者を育成する組織の2つ側面を持ち、NIMS本体から見るとき、研究面でのNIMS本体の強力な牽引と、NIMSへ若手人材の供給の2つの役割が期待される。したがって、本拠点はNIMS本体の長期戦略の中に明確に組み込まれており、その活動はNIMS全体の活性化のために極めて有効である。そのため、NIMSは本拠点の円滑な実施のために人材の提供、研究資金の充当、研究スペースの提供、拠点長への管理権限の委譲など最大限の便宜をはかる。

-- 登録:平成21年以前 --