免疫学フロンティア研究センター(IFReC) 1拠点構想等の概要(大阪大学)

ホスト機関名 国立大学法人 大阪大学
ホスト機関長 大阪大学総長 鷲田 清一(わしだ きよかず)
拠点長 大阪大学教授 審良 静男(あきら しずお)
事務部門長 大阪大学教授 古城 紀雄(ふるしろ のりお)
拠点構想の名称 大阪大学免疫学フロンティア研究センター
拠点名称 大阪大学免疫学フロンティア研究センター(IFReC)
拠点構想の概要  本拠点は免疫学とイメージング技術の融合を通して、生体内における免疫応答の実態を時間的空間的に把握することを目指す。イメージング技術をさらに向上させ、免疫系を構成する個々の細胞の特性や相互作用の理解を深めると同時に、免疫細胞動態の制御を基盤とした免疫操作技術を開発し、感染症、自己免疫疾患、アレルギー、癌などの重要疾患に対する新たな免疫療法の確立に繋げる。
対象分野
  • 対象分野
    免疫学、生体工学(生命科学と精密・機械工学の融合)
  • 重要性
    外来微生物に対する生体防御機構である免疫系に関する研究は免疫系が関与する疾患(感染症、アレルギー、炎症、自己免疫疾患、免疫不全症など)を治療するために必須である。これまで、免疫系に関与する細胞の機能や因子が明らかにされてきたが、実際に生体内において免疫系がどのように発動し収束するのかその全体像は分かっていない。今後は、免疫応答の実態を時間的空間的に把握し免疫系の動態の全体像を捉える新たなイメージング技術の開発と、それを基盤とする免疫応答の人為的制御法の開発が必要となる。既に海外においては、免疫応答可視化に向けた免疫学とイメージング技術の融合型研究が始まっているものの、国内においてはいまだ両分野の隔離があり融合にいたっていない。国内における免疫学研究は国際的に非常に高いレベルにあり、特に大阪大学は日本の免疫学発展に中心的な役割を果たしてきた。したがって、大阪大学の恵まれた人材を基盤とし、免疫システム可視化を目指した拠点を形成することは、新たな学問創成にとどまらず、上記疾患を克服する上でも重要である。
研究達成目標 免疫システムの生体内可視化技術の開発とその人為的制御による疾患克服
拠点運営の概要  英語での組織運営に長けた事務部門長のもと、バイリンガルな職員を配した総務系実務担当および会計系実務担当、ならびに学位取得者からなる研究マネージメント担当の3つのセクションを組織する。研究マネージメントセクションは広報、学術集会の運営、評価会議のロジスティックス等の研究関連マネージメントを行う。
 拠点長、事務部門長、主たる専任並びに兼任教授からなるセンター運営委員会が、国際メンバーによる評価会議での評価に基づき中長期計画を決定する。また、拠点長は運営委員会での意見を各研究者の待遇や人事面に反映させる。
 大阪大学総長は、研究者の待遇や人事面での拠点長の決定を承認する。
拠点を構成する研究者等 主任研究者約20名を含め、2010年までに約200名の研究者及びスタッフで構成予定
  • 主要な主任研究者
    審良静男、岸本忠三、平野俊夫、宮坂昌之、菊谷仁、木下タロウ、熊ノ郷淳、竹田潔、荒瀬尚、坂口志文、斉藤隆、黒崎知博、Fritz Melchers、柳田敏雄、関淳二、吉岡芳親、神隆、畑豊
  • サテライト、その他連携機関
    理化学研究所免疫アレルギー科学総合研究センター、National Institutes of HealthHarvard UniversityNew York UniversityStanford UniversityCalifornia Institute of TechnologyUniversity of California San Francisco
環境整備の概要
  • 1)学位取得者からなる研究マネージメントセクションを事務部門におき、拠点の広報、学術集会の企画、準備等を担当することにより、研究者が研究に専念できる環境を提供する。
  • 2)国内からの招聘研究者には、研究室の設備整備費や研究費を提供し、遅滞なく拠点での研究を軌道に乗せることを支援する。研究マネージメントセクションが、外国人研究者の競争的資金への応募を支援し、速やかな獲得を目指す。
  • 3)ポスドクは、Nature誌、同ホームページ、Immunity誌などでの募集広告掲載により国際公募を行う。
  • 4)留学生センターの運営経験を持つ教授を事務部門長とし、学位取得者からなる研究マネージメントセクション、バイリンガルな職員を配した総務系セクションと会計系セクションで構成される事務部門を組織する。
  • 5)拠点長は、著名免疫学者十数人からなる国際諮問委員会を組織し、各主任研究者グループの業績評価を1~2年ごとに行う。拠点長は、その結果を各研究者の待遇に反映させる。招聘研究者には、世界レベルの研究者に適用できる年俸制度がすでに大阪大学に整備されているので、それを用いる。俸給表の格付け、昇給は評価に基づき拠点長が決定する。
  • 6)10階建て9,400平米の新研究棟が微生物病研究所本館横に、平成21年春に完成し、その多くを拠点に当てる。
  • 7)年に1回拠点を中心にした国際集会を開催する。
  • 8)著名免疫学者からなる国際諮問委員会で提出されたアドバイスに沿って、研究者が国際的かつ競争的な環境の下で快適に研究に専念できるよう環境を整える。
世界的レベルを評価する際の指標等の概要
  • 1)対象分野における世界的なレベルを評価するのに適当な評価指標・手法
    • (a)対象分野における主要研究領域を本拠点の研究者が牽引しているか?
    • (b)対象分野の中で独創的な新規研究領域を先導的に開拓しているか?
    • (c)研究成果が疾患の診断や治療への応用などを通して社会に還元されているか?
    の3点について、論文発表数・引用数などの量的な評価に加え、評価委員会によるpeer reviewを行う。
  • 2)上記評価指標・手法に基づいた現状評価
    • (a)審良は自然免疫研究領域、坂口は調節性T細胞研究領域、岸本・平野はサイトカイン研究領域の世界的第一人者としてそれぞれの領域を牽引してきたことは、発表論文の引用数や国際的評価から見ても明らかである。また、柳田は一分子イメージング研究の第一人者としてその領域を牽引してきた。
    • (b)斉藤は免疫学における一分子イメージング解析という新たな研究領域を切り開いている。菊谷・熊ノ郷は免疫セマフォリンによる免疫制御という新たな研究領域を切り開いている。
    • (c)岸本が開発した抗IL-6受容体抗体はリウマチ性関節炎などの免疫病の治療薬として商業化され、その効果が期待されており、基礎研究の社会還元という観点からも世界的に評価されている。
  • 3)本事業により達成すべき目標(中間評価時、事後評価時)
    • 中間評価時
      従来型免疫学研究の分野においては、現行の世界レベルを維持し、本拠点で開拓した新規領域については、対象分野における主要研究領域と認められるまでに研究を進展させる。イメージング研究の分野では、免疫細胞の一分子解析と生体解析の分野で世界レベルのグループをめざすとともに、MRIなどを用いて免疫現象を非侵襲下で解析する技術の開発にめどをつける。
    • 事後評価時
      免疫現象を生体内でしかも非侵襲でイメージング解析する技術を完成させるとともに、従来型免疫学研究で得た知見をその解析に応用することにより免疫ネットワークの仕組みを理解するための新たなパラダイムをつくる。
研究資金等の確保
  • 1)補助金(年間約15億~20億円程度)及び研究者の獲得研究費に加え、大阪大学からの拠出により必要額を確保する。
    (参考)
    主任研究者の過去5年間の研究費取得実績
    平成14年:811,平成15年:1,127,平成16年:1,137,平成17年:1,104,平成18年:1,152;年平均1,066(百万円)
ホスト機関からのコミットメントの概要  大阪大学では、本拠点を中期目標・中期計画において最重点項目として位置づけ、拠点形成のための各種制度改革を実施すると共に、研究実施体制等を整備し全面的に支援する。
  • (1) 当該拠点の運営、研究活動のため大阪大学では出来る限りの支援を行うこととし、本プログラムからの支援額と同程度以上のリソースを当該拠点に充てることとする。
  • (2) 当該拠点は、学内の既存の部局と独立した一つの特別な部局として扱うこととし、拠点長は当該拠点内における管理・運営が行える体制とする。具体的には、拠点内における研究者の採用等の人事や、拠点内にの予算執行は部局長と同様の権限を有することとなるため、実質的に拠点長が管理・運営に係る判断を行う体制が構築されることとなる。また、拠点長の下に事務管理面で強力なサポートを行える優秀な事務部門長を配置することにより、拠点長自身は必要最低限の判断を行えるようにし、拠点長自身も研究活動に支障が生じないような体制で当該拠点を運営していくよう支援する。
  • (3) 当該拠点と他部局との積極的な人材交流を促す等の連携を奨励し、当該拠点を支援していくこととする。
  • (4) 当該拠点が優れた研究環境を構築していくため、既に本学において導入されている年俸制による雇用制度等を活用するとともに、既存の制度で対応できないものがあれば、制度の改正、整備等も含めた検討を進め、柔軟に制度が運用できるようにしていくこととする。
  • (5) 研究拠点として、10階建て9,400平方メートルの新研究棟が2009年3月までに建設される予定である。大阪大学はまた、新研究棟の完成前に研究拠点に配属される研究グループを収容できるように、キャンパス内の研究スペースを提供する。また、招聘研究グループ等による動物飼育スペースの増加分を収容するために、大阪大学は新たに動物実験施設を建設し、研究拠点が使用できるように提供する。
  • (6) 平成19年度に「ワンストップサービスオフィス」を設置し、外国人研究者を始めとする外国人ビジターへの一元集中的サービスを実施して、研究・環境の飛躍的向上を図ることとするほか、キャンパスと地域での研究・生活情報の提供については、既にウェブ情報サービスサイト(GCN-Osaka&Worldwide)を開設して実施している。また、既に海外3ヶ所に設置されている海外の教育研究センターにおいて、情報収集・情報発信、優秀な研究者のリクルート活動等による支援も行っていくこととしている。このように全学的な体制で当該拠点を支援し、世界トップレベルの拠点となることを目指していく。

-- 登録:平成21年以前 --