物質-細胞統合システム拠点(iCeMS) 1拠点構想等の概要(京都大学)

ホスト機関名 京都大学
ホスト機関長 尾池 和夫総長
拠点長 中辻 憲夫教授
事務部門長 曽我 渡
拠点構想の名称 物質-細胞統合システム拠点
拠点名称 物質-細胞統合システム拠点
拠点構想の概要 「次世代の科学技術には、10~100ナノメートルのメゾ空間での分子複合体の理解と制御が必要」と考える研究者のクリティカルマスを形成し、細胞-物質科学融合研究の世界トップ拠点とする。細胞は、マウス、サル、ヒトの多能性幹細胞を軸とする。学際的研究によって、1)水中のナノ~メゾ空間化学、2)細胞のメゾ生物物理学、3)幹細胞メゾ制御工学、の3つの学理を融合深化し、3つの人類への貢献、A)新しい物質変換・分離・貯蔵法による環境に優しい化学の創造、B)体内での薬物合成・制御放出、C)随意制御可能な物質-幹細胞複合材の創製による再生医療の基盤的技術の開発をおこない、世界のトップ科学者とトップを目指す若手研究者が集う拠点を構築する。
対象分野

「細胞科学と広義の物質科学の学際領域」

1生命科学、2化学、3材料科学、6物理学、の4領域の融合領域)。
本拠点は、「メゾ空間」と「幹細胞」を2つの基本概念として構想された。
  • (1)メゾ空間とは10~100ナノメートルの空間である。我々になじみが深い、「ナノ空間」と「バルク空間」の間には、メゾ空間という、大きな未踏の大地が広がっている。しかし、メゾ空間にも、科学技術のさまざまな分野で萌芽的研究の成果が見られ始めている。多孔性自己組織高分子体の協同的構造変化は良い例である。また、多くの調節性のある細胞機能は、個々の分子の単なる衝突によって果たされるのではなく、例えば遺伝子の転写(DNAを鋳型としたmRNAの合成)やシグナル伝達のように、10~100ナノメートルというサイズの大きな分子複合体が担っていることが多い。本拠点では、細胞科学・化学・物理学・材料科学の全ての分野で重要な課題になりつつある、メゾ空間での重要な(弱い協同性を持つ)分子間相互作用の普遍的原理の理解を、学際的協力によって推進すること、さらにメゾ空間レベルで物質を制御するための全く新しい技術を確立しようとすることを目指している。
  • (2)本拠点ではマウス、サル、ヒトの多能性幹細胞を共通の細胞として用い、学際領域での多岐にわたる研究を統合発展させるための基盤とする。このように対象を絞り込むことによって、共同研究を促進する。これによって、幹細胞の理解を劇的に進める。さらに、応用可能な有用な成果は、ヒト幹細胞を用いた研究へと進め、再生医療への応用を強力に推進する。
    京都大学は、物質科学と細胞科学で世界的に知られ(京都大学の物理学と化学はノーベル賞受賞者4名を産み、また、化学は世界で第4位、国内で第1位の被引用論文数。再生医科学研究所は幹細胞研究の世界の核)、さらに両分野の統合推進の世界的リーダーが多数在籍している。彼らを糾合して核とすることによって、この未踏分野を確立し、世界から見える研究組織をつくる。
研究達成目標 上記の「拠点構想の概要」と「対象分野」の欄で述べたとおりである
拠点運営の概要

事務部門の構成

事務部門は、事務部門長と副事務部門長が統率する。国際的視野と経験をもつ管理事務能力の高い人材に加えて京都大学本部との連携協力体制を構築できる人材を補完的に配置する。事務部門には、「総務」、「企画」、「予算執行」、「知的財産」、「広報・産業界リエゾン」、「研究インテグリティー・倫理・安全」の6部署を置く。各部署には英語が堪能なスタッフを配置する。

拠点内の意思決定システム

拠点長が意思決定をする。このとき、ステアリングコミティー(学内外の有識者による協議委員会)の助言と、副拠点長と事務部門長の補佐を受ける。拠点長はまた、事務部門長と副事務部門長の管理執行を指揮する。研究教育についての助言は主任研究者会議がおこなう。

拠点長とホスト機関側の権限の分担

本拠点は学長直轄の組織として運営される。学長と拠点長(指定職)との協力と調整により、人事、管理運営については独自のルールを採用する。

拠点を構成する研究者等
  • 主任研究者数 20名
    (うち、外国人主任研究者数3名、サテライトの主任研究者数1名)
  • 研究者総数 135名
    (うち、外国人研究者総数40名)
  • 拠点構成員総数 250名
    達成時期平成21年4月
  • 主な主任研究者
    • 拠点長・副拠点長(京大内で異動、2名)
      • 中辻憲夫(再生研、拠点長、幹細胞生物学、57)
      • 北川進(工、副拠点長、無機錯体化学、56)
    • 京大からの主任研究者(11名、年齢順)
      • 上杉志成(化研、ケミカルバイオロジー、40)
      • 田中耕一郎(理、光物性物理学、44)
      • 山中伸弥(再生研、幹細胞生物学、45)
      • 今堀博(工、光化学、46)
      • 杉山弘(理、遺伝子化学、51)
      • 植田和光(農、細胞生化学、53)
      • 楠見明弘(再生研、1分子ナノバイオロジー、54)
      • 橋田充(薬、薬品動態制御、56)
      • 富岡清(薬、薬品合成化学、59)
      • 林民生(理、有機合成化学、59)
      • 高野幹夫(化研、固体化学、63)
    • 他機関から参加する主任研究者(3名)
      • 柊卓志(Max-Planck Institute, Münster、発生生物学、39)
      • (1名未定)
      • 原田慶恵(東京都臨床医学総合研究所、1分子生理学、47)
    • 外国人主任研究者(3名)
      • Yong Chen(Ecole Normale Supérieure,CNRS,ナノテクノロジー、50)
      • Konstantin AgladzeGeorge Washington University、生物物理学、51)
      • John HeuserWashington University,生物物理学、65)
    • サテライト主任研究者(1名)
      • 木曽真(岐阜大応用生物科学部、応用生物有機化学、60)
        • サテライト設置機関
          岐阜大学(応用生物科学部)
  • 海外研究者のキャリアパスの一部として本拠点が位置づけられるようにするため、8名程度の海外の研究者を、スーパーポスドク(Career Development Awardなどと似た趣旨だが、ポジションを提供。研究面で独立した職だが、主任研究者1人をメンターとして選ぶ)を拠点長裁量によって、雇用し、研究費を提供する。
環境整備の概要
  • 1)研究者が研究に専念できるよう、事務スタッフの充実を図る。
  • 2)スタートアップの研究資金は、本経費、および大学が提供する資金によってまかなう。
  • 3)ポスドクは国際公募。
  • 4)拠点の公用語は英語とし、英語でコミュニケーションできる事務スタッフ機能を整備する。
  • 5)3,5,8、10年後に国内外から選ばれた外部委員による中間評価を実施し、評価による能力給を導入する。また、ホスト機関の京大からの主任研究者は、京大が給与を支給する。
  • 6)京大は、世界トップレベル拠点にふさわしい、研究室、居室、設備環境を整備する。
  • 7)世界トップレベルの研究者を集めた国際集会を年に最低2回実施する。
世界的レベルを評価する際の指標等の概要 国際評価委員会を組織し、
  • 1研究者個人が世界トップレベルの研究を達成しているか
  • 2主任研究者同士の共同研究は進んでいるか
  • 3事務組織や他の研究者支援の仕組みは、国際拠点として十分な機能を果たしているか
  • 4世界的な人材の流れ(キャリアパス)のひとつに組み込まれた拠点であるか
  • 5東洋・アジアの研究者との交流は十分に促進されたか
の5つの視点から評価をおこなう。
研究資金等の確保 本経費以外に研究者が獲得する外部資金及び京都大学からの積極的な支援経費が本拠点の運営資金となる。
ホスト機関からのコミットメントの概要
  • 京都大学は、本学が国際ゾーンと位置づける、日仏学館、日伊会館、ゲーテ協会に近い旧人文研の建物や工学部9号館、再生医科学研究所の一部(動物・ES細胞施設など)を耐震化工事、実験棟として必要な施設整備、実験室への改修を終えたうえで、研究拠点として提供する。また、光熱水料等建物の維持管理費を負担する。
  • 大学が独自の主任研究者ポスト5名分を措置し、京大内からの主任研究者の給与を負担する。本拠点と、主任研究者の出身部局との共栄を図るため、主任研究者の元部局に対して、既存の教育研究活動への影響に配慮し、元部局への負担を軽減するための措置を行う。
  • 事務組織についても、大学が事務職員のポストと必要な人件費を措置し、独立した事務組織を整備する。
  • 機動的な研究をおこなうために、拠点長裁量経費を、運営費交付金、間接経費、総長裁量経費などの形で提供する。

-- 登録:平成21年以前 --