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先端研究基盤共用促進事業シンポジウム2019~研究力向上の原動力である研究基盤の充実に向けて~

JASIS2019にて文部科学省「先端研究基盤共用促進事業シンポジウム2019」を開催いたしましたのでお知らせいたします。

1.主催機関

 文部科学省

2.日時・場所

 【日時】令和元年9月5日(木曜日)10時30分~17時00分
 【場所】幕張メッセ 国際会議場2F 201会議室

3.プログラム

 別紙のとおりです。
 ※本シンポジウムは会場にて発表資料の紙配布は致しません。必要に応じて各自印刷して持参いただくか、当日、お手持ちのパソコンまたはスマートフォンなどから本ホームページへアクセスいただきご覧ください。(会場内は無料WiFiがご利用いただけます)

4.パネルディスカッション 要旨

モデレーター:東京工業大学 統括理事・副学長特別補佐、広報・社会連携本部 教授/内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付上席科学技術政策フェロー 江端新吾氏

パネリスト:名古屋工業大学 江龍 修氏、 宮崎大学 水光 正仁氏、 名古屋大学 古賀 和司氏、 科学技術振興機構 研究開発戦略センター(CRDS) 永野 智己氏、北海道大学 網塚 浩氏

概要: 「持続的な研究基盤の構築」と「技術職員の活躍促進」について意見交換を実施

主な発言要旨(以下、敬称略):

1.持続的な研究基盤の構築
1)モノとしての研究基盤の維持について
【モデレーター・江端】研究基盤自体を本当に大学、各機関として維持していくべきか?
江龍先生のお話しの中で、稼働している機器、稼働していない機器などあったが、今後これらすべてを維持することは可能か?
【名古屋工業大学・江龍】これはもう不可能です。無駄な場合もある。装置も研究も進化しているのでいずれリプレースする必要があり、新しい1台でこれまでの2~3台をカバーするのであれば1台にしていくのも手。名古屋工業大学の試みの1つとしては、大学としてはもう管理しないが若手・中堅が改造して、独自の研究に使えるように無償で提供するということもしている。名古屋工業大学としてどういった機器を持つべきかをしっかり見定めて選定している段階に入っている。
【宮崎大学・水光】最近まで学内で働いていた若手研究者が、非常に立派な蛍光顕微鏡を持っていた。そのまま医学部に置いていたが他の人はそんなに使わなかったため、学内全体に共有すると、使う人がいた。これは有効活用の1つ。特に今は研究がどんな方向にいくかわからないので、活用してもらうといういい例。また、研究基盤について、我々はすべて異分野融合研究という形をとっている。学部を超えた異分野の複数の人が集まってチームを組む、地方の大学は研究者がそれほど多くないので徒党を組むというのもひとつの研究基盤の構築ではないかと考える。
【モデレーター・江端】研究基盤を共用する場は異分野融合の研究を進める場であるということか。
【名古屋大学・古賀】名古屋大学では共同利用はこれまでもずっとやってきたし、当然今後も続けていく必要がある。今後は設備・機器だけでなく人も共有すべきだと考える。
現在、NMRを4台管理しているが、そのうち1台はリース終了後のもの。最近の機器は壊れないので2014年に購入した装置もメーカーにお世話になるようなことはあまりない。今後どれだけ使えるかは、どれだけ自分が手をかけるか?によると思っている。日々異常がないかNMR装置全体の音に注意を払っている。
【北海道大学・網塚】北海道大学のオープンファシリティには多彩な装置があって、高額~そうでもないものもあるが、新規導入や更新は基本的には外部資金をとってくるものだと認識している。ただ、非常に多くの研究者にとって有効な機器(情報インフラなど)については、大学が一定の計上的な予算(光熱費など)を確保して更新していけるような仕組みを作りたいと言い続けているが、まだ予算の枠組みは実現していない。ただ今後はそういう仕組みでないと立ち行かなくなるのではと考えている。もちろん既にそういった運用をしている大学があることは承知している。
【モデレーター・江端】元グローバルファシリティセンター長と現部局長として両方の立場から見たときに、研究基盤維持管理の課題は何と考えているか?
【北海道大学・網塚】3~4千万円の汎用性の高い機器を導入して共用機器として整備すると、共用率も高まる。さらに、隣の研究室と仲良くなるなど非常に良い効果をもたらしているが、その機器が壊れると立ち行かなくなる。それが5年後に起こると想定した場合に、どうやって予算をとってくるかが課題。1部局でできることと大学全体にサポートしてもらうことのバランスと、大学全体として機器共用をどう回していくかが十分整備できていないということが課題。ただ各大学、新共用の各部局は、だんだん共用体制が整ってきた。全国的に各大学の共用化が進んだ後に横串として、複数の大学で分野ごとの連携を強めていけると機器共用のネットワークをさらに強化していく方策があるのではないかと思っている。

2)使用しなくなった機器の処分について
【モデレーター・江端】新共用事業は年間で1,500万程度の予算で各拠点の共用システムを整備してきたが、
自分自身事業実施者として一番難しかった点は、どの装置を優先的に整備していくかであり、いかにして戦略的に整理しているかが非常に重要な問題だと思っている。整理した際に、必要なくなった装置をどう処理するか、名古屋工業大学ではどうしているか?
【名古屋工業大学・江龍】メンテナンスに非常に費用がかかるようになって、部局として管理しきれなくなった機器をいらなくなった機器とした場合、先ほども申し上げたが、個々の研究者に手をあげてもらって優先的に移管して有効利用してもらう。移管費用まではこちらで持つ形にはしている。すぐ捨てるわけではない。
【モデレーター・江端】装置を整理する際に、大学側のマネジメントの観点から移管費用を出してもらえるのであれば研究者はやり易い。ただ、それを現場で負担するとなるとなかなか動きづらい。かといってその費用を国で負担してもらえるかというとそうではない。補助金では無理だし、運交金でやるのかなど、色々な予算の使い方でなんとかやりくりするしかないという状況。そういった中で効率化やスペースの確保、集約化を考えづらい状況にあるのではないか。
【宮崎大学・水光】いらなくなった装置は結構出て来ている。今回資産台帳を調べてみると古い機械が整理されてない。退職された先生がまだ管理責任者となっている機器もある。また、研究スペースについてもいらなくなった機器が占領している場合があり、そこを処分しなければならない。新しい機器であっても、使用希望者がいない機器については思い切って設備サポートセンター事業や新共用を実施する中で処分すると決めて、まず、地域の中で必要な人がいないか声をかける。もし誰もいなければ処分という選択もあった。
【モデレーター・江端】大学経営という観点からは、設備というのは大学の資産であってそれをどう有効活用するかということを考えなければならない。そうした場合、設備をどこかに売却して利益を得るということは各組織でできているのか?
【北海道大学・網塚】使わなくなったがまだ使える装置については北海道大学では設備市場というWeb上で装置を公開し、あるルールのもと、オークション形式で売りに出すことを始め、結構回っている。人気のある装置は出したとたんに買い手がつく。そのときの費用は科研費でも払えることになっており、その収益の一部は手数料としてグローバルファシリティセンターがいただき、大部分は装置を提供した研究者のところに回るというようになっている。また、廃棄する装置であっても、その中で使える部品は、値段はつかないものの、提供するようにして廃棄物品をリユースする仕組みを作っている。本当に廃棄しなければならなくて処分に数百万円のお金がかかるものについては、個人の研究者では払えないので、今までは部局が負担していた。ただ、宮崎大学のように大学全体で機器共用を発展させて大学が一元管理していくとなると、大学が負担するというのが筋だと思う。そのあたりの予算は宮崎大学では十分確保されているのか?
【宮崎大学・水光】まだその予算は確保していない。しかしながら、一元管理すると大学に責務が発生する。よって学長の戦略重点経費などを充てて対応するしかない。ただ戦略重点経費もどんどん細くなってきているため未だ自信を持っていくら確保できるとはいえない。
【名古屋大学・古賀】NMRを想定した場合、新しくNMRを購入した場合は交換し、古いNMRは処分できるがそれ以外の場合には難しい。また大きな磁石の場合は設置場所から物理的に移動できないなど、機関の一等地に無駄なスペースができてしまう。もっというと、利用における需要と維持費のバランスを考えれば動いていても止めざるを得ないこともある。一旦稼働を止めると、NMRのマグネットは本当に鉄くずになってしまい、その処分だけでもお金がかかってしまう。そのような装置を他に引き取ってもらうことはほぼ不可能。その他の小さな装置については全国レベルで需要があるところに提供していく仕組みがあると良いと思う。技術職員に古くなってどうにもならない装置を面倒みてもらえないかと言われても受けられないと答える。

3)大学の現状を踏まえた課題と対策について
【CRDS・永野】大学の現状について3つだけ申し上げると、まず1つ目は世界の外部環境が変わってきているということ。世界の主要国は研究開発投資競争になってきている。しかし日本はGDPが停滞し、研究開発投資も伸びない。なぜ外部環境が変わってきているかというと、現代の新しい研究開発課題はより複雑で従来型の研究スタイルでは対応できないものが増えている。すなわち、異分野融合研究は必然となり、単一の研究室だけでは取り組めないような研究を実行するために、これまでと違ったチャレンジのできる研究環境を用意しなければならない。これが世界では当たり前になってきている。この流れに日本は追いついていない。そして2つ目は、一単位研究あたりのコストが上昇してきている。研究機器の価格に象徴されるが、装置の高性能化と共に高額化が進んでいる。さらに海外からの購入や、税金、そして人件費の上昇もある。つまり同じ額で実行できる研究の量は減っている。このことに気付かなければならない。さらに日本の内部環境に目を向ければ、人口減少時代の研究基盤の在り方や、持続可能な研究環境の在り方、これらをどう構築するかの考え方が出来ていない。ここを国が考えなければならないし、研究現場を預かる皆さんも一緒に考えなければならないだろう。最後に、老朽化した機器の問題については、会計上の取り扱いの問題が大きい。例えば、国からの委託事業で購入した資産というのは、減価償却をしないことになっている。つまり各大学のバランスシート上で償却費の費用計上をしていない。さらに、実質的な減価に伴う減損評価もできないために、第三者利用に際しての適正価格設定をしたり、中古品として売却すること、あるいは処分することが非常に難しい。利用料を設定する際は、ほとんどの機関ではその算出根拠としてコストベースで計算している。しかし本来は付加価値ベース(提供価値ベース)に変えていかなければいけない。つまり、その機器のユーザーにとっての価値が大事なはずで、ユーザーサイドから見た適正価格を付けるべき。これをやらない限り持続可能などありえないだろう。
【モデレーター・江端】であれば、どうすれば世界に追いつけるか?会計上の問題の具体的な解決策は?
【CRDS・永野】少なくとも待っているだけでは変わらない。このような会計に関する取扱いは企業会計では当たり前のこと。設備を何年後に更新しなければならないか、いつ頃に技術世代が新しくなるのかや、減価償却費とともに、メンテ費や修理費を当初から残存期間にわたって推計して積む。このような当たり前の考え方が、公的機関では完全に違ったルールで運用しているために、できない。ルールが異なるといっても、研究開発機器の調達と運用について現行ルールが合わなくなってきているならば、それを変える努力が必要。一人の声だけではだめで、少なくとも国立大学や私立大学の主要なところが数十という単位で纏めて上げなければならないだろう。現状はそのような声は纏まっていないし、ほとんど届いていない。この場にいる方々が議論し方向性を見出していけば、必ず実現できると思っている。
【北海道大学・網塚】いつもこういった場で言っているが、目的積立金をもう少しやり易くしてほしい。それだけもだいぶ変わる。赤字が見込まれる部局では使ってはダメだと言われる。
【文科省・渡邉】大学会計の専門ではないので、はっきりしたことは申し上げられないが、目的積立金の制度としてはもっと柔軟にやれるはず。ただ、大学の会計、財務担当が安全側に立って使っているというのが実態だと思う。法人側で財務上のリスクをどこまでとるのかという判断の問題になっているのではないか。答えにはなっていないが、規制緩和などということとは違う問題ではないか。引き続き議論は必要だとは思う。
【モデレーター・江端】「財務上のリスク」とは具体的にどういったものが想定されるのか?
【北海道大学・網塚】中期目標でしっかり収支があっているか、赤字になってはいけないということではないか。
【宮崎大学・水光】6年間の中期目標計画でそれなりに想定して、目的積立金を準備するが、なぜ6年間で使いきらなければならないのか。例えば大きな機器を自前で買うとなった場合には使えるが、7年目には使えない。いまだに不思議でしようがない。
【モデレーター・江端】研究基盤全般として考えたときに施設の場合は、施設専用の概算要求の流れがある。設備の場合は設備マスタープランというものがあるが、ほとんどの機関において本当の意味でのマスタープランとなっているかどうかはわからない。要求している設備も各大学の自助努力でなんとかしているのが現状。「モノ」を持続的に保ち続けるということは大きなリスクがあり、何を選択して何をうまく使うかとういうことを決めることが重要ではないかと思う。
【CRDS・永野】海外の状況を2つ紹介すると、主要国では研究インフラの様々な装置をボトムアップで用意するのではなく、「研究機器のポートフォリオマネジメント」がかなり重要なテーマとなっている。この議論が日本ではない。なぜならば、現場では自分の研究分野に最も近い機器が欲しいというボトムアップの意見だけになってしまっている。高額な機器であれば、機関の特性や地域性などを考慮した全国の最適な配置を考えなければならない。2つ目が、「ユーザーベースの最適化」が非常に大きな論点になっている。つまりユーザーの多様性をいかに拡大し成長させるか。産学のユーザーバランスや、利用フェーズ・分野・用途などの期待に対応し拡大していくかが重要なアジェンダになっている。その議論がやはり日本では圧倒的に足りない。この2点がないために日本ではうまくいっていないのではないかと思う。
【モデレーター・江端】その議論の場はどこに置くべきか?
【CRDS・永野】それはここではないか?
【モデレーター・江端】そのとおりだと思う。先端研究基盤共用促進事業がスタートしキックオフシンポジウムを開催してから、ずっとこの場で議論してきたことが第6期の科学技術基本計画が検討される段階でようやく研究力向上改革などに文字として出てきた状況。事業ごとにこれまで問題意識をもってやってきたと思うが、そういった議論を集約する場がこれまでなかった。ぜひみなさんと一緒に議論を進めていきたいと思っている。

4)お金をうまく回すための仕組みについて
【モデレーター・江端】宮崎大学では今回作った共用のシステムでどのようにうまく回しているか?
【宮崎大学・水光】お金を回すという点で、まず一つは財務システムとリンクさせて設備の利用料を研究費から自動的に落とす。このシステム製作のポイントはデータベースを一つの会社と組んで作ったということ。研究者データベースと同じ系統、今回のシステムも同じ系統、そして財務システムもそこにリンクできるようにするということで、十数年前からデータベースを一元化するように想定して作っていた。これがバラバラだとものすごく苦労する。2つ目は、システムを使って儲けた場合のお金(利用料金)の回し方を想定してシステムを動かさなければならない。利用料金は目的積立金としてどんどん貯め、いざ必要という時はそこから出せるというシステムに持っていこうと思っている。
【名古屋大学・古賀】名古屋大学では教員の共用化への理解は拡大してきたが外部利用の促進はまだまだであり、更新までを含めたお金の流れを構築するのは非常に難しい。また我々は全学技術センターへの収入も同時に考えており、学内でお金を取ろうとすると、まだ学内利用者の認識が追いついていないのか、無料ではないかという考えもある。したがって、外部利用時だけ技術料を取ることになるが、外部利用が進まなければ収入はない。我々としては他にも収入方法を考えないと設備・機器の維持管理以外に、人生100年時代への再雇用もできない、研修にも行けなくなる。今後技術職員が減っていくことがあれば、この課題を最優先に解決していかなければならない。
【北海道大学・網塚】北海道大学では、グローバルファシリティセンターを維持するほどの利用料収入はないので大学からかなりの部分、人件費等経常的な予算をもらってやっている。外部利用料収入に関しては出来るだけ向上させるよう努力をして非常勤の方の雇用、装置の消耗品、メンテナンスの大部分を賄えるような収入にはなっているが、さらに外部利用料収益を増やせるような工夫をしている。また、新たな取組としては、機械工作の工作機器と技術職員の方の技術を学外に開放するシステムを日本軽金属と連携して「試作ソリューション」を行っている。ここでは、これまで全く外部利用料収入のなかったが収入が入ったことにより、技術職員が海外研修に行くという人材育成が行えたという事例があり、まだまだ外部利用料収入を得るような企画を生み出すことができるのではないかと思っている。

5)フロアとの質疑応答
【フロア質問者】理化学研究所では装置の保守契約を結べているが、どこの大学でも高額機器は買えても保守契約を結べないためいつも運用に苦労するという話を聞いていた。実際メンテナンスを定期的にきちんとすると装置も長持ちする。企業では当たり前だが、国の予算の場合、今後保守契約といった継続的にかかる費用について考慮されていくのか?
【名古屋工業大学・江龍】名古屋工業大学の事例では間接経費で保守契約という形ではないが、装置メーカーにこの機器を維持するためにはどれくらいの費用がかかるかを聞いて、予算化している。それ以外に非定常におこるトラブルについては別途予算立てをしていて、そこから補てんできるような形にしている。その予算は12年間で切り替わるというと想定している。
【フロア質問者】国が保守契約の費用枠として予算化してくれないのか?
【文科省・渡邉】そういうものも含めて研究費として措置をしている。研究費に保守契約を充てられるが、どういう割り振りにするかという考え方はそれぞれ。研究者、研究機関で計画を立ててやってもらいたい。予算が少ないという点については頑張っていきたい。
【名古屋工業大学・江龍】今、大学側に来ている国の予算はかなり自由度が高い。それが出来ていないのは大学個々の問題だと思っている。大事なのは先生方がいい研究をすること。それが実現できるようにバックヤードの我々が、何ができるかというのを考えたときに、申し上げたような仕掛けを作ろうとした。先生方が研究ができるように装置は最上のものでなければならない。そこを前提とするとどうやってお金を作って、どういう配分をするかということは各大学に任されたものだと思う。


2.技術職員の活躍促進
1)技術職員の在り方、技術職員に求めるミッション
【名古屋大学・古賀】全学技術センターでは、現状約160人の技術職員がおり、組織化しているが組織化に消極的な人も少なからずいる。実際、研究室付きの技術職員もいるため、そういった人も組織に取り込んで、すべての人の意見を集約するのは難しい。PDCAのPはもう少し後にまわして、まず一つの指針を持って実際に動かしながら考えていかなければ前に進まない。また効率よく研究支援をすることを難しく考えすぎると回っていかない。公務員の時に採用された技術職員と若手の技術職員の考え方もまったく違う。全学技術センターの企画室は運用や組織のメンテナンスをするところだが、若手の技術職員の意見、中堅の技術職員の意見をどう取り入れて進めていくか、まとめていくかが課題である。また人事評価もしなければならない。研究寄りの技術職員、そうではない技術職員、また学生実験を支援している技術職員もいる。こういう人たちに一律の評価をするのは難しいが、それをどう実施するかは我々が組織をつくる時非常に苦労した点である。
まずはだれが見ても当たり前なジェネラルなところから始めないと難しい。個人にラベル張りはしたくない。できる範囲での一定の評価に教員(研究者)の評価を必要であれば入れて進めていく仕組みでやっている。
全学技術センターのキャリアパスも1つの階級に長くとどまることによるモチベーションの低下を避けるため、先ほどの発表で説明したように5職階にして進めているが、これを動かすのにスタート時点は苦労した。このように大変な思いをして組織を作っていった結果として、わかりやすく、見える化された組織になっていけば教員(研究者)や若手の研究者も、どのような支援をしてもらえるか理解でき、安定した研究環境の提供に繋げることができる、これが我々に求められるミッションと考える。
【名古屋工業大学・江龍】名古屋工業大学の事例では、スペシャルの技術をもってくださいというのが命題。助教の先生ができるような同じことはしないでくださいと。見たことのないような研究ができるように一緒に協力してください。と言っている。もちろんすべての技術職員が装置に関わっているわけではない、情報系や学内の工場、分析関係の部署もあるが、それぞれの状況においてスペシャルな能力を持ってくださいと。それによって先生方がどれだけ論文を書くことが出来たか、どれだけ安定した仕事ができるようになったかが評価のKPIになっている。それに関わることで、教育システムを受講したいという技術職員に対してお金を予算立てして受講できるようにしている。結局は先生方がどれだけ気持ちよく研究していただけるか、全体を最適化した上でどういうふうにお金を割り振っていくか、そこに技術職員の方にどう関わっていただくかだと思っている。
私がマネジメントしている技術職員は大学全体の1/3だが、年に一回は私の前で、発表をしなければならない。最初はおっかなびっくりだったが、今はこんな工夫をした、こんな挑戦をした、挑戦をしたらこんなふうに装置が壊れてしまったというぐらいまで発表していただけるようになった。限界を超えないと世界で初めての結果が出るわけはないのだから。そこは先生と一緒に技術職員の方が挑戦をしたのですね。ではいいじゃないですかというそのような形になっている。
【宮崎大学・水光】これまで、技術職員との接点はあまりなく、技術職員が何をしているかを把握している人も少ない。そこでイブニングセミナーという学内で色々活躍している人の成果発表会をやっていて、そこで技術職員の成果を教えてもらう企画をしたところ、ものすごくいいことをやっている。技術職員の評価は、これからは事務サイドがするのではなく、研究の支援をしてもらっているのだからその方面から評価しなくてはならないのではないかと感じたところである。評価の方法を我々サイドで考えなければならないと切に感じた。
【北海道大学・網塚】北海道大学では形式上では技術職員は一元化されていて、技術支援本部に所属し、各部局に派遣されている。グローバルファシリティセンターのように全学の支援を行う技術職員もそこから派遣されている。しかしながら実態としては歴史的に各部局の定員が配置されており、そこで自分たちの研究を支援する特殊な技術を持った人を雇用しているためそれでうまく回っている状況ではあった。ただやはり一つの部署の装置のメンテナンスに30年間ずっといるなどといった状況は長い目でみると良くないため、そこを変えていかなければならない。ただ、スペシャルな技術を持っている人がいるのでいきなり大学が一元的に管理するという体制にしてしまうと現場にかなり無理が生じる。そのあたりをトップダウンとボトムアップをうまくバランスを取りながら進めていかなくてはならないということで今が過渡期で少しずつ進んでいると思う。少なくとも技術支援本部という組織がしっかりしつつあり、全学の技術職員が交流をして、そこで情報交換をし、キャリアパスなどについても議論されているので良い方向には向かっている。これを大きく進展させるには国からの働きかけ、第6期の科学技術基本計画にもしっかり書き入れて目指すべきビジョンを具体的に描く必要があるのではないか。そうしないと、なかなか部局の壁を突破することが難しい。先ほどの試作ソリューションを設立する時にも色々なところに声をかけたが、技術職員を削減する動きがあるのではないかなどと非常に警戒感が強く、数年かけて成功事例を経てようやく理解が得られてきた。
【名古屋大学・古賀】全学技術センターでは技術職員の職階を5段階制にするとき、キャリアパスについては非常に多くの議論を重ねた。技術レベルを精査するのは非常に難しい。技術職員一人一人の考えでキャリアパスを描くのは無理なため、ジェネラルな技術での線の引き方を考え、このような形を考えた。
また部局の壁はまだあるが、教員(研究者)に技術職員のことでこれ以上忙しくさせてはならないので、技術職員のことは技術職員でやりましょうと。ただし教員(研究者)の環境を変えるわけにはいかないので部局に出向させる技術職員を変えるつもりもないので、今まで通りに技術職員と研究をやってくださいと説明している。人事のことは評価を含めて、技術職員が技術職員を判断するのは非常に難しいが、しかしそれは切り替えていく必要はあり、全学技術センターの管理は全学技術センターがする方向で進めている。
さらに今回の技術職員の議論は機器の共同利用という話から来ているが、名古屋大学の技術職員といえば畑を耕す人、山の管理をする人、船を操縦する人もいる。そのような業務の技術職員を一つのベースで評価するのは無理。しかし避けては通れないため大きな大学ではなかなか動きにくい。一方で小規模な大学では執行部の都合で作られる場合もあるのではないか。それぞれの大学によって技術職員に求められるもの、在り方もそれぞれなので、組織の作りかたは大学次第だと思う。

2)海外機関での技術職員の立ち位置
【CRDS・永野】一言でいうと「主役を増やせ」。活躍する人材(主役)は、研究者だけではない。技術職員はもちろん、技術移転人材、産学連携人材、法律や会計の人材、URA、ファンドレイザー、など。現状は全然主役が多様化していない。研究者は当然重要だがそれだけではできない。海外のうまくいっている国では技術職員の問題は出ない。皆が職業人として対等であるから。給与体系も対等。それがなぜ日本でできないか?それは様々な既得権益が立ちはだかっているから。現場で切実に感じている方も多いだろうが、立場が弱くて言えないのだと思う。
古賀さんがおっしゃるとおり、これはPDCAではなく、DCAP。まず小さく始めてチェック、アクションしてから壮大な計画を最後にやればよい。日本では壮大な計画づくりから始めるために、そこで時間がかかって合意形成が一生とれない。その間にいつも世界の意思決定スピードから何歩も遅れてしまう。だから順番を変える。たとえ小さくとも行動から始めることが大事。

3)フロアとの質疑応答(1)
【フロア質問者】大学の場合、対等というのが無理。教授様が一番だと思っている文化がある。これを海外並みにしていただくと簡単に技術職員のモチベーションは上がると思う。江龍先生の話の中で「スペシャルな技術を持ってください」とあったが、この「スペシャルとは」について人によって意味するところが違う。具体的に「スペシャル」とは何か?以前江端さんが「自身が研究者時代は電子顕微鏡のプロだった」とおっしゃったが、本当は技術職員がそうなると良いと思っている。研究者と技術職員の「スペシャルなこと」の切り分け、違いを教えてほしい。
【モデレーター・江端】誤解を恐れずにいうならば、自らが管理していた設備に関しては研究者時代は誰にも負けない技術と知識を持っていたと思っている。ただ代わりに技術を持っていて、メンテナンスや管理してくれるプロの技術職員がいたならば、もっと研究に時間を割いて、あるいは論文を書いたり出来たのではないかと思う。そういった理由から、技術職員とはその名の通り、「技術」のプロフェッショナルであるべきということがまず一番初めに思うこと。ただ色々な技術職員の方の話を聞くと、技術のことをやりたいが、それ以外の研究支援的なことをやっている方もいるし、他に求められているニーズがあって、そこで仕事をしている方もいる。よって、自分が考える技術職員の像としては自分の仕事に対してプロフェッショナルであるという意識を持っているかどうか。研究支援といった場合に、URAという職は研究支援職といわれているが、研究支援のどれだけのプロフェッショナルなのかと聞かれたときに、明確に答えられる人はそう多くはないと思う。自分はこのプロであると宣言できる人が大学の組織にいれば大学の研究力は向上すると思う。
【フロア質問者】私も同感で、仕事なので玄人か素人のどちらかしかない。よって皆が玄人になり、活躍すれば主役が増えると理解しているが合っているか?
【CRDS・永野】江端さんがおっしゃるとおりで、つまり『自分はなんなんだ』ということ。もうひとつ欲しいのは「外部からの認知」。あの人に頼みたいといってくれる人がどれだけいるか。これは技術職員でいえば、技術的な信頼の蓄積に時間はかかるが、できると思っている。それだけのことが出来るような環境は組織が用意すべき。
【名古屋大学・古賀】先ほど教授が偉いという話があったが、我々は教職協働です。教職協働でなければこのような組織は作れない。また若手の人たちが教員との距離感を詰めてくれと、今の段階でマネジメントするのではないと言っている。マネジメントは上の人たちがやるべきで、分析でいえば、この人に任せれば必ず結果を出してくれる。そういう信頼されている人はどんどん教員との距離を詰めて、今のうちに自分の技術とポジションを確立してもらいたいと、一部の若手には言っている。そのためには安定的な研修環境を整備してあげることが重要。組織ができると執行部との情報共有も可能となり、自分たちのやるべきことを伝え、それを理解してもらえるようになり存在感を示すことができる。

4)フロアとの質疑応答(2)
【フロア質問者】教員が色々なことをやりすぎていて、それが既得権益になっているというのはその通りだと思っている。ただ、今この状態で大学に来るお金が少なくなっているためそこを改革して大学の中で何かを考えていかなければならない。
北海道大学では教員が2,000人くらい、技術職員は400人くらい(病院の技術を除く)で、皆が主役になるために地位を上げるのは大事だが、そうなると入ってくるお金は足りないので、例えば教員の数を減らしてバランスをとるとかが必要となってくるのではないか。既得権益をなくした場合、どのようなバランスが理想なのか?
【CRDS・永野】例えば100人が在籍する研究所で100人が研究者だという場合と、70人が研究者で30人が技術職他の場合、どちらが研究所全体としてのパフォーマンスが高いかは、皆答えは一致すると思う、ということは、分野や規模などによって、研究者と技術職の割合の最適なバランスはあると思う。昨年OECDが関連のレポートを出しているが、分野によって例えばライフサイエンスや材料分野の場合に、研究者〇人に対して技術スタッフが〇人必要というのを事例として出している。日本の大学でそのような議論や考えがどれだけ共有されているかというと、ほとんどないだろう。
ある分野である目的の研究開発を実現するためには、どれくらいの人数割合でプロフェッショナル人材が必要であるということを無視してはいけない。一律に正解があるわけではなく、目的や規模によって適切な人材配置バランスを考慮することは当然重要なのだが、様々な制約や場合によっては内部の自己規制もあってできない。
【モデレーター・江端】そういう戦略的な人事ができないというのは大学の大きな問題だと思う。ある分野を強くしたいという場合にそこを拡充するという余裕が今ないし、余裕を確保するための制度設計もできていない。理想的な割合というのは各分野あると思うが、いかに戦略的に人事配置するかが非常に大事。
【CRDS・永野】一つ付け加えると、こういう人材が必要だということころに、それを後押しするような制度設計を考える場合、制度設計者サイド、あるいは研究者サイドが、もし自分がその人材になるとしたらぜひ自らやりたいと思えるような設計をしなければ、絶対にうまくいかない。技術職員はこうあるべきという上から目線だけの設計ではだめであり、このような制度であれば自分が技術職員になってもいいと思えるだけの制度を考えなければならない。
【フロア質問者】おっしゃるとおりで、技術職員としてずっとやっていきたいが、例えばポスドクの立場で技術職員のような仕事をしているときに、キャリアパスのようなものをやっていけないという方もいる。こういった話は昔からずっと出て来ているが、そういうポジションを確保するにはグランドデザインとしてどうしていくのかという今の話はすごく重要だと思うが、これまで大きい話になることがなかった。技術職員のキャリアパスを考える上でも技術職員ありきの話で全体のバランスを考えての議論にはなってなかったと思うので、今後もっと議論して施策に活かしていただきたい。
【モデレーター・江端】これまでの議論で1つ欠けているポイントを指摘すると、マネジメントや人事的な改革をする、技術職員のキャリアパスをするという時にいつまでに、というところがない。タイムスケジュールがないと永遠に課題のままで進む。そこをしっかりマネジメントするということが大事だと思う。研究基盤共用環境の構築は第5期科学技術基本計画から盛り上がってきたが、第5期の期間の中でどれだけできるのかというと皆口をそろえて短い期間ではなかなか難しいと言う、一方お金を付けている側からは数年間の期間の中で結果を出さないと、次の予算がつかないという悪循環があると思う。

5)フロアとの質疑応答(3)
【フロア質問者】技術職員自身が仕事が楽しいと感じられることが大事だと思う。仕事として魅力のあるもので、自分で将来の絵が描けることが本来のキャリアプランだと思う。制度的には職階があり、給与が上がるというのもありだが、技術職員自身が楽しく仕事をし、それを見た学生が自分も技術職員になりたいと思わせるようにならないといけないと思う。
今回のような議論や課題の共通認識も重要だが、何年もやってきているので、会計制度が大学の運営の足かせになっているのであれば皆の意見を集約して、実際にアクションを始めたらどうかというのが提案。
【モデレーター・江端】これまでの議論などを反映して、実は実際にアクションは始まっている。ただ、まだ大きな枠では始まっていない。もっと技術職員、教員側、大学側のニーズや声をあわせていかないと文科省の予算などにはつながっていかない。よってこういった議論を継続的に進めていくとともに、今回のようなシンポジウム以外にも議論できる場をボトムアップ的に作っていくことも必要であり、トップダウン的にも文科省側からアクションしていただくべきと思っている。

6)総括:これまでの議論を受けて
【文科省・渡邉】研究基盤については、施設設備や人の能力などこれまでのストックで我が国の研究は生きているのではないかと思っている。モノもそうだが、ヒトである技術職員は、あまり光が当たっていなかった。しかしながら必要であり重要だということにようやく気が付いてきたので政策的にやって行かなければならないという思いを持っている。
今後また文科省でできることはやっていく。また色々な場で継続的に議論を進めていただいて、国にあげていただきたい。

                                             ― 了 ―

発表資料

お問合せ先

科学技術・学術政策局 研究開発基盤課

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(科学技術・学術政策局 研究開発基盤課)