科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」推進事業 事後評価委員会(第1回) 議事録

1.日時

令和7年10月22日(水曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省 15 階 15F1 会議室及びWeb会議形式

3.議題

  1. 議事運営等について
  2. 科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」推進事業の事後評価について
  3. その他

4.出席者

 委員

   坂田主査、亀井委員、七丈委員、藤垣委員

 文部科学省

   福井大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)、根津研究開発戦略課企画官

5.議事録

 根津企画官、福井審議官および坂田主査から議事に先立ち挨拶を行った。続いて、根津企画官から各委員の紹介と資料一式の確認を行った。

(1)議事運営等について

 根津企画官から、資料1および資料2に基づき説明し、議事運営(案)については意義なく承認された。また、各委員に本事業との利害関係がないことにつき、改めて確認を行った。

(2)科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」推進事業の事後評価について

 根津企画官から、資料3・資料4・資料5・資料6について説明後、議論を行った。

【坂田主査】
 基盤的研究・人材育成拠点については直接、本委員会で評価を実施し、残る公募型研究開発プログラムと、データ・情報基盤、共進化実現プログラムについては一度メタ評価を行った上で、そのメタ評価のメタ評価をする、つまり本委員会では事業全体の総合的な評価も含めて実施する構造になっているということで宜しいか。
 
【根津企画官】
 そのとおりである。
 
【坂田主査】
 では皆様からご意見いただきたい。各拠点には資料の作成などを依頼することになるので、今の時点で、これで十分かどうかご意見いただきたい。
 
【亀井委員】
 私は現在EBPMの補佐官として、文科省も含めて行政の政策立案を支援しており、事業を実施してどうだったのかをみる側にいる。また、GRIPSの林先生の授業にも関与し何年にもなるが、そこでの人材育成のレベルも上がっているとの実感もある。それらを踏まえて本委員会に参加させていただく。
 冒頭、坂田主査や福井審議官からもあったが、従来のスタティックな評価や、○×やSABCをつけるといったものではなく、15年で何ができたのか、そこから見えてきた様々な課題は何か、次に何に臨んでいくのかという、前向きな評価をしていくことについては賛成である。そういったことが今後のSociety5.0に向けた共進化などにもつながっていくだろう。その観点で、3点ほど意見を述べる。
 別紙1・別紙2・別紙3のフォーマットについて、基本はこれで良いのかもしれないが、各拠点は、達成状況やアウトプットベースで考えたり、これはできた、これはできなかったといった形で記載することが予想される。ではアウトカムはどうなのか、何がこの15年かけて実現できたのか、時代の要請に応えることができたのか、あるいは、実は時代が難しくなっており、ここがボトルネックになった、といったことを発見するには、達成状況・アウトプットベース、プロセスだけで見ていくのでは難しいのではないか。何ができたか、何ができなかったかということを逆算して説明していただくことが大事で、自分たちが実施したことで、これが良くできたということを3つ挙げてもらい、何が成功のポイントだったかを教えてもらう。また、難しかったことを3つ挙げてもらい、何が引っかかったのか、どういうところで上手くいかなくなったかをきちんと聞いてみることで、先程、福井審議官がおっしゃった成果と課題がしっかりと見えてくるのではないか。プログラム評価ということでも、メタのメタと坂田主査がおっしゃったことに通じるかもしれないが、このフォーマットだけでは聞き取れない話を自由記述でよいので3つ挙げてもらい、それはなぜだったかをいろいろと聞いてみる。あるいは、自分たちなりの成功の要因を分析するよう、追加してもらえれば、我々としても物事をリアルに受け止めて評価できるのではないか。
 2点目、可能であれば、アウトカムの1つとして、文科省や関係機関の職員の中でどういうコミュニティが生成されているのか、生の声を聞きたい。これから行われる共進化実現プログラムの評価において、こうした意見を聞くことになるかもしれないが、拠点の評価に関しては今のところすべてサプライヤー側の意見をもとにすることになっている。15年前にいた人が局長になっている、審議官になっている、あるいはここでこういう活躍をしている、活かされているというディマンド側の話を、改めてインタビューなどで聞くことができると良い。仕事を増やしたいわけではないが、それが良いのではないか。
 3点目、Society5.0の実現に向けて、共進化をどのように進めていくかを考えると、アカデミアが要求する政策のための科学と、政策の実務家である行政官が要求する政策のための科学にズレがある。実務上論文を書けるようなデータが集まるのかといったらそうでもない。逆にアカデミアのいうとおりにしていたら政策も回らない、それを待っていられないという話になる。その狭間にいる人間として、こうしたズレを明らかにしていくことが大切ではないかと考える。これを把握するためには、双方から話を聞いてみることが重要である。これだけ長期にわたって経験を蓄積してきた本事業なればこそ、こうした課題にチャレンジしてもらえるとありがたいし、我々もそこに貢献できたら嬉しい。
 
【七丈委員】
 私も亀井委員のご意見と類似する部分がある。特に近年のこのような評価では、インパクトをきちんと評価することが大切である。直接的なインパクトだけでなく、ブローダーインパクトとして幅広く、元々の目的以外の部分でも達成されたものがあるのではないかということを評価する。そういったことを考える上で、社会に対する具体的な変化、あるいは、このプロジェクトやプログラムの目標から、行政における様々な科学技術政策にまつわる決定のプロセス、科学技術・イノベーション基本計画だけではなく、文科省における様々な意思決定プロセスに対してどのようなインパクトを与えたかを評価することが重要ではないか。最終的なインパクトは長期間を経て顕在化していくことを考えると、現時点において顕著な変化があったかどうかだけではなく、その変化に最終的に結び付けることができるような予備的な変化、最終的には大きな変化になるのではないかと合理的に想定できるような、いわば、セオリー・オブ・チェンジ、こういった形で変わっていけば最終的にインパクトが生まれるであろうといったロジックを考えた上で、評価をしていく。これは亀井委員とともに授業に取り組む中で学んだことでもある。ロジックモデルを書くかどうかはさておき、そのような考え方で、直接的なアウトプットからアウトカムにつながり、それがレイトアウトカムとなって、最終的にインパクトになっていくというプロセスを考える。アウトカムやインパクト評価を目的としたレポーティングを求めているということが報告者に伝わるよう、そういったエッセンスを様式に組み入れるのが良い。いわば報告者に対するガイドのようなものもあったら、より評価しやすくなるのではないか。
 この事業は非常に長期にわたっていることが1つの特徴である。途中に2回の中間評価を挟み、全体としては5年ごとの3期にわたっている。SciREX事業が立ち上がる前は、日本版SciSIPと呼ばれていたが、Science of Science PolicyということでNSFのプログラムを一定程度参考にしていたという経緯があった。米国では、政策を科学するといった取組は1960年代後半から発展してきたが、その後、データ駆動型の評価、ソーシャルネットワーク分析等の様々な新しいツールが出現してきた。そういったものを含め、科学的な研究活動の営みの中でより洗練されたツールにしていこうという流れと、それに一定の方向づけをすることによって、科学技術政策の現場でも使えるようにしようといった、基礎研究プラス応用研究、ある意味では、目的基礎研究といっても良いが、そのような考え方が事業の立ち上げ当初にはあった。事業が進展するにつれ、途中からより出口志向の強いものに変わっていった。すると、その時々の状況に合わせて、適切なマネジメントができたのかという評価が必要となる。期ごとにミッションが異なっているといったことを念頭に置いた評価が必要である。
 この事業は多くの研究者と多額の資金を投じて実施されたものであり、だからこそ、我々が行う評価の中から今後の科学技術政策・研究の方向性を示すことができる知識が得られれば良い。絶対的な評価ではなく、良かったポイントがいくつかのエピソードからピックアップされて、それがなぜうまくいったのか、いわばベストプラクティスのようにまとまっていく。評価のバイプロダクトという形かもしれないが、そういったものが最終的な評価に返っていくと、今後の政策立案、プロジェクトやプログラムの運営での重要な知見として活用可能ではないか。
 
【藤垣委員】
 質問1点と提案がある。
 質問は、資料3のガバナンス構造を見ると、SciREXセンターは、他の拠点とは異なる役割と理解しているが、SciREXセンターが各拠点の活動に対しどのような責任を負っているのか。それによって評価の仕方も違ってくる。SciREXセンターにのみ与えられている指標があるが、それで十分なのか教えていただきたい。
 提案は、亀井委員が第1点としておっしゃったことに更に付加する。亀井委員がこの事業で何が成功だったか3点挙げてその理由を言ってもらう、うまくいかなかったことを3点挙げてその理由を分析してもらうとおっしゃったが、それを一歩進めて、やりたかったができなかったことは何か、その理由は何か、将来に向けての現場からの意見を吸い上げるのが重要ではないか。将来、同様の事業を行う場合、我々の経験から何をすべき、といった意見があるのではないか。評価というと、できなかったことを書かないという傾向がある。SABCの評価は行わないことをしっかりと伝えた上で、やりたかったができなかったこともしっかりと書いてもらえれば、将来につながる情報が得られるのではないか。
 
【亀井委員】
 同感である。
 
【坂田主査】
 通常、課題は評価対象からはなかなか出てこない。一方、今回に関してはSABCを付ける評価でないことを拠点側には示していることもあり、積極的に課題や困難だったことも言ってもらえる条件は整っているのではないか。成果と課題が各項目にあるが、ここについて、先程おっしゃったように、うまくいったことなど、3つ程度ずつ挙げてもらうというのと、藤垣委員がおっしゃったように、その上で、今後についての提案のようなものがあれば、それも書いてもよい。
 また、現在の様式では、計画に元々ある目標や活動をスコープの範囲としているが、これを実施したことで他のことにも取り組むことができたなどレバレッジ効果もある。例えば、国際的な展開や国際的なネットワーク形成なども含め、本来は言いたいが計画に書いていないからその枠組みでは言えないといった効果も、もしあればという枠を作って、収集しても良い。先ほどインパクトの話があったが、そういうものも含めて捉えていただきたい。
 もう一つ、各委員からも指摘があったように、15年という事業の長期性を考慮する必要がある。最初の5年、次の5年の中でも基本方針が変更されている。すると、最後の5年間の基本方針に沿ってだけ評価を行うと、齟齬が生じる恐れがある。そこを何らかの形で吸収することを考える必要がある。現在関与している関係者は最後の5年に頭が切り替わっているため、大きな問題はないかもしれないが、もう少し基礎寄りの方向で取り組んでもらうのか、アウトカム志向で取り組んでもらうのか。全体としてはいずれも重要だが、現在の基本方針だけではなく過去の基本方針で実施していたことも吸収し、成果があればそれに含めてもらって良いのではないか。
 評価を行う上で難しいのは、研究開発事業の内容に幅がある、ということである。基礎的なものであれば貢献度は比較的示しやすい。今朝読んでいた、2017年に出たある研究成果のロングタームでのインパクト評価に関する論文によると、ある種のモデル化したものと、当時よく行われていた短期的な評価との間に、かなり差があることが示されていた。インパクトファクターについては2年と5年があるが、この論文では2年だと、中長期的なインパクトについては予測精度が悪いと指摘されている。分析対象となった論文は物理学の基礎理論に関わるもので、1000件以上引用があって誰でも知っているものであるが、こうしたものはインパクトが分かりやすい。一方、審議会などで取り入れられたかといったことは、扱いが難しいところがある。それが提言に本当に効いたのか、もともとそうした考えが提起されていたのか、それから、他の委員の意見もあるように、確定的なところを言うのは難しい。個別のケースによって差があるため、指標をみて一律にこうだとは判断できないところがある。
 私からは以上だが、もし企画官からあればお願いしたい。
 
【根津企画官】
 まず、藤垣委員から質問いただいたSciREXセンターの役割について、先に各拠点形成が始まり、途中からSciREXセンターが立ち上げられたという経緯がある。具体的には資料3の3頁目に略年表ということで1年ごとの歴史を掲載しているが、平成23( 2011)年度から事業がスタートし、同年度に拠点の公募・採択を実施、平成24年度から各拠点の人材募集が始まっている。一方、SciREXセンターが誕生したのは平成26年度である。当時の文書をみると、SciREX事業として狙っていたコミュニティを作っていくなどの取組の際には、各拠点に個別に活動いただくのも重要ではあるが、それを連動させて、コミュニティ全体の取組なり盛り上がりに繋げていくことが必要ではないかということで、SciREXセンターができたと私は理解している。そういう意味で、SciREXセンターに期待されるのは、拠点ごとの取組以外にも、例えば、拠点をつなげたネットワーク機能を果たすような役割を中心となって取り組むことである。本来であれば文科省の役割かもしれないが、文科省だけではやり切れない部分については、GRIPSの力も借りてSciREXセンターを設置したのだろう。GRIPSには別のGiSTという拠点があるが、SciREXセンターとしては、GiST以外の各拠点とも連携しながら、コミュニティ全体を活性化させていく、あるいは、人材育成やネットワーキングを実施していくといった観点から取り組めたかどうかを評価いただくと良いのではないか。
 様々な観点で提案をいただき御礼申し上げる。いずれもご指摘のとおりである。評価の実施方針について案を作成する際、同様の議論もあったが、言葉にすると伝わりにくいところもあるだろう。いただいたご意見を踏まえて様式に具体的な言葉を付け足しながら、各拠点が記載する際によりイメージしやすい形で、様式を調整していきたい。本委員会終了後、各拠点に対しては、文科省から、事後評価委員会でこういう議論があったのでこういう様式で作ってほしいといった説明会を行うことも考えている。今日いただいたご意見、ご議論についてはそういった場を通じて、直接説明も行いたい。なお、この会議は公開のため、各拠点の方も傍聴している。
 
【亀井委員】
 1点だけ、KPIの独り歩きは避けてほしい。資料5(別紙2)のエクセル表のようにKPIを一覧にしたいのは理解できるが、KPIが独り歩きし、よくできた、よくできなかった、という議論になりがちである。これまでの議論を各拠点の関係者が聞いていれば、決して○×や優劣をつけるわけではなく、未来に向けたメッセージを送り出すためのものだと理解してくれるであろうが、いざ書き始めると、やはり自分は評価されているのだといった感じになる。KPIを入れてほしいなどと言った瞬間に、数字を良くしていこうとなってしまうので、KPIよりも、実際にナラティブに語ってもらうことが重要である。ストーリーやセオリー・オブ・チェンジといった話もあったように、こういうことができれば良かった、したかったといった話や、先ほど坂田主査から話のあった、こういうこともできたといったレバレッジ効果のような話を、積極的に盛り込んでもらえるよう進めてほしい。くれぐれもKPIさえ埋めればいいという話にはしないでほしい。既にお分かりであろうが重ねてお願いしたい。
 
【根津企画官】
 様式は再検討したい。行政官側の声についても話があったが、共進化実現プログラムのプログラム評価などを通じて集められればと考えている。また、昨年度、我々が行った委託事業の中で、SciREXに関係されている方々数十名にヒアリングを行っており、その結果をまとめたものもある。その際、行政官側にも結構な数のヒアリングを行っており、来年度以降になろうが、そういったところからも評価の参考になりそうな情報を抽出して紹介することも考えてみたい。
 15年の間に基本方針がいろいろと変わっていったのもご指摘のとおりである。事後評価の際の重要な論点の1つである。先ほど七丈委員からも指摘があったとおり、当初はどちらかというと基礎というか、人材育成やコミュニティ形成などに重心を置いていた。ただ、後半になって、科研費と何が違うのかといった議論もあり、「内局事業」としてのこの事業ならではの特色を考え、何か政策に活用されるような事例を作る必要があった。15年という長期にわたる事業だったこともあり、そのような色がだんだんと強くならざるを得なかった、という事情もあるのではないかと感じている。良し悪しはあろうが、そういったことを踏まえながら、そのような変遷を事後評価の中でどう位置づけていくのか、あるいは、今後の取組に向けた教訓としてどういうものを得ていくのかは、ご指摘をいただきながら、評価の中にも組み入れていければと思っている。文科省としては以上である。
 
【坂田主査】
 行政官のことについて、評価なのでディマンド側の意見も重要である。科政局や振興局の課長クラスの方から、例えば、専門家コミュニティにはもっと協力してほしい、いろいろな課題について助言、補佐してほしいとの声があっても良いのではないか。一人の先生ではバイアスもあるので、コミュニティとして政策立案などに協力してくれたほうが政策形成上も良い。この際ディマンド側からも、個々の話だけではなくメタな意見があっても良い。
 
【亀井委員】
 EBPMでは有識者の中で因果推論警察のような方がいる。因果推論が少しでも甘いだけで厳しく叱り、行政官たちは皆萎縮していく。この部分の論理のジャンプをどう埋めていくかは後々考えれば良く、大枠こういう話なのだろうとして持っていかないと、行政が回らないという話もある。私も論文などで論理に厳格なモードに入ってしまうと危ないのだが、行政官に臨むときと、学生に臨むとき、学会に臨むときでは、頭を切り替えなければと考える。その切り替えができない人が案外多い。この辺りも含め先のギャップについてはいろいろな形がある。こういうことを考えていかなければならず、メタのメタでこのような話が出てくると面白い。
 
【坂田主査】
最近だとTop10%論文の件があるが、この点だけを言われても困る。他の指標と比べて相対的にどうかという観点、メタに見ることが重要である。だから個人の意見だけでなく、コミュニティとしてどうみるかが必要なのではないかと推察する。
 
【七丈委員】
 資料(別紙3)について、我々はSABCの評価をしないこととしているが、「良い」「普通」などという欄はチェックがしにくい。良い、悪いではなく、もっと質的な側面だったらチェックしやすい。例えば、最初の拠点の目標について、「良く対応している・普通・対応していない」ではなく、目的をきちんと認識した計画となっているか、そういう取組を行ったか、最終的にそれが達成されているか、元々課された目的以外のもののプラスアルファが入っているかなどの視点から、拠点のアクティビティをチェックする方が良いかもしれない。まとめる都合もあろうが、量的でない別の評価ができると良い。
 
【坂田委員】
 文字の問題もあろう。項目によっても多少違いがある。
 
【根津企画官】
 こちらの評価の項目や観点について、○△×のようにチェックボックスに入れる形で作っていた。項目ごとに「~活動をされているか?」など疑問形で聞いているが、今のご指摘を踏まえ、定性的に書く様式にしたほうが書きやすいようであれば、このような3段階のチェックもやめるべきか。評価の項目が1個ずつチェックボックスに対応するイメージで整理していたが、評価の項目ごとに十分に活動されているかなどが分かるよう自由記述の形で記載されたものを評価していく方が、委員の皆様としてあまり違和感がないようであれば、そのような形でも宜しいかと考える。
 
【亀井委員】
 今日の委員の先生方のお話から、一番評価の中に入れたいのは、成果と課題とネクストステップだろう。それぞれの取り組み分野に成果、課題、ネクストステップがあって、ない場合にはないとして良い。成果があってもネクストステップはあるし、課題があってもネクストステップはある。先に出たように、こういう取り組みを実施したかった、という意見などもあるはずである。まず事業の概要に関する成果と課題とネクストステップ、それから、人材育成の状況に関する、という形で、それぞれの目標について問う。○×が向いているところもあるかもしれないが、どうしてもプロセス評価やアウトプットベースの評価になってしまう。そちらに引き寄せるよりは、七丈委員のおっしゃるような、成果と課題とネクストステップを聞き、それを読んで我々がどう判断したか、こういうところが示唆としてあるのではないかといったことをまとめられた方が、皆さん方もその方向で考えておられるのであれば書きやすいのではないか。評価の根拠だけを書くのではなくて、何を成果としてみたかを先に書かなければいけないということになる。事後評価委員会として書くことは増えるかもしれない。
 
【坂田主査】
 成果、課題、ネクストステップを言ってほしいとなると、評価の方は、それにアグリ―なのか、実はネクストステップとしてそれ以外にもあるのではないか、といった話になる。そういう話だと、一から書くというよりも、書いてあることに対してどうかというところであろう。
 
【亀井委員】
 坂田先生が今おっしゃったことを踏まえ、自己評価に書かれていることを前提とすれば、事後評価委員の書くことはかえって少なくなるかもしれない。成果や課題として書かれていることが妥当かという観点が良いかもしれない。
 
【根津企画官】
 では、事務局からのご提案になるが、まず先程申し上げたとおり、各拠点にお願いしている目標が具体的には人材育成、研究・基盤など4つあり、その目標ごとに、先程おっしゃっていただいた成果、課題、ネクストステップについて、各拠点に自己評価をしていただいた上で、各委員に記載いただくものについては、成果と課題とネクストステップの各拠点が出してきた自己評価について、十分な自己評価になっているか、もしくは、もっと違う観点があるのではないか、そういったところを定性的に指摘していただくような形で、少し制度設計を作り変える。先程ご質問・ご指摘いただいたように、SciREXセンターはまた役割が違ってくるので、他の拠点とはまた別に付加的にネットワーキングなどについて記載いただく。このような整理に改めさせていただく。その意味で、項目ごとに○△×ではなく、各拠点が行った自己評価に対し、何も付け足すことがないということなのか、もしくは、もっとこういうところがあったのではないかなど、付加的・追加的にご指摘をいただく。それが自己評価に対するメタ評価を事後評価委員会がしていただくという形になろう。
 
【藤垣委員】
 自己評価報告書の方も成果、課題、ネクストステップを書いていただくように作り替える。
 
【根津企画官】
 整理をし直す必要があると考える。
 
【七丈委員】
 各目標の成果と課題について、「今後の活動を継続・発展させていくに当たり適切かつ具体的に整理されているか。」と聞いている項目がある。これはネクストステップなのだろうか。
 
【亀井委員】
 「整理されているか」で終わると、それぞれについてネクストステップがない。拠点から提案してほしいし、そこが評価の肝になる。成果は何か、課題は何か、それらから出てきているものはどうか、という話である。逆に言えば、達成状況についてはそれらから分かるだろう、という話なのではないか。
 
【根津企画官】
 事務局としては、ネクストステップという言葉を使ってはいなかったが、「事後評価の実施方針について」の2頁目の一番下の丸をご覧いただくと、「目標等に記載されていない新たな課題について、どういう対応をしたか」といった表現を使って記載をしている。ただ、今までの議論を踏まえると、成果、課題、ネクストステップの順番で記載いただいた方がしっくりくるかもしれないと理解した。宜しければそういう形で再整理をしたい。
 
【坂田主査】
 成果と課題は、場合によっては同じ箱でなく、別々の箱でも良い。先程の3点ずつ挙げる形なら別々の箱が良いかもしれない。そのあとに、ネクストステップの提案があればというのを明示的に足すと、だいたい先程のとおりになる。私が申し上げたように、当初計画よりもスコープを広げ、ネクストステップのところに、元々計画していなかったが良いことや、当初計画を進める上で問題はなかったが本来はこういうことが考慮されていればもっと良いことができた、という話があっても良い。
 
【亀井委員】
 それで私も宜しいと考える。
 
【坂田委員】
 SciREXセンターは、もう少し具体的にミッションが規定されていたほうが、SciREXセンターの方の立場になるとやりやすかったのではないか。そういったことも書いていただいたら良いのではないか。例えば、ネットワーキングというだけで目標がないと、進めるのは難しいところがある。予算を用意するので一緒に良い教科書を作ってほしい、といった目標軸がある結集しやすい。そういうことまで頼んでくれれば良かったという議論もあり得る。共通の教科書などがあっても良かったのではないか。
 
【七丈委員】
 教科書は取組に入っている。
 
【根津企画官】
 コアコンテンツと我々が言っているものである。各拠点の取組などを踏まえてコアコンテンツを整理しようという機能は、今SciREXセンターに担っていただいている。
 
【坂田委員】
 出版されているのか。業績にもなる協働作業のような形で、ネットワーキングの誘因になるのか
 
【根津企画官】
 出版はされておらず、ホームページ上で公開している。
 
【亀井委員】
 載せているだけでは、ネットワーキングにはならない。
 
【七丈委員】
 PDFをSciREXセンターのホームページに載せているので、坂田主査が想定されているものとは違うようだ。
 
【坂田主査】
 しっかりしたところから出版されたものの方が、協力するモチベーションが上がるであろう。
 
【亀井委員】
 そこが触媒としての機能であろう。ある種の工夫が見えてくると良い。
 
【坂田主査】
 そのためには費用などもあるので、先程おっしゃったようなものがあれば、もっと踏み込んでできたであろう。このようなことを書いてもらえれば良い。
 
【亀井委員】
 これを聞いている拠点も、そういう形で書いていただくと良い。
 
【藤垣委員】
 教科書の話は良い。
 
【坂田主査】
 これは日本ではまだ成熟していない分野で、しかもAIなどと比べて内容が頻繁に変わるようなものではないので、皆で協力することを考えるのは良い方策なのではないか。この間、「Science of Science」を翻訳して出版したが、その分野の重要な研究業績はロバストなものを中心に集めているので教科書に適している。学術的に精査され、体系化されたものをコミュニティで作るから、高井評価を受け、有名になるのではないか。
その他の点は如何か。それでは、今いただいたご意見を踏まえ修正をお願いしたい。あまり時間がないので、修正結果については主査に一任とさせていただきたいが宜しいか。
自己評価方法は具体的な話があったが、初回なので、それ以外の事項についても何かあればお話しいただきたい。

(3)その他

【亀井委員】
 GiSTプログラムで、文科省から優秀な人が毎年来ている。そういう人たちが感じるギャップのようなものがある。学んだことが実務では使えないということや、他の省庁でも留学で勉強したことが帰国後に役に立たなかったといって、辞めていく人たちを見てきている。留学先で勉強してきたことが活かされれば良いが、海外では行政官がいろいろなアカデミーで発表している等の話も多いのに、日本に戻るとむしろそういうのは変わった人という感じになってしまう。このようにコミュニティ側の受け止め方のようなものが言語化できると良い。研究者と行政官は本来インテレクチュアルな力で社会を良くする点で似ているはずなのに、微妙なずれで勿体ない。その声をメタのメタとして聞いて、色々と教えていただけると良い。
 
【七丈委員】
 SciREXのネットワーキングの場としてのサマーキャンプで、ブローダーインパクトとしてコミュニティができたかどうかといったことを追跡調査すると、我々が通常の評価の中では把握しきれていないような成果が見えてくる。サマーキャンプには大学院生も行政官も参加しているが、そういったネットワークが、必ずしも科学技術政策でなくとも、外からインプットがあってその活動が促進されることもあろう。あるいは、科学技術政策に関するスキルを持ち企業に就職する人材が多くいるが、こういう人が企業との学術研究、あるいはSIPなど企業とアカデミアとで一緒に取り組むプロジェクトのつなぎ役になるといったこともあるのではないか。そういうのも面白い。
 
【藤垣委員】
 先程、亀井委員がおっしゃった、帰国した人が感じるギャップは、本質的な問題を含んでいる。特に、海外にいくとPh.D.を持った行政官が多くいる。それで、政策立案の現場と研究活動が一緒に動いている。おそらくこの共進化実現プログラムもそれを目指していたであろうが、あまりうまくいっていない可能性がある。うまくいくためには、もう少し長期間の仕込みが大事だったのかもしれない。
 日本の科学技術政策について英語の論文で発信している人は少ない。Science for Public Policyなどで編集委員をしていると、日本からの投稿は本当に少ない。海外から見ると、日本の科学技術政策を知りたい人は多くいるので、やはり発信してほしい。しかし、発信したことで行政官として変な人と見られるのも困る。両方のギャップを埋めるためには、もう少し長期の仕組みのようなものが必要になる。評価の中にどう組み込むかというのはあるが、将来に向けて何らかの提言を組み込むとなると、この点は不可欠なのでコメントした。
 
【坂田主査】
 今のおっしゃったことは拠点から出てきたものに何か足すことでは済まないかもしれない。全体としてそれだけではない、この場からの提案みたいなものもあり得る。
 世界の国際機関はエビデンスとして論文を大量に引用している。その中でも実は、最初に引用する機関と、他の機関が引用した後に自分のところも引用する傾向にある機関とがある。最初に引用する、例えばOECDやWHOは、どの研究がエビデンスとして信頼ができ、妥当なものであるかどうか判断できる目があり、学術研究の成果を取り込む専門性が十分にある組織である。2回目に引用しているところは、その判断を利用しているといえるだろう。
 例えば、OECDはアカデミックな雰囲気のある組織である。中での議論はかなりアカデミックな基盤に基づくものになっている。なぜそれができるのかというと、常に学術研究に接していることに加え、大学の教員がディレクターになるなど、アカデミアとの間で人的な交流もあること。実際、私のアメリカでの大学院時代の指導教官も、大学からOECDに行ってまた大学に戻られた。そういう環境があるので、アカデミックにエビデンスベースの話ができるし、内部で勉強もされている。そのような環境があるとないとでは共進化の進み方や深さは違ってくる。ただ、国際機関と異なり、国の政府機関では、そのような機関はあまりない。NSFなどは別だが、やはり国際機関が卓越し、進んでいる。従って、それらの機関と同じ環境はなかなか再現できないと思われるが、もう少し前進させるために参考にできるのではないか。文科省は最近、博士の採用を積極的に進めている。専門性を持った博士が一定数いるのは科学技術政策を立案し、推進する組織の基盤として大事なのではないか。
 
【根津企画官】
 先程、坂田主査からご指摘いただいたとおり、博士を持っている若手職員が増えて、雰囲気が変わってきていると感じる。まずデータを見渡して、このデータはこの見せ方がいいのではないか、こういう見せ方をするとバイアスがかかっているので、といった議論が普通に省内でされるようになった。SciREX事業は、先程委員がおっしゃったレバレッジ効果など、ブローダリーな意味で、関係あるのではないか。
 一方で、研究者と行政官のずれも実感するところである。ただ、先程申し上げた昨年度の委託事業のヒアリングを通して結構な声が挙がっていたのは、当初はそのずれがあるのかも分からないまま関係がスタートしたが、最近になって双方ともずれがあることや、なぜそのずれがあるのかをある程度認識してきたということである。そのこと自体が前進ではないかといった部分もある。前進としては狭いかもしれないが、お互いそのような認識ができて良かっという声もあった。
 また、省内でSciREX関連の議論をしていて、文科省の人事政策に関わる部分もあるという話もあり、どういう行政官が評価されるのかなどもかなり影響してくると考えている。ただ、先程の博士が増えてきたことと関係があるのかもしれないが、行政に関する論文をアカデミックなところで発表することに抵抗がない人も増えているし、私と同世代くらいでは色眼鏡で見るような人も減ってきた。引き続き科学を推進する空気を省内に、もしくは他省にも広げていくことが重要である。
 ある省からGRIPSに、科学技術イノベーションについて勉強したいので話を聞かせてくれないかという問い合わせがあったと聞く。霞が関全体でもそういう空気が広がっていると感じる。そういう拠点が大学にあることそのものが重要な意味を持つことも実感している。事後評価委員会という形ではあるが、目的のところに今後の方向性について書き込んだとおり、いろいろとご助言をいただきながら進めていきたい。
 
【坂田主査】
 我々は単にホチキスするのではなくて、全体的な視点から助言や提言ができればと考える。研究者と行政官のずれについては、古典的な話だが、本学の前総長の五神先生の式辞の中に取り入れた話がある。戦後すぐ新しい民法典の提案をする際に、日本では本学の民法の先生が中心になり、学理としてはまだ検討の余地が残っている状態でありながら、改正案として速やかに示した。なぜかというと、日本が独立を回復するために法整備が必須なので、時間の制約の中でできることを提案することは社会から求められていた。学術としてはまだもっと深く良いものができる可能性は十分にあると皆さん分かっているが、そうはいっても日本にとって今のタイミングでなければとして、国益のもとで提案した。学術ではいくらでも精緻化したい部分はあろうが、一方で世の中には、物事を進めるべきタイミングがある。その話は、実はスタートアップなどでも同じである。数字ばかり詰めていると時間が経ってしまうが、事業の開始にはタイミングが大事なので、詰めすぎると成功できない。社会にとっては期待するタイミングがあるというのが、一つの大きなギャップが生じる原因ではないか。ある程度はやむを得ないが。先程の民法典の例ように、学術の側にもそれを理解している人がいることが大きな仕事には必要であろう。
 少し時間が余ったので、自由な議論の時間とした。先ほどのような議論を聞かれて、福井審議官からご意見など如何か。
 
【福井審議官】
 先生方のお話を聞き、この事業を通じて、研究者と我々のずれについて、互いに行き来するのが理想的な姿と考えることもある。しかし、根津企画官からもあったように、博士の就職採用をしても、彼らが成長する実感がないと、また辞める者も多い。私たちも、上から指示して異動するところから、公募制によって良い人を採用してその人の意思で行動できるようにと、人事も変わりつつある。本人のやりたいことを大事にしながら進めていくことが、聞いていて重要である。
 また、短いスパンでいろいろと方向性が変わるところで長いスパンの話に対応していくことに難しさがあろう。そういった中でも行政官とアカデミアとが交流していくことが重要であり、今回の評価も、その点に何らかエッセンスをもたらすことを期待したい。
 
【坂田主査】
 では、本日の議事は以上とする。次回は拠点大学のヒアリングの予定になっているが、担当者と率直な意見交換を行うことを考えると、このヒアリングについては非公開が適当ではないか。皆さん如何か。特にご異論はないようですので、基本非公開の形で行うこととさせていただきたい。
 最後に、今後のスケジュールなどについて、事務局のほうからお願いしたい。
 
【根津企画官】
 本日はいろいろとご議論いただき感謝申し上げる。修正については主査に一任であるが、ご相談した結果はメールで別途連絡させていただく。次回以降については2月、3月ごろということで、詳細は別途メールで連絡させていただく。

以上

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科学技術・学術政策局研究開発戦略課

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