「科学技術分野における女性研究者の能力発揮」

(別紙)

平成13~14年度
科学技術政策提言
報告書要旨

平成15年9月

研究代表者:都河明子(東京医科歯科大学)
中核機関:株式会社三菱総合研究所

1.調査研究の概要

 女性をはじめとする多様な人材が科学技術研究に参加し、十分に能力発揮できるような体制を築き、将来にわたって科学技術の幅広い振興に寄与することを目的として、女性研究者の能力発揮に向けた方策を検討し、10の提言を取りまとめた。
 国立大学・国立研究所等の研究者ならびに組織長を対象とした大規模アンケート調査、国内外の関係者・有識者(男女の研究者、雇用・労働政策/科学技術政策の実務家・専門家、先進的取組機関の実務家、ジェンダー学等の専門家、学校教育の実務家、等)を対象としたヒアリング調査などを含む広範な調査研究を実施した。

2.我が国における女性研究者の現状と課題

 我が国では、女性の理数系進学者が増加傾向にあり、女性の大学教員も着実に増加しつつある。しかし、科学技術分野における女性研究者の割合は諸外国に比べると、非常に少なく、女性の同分野への進出の遅れが目立っている。科学技術分野における女性研究者を取り巻く現状と課題については、次のように整理できる。

分野 課題
能力発揮 採用・処遇等に関する性別による不公平感
女性のライフイベントと研究を取り巻く採用・処遇等の諸制度とのミスマッチ
就業支援 育児中も研究活動を継続する上で、負担が大きい勤務形態
研究活動に必要な時間を確保する上では、不十分な育児サービス
女性研究者が直面する問題の個人的な解決の難しさ
教育・育成 女子学生が研究職について知る機会の乏しさ
女子学生に顕著な理数系離れ
基盤整備 施策推進体制の非効率さ
客観的な政策的判断の難しさ
有効な施策案の選択肢不足

 

 性別による処遇格差の経験や見聞グラフ

3.女性研究者の能力発揮に向けた10の提言

 科学技術分野における女性研究者の能力発揮に向けた取組には、数多くの方策が考えられるが、1より根源的な事象・阻害要因の改善につながると考えられるもの、2比較的短期間に一定の効果が発現すると考えられるものを中心に、女性研究者が出産・育児を経て継続的に能力を発揮することが可能な「仕組みの整備」に重点を置いた10の提言を取りまとめた。

分野 提言 施策
能力発揮 評価の透明性の確保による公平な研究環境の整備
  • 研究組織が採用において公募制を徹底し、採用・処遇等にかかる評価基準とプロセスを公開するよう指導する。
  • 競争的研究資金の評価基準を研究計画中心に変更し、評価結果を公開する。
  • 意思決定機関において、女性研究者の委員を増員する。
機会均等による開かれた研究環境の整備
  • 研究者公募、競争的研究資金、海外留学制度等への応募資格の年齢制限を緩和する。
  • 競争的研究資金への応募資格を常勤以外の研究職にも拡大する。
  • 任期付き雇用、期限付き研究資金等の、任期・期限の算定期間から、産休・育休等により研究活動を中断した期間を除外する。
就業支援 多様な就労形態を選択できる制度の導入
  • 研究組織が、「在宅勤務」「週3日勤務」「時短勤務」「フレックスタイム制」など、就労形態にかかる多様な選択を可能とする制度を導入するよう支援・指導する。
  • 出産前後あるいは育児中の研究者に対し、事務職員・実験補助員など研究支援者を重点的に配置するための必要な体制を整備する。
研究継続を前提とした育児支援施策の拡充
  • 研究組織が、独自の保育施設を設置するなど、研究組織の実状に合った「長時間保育」「夜間保育」「土日保育」「病時保育」などの育児サービスを提供できるよう支援する。
  • 大学院生・ポストドクター等の子どもの保育施設等への入所審査に際し、研究者(有職者)と同等の資格を得られるよう関係行政機関に働きかける。
  • 大学院生・ポストドクター等を対象とした、育児費用助成制度を導入する。
女性研究者のための相談窓口の設置とネットワークの形成
  • 女性研究者のための相談窓口を政府内に設置し、収集した意見や要望を政策に反映するとともに、女性研究者と研究組織間の問題解決に取り組む。
  • 研究組織が、女性研究者の意見や要望の受け止め先として、相談窓口を設置するよう支援・指導する。
  • 女性研究者間の相互支援や情報交換を目的として、ネットワーク組織の設立や安定した運営を支援する。
教育・育成 女子学生と女性研究者の交流の促進
  • 女子学生との交流事業に参加可能な女性研究者と、交流事業を希望する中学校・高等学校との間をコーディネートする機関を設置する。
  • 女子学生との交流事業等を行う女性研究者に対して、活動資金を支援するとともに、優良事業の表彰制度を設ける。
  • 女子大学生・大学院生に対して、女性研究者のロールモデルを提示する。
中学校・高等学校における科学教育力の向上
  • 女子中高生の理数系能力向上を図るための教育手法を開発する。
  • 中学校・高等学校の教員を対象とした、科学リテラシー向上のための研修を実施する。
基盤整備 5か年計画の策定による施策の進捗管理
  • 科学技術分野における女性研究者の能力発揮にかかる施策をとりまとめた5か年計画を策定し、学問分野別に、5年後の女性研究者が占める割合等の数値目標を定める。
  • 政府内に科学技術分野における女性研究者の能力発揮にかかる5か年計画を所管する部署を新設するか、または既設部署内に専従の担当官を配置する。
  • 各研究組織が、科学技術分野における女性研究者の能力発揮にかかる取組内容をとりまとめた5か年計画を策定し、5年間で実施する取組の質・量にかかる定量的な目標を定めるよう支援・指導する。
現状把握のための統計データベースの整備
  • 各研究組織を通じて、科学技術分野における女性研究者の現状にかかる統計データを収集し、データベースとして整備・公開する。
科学技術分野におけるジェンダー学の確立
  • 「科学技術分野におけるジェンダー研究」をテーマとする研究者に対して、直接または研究組織を通じ研究費等を支援する。

 

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科学技術・学術政策局計画官付

(科学技術・学術政策局計画官付)

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