【基本情報】
番号 |
2020-08 |
不正行為の種別 |
捏造、改ざん |
不正事案名 |
研究活動上の不正行為(捏造・改ざん)の認定について |
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不正事案の研究分野 |
医学 |
調査委員会を設置した機関 |
国立研究開発法人 |
不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名 |
元室長、元所長 |
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不正行為と認定された研究が行われた機関 |
国立研究開発法人 |
不正行為と認定された研究が行われた研究期間 |
平成26年度~平成27年度 |
告発受理日 |
令和2年6月30日 |
本調査の期間 |
令和2年9月4日~令和3年1月27日 |
不服申立てに対する再調査の期間 |
- |
報告受理日 |
令和3年1月29日 |
不正行為が行われた経費名称 |
科学研究費助成事業 |
【不正事案の概要等】
◆不正事案の概要 |
1.告発内容及び調査結果の概要 令和2年6月、元室長が執筆した論文について、調査を行うべきとする旨相談があり、予備調査を行った結果、本調査を行うこととし、調査委員会を設置した。本調査の結果、論文1編において捏造・改ざん(特定不正行為)が行われたと認定した。(なお、上記の他、文部科学省の予算による研究成果ではない論文1編において捏造・改ざんが認定されている。) 2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について (1)調査委員会による調査体制 7名(内部委員3名、外部委員4名) (2)調査の方法等 1)調査対象 ア)調査対象者:元室長、元所長、その他共著者36名 イ)調査対象論文:5編(海外の学術誌:2015年、2016年、2017年(2編)、2018年) 2)調査方法 実験ノート、生データ等の各種資料を参照し、疑義のあった事項について研究結果との整合性等をヒアリング及び書面により調査 (3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論 (結論) 1)認定した不正行為の種別 論文1編において、捏造・改ざん(特定不正行為)が行われたと認定した。 2)「不正行為に関与した者」として認定した者 元室長 3)「不正行為に関与していないものの、不正行為のあった研究に係る論文等の責任を負う者」として認定した者 元所長 (認定理由) 論文に用いられた図表3点において、論文に使われたデータと0次データの数値の間に不一致等が見られた。発生原因は、由来や根拠が不明なデータの記載、Excelにおける特定のセルの数値の除外、数式であるべきセルへの特定数値の手入力、不適切な統計解析であり、そうする意図がなければ起こりえないものであることから、故意による捏造・改ざんと認定した。 (不服申立て手続) 本調査の結果を調査対象者に通知したところ不服申立てがなされたため、調査委員会にて検討した。その結果、不服申立ては不正行為の認定を覆すものではなく、却下すべきとの結論となった。 3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について 不正行為を認定した論文について以下の支出があった。 ・科学研究費助成事業 298,560円(英文校閲業務) |
◆研究機関が行った措置 |
1.論文の取下げ 論文の取下げ勧告を行った。 2.被認定者に対する研究機関の対応(処分等) 被認定者2名はすでに退職しているため、懲戒処分の対象にならないが、今後、所定の手続を経て厳正に対処する予定。 |
◆発生要因及び再発防止策 |
1.発生要因 ○元室長は、論文による研究成果の発表が社会に与える影響を十分に認識しておらず、研究自体に対する責任感に欠け、研究不正に関する理解が不十分であったこと ○研究体制や組織風土にも問題があったこと 1 )共同研究を取り仕切る力量に欠ける者が研究を取り仕切っていたこと 論文の責任著者である元所長が、元室長が研究者としての力量が欠けていたにも関わらず、これを信頼し、研究全般のマネジメント担当として指名し、適切な研究実施体制が組まなかったこと。 2 )研究者間でデータ等のチェック体制が機能していなかったこと 研究について定例ミーティング等が行われず、研究グループ内において、0次データ及び1次データと論文に用いられる2次データ(図表)との整合性を十分に確認するための体制を構築していなかったこと。 3 )研究者間のコミュニケーションが不十分で責任の所在があいまいになっていたこと 論文に携わった研究者間のコミュニケーションが極めて不十分であり、また、論文の責任著者である元所長も、本来行ってしかるべき具体的な実験結果についてのコミュニケーションを怠っていた。論文の訂正時に、訂正の経緯、内容を承知していない共著者もおり、コミュニケーション不足が、その時点で十分な再精査が行われなかったこと。 2.再発防止策 ○研究者の資質の向上 ・今回の事案を踏まえ、「研究とは、文化の向上・知の発展のための真理の探究及び技術革新のための手段の開発であり、論文はそのための客観的な唯一の手段である」点を改めて研究者に徹底するための理事長訓示を実施するとともに、全職員必須参加のコンプライアンス研修において、今回の事案を題材とした研修を行い、すべての研究者が、自律的に研究不正を行わないという価値観を持てるよう、徹底する。 ○研究体制や組織風土の改革 1 )共同研究を取り仕切る研究者の資質の確保等 ・2020年5月に不正行為への対応等に関する規程を改正し、各部門又は診療科において、臨床研究に限らず全ての研究について、部長又は研究指導者の責任で適切な研究指導体制を構築しなければならないこととし、定期的な監査の対象とした。その仕組みを活用して、適切な研究体制の構築と、成熟した若手研究者の育成に取り組む。 2 )研究者間でのデータ等のチェック体制の徹底 ・2019年10月に制定した論文投稿要領に規定した、以下の点について、理事長訓示、研修等により研究者に徹底し、所属部署内でデータ等の相互確認が行われるようにする。 1 投稿に使用した実験データについて、実験ノートにおける記録を確認する。 2 実験に用いた0次データは、部長の責任のもと部内で管理する。 3 実験データの処理プロセスについて、実験担当者間で二重に確認する。 4 研究資料は、追跡可能な資料としてまとめて研究責任者が保管する。 5 共著者について、内容及び投稿に承諾を得ていることを責任著者が確認する。 ・2020年12月の論文投稿要領改正で追加した、オーサーシップや研究体制に関する以下の内容についても、理事長訓示、研修等により研究者に徹底する。 1 論文の記載については、責任著者が図・表の点検と結果についての責任を持つこと、オーサーシップに齟齬のないように実際に行った研究者の役割と責任を明確にして、全共著者に確認する。 2 臨床研究におけるデータ管理及び解析業務については、主たる研究者とは別の専門性を有するスタッフが登録・管理を支援する体制や、解析手法の妥当性や結果について第三者的な立場からのチェックが入る仕組みを構築する。 3 )今回の事案を踏まえ、論文投稿要領を改正し、以下の事項を盛り込み、理事長訓示、研修等により、研究者に徹底する。 1 論文投稿の際は、あらかじめ各部長が内容等を確認するとともに、社会的影響のある論文投稿に関しては、研究所長等がその内容等を確認する。 2 法人内外との共同研究において、データの確認等は部長が責任をもって実施する。 4 )研究実施体制及び組織体制上の問題点の検証 研究分野や法曹分野の外部有識者を加え、昨年来の事案を踏まえた法人全体の研究実施体制や組織体制上の問題点等(「研究者間のコミュニケーションの改善と風通しのよい組織風土の構築」のための方策を含む。)を検証し、さらなる改善措置や再発防止策が必要かどうかを検討し、2021年夏まで検討結果を取りまとめ、理事長のリーダーシップの下で、必要な対応を講じる。 |
◆配分機関が行った措置 |
特定不正行為(捏造、改ざん)が認定された論文は、科学研究費助成事業の成果として執筆された論文であり、かつ、科学研究費助成事業について捏造、改ざんと直接的に因果関係が認められる経費の支出があった。このため、資金配分機関である日本学術振興会において、経費の返還を求めるとともに、当該資金への申請及び参加資格の制限措置(元室長:令和3年度~令和8年度(6年間)、元所長:令和3年度(1年間))を講じた。 |
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