【基本情報】
番号 |
2020-06 |
不正行為の種別 |
盗用、不適切なオーサーシップ |
不正事案名 |
研究活動上の不正行為(盗用等)の認定について |
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不正事案の研究分野 |
医学 |
調査委員会を設置した機関 |
大学 |
不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名 |
元教授 |
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不正行為と認定された研究が行われた機関 |
大学 |
不正行為と認定された研究が行われた研究期間 |
- |
告発受理日 |
令和2年3月16日 |
本調査の期間 |
令和2年6月10日~令和2年10月13日 |
不服申立てに対する再調査の期間 |
- |
報告受理日 |
令和2年12月17日 |
不正行為が行われた経費名称 |
基盤的経費(運営費交付金) |
【不正事案の概要等】
◆不正事案の概要 |
1.告発内容及び調査結果の概要 令和2年3月、元教授が執筆した論文1編について、不正行為の疑いがある旨告発があった。当該論文はすでに掲載誌において盗用が認定され、取り下げられていたが、取下げに至った経緯や事情等を含めて予備調査を行った結果、本調査を行うこととし、調査委員会を設置した。本調査の結果、論文1編において盗用(特定不正行為)及び不適切なオーサーシップが行われたと認定した。 2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について (1)調査委員会による調査体制 8名(内部委員4名、外部委員4名) (2)調査の方法等 1)調査対象 ア)調査対象者:元教授、その他共著者4名 イ)調査対象論文:1編(国内の学術誌:2017年) 2)調査方法 ・書面調査(対象となる投稿論文1編に対する盗用箇所等の精査・照合) ・関係者ヒアリング(元教授への事情聴取、共著者への書面による質問) (3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論 (結論) 1)認定した不正行為の種別 論文1編において、盗用(特定不正行為)及び不適切なオーサーシップが行われたと認定した。 2)「不正行為に関与した者」として認定した者 元教授 (認定理由) 元教授は、インターネットで検索した画像はオープンソースで公開されたものと勘違いしたこと、当初より盗用する意図はなかった旨を弁明しており、故意であるとは断定できないが、出典を記載せず著作者への承諾も得ずに投稿・公開した事態は、研究者としての責務や論文投稿において遵守すべき基本的事項を欠く許されない行為であり、研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったものと言わざるを得ず、盗用(特定不正行為)を認定した。本盗用は、筆頭著者である元教授が執筆、図の作成を含めすべて一人で行ったものであり、共著者に盗用行為の関与はなかったと判断した。 また、元教授及び共著者への事情聴取等により、筆頭著者である元教授は、共著者4名の承諾なしに対象論文の著者に加えたものとして、不適切なオーサーシップを認定した。本不正行為は、筆頭著者である元教授が執筆を含めすべて一人で行ったものであり、共著者らは執筆に関する役割もなく投稿することも知らされていなかったため、共著者としての責任はないと判断した。 3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について 基盤的経費(運営費交付金)による研究活動であるが、盗用(特定不正行為)及び不適切なオーサーシップと認定された論文の作成過程において、直接関係する経費の支出は認められなかった。 |
◆研究機関が行った措置 |
1.論文の取下げ 大学による調査以前に掲載誌において取下げ措置済。 2.被認定者に対する大学の対応(処分等) 元教授は大学による調査以前に退職していることから、学内規程(職員懲戒規程)が適用されないため処分を行わない。 |
◆発生要因及び再発防止策 |
1.発生要因 ・研究者としてわきまえるべき責務や研究倫理意識を欠き、他者等の図・表を引用する際は出典または引用許可がある旨を明記することや、共著者への承諾を必ず行うことなど、論文を投稿する上での基本的な義務や、筆頭著者として留意すべき事項を怠った。 ・講座等における研究活動上の不正行為防止のための研究倫理教育の徹底や、公的研究費の適正な管理を行う等について自らが規範を示し、責任を負う立場である「コンプライアンス推進責任者」の自覚を欠いていた。 ・教職員全体の不正防止等への意識が不足しており、研究倫理、研究者としての基本的義務についての理解が不十分であるほか、「コンプライアンス推進責任者」全員が研究不正防止における役割を十分に認識しているとは言い難い。 ・外部から指摘された教職員に係る不正行為等の問題について、知り得た者が告発等受付窓口に通報・相談するという意識が薄く、上長が不正を行った場合、部下が通報・相談しにくい環境であることも否めない。また、不正事案を把握した際の不正防止体制における報告に関する責任体制が不明瞭であるなど、不正事案を大学として把握・対応する仕組みが不十分である。 2.再発防止策 ・論文投稿やオーサーシップに関する留意点を文書によりあらためて周知徹底し、論文投稿に際しての基本的な義務などを研究者に認識させるとともに、事前承諾など適切なオーサーシップの意識を保持させる。 ・不正防止のための教育や研究費の適正な管理等を統括する立場である「コンプライアンス推進責任者」となっている各講座等の長に、会議を通じ不正事例の説明や注意喚起を行うとともに、コンプライアンス推進責任者としての責務についての文書発出や、研究倫理講習未受講者の把握・管理など、責任者の役割を果たすよう指導を徹底する。 ・現行の座学主体の「研究倫理に関する講習」について、e-ラーニング受講の義務付けを検討するとともに、不正防止意識を継続的に保持させるため、講習受講後5年間再受講を要しない取扱いを短縮するなどの方策を講ずる。また、不正使用の防止を主体として作成した現行の「研究費使用ハンドブック」を、特定不正行為である捏造、改ざん、盗用に加え、二重投稿や不適切オーサーシップなど、不正行為防止に関する内容を追加し「研究活動に関するハンドブック」等へ改称したうえで各部署に配付する。 ・研究不正告発受付窓口をより広く認知させるとともに、外部から指摘された不正行為問題を知った者の報告義務付けなど、大学として研究不正事案を把握・対応する仕組みの構築や、より相談しやすい外部通報窓口の設置を検討する。 |
◆配分機関が行った措置 |
資金配分機関である文部科学省において、不正行為が認定された研究者に対して、競争的資金等の資格制限の措置(令和3年度~令和6年度(4年間))を講じた。 |
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