【基本情報】
番号 |
2019-09 |
不正行為の種別 |
二重投稿 |
不正事案名 |
研究活動上の不適切行為(二重投稿)の認定について |
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不正事案の研究分野 |
工学 |
調査委員会を設置した機関 |
大学 |
不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名 |
元助教 |
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不正行為と認定された研究が行われた機関 |
大学 |
不正行為と認定された研究が行われた研究期間 |
- |
告発受理日 |
平成31年4月22日 |
本調査の期間 |
令和元年7月11日~令和元年11月27日 |
不服申立てに対する再調査の期間 |
- |
報告受理日 |
令和元年12月6日 |
不正行為が行われた経費名称 |
該当なし |
【不正事案の概要等】
◆不正事案の概要 |
1.告発内容及び調査結果の概要 元助教が投稿した論文が、二重投稿により掲載取消しになっている旨、学外から情報提供があった。 これを受け、研究不正の防止等に関する規則に基づき、予備調査及び本調査を実施した結果、研究活動上の不適切な行為である二重投稿による研究不正が行われたものと認定した。 2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について (1)調査委員会による調査体制 研究活動調査委員会 5名(内部委員2名、外部委員3名) (2)調査の方法 1)調査対象者:元助教(責任著者)(以下「A助教」という。) 元教授(共著者)(以下「B教授」という。) 教授(共著者)(以下「C教授」という。) 教授(当該論文の謝辞に記載されている研究課題の研究代表者)(以下「D教授」という。) 2)対象論文:二重投稿により掲載取消となった和文論文 先行して発表された英文論文 3)対象経費:競争的資金の研究費6件 4)調査方法 ・論文誌の投稿規定を調査 ・二重投稿により掲載取消となった和文論文と先に発表された英文論文の比較調査 ・調査対象者への事情聴取 ・掲載取消となった和文論文の投稿等に関わる経費の支出実績調査 ・掲載取消となった和文論文及び掲載料を支出した経費の研究提案書との比較調査 (3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論 (結論) 1)認定した不正行為の種別 論文の二重投稿 2)不正行為に関与した研究者 ・A助教 ・B教授 (認定理由) A助教が投稿した和文論文は、先に発表された英文論文と同じ研究成果の重複発表で論文掲載誌の投稿規定に反しており、調査委員会において2つの論文の記述、図、表及びグラフ等を比較調査した結果、全てにおいて高い類似性が確認され、英文論文について引用の記載がなく、参考文献も大幅に少ないことが確認された。 このことは、A助教及びB教授への事情聴取の結果からも裏付けられ、従来から知る手続きと異なる論文投稿の流れに留意することなく手続きを行うなど、研究者としてわきまえるべき基本的注意義務を怠るなど認識の甘さが今回の事態を招いた原因であり、特定不正行為には該当しないが、研究活動上の不適切な行為である二重投稿があったと認定した。 また、共著者のB教授については、適切な研究倫理教育や研究論文の指導・助言が充分ではなかった点において、共著者(第二著者)として求められる役割や責任を果たせていない側面があることは否めない。 具体的には、和文論文と英文論文を投稿することは認識しており、また、それぞれの論文の内容も把握していたことから、論文の二重投稿になることを予見できたにも関わらず、それを防げなかった責任は重く、研究活動上の不適切な行為である二重投稿に関与があったと認定した。 共著者(第三著者)であるC教授については、英文論文の作成全般に関わっているものの、A助教から和文論文を投稿することについて知らされておらず、適切なオーサーシップを行使できる状況にはなかったことから、和文論文の二重投稿に関わった事実は確認できず、研究不正への関与は認められなかった。 当該論文の謝辞に記載されている研究課題の研究代表者であるD教授については、和文論文の共著者ではなく、投稿に関わっていないことが確認された。 また、和文論文に関わる経費の支出もなかったことを確認したため、研究不正への関与は認められなかった。 3.二重投稿論文に係る経費の支出について 戦略的創造研究推進事業(さきがけ) 240,624円(論文掲載料) なお、本研究課題の研究開始前に不正行為(論文の二重投稿)がなされたものである。 |
◆研究機関が行った措置 |
1.論文の取下げ 二重投稿による研究不正と認定した論文は、論文誌において、既に掲載取消しが決定し、その旨公開されている。 2.被告発者に対する大学の対応(処分等) A助教及びB教授は、既に退職して職員ではないため、大学の規則上処分の対象とはならない。 |
◆発生要因及び再発防止策 |
1.発生要因 A助教は、二重投稿による掲載取消しとなった和文論文について、先行して発表された英文論文とほとんど同じ図表を用い、内容も直訳に近い文章で執筆されているにも関わらず、引用の記載がなく、参考文献も大幅に少ないなど、論文作成において研究者としてわきまえるべき研究倫理の基礎的知識が欠如していたといわざるを得ない。 また、A助教は、事情聴取において、大学が取り組む研究倫理教育を活用しており、二重投稿を重要な問題として認識し十分注意していたと発言しているが、同時に、既に発表した研究成果であっても、当該論文に、一定程度の差分を加えれば二重投稿には当たらないとの認識を持っていたことが発言から確認できることからも、認識の甘さが伺える。 他方、これまで多く論文を発表していた論文誌の掲載規定を拡大解釈して、学会発表と論文掲載を同一視し、二重投稿にならないと誤った認識をしていたことも要因の1つと考えられる。 これらの問題の根本には、論文誌によって二重投稿の基準が異なるとの理解の下、ごく一部の関係者でのみ通用する運用基準さえクリアすれば問題ないと認識していることや、研究室の主宰者であるB教授による論文指導や共同著者による相互確認が十分徹底されていなかったことも、今回の事態を招いた要因の1つであることは否めない。 2.再発防止策 これまで、大学においては、研究不正を防止するための体制を整備し、研究倫理教育に取り組んできたが、論文の投稿は、各研究者の研究倫理意識に負う部分が大きいため、今回の二重投稿を防ぐことができなかった。 これを踏まえ、これまでの取組に加え、研究不正防止・研究倫理意識の醸成に向け、以下の再発防止策を講じる。 1)外部講師を招き「論文投稿のポイントと研究倫理」をテーマに研究者及び大学院生を対象に研修会を開催する。 2)学生向けの研究倫理教育パンフレットを作成し配布する。 3)大学で導入している剽窃チェックソフトの利用率を高めるため、教職員へ周知を行う。 4)研究不正について、研究主宰者や大学院生など異なる立場で体験できるバーチャル体験型の学習シミュレーションのソフトを用いて、これまでの知識・理解型とは異なる研究倫理に対する価値や態度に重きを置いた研修を行う。 5)論文の二重投稿を防ぐ対応策として、具体的な例示によりわかりやすく規定してある学会等の論文投稿ガイドラインを参考に研究者等へ周知する。 6)英文論文と和文論文の二重投稿の防止策としては、画像検索ソフトを利用して図表やグラフの類似性をチェックすることを推奨する。 |
◆配分機関が行った措置 |
特定不正行為は認定されていないため、研究者に対する競争的資金への資格制限は行わない。 |
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