【基本情報】
番号 |
2019-08 |
不正行為の種別 |
捏造、改ざん |
不正事案名 |
研究活動上の不正行為(捏造・改ざん)の認定について |
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不正事案の研究分野 |
医学 |
調査委員会を設置した機関 |
A大学 |
不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名 |
A大学 教授(当時)、准教授(当時)3名 |
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不正行為と認定された研究が行われた機関 |
A大学 |
不正行為と認定された研究が行われた研究期間 |
― |
告発受理日 |
1 平成23年11月30日 |
本調査の期間 |
(不正の有無に関する調査) |
不服申立てに対する再調査の期間 |
― |
報告受理日 |
1 2 令和元年5月30日 |
不正行為が行われた経費名称 |
科学研究費助成事業 |
【不正事案の概要等】
◆不正事案の概要 |
1.告発内容及び調査結果の概要 1 A大学 A 本件は、平成23年10月から11月にかけてインターネット上で「複数論文にて類似した画像が使用されている」との匿名者の投稿を皮切りに、同年11月30日から同年12月27日にかけて同趣旨の投書が複数あったことから、同年12月27日付けで調査委員会を設置した。調査委員会において、関係者への聞き取り調査及び書面調査等を実施した結果、計14論文において研究活動における特定不正行為である「改ざん」、「改ざんあるいは捏造」が行われたものと認定した。 2 A大学 B 本件は、平成25年2月12日に学術雑誌の編集部から「投稿論文に複数のデータ操作が見られる」との連絡があり、予備調査を経て同年4月9日付けで調査委員会を設置した。調査委員会において、関係者への聞き取り調査及び画像データの解析調査を実施した結果、投稿論文の5箇所の図表において研究活動における特定不正行為である「改ざん」が行われたものと認定した。 3 B大学 文部科学省から平成24年1月17日に顕名の申立書(申立て日:平成23年12月26日)の回付があり、B大学元助教授(以下「元助教授」という。)のグループによる公的研究費を用いた研究における不正行為に関する内容であった。 予備調査を行った結果、ヒアリングを含めた本格的な調査が必要と判断し、研究活動の不正行為に係る調査委員会(以下「論文不正調査委員会」という。)を立ち上げた。 研究不正については、論文不正調査委員会、科研費を含む公的研究費と不正との関連については科研費調査委員会で調査した。 画像データの類似性解析、ヒアリング、アンケートによる調査の結果、9論文において捏造・改ざんがあったことを認定した。 2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について (1)調査委員会の体制 1 A大学 A ア)不正の有無に関する調査 13名(内部委員7名 外部委員6名) イ)不正を含む論文と公的研究費との関係に関する調査 7名(内部委員7名) 2 A大学 B ア)不正の有無に関する調査 6名(内部委員4名 外部委員2名) イ)不正を含む論文と公的研究費との関係に関する調査 7名(内部委員7名) 3 B大学 ア)論文不正調査委員会 7名(内部委員5名、外部委員2名) イ)科研費調査委員会 5名(内部委員5名) (2)調査の方法等 1 A大学 A 1)調査対象 ア)調査対象者:告発のあった18論文の筆頭著者、責任著者及び共著者 イ)調査対象研究活動:告発のあった18論文 2)調査方法・手順 調査対象論文18本に関して、告発のあった類似画像を検証するとともに、調査対象論文の筆頭著者・責任著者等に対する文書照会・ヒアリング等を行った。 2 A大学 B 1)調査対象 ア)調査対象者:告発のあった1論文の筆頭著者、責任著者及び共著者 イ)調査対象研究活動:告発のあった1論文 2)調査方法・手順 調査対象論文に関して、告発のあった図表データを解析するとともに、調査対象論文の筆頭著者・責任著者に対するヒアリングを行った。 3 B大学 1)調査対象 ア)調査対象者 被告発者 元助教授、筆頭著者6名 計7名 ヒアリング対象者 筆頭著者6名、筆頭著者同等者1名、共著者1名、外部業者1名 計9名 アンケート対象者 筆頭著者6名、筆頭著者同等者1名、共著者1名、外部業者1名、共著者17名 計26名 イ)調査対象研究活動:申立書に記載された12論文のうち、元助教授が関西医科大学在籍時に責任著者として発表した9論文 2)調査方法・手順 ア)画像データの類似性解析 イ)ヒアリング対象者へのヒアリング ウ)アンケート対象者へのアンケート (3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論 1 A大学 A (結論) 1)認定した特定不正行為の種別 改ざん、改ざんあるいは捏造 2)特定不正行為に係る研究者 ア)「不正行為に関与した者」として認定した研究者 なし イ)「特定不正行為があったと認定した研究に係る論文等の内容について責任を負う者」として認定した研究者 A大学 教授(当時) 1名 A大学 准教授(当時) 3名 3)特定不正行為の手法及び内容 実験ノートや実験データがほとんど保存されていなかったため具体的手法は明らかにできなかったが、8図10項目に改ざん、36図40項目に改ざんあるいは捏造があったと認定した。 (認定理由) 14論文の図42個50項目において同一画像、一部重複する画像、あるいは極めて類似する画像が認められたことから、8図10項目に改ざん、36図40項目に改ざんあるいは捏造があったと認定した。 調査対象者はいずれもデータの改ざんあるいは捏造を否定したが、根拠となるオリジナルの実験ノート等を保存しておらず、研究不正行為であることを反証することができなかった。 教授1名及び准教授3名は、特定不正行為への関与は認定されなかったものの、責任著者として不正行為の防止を含めた指導をすべき立場にありながら、外部からの指摘を受けるまで、不正を是正できなかったことは結果的に責任著者としての注意義務を怠っていたと認めざるを得ないことから、「特定不正行為があったと認定した研究に係る論文等の内容について責任を負う者」と認定した。 2 A大学 B (結論) 1)認定した特定不正行為の種別 改ざん 2)「特定不正行為に関与した者」として認定した研究者 A大学 准教授(当時) 3)特定不正行為の手法及び内容 図表を解析したところ、図5箇所9項目において画像編集ソフトを用いて合成したものであることが判明したことから、改ざんがあったと認定した。 (認定理由) 論文に使用された図表を分析したところ、画像編集ソフトにより複数の画像を重ね合わせるなどして作成したと認められたことから、図5箇所9項目に改ざんがあったと認定した。 図表の作成は責任著者が行ったことを認めており、疑義に対する反証データも提出できなかったことから、責任著者が単独で故意に改ざんを行ったと判断し、「特定不正行為に関与した者」と認定した。 3 B大学 (結論) 1)認定した特定不正行為の種別 捏造、改ざん 2)「特定不正行為があったと認定した研究に係る論文等の内容について責任を負う者」として認定した研究者 B大学 助教授(当時) 3)特定不正行為の手法及び内容 B大学で調査した9論文全てにおいて特定不正行為を含んでおり、捏造21項目(図13個)、6編の論文に捏造・改ざん35項目(図23個) があったことを認定した。(論文不正調査委員会では、特定不正行為の中でデータの加工を含まない流用(単純なデータの反転・回転)は「捏造」とし、データの加工を含む流用は「捏造・改ざん」とした。) (認定理由) 画像解析ソフトを用いて類似性について解析した結果、「捏造」「捏造・改ざん」があったと認定した。 各論文において特定不正行為があったことは認定したが、不正行為に対して筆頭著者、責任著者、共著者及び外部業者がどの程度関与していたかは認定できなかった。 元助教授は、各論文の責任著者としてその内容を把握できる立場であり、また、研究グループの統括者として不正行為の防止を含めた指導をすべき立場にありながら、不正行為があったと認定した論文に捏造あるいは捏造・改ざんされた画像を論文に掲載させたまま発表していた。結果的に外部からの指摘を受けるまで、これらの不正を是正することなく長期的・継続的に看過してきたことは責任著者及び研究活動において中心的役割を果たす者としての注意義務を怠っていたと認めざるを得ず、重大な責任があると判定せざるをえない。よって、「特定不正行為があったと認定した研究に係る当該論文等の内容について責任を負う者」として認定した。 3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について 1 A大学 A、2 A大学 B 調査対象論文の作成過程において不正行為に直接関連する経費の支出は認められなかった。 3 B大学 不正行為があったと認定した論文と直接的に因果関係が認められる論文投稿料や論文掲載料等の支出があったか否か及び不正使用の有無については、伝票類の保存期限が過ぎており、既に学内規程に基づき廃棄されていたため判断できなかった。 ※不正事案の公表について A大学は、不正の有無の調査の結果を踏まえ、1 を平成25年4月に、2 を平成26年3月に公表。B大学は、公的研究費との関係に係る調査の結果も踏まえた上で、3 を令和元年11月に公表。 |
◆研究機関が行った措置 |
1.論文の取下げ 1 A大学 A 平成25年4月の調査結果公表後に、各書籍の編集責任者に「改ざん」、「改ざんあるいは捏造」と認定したことを伝え、事後の対応を依頼した。14論文のうち、平成25年4月に4論文、平成25年5月に1論文が撤回されている。 2 A大学 B 不正行為を認定した論文は平成26年2月に撤回されている。 3 B大学 不正行為を認定した9論文のうち、取り下げられていない5論文について、元助教授に対し取下げ勧告を行う予定である。 2.処分等 1 A大学 A 懲戒等審査委員会で、教授1名を「懲戒解雇相当」、准教授1名を「停職1月相当」とそれぞれ議決したが、議決時には既に退職していたことから法人の懲戒権は及ばなかった。 他の准教授2名は、懲戒等審査委員会への審査請求時には既に退職していたため、同審査委員会での議決は行われなかった。 2 A大学 B 准教授は、懲戒等審査委員会への審査請求時には既に退職していたため、同審査委員会での議決は行われなかった。 3 B大学 助教授は、平成15年3月31日付でB大学を退職していたため、学内規程に基づく処分の対象とはしなかった。 |
◆発生要因及び再発防止策 |
1.発生要因 1 A大学 A、2 A大学 B ・研究者として当然有するべき研究倫理が欠けていたこと ・実験ノートやデータの取扱いや保存に対する研究者の意識が低かったこと ・大学が実験ノートやデータの具体的な保存期限を定めていなかったこと 3 B大学 ・元助教授による当時の管理体制や指導体制が欠如していたこと ・研究当時、誠実で責任ある研究活動を行うための研究倫理教育が全学的に取り組めていなかったこと 2.再発防止策 1 A大学 A、2 A大学 B (1)研究活動の改革に関する検討委員会の設置 研究活動の適正化などについて、外部から客観的かつ公正な観点に基づいた意見や提言を随時受けるとともに、研究活動改革の進捗を調査・監視するための学長諮問機関を設置 (2)新たな研究活動に対する行動規範の策定 改めて体系的に「教員、医師、研究者、医療者の研究活動に関する行動規範」を策定し、その周知徹底を図り、適正な研究活動を確保 (3)「研究活動における不正行為への対応のガイドライン」の見直しに伴う規程の一部改正 平成27年4月の「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(文部科学省)の施行にあわせ、大学の「研究活動上の不正行為の防止等に関する規程」を一部改正 (4)「研究開発・質管理向上統合センター」(現「研究質管理センター」)の設置 臨床研究の科学性・倫理性を担保するため、生物統計学、利益相反、倫理審査、知財等の観点からの研究支援や研究倫理教育等を行うための独立組織を設置 (5)研究倫理教育の徹底 研究者に対してeラーニングの受講を義務化するなど研究倫理教育を徹底 (6)利益相反委員会による利益相反管理・チェック機能の強化 利益相反委員会の公正性と透明性を高めるため外部委員を増員 利益相反自己申告書を詳細な様式に修正し利益相反管理を徹底 (7)透明性の向上を目的とする情報の適切な開示・発信 製薬企業等からの寄付金等の受入状況を大学ホームページ上で公開するため、利益相反に関する公表要領を制定し、利益相反委員会で審査された自己申告書を公表 製薬企業等からの寄付金等の公表基準額を引下げ (8)研究資料等の適切な保存・保管 「A大学における研究資料等の保存期間等に関する取扱要領」を定め、研究資料等の適切や保存・保管を徹底 (9)A大学コンプライアンス指針の策定 研究活動における不正行為の防止を含めた教職員等の行動規範を策定 3 B大学 ・平成27年度以降、「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン(平成26年8月26日文部科学大臣決定)」(以下、研究不正GLという。)に則り、研究倫理教育責任者である研究担当副学長を中心に研究倫理教育を実施。具体的には、APRINが運営するeAPRINの「01_責任ある研究行為:基盤編」を研究者全員、大学院生に受講を義務付け。 ・実験データの管理については、研究不正GLに則り、研究データ、資料、試料等の保存期間を規程(B大学研究活動における不正行為防止規程 平成27年2月1日制定、平成30年9月18日改定)に定めるとともに、研究データを保存するためのファイルサーバ環境の構築を平成28年4月から検討を始め、学内で開発することを決定し、平成29年4月に実際の運用を想定した仕様検討、平成29年8月から仮運用を開始し、平成30年6月から本運用を開始。 ・今後は、同様の不正行為が発生しないよう、研究者や学生への研究倫理教育を徹底するとともに管理体制の強化を図っていく。 |
◆配分機関が行った措置 |
科学研究費助成事業について、捏造・改ざんと直接的に因果関係が認められる経費の支出はなかったため、返還を求めるものではないが、捏造・改ざんが認定された論文の一部は科学研究費助成事業の成果として執筆された論文である。このため、資金配分機関である日本学術振興会において、資格制限の措置(元准教授:令和2年度~令和6年度(5年間)、元教授/元助教授:令和2年度~令和4年度(3年間))を講じた。 |
研究公正推進室
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