神戸学院大学元教員による研究活動上の不正行為の認定について

【基本情報】

番号

2019-03

不正行為の種別

改ざん

不正事案名

神戸学院大学元教員による研究活動上の不正行為の認定について

不正事案の研究分野

薬学

調査委員会を設置した機関

神戸学院大学

不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名

神戸学院大学 薬学部 元助教

神戸学院大学 薬学部 教授

不正行為と認定された研究が行われた機関

神戸学院大学

不正行為と認定された研究が行われた研究期間

平成21年~平成29年

告発受理日

平成30年7月5日

本調査の期間

平成30年9月7日~平成31年3月31日

不服申立てに対する再調査の期間

報告受理日

令和元年6月5日

不正行為が行われた経費名称

科学研究費補助金、学術研究助成基金助成金

 

 

【不正事案の概要等】

◆不正事案の概要

1.告発内容及び調査結果の概要
 平成30年1月末に学生から、研究室内で実験データ改ざんの疑いに関する相談があった。その後、同年5月24日に学生から薬学部長に対し、告発の意思が明示されない同相談が寄せられたことを契機として、本事案が発覚した。学部内で調査を行い、その結果を同年7月5日に、薬学部長が学長(最高責任者)に報告した。これを受けて、学内規程に基づき「研究活動上の不正行為に係る調査委員会」を同年9月7日に設置し、以下の通り調査を実施した。調査の結果、平成31年2月21日に特定不正行為の認定を行った。

 

2.神戸学院大学における本調査の体制、調査方法、調査結果等について
(1)調査委員会の構成
  5名(内部委員 2名 外部委員 3名)


(2)調査の方法等
 1)調査対象
  神戸学院大学 薬学部 元助教 1名
  神戸学院大学 薬学部 教授 1名
  その他関係者3名
 2)調査方法・手順
  調査は、調査対象論文24編の図表に関して、生データと論文の図表作成に用いられた論文データとを照合等により行った。
  ・書面調査(該当論文の内容、実験ノート、生データの照合)
  ・関係者との面談(聞き取り調査)
  ・生データによる再分析
 3)本調査委員会の開催内容等
  ・調査委員会の開催回数 8回   
  ・被告発者への聞き取り調査 3回
  ・関係者への聞き取り調査 5回
  ・関係者への書面調査 1回

 

(3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論
 (結論)
 1)認定した特定不正行為の種別
   論文に関与する実験データの改ざん
 2)特定不正行為に関する認定を行った研究者
  ア)「不正行為に関与した者」として認定した研究者
    神戸学院大学 薬学部 元助教(平成30年7月31日付 依願退職)
  イ)「不正行為に関与していないものの、特定不正行為があったと認定した研究に関わる論文等の責任著者」として認定した研究者
    神戸学院大学 薬学部 教授
   ※その他の共著者については、「不正行為に関与していないこと及び不正行為があった研究に係る論文等の責任を負う者でない者」として認定した。
 3)特定不正行為の手法及び内容
   元助教が、生データから論文データに加工する段階で生データの数値を操作して、論文の主張にとって有利な方向になるよう改ざんを行っていた。
 4)特定不正行為が行われた研究課題(論文)
   平成21年から平成29年の間に、元助教が発表した論文10編

 (認定理由)
  元助教が関わる論文を調査し、生データと論文データとを照合した結果、多数の相違があり、有意性の高いものに生データを改ざんして作り直していることを確認した。実験データの精査結果、元助教の自認、及び関係者からの聞き取り調査等から総合的に判断し、元助教を「特定不正行為を行った者」と認定した。
  また、教授は、いずれの実験に対しても、元助教が提示したデータ解析済みの図・表だけのチェックにとどまり、生データを確認することもなかった。直接不正行為に関与はしていないが、改ざんが認定されたすべての論文の責任著者でありながら、責任著者としての注意義務を怠ったことから、教授を「不正行為に関与していないものの、特定不正行為があったと認定した研究に関わる論文等の責任著者」と認定した。

 

3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
  不正行為を認定した論文について以下の支出があった。
 ・科学研究費補助金及び学術研究助成基金助成金 計349,750円(論文別刷り、英文校正、投稿料)

 

◆研究機関が行った措置

1.論文の取下げ
 被告発者 元助教と論文責任著者である教授に対し、改ざんが認定された論文10編について取下げの勧告を行った。

2.被告発者及び論文責任著者における神戸学院大学の対応
 大学で検討中である。

◆発生要因及び再発防止策

1.発生要因
(1)元助教の研究公正に対する意識の欠如
  平成21年から平成29年までに発表された論文において改ざんが見られ、常態化していたことが読み取れる。元助教は、研究者、教育者として、当然守るべきルールや姿勢についての認識が甘く、コンプライアンス意識が低かったことが大きな要因である。一方、元助教が、教授から求められていた研究業績を何とか達成しようと、精神的にも肉体的にも追いつめられてきたこともこれらの行為を常態化させていた要因の一つである。

(2)研究データのチェック体制の欠如
  研究室内の研究者で共同研究が行われていたにもかかわらず、研究室内又は共同研究者間におけるチェック体制が機能していなかった。
  具体的には、1)当該研究室では、定期的にラボミーティングが行われ、実験計画、実験結果について検証・議論が行われていたが、実験結果についての議論は、結果から作成された図表に基づいてのみ行われ、生データや実験ノートの確認は行われていなかった。2)論文作成に際しても、論文内容について、実験ノートや生データを基に最終確認が行われていなかった。これらのことが、元助教によるデータの改ざん行為を可能にするとともに、常態化することを助長したと考えられる。

(3)研究室の運営環境及び若手研究者育成への責任
  研究室全体や研究室内の個人単位で、論文の本数や競争的資金の獲得も含めて高い業績達成目標があり、目標達成のために数多くの実験、学会発表、論文の作成・投稿等が求められていた。
  また、元助教は、長年、教授の研究室にて指導を受けてきたが、元助教は、研究者としての基本的な姿勢や倫理観を十分に身に着けていたとは言えない。その点において、教授は、若手研究者に対する研究倫理面の指導が行き届いていなかったと言える。

2.再発防止策
(1)研究者における研究公正に対する意識の向上
  研究倫理教育の実施による研究者倫理の向上を図るため、既に大学において実施しているeラーニング等研究倫理教育コンテンツの受講案内、講演会(研修)やFD活動等を通じて研究者行動規範教育をより一層強化する。
  学部等と所管部署である研究支援センターが協働して、研究倫理教育等不正行為防止のための研修等の受講状況の把握・検証及び未受講者に対する改善勧告等を徹底して行う。不正行為を防止し公正研究を推進するための会議として設置されている「公正研究委員会」の下で、このような体制作りを全学的に実行していく。

(2)研究データのチェック体制
  研究データ(生データ、実験・観察ノート、実験試料、試薬等の研究成果の事後検証を可能とするものをいう。)の保存期間は、研究成果の発表後、5年間を原則としている。研究を進める過程で行う研究室内でのカンファレンスにおいて、研究内容の方向性と基礎データの取り方に誤りがないか、確認するプロセスを研究室内に確立する必要がある。上記(1)の研究倫理教育を通して、自らの研究活動に真摯かつ誠実に取り組む重要性を研究室内と研究者に再認識させる。これら研究活動の立案・計画・申請・実施・研究データの保存から公表(発表)等のそれぞれの過程において、論文の責任著者及び共著者の役割・責任範囲を明確化することでチェック体制を強化する。

(3)研究室の運営環境及び若手研究者育成について
  若手研究者育成のためには、研究活動の場においては、職階の上下に関わらず自由に意見を言える雰囲気や環境が保たれなければならない。若手研究者が、円滑に研究活動を遂行できるように支援や助言ができる体制づくりを行う。研究者、研究支援人材等の広く研究活動に関わる者の自律性を高める取り組みは、学生や若手研究者を指導する立場の研究者が自ら積極的に取り組むべきである。研究機関全体として、研究倫理教育を徹底し研究者としての規範意識を向上していくために、指導的立場の研究者を対象に、一定期間ごとに研究倫理教育を推進する研修を行う。また、指導的立場の研究者を対象としたハラスメント教育を徹底する。

(4)その他(不正行為が発生した際の行動規範について)
  今回の事案では、研究不正の告発等から大学が把握するまでに数か月を要した。大学のこれまでの研究不正への対応としては、大学内における「神戸学院大学における研究活動上の不正行為の防止等に関する規程」等を教職員に周知するとともに、危機管理マニュアルに通報窓口を定めるなどしていたが、今回は十分に周知されていなかった。そのことを踏まえ、不正行為が発生した際の行動規範をリーフレット等にまとめ、一層の周知を徹底する。

 

 

 

 

◆配分機関が行った措置

 科学研究費助成事業(科学研究費補助金・学術研究助成基金助成金)について、改ざんと直接的に因果関係が認められる経費の支出があったため、返還を求めるものであり、また、科学研究費助成事業(科学研究費補助金・学術研究助成基金助成金)の成果として執筆されたものであることから、当該資金への申請及び参加資格の制限の対象となる。このため、資金配分機関である日本学術振興会において、経費の返還を求めるとともに、資格制限の措置(元助教:令和2年度~令和6年度(5年間)、教授:令和2年度~令和3年度(2年間))を講じた。

 

お問合せ先

科学技術・学術政策局人材政策課

研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874

(科学技術・学術政策局人材政策課研究公正推進室)