研究活動上の不正行為(盗用)の認定について(2017-14)

【基本情報】

番号

2017-14

不正行為の種別

盗用

不正事案名

研究活動上の不正行為(盗用)の認定について

不正事案の研究分野

地域学

調査委員会を設置した機関

大学

不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名

教授(当時)

不正行為と認定された研究が行われた機関

大学

不正行為と認定された研究が行われた研究期間

平成26年10月から平成28年6月

告発受理日

平成28年9月28日(情報提供日)

本調査の期間

平成28年11月2日から平成29年2月18日

不服申立てに対する再調査の期間

報告受理日

平成30年3月19日

不正行為が行われた経費名称

地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)

 

 

【不正事案の概要等】

◆不正事案の概要

1.研究不正の発覚及び調査結果の概要
 学長に、教員(教授) (以下「当該論文等執筆者」) 単著の研究ノート1報の内容に疑義があるとの指摘で発覚した。予備調査の結果を踏まえ大学に設置した調査委員会において、書面調査、聞き取り調査を行った。
 調査の結果、当該論文執筆者による、研究ノート1報、並びに論文1報において、研究活動における特定不正行為である「盗用」が行われたものと認定した。

 

 【発覚した不正行為の態様及び特定不正行為であるとする理由】
(1)不正の態様
  当該論文等執筆者が 研究ノート1報並びに論文1報において、他者による書籍等の記述を盗用した疑い。
(2)研究活動における特定不正行為であるとする理由
  当該研究ノートにおいて、本文389行中、約251行及び当該論文において本文761行中、約553行は、参考文献欄に表記された文献等から抜粋、加筆された形で執筆されており、適切な引用手続を採っていないこと。

 

2.本調査の体制、調査方法、調査結果
(1)調査委員会における調査体制
  研究倫理規程、公的研究費等取扱及び不正使用防止規程、「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(平成26年8月26日文部科学大臣決定)を踏まえ教授会の議を経て本調査委員会を設置した。
   調査委員8名(内部委員4名 外部委員4名)

 

(2)調査の方法等
 1)調査対象
  ア)対象研究者 : 教授(当時) (当該論文等執筆者)、当該論文執筆者による共著論文2報の共著者4名
  イ)対象論文等
   指摘を受けた単著研究ノート1報(平成28年)及び、関連する分野で当該論文執筆者が発表した単著論文1報(平成27年)、共著論文2報(平成27年及び平成28年)
  ウ)対象経費
   平成25年度から平成28年度までに当該論文等執筆者)に支出した「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)」補助経費及び経常費

 

(3)調査方法
  指摘のあった単著研究ノート1報及び単著論文1報については盗用元の疑いのある文献との対照表を作成して比較調査を行い当該論文執筆者への聞き取りを行った。共著論文2報については共著者4名のうち2名への聞き取りを行い2名へ書面での質問を行い1名より返答を得た。背景及び発生要因の把握を目的として、その他の関係者への聞き取り(4名)を行った。

 

(4)結論
  調査対象論文等4報のうち,当該論文等執筆者による単著研究ノート1報及び論文1報について、文献対照表による精査、論文等の精査及び、当該論文執筆者への聞き取り調査の結果、特定不正行為である「盗用」(他の研究者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究成果又は用語を当該研究者の了解若しくは適切な表示なく流用すること)が行われたものと認定した。

  当該論文等執筆者共著によるもの2報については、研究不正行為は認定されなかった。

 

(5)認定理由
  研究ノート1報については、本文389行中、約251行で参考文献とほぼ同様ないしはそのままの記述がみられ、また、論文1報については本文761行中、約553行で参考文献とほぼ同様ないしはそのままの記述がみられた。
  記述の多くは明記されている参考文献や、当該論文執筆者が現地調査にて入手した文献ではあるが、適切な引用の書式を用いておらず、特定研究不正行為「盗用」の「適切な表示なく流用する」に該当する記述が論文等全体の過半を大きく越えている。また当該論文執筆者からの聞き取りにおいて、記述の不適切さについての言及があった。
  結論部を中心にみられた当該論文執筆者独自の記述の内容や論文全体の構成等も含めて総合的に検討し、特定研究不正行為の「盗用」と認定した。

 

3.不正行為が行われたプログラム及び直接関連する経費
 特定研究不正行為が認定された研究ノート及び論文の謝辞に「文部科学省「地(知)の拠点整備事業」」に言及した記述があった。調査の結果、研究ノート、論文双方に「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)」補助経費の支出が確認された。
 なお、支出そのものは大学が定めた手続に沿って行われていることが確認された。

 

(1)不正行為が行われたプログラム
  プログラム名: 地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)
  選定年度:     平成25年度
  補助期間:     平成25年度から平成29年度
  事業名:      「地と知から(価)値」を創出する地域密着型大学を目指して
(2)不正行為に直接関連する経費
  以下の支出が研究ノート及び論文に関連した調査、資料購入及び成果公表にあてられていることが確認され、直接関連のある経費と認定した。
 1)平成 26年度
  論文関連の支出5件、77,090円(すべて旅費交通費)
 2)平成27年度
  論文関連の支出2件、456,932円(印刷製本費1件453,600円 通信運搬費1件3,332円)
  研究ノート関連の支出20件、153,678円(出版物費、図書費、旅費交通費)
 3)平成 28年度
  研究ノート関連の支出4件、478,032円(印刷製本費1件475,200円 通信運搬費 3件計2,832円)

 

◆研究機関が行った措置

1.競争的資金等の執行中断
 調査委員会による研究不正の認定を受け、平成29年2月18日時点で、当該論文執筆者の研究に関連した平成28年度文部科学省「地(知)の拠点整備事業」補助経費の執行を中断し、当該論文執筆者関連の経費の支払を停止し、また当該論文執筆者から経費使用に関する申請書等の受付を停止した。支出の細目及び見積書が出されていた印刷物の原稿を精査した結果、研究不正行為は認められなかったため、平成29年3月22日に執行を再開した。

 

2.当該論文等執筆者に対する処分
 調査結果の確定を受けて、懲戒規程に沿い懲戒委員会が設置され、学校法人は懲戒処分(減給)として平成29年4月21日に本人に告知した。異議申立ては行われず処分が確定した。平成29年3月31日付で当該論文執筆者は退職しており、処分の執行は行われなかった。

 

3.論文の取下げ
学長は、平成29年2月27日に当該論文等執筆者に論文等取下げ勧告を行い、当該論文等執筆者は論文等を取り下げた。

 

◆発生要因及び再発防止策

1.発生要因
 以下の3点が本事案の発生要因である。(1)当該論文等執筆者の個人的資質及び研究姿勢、(2)大学の組織としての研究倫理の不徹底、(3)当該論文掲載誌の編集発行体制の整備不十分。
 (1)については、教授職として研究歴、教育歴も長く、当該論文執筆時にも、学生の卒論指導等に携わっており、模範を示し指導する立場でありながら、当該論文等においてごく基本的な引用文献の取扱い等に従わず、大量かつ安易な流用を行っている。このような当該論文等執筆者の資質及び研究姿勢が本事案を招いた。
 (2)については、大学では、平成27年度より科学研究費補助金等競争的資金に申請する研究者を対象として研究倫理講習会が開催され、28年度には大学所属の全研究者を対象とすることとなった。しかし当該論文等執筆者は、27年度には競争的資金の応募を行わなかったため研究倫理講習会は未受講であり、研究不正が認定された論文の執筆時点では対応できていなかった。
 (3)については、本事案が発生したのは、大学COC事業関連部局において他のCOC補助事業と並行して掲載誌の編集発行体制を整備してきた時期に当たる。当該部局の責任者でもあった当該論文執筆者に業務が集中し、査読等の組織的チェックが十分になされず、不正行為を発見できず成果報告として公にする結果となった。

 

2.再発防止策
 (1) 研究倫理教育の徹底、(2)編集における査読体制の改善、(3)COC補助事業関連部局を含む組織運営の適切化の 3 点を行う。
 (1)については研究倫理講習会の全研究者対象化を平成28年度より行っている。競争的資金申請者と希望者を対象とした平成27年度は全専任教員27名中、受講者14名、受講率は51.9%であったのが、平成28年度には、全専任教員27名中、受講者27名、受講率100%であり、他に非常勤講師1名の受講があった。平成 29 年度の倫理講習会においては、日本学術振興会のe-Learningも組み合わせるなど、より徹底する方向で講習会の内容や形式を変更した。(2) については、研究不正が認定された論文掲載誌の発行を4か月遅らせて、編集委員会が原則として学内研究者2名の査読者を選定する査読制度を整備し、改めて投稿を受け付ける形とした。(3)についてはCOC補助事業関連部局の責任者、事務責任者の交代等の対応を行い、新体制下で(2)の査読制度の改善を行っている。

 

 

 

 

 

◆配分機関が行った措置

 地(知)の拠点整備事業について、盗用と直接的に因果関係が認められる経費の支出が1,165,732円あり、資金配分機関である文部科学省において、経費の返還を求める予定である。
 また、不正が認められた論文は、地(知)の拠点整備事業の成果として作成された論文であることから、競争的資金等への申請及び参加資格の制限の対象となる。このため、資金配分機関である文部科学省において、資格制限の措置(平成30年度~平成34年度(5年間))を講じた。
 加えて、地(知)の拠点整備事業においては、「国公私立大学を通じた大学教育改革の支援に関する補助金における不正等への対応方針」(平成26年4月1日 高等教育局長決定)に基づき、当該事業のホームページにも事案の概要を公表するとともに、新規事業を採択する際に参考として活用する。

 

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究環境課

研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874
メールアドレス:jinken@mext.go.jp

(科学技術・学術政策局研究環境課研究公正推進室)