研究活動上の不正行為(捏造、改ざん)の認定について(2017-12)
【基本情報】
番号
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2017-12
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不正行為の種別
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捏造、改ざん
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不正事案名
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研究活動上の不正行為(捏造、改ざん)の認定について
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不正事案の研究分野
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医科学一般
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調査委員会を設置した機関
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大学
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不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名
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助教
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不正行為と認定された研究が行われた機関
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大学
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不正行為と認定された研究が行われた研究期間
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―
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告発受理日
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平成29年7月3日
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本調査の期間
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平成29年9月11日から平成30年1月9日
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不服申立てに対する再調査の期間
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-
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報告受理日
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平成30年1月22日
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不正行為が行われた経費名称
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学術研究助成基金助成金、寄附金※
※捏造・改ざんと直接的に因果関係が認められる経費の支出はなかった。
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【不正事案の概要等】
◆不正事案の概要
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1.告発内容及び調査結果の概要
相談室に、助教が著者である論文の信ぴょう性について疑義があるとの情報が寄せられた。これを受け、相談室において保存されていた1次データ(実験機器の測定値をそのままエクセルファイルに写したもの)から論文の一部のグラフの再構成を試みたところ、論文通りのグラフを再現することができず、論文の主張を裏付けることができなかったことから、平成29年7月3日、大学の通報窓口へ通報が行われた。
調査の結果、研究活動上の不正行為である「捏造」及び「改ざん」が行われたものと認定した。
2.本調査の体制、調査方法、調査結果について
(1)調査体制
1)部局調査委員会
6名(学内委員3名、学外委員3名)
2)本部調査委員会
8名(学内委員4名、学外委員4名)
(2)調査の方法等
1)調査対象
ア)対象研究者:助教
イ)対象論文:不正行為の疑いがあるとの通報があった論文1編
2)調査方法
関係資料の収集・精査、関係者へのヒアリング(計16回)及び内部委員によるワーキングを複数回行った。調査資料として論文を構成するために用いられた電子ファイル及び実験ノートを収集するとともに、関係者から書面の提出を受けた。
(3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論
(結論)
調査対象論文について、論文を構成する主要な図6個全て、また補足図6個中5個において、研究活動における特定不正行為である「捏造」及び「改ざん」があったと認定した。
(認定理由)
実験で測定した数値の一部について
・実験機器から書き出された「1次データ」と、この1次データを統合して種々の解析(計算)を行った「2次データ」との間で、一部の数値の不一致が認められた。さらに、一部の数値に関しては、2次データに対応する1次データが存在しなかった。
・平均及び標準誤差の計算値とグラフ作成に用いた値が一部一致しない。
などの不自然さが見られた。
また、計算式が誤っておりかつ計算の途中で数値が操作されている、サンプルの内容の記録がないなどの事実も確認された。
これらの操作は、論文の根幹をなす部分において論文の主張にとって重要なポイントで有利な方向に行われており、論文の結論に大きな影響を与えていると認められる。かつ、論文の図作成過程において、正しい計算方法に基づき正しい数値を入力するという基本事項が徹底されていなかった。したがって、捏造と改ざんが行われていると認定した。
(当該論文の共著者の関与について)
共著者はいずれも当該研究の遂行に寄与しているが、測定結果の解析や図の作成は全て当該助教が担当し共著者は関与しておらず、いずれの共著者にも当該助教による数値への操作を予見することは困難であったことから、不正への関与はなかったと判断した。
3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
不正行為の認定があった論文に係る研究活動は、学術研究助成基金助成金、寄附金により実施されたものであるが、論文の作成に直接因果関係が認められる経費の支出はなかった。
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◆研究機関が行った措置
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1.競争的資金等の執行停止等の措置
学術研究助成基金助成金等の執行を停止した。
2.論文の取下げ等
当該助教に対し、該当の論文の撤回を勧告した。
3.対象研究者の処分
当該助教を懲戒解雇とした。
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◆発生要因及び再発防止策
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1.発生要因
当該助教の研究公正に対する意識の欠如があったことに加え、当該助教が保管していた実験ノートの記載及び保存されているデータは十分なものではなかったなどの要因が複合的に重なり、今回認定された不正事案の発生につながったと考える。
2.再発防止策
(1)再発防止策
これまでの独自の取り組みとしては、担当部署による実験ノートの定期的(3か月に一度)な検認、論文の最終稿に関するデータ提出のルール化、相談室の設置による内部組織課題への対応、研究不正の防止や早期発見に努めてきた。これらに加え、次の取り組みにより不正防止対応を強化する。
1)実験ノートの提出について
・各研究室の実験ノート提出率を100%にするために必要な措置を講じる。
・担当部署が実験ノートを確認後、主任研究者が複層的に確認し、指導する。
2) 論文データの提出について
・データ保存ルールの明確化により、適正な研究情報の確認と保管を徹底する体制を構築する。
3) 全研究者の意識づけに向けた指導・教育の徹底
・研究所として不正行為そのものに対する倫理観を全研究者と共有し規範意識を高めるべく、研究者が負うべき責務を周知徹底し、正しく公正な研究活動を行うよう指導・教育を徹底する。
(2)全学的な再発防止策
研究公正推進アクションプラン(平成27年3月研究公正委員会制定、平成28年7月及び平成29年8月改正)に沿って、引き続き以下の研究公正に関する教育や啓発を進める。
(1)ガイダンスでの学生への「公正な学術活動」の啓発(学部・大学院新入生、卒業研究年度のガイダンス実施等)
(2)授業中の学術マナー教育
(3)大学院生への論文執筆教育(修士・博士論文執筆前の対面によるチュートリアル実施等)
(4)教員への倫理教育(e-Learning等による研究公正研修の受講義務付け、教員の新規採用時の研修会における啓発、等)
(5)研究データ保存
上記に加え、以下について新たに取り組み、教職員の意識向上を図る。
・教職員に対する啓発を図るため、(4)で実施している新規採用教職員研修だけでなく、現職の教職員に対しても研究公正に関して広く説明を行う計画を立て実行する。
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◆配分機関が行った措置
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科学研究費助成事業について、捏造、改ざんと直接的に因果関係が認められる経費の支出はなかったため、返還を求めるものではないが、科学研究費助成事業の成果として執筆された論文であることから、当該資金への申請及び参加資格の制限の対象となる。このため、資金配分機関である日本学術振興会において、資格制限の措置(平成30年度~平成36年度)(7年間))を講じた。
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科学技術・学術政策局研究環境課
研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874
メールアドレス:jinken@mext.go.jp