研究活動上の不正行為(捏造・改ざん)について(2017-06)

【基本情報】

番号

2017-06

不正行為の種別

捏造、改ざん

不正事案名

研究活動上の不正行為(捏造・改ざん)について

不正事案の研究分野

医学

調査委員会を設置した機関

大学

不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名

元講師

不正行為と認定された研究が行われた機関

大学

不正行為と認定された研究が行われた研究期間

平成12年度~平成22年度

告発受理日

平成22年7月26日

本調査の期間

平成22年7月27日から平成23年3月25日

不服申立てに対する再調査の期間

報告受理日

平成30年1月9日

不正行為が行われた経費名称

科学研究費補助金

 

 

【不正事案の概要等】

◆不正事案の概要

1.告発内容の概要

 本件は、告発者が、講師(当時)(以下「調査対象者」という。)に対し、WEB上に公開されている平成17~18年度科学研究費補助金基盤研究(C)研究成果報告書概要を見て、同報告書概要に記載されている実験内容の紹介を依頼したり、本研究の実施場所等について照会したりしたところ、回答に窮した調査対象者が当該研究を実際には施行していないことを告白し、発覚したものである。当該研究分野教授による調査対象者への真偽確認を経て、部局調査委員会を設置し、調査対象者の聞き取り調査及び書面調査により事実関係の調査を行い、その後、全学調査委員会(懲戒の審査委員会を兼ねる)において、部局調査委員会報告書の内容確認及び懲戒処分の検討を行った。

 

2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について
(1)調査委員会による調査体制
  部局調査委員会  4名
  全学調査委員会  6名
   ※事件が発覚した平成22年当時の大学の学内規程には、外部委員を含めた調査委員会委員構成は規定されていなかった。

 

(2)調査の方法等
 1)調査対象
  ア)調査対象者:講師(当時)
  イ)対象論文等
    調査対象者の大学院研究科在籍中の平成元年度以降の研究業績すべて
    (学会発表115報、調査対象者が筆頭著者である著書14編、総説21編、原著19編)

 2)調査方法
  部局調査委員会において、調査対象者に対する聞き取り調査を行うとともに、調査対象者から提出された科学研究費補助金の研究計画調書、研究実績報告書、研究成果報告書及び研究業績一覧並びに学会発表抄録について、研究内容を学内で最も理解し得る調査対象者と同分野の教員3名が部局調査担当者として調査を行った。
 全学調査委員会において、部局調査委員会報告書の内容確認、調査対象者に対する聞き取り調査及び部局調査委員会に追加調査依頼を行った。

 

(3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論
  調査委員会が実施した調査結果を踏まえた結論は以下のとおりである。

 

 (結論)
  調査対象者の学会発表115報のうち27報について、研究活動上の特定不正行為である「捏造」及び「改ざん」があったと認められた。

 

 (認定理由)
  認定した不正行為は、次のとおりである。

 

 A)分類した4種類の抗体に関する実験において、予備実験しか実施していないにもかかわらず、捏造データを実験結果として学会において発表した。  7件(「捏造」と認定)
 B)マウスを用いた実験が実際には行われていないにもかかわらず行ったこととしてデータを捏造し、学会において発表した。  6件(「捏造」と認定)
 C)症例に基づく検討において、症例数を水増しし、学会において発表した。  12件(「改ざん」と認定)
 D)実際に使用した分離方法と異なる方法で抗体を分離したと学会において発表した。  5件(「改ざん」と認定)
  ※AとDの両方に該当する学会発表が3報あるため、A~Dの合計と不正行為が認定された学会発表の数(27報)は一致しない。

 

3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
 不正行為が認定された学会発表は、科学研究費補助金の成果として行われたものであるが、不正行為と直接的に因果関係が認められる経費の支出はなかった。

 

◆研究機関が行った措置

1.調査期間中、科学研究費(基盤研究(C))の執行を停止した。
2.平成23年3月25日付けで調査対象者を懲戒解雇した。

◆発生要因及び再発防止策

1.発生要因
 今回の不正行為については、以下の要因が挙げられる。
(1)不正行為発生当時における大学規程の未整備や、大学での説明会の未実施といった研究活動における不正防止に関する啓発活動の欠如。
(2)調査対象者が所属する研究分野には複数の研究グループがあり、教授が専門とする研究グループでは教授が研究内容を全て把握し、直接指導・助言を行っていたが、他のグループ内の研究は研究内容に関して把握するものの、直接の指導・助言は各グループの専門家である准教授らに任せられていた。研究に関する学会発表の予行会もグループ内で行われていたが、調査対象者が所属するグループの予行会に教授は参加していなかった。また、調査対象者のように既に専門学会で認められた専門家の研究発表内容については、発表前に内容確認しないのが通例であった。

 

2.再発防止策
(1)平成27年4月に、文部科学省の「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」の内容を踏まえた研究活動不正行為等防止規程を制定するとともに、毎年4月に開催している新任教員説明会において研究担当理事による研究不正・研究費不正に関する講義を行い啓発に努めることとした。
(2)調査対象者が所属していた研究分野では個々の教員における研究内容の定期的な公開を行うこととし、科学研究費補助金申請資格のある教員・スタッフについては、研究分野全体のカンファレンスで研究内容を発表し、その内容について議論する機会を設けた。また、各グループ内の研究カンファレンスでも定期的な研究発表会を行い、研究内容を相互に理解・把握できる機会を設けるようにした。

 

 

 

 

◆配分機関が行った措置

 科学研究費補助金について、捏造、改ざんと直接的に因果関係が認められる経費の支出はなかったため、返還を求めるものではないが、科学研究費補助金の成果として行われた学会発表であることから、当該資金への申請及び参加資格の制限の対象となる。このため、資金配分機関である日本学術振興会において、資格制限の措置(平成30年度~平成33年度(4年間))を講じた。

 

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究環境課

研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874
メールアドレス:jinken@mext.go.jp

(科学技術・学術政策局研究環境課研究公正推進室)