研究活動上の不正行為(捏造・改ざん)の認定について(2017-05)

【基本情報】

番号

2017-05

不正行為の種別

捏造、改ざん

不正事案名

研究活動上の不正行為(捏造・改ざん)の認定について

不正事案の研究分野

薬物治療学

調査委員会を設置した機関

大学

不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名

元准教授

不正行為と認定された研究が行われた機関

大学

不正行為と認定された研究が行われた研究期間

告発受理日

平成29年2月10日

本調査の期間

平成29年4月3日~平成29年10月31日

不服申立てに対する再調査の期間

報告受理日

平成29年10月31日

不正行為が行われた経費名称

学術研究助成基金助成金、研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)、運営費交付金、科学研究費補助金※
※特定不正行為と直接関連のある経費の支出はなかった。
注:その他公益財団法人からの研究助成金 

 

 

【不正事案の概要等】

◆不正事案の概要

1.告発内容及び調査結果の概要
 本件は、元准教授が大学在任中に責任著者として発表した論文4編に掲載された画像データについて、画像操作など不正が疑われると、大学教員から相談があり、相談は告発の意思が表示されない相談であったが告発に準じ取り扱うものとし、大学における研究活動の不正行為の防止等に関する規則に基づく予備調査並びに本調査を実施したものである。
 調査の結果、研究活動における特定不正行為である「捏造」「改ざん」が行われたものと認定した。

 

2.本調査の体制、調査方法、調査結果、特定不正行為と認定した理由
 (1)調査委員会による調査体制
   9名(内部委員4名、外部委員5名)

 

 (2)調査の方法等
  1)調査対象
   ア)対象者:元准教授
   イ)対象論文:相談者から不正行為の疑いがあるとの指摘があった平成21年から平成28年に発表された論文4編及び元准教授が関係する論文35編の合計39編
  2)調査方法
    関係資料による書面調査、関係者への書面及び面談による聞き取り調査、画像解析

 

 (3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論

  (結論)
   調査対象論文39編のうち4編において、研究活動における特定不正行為である「捏造」「改ざん」が行われたものと認定した。

 

  (不正の態様)
   捏造:画像の流用(マウス及び電気泳動の画像について、一つの画像をそのまま、又は左右・上下反転、縮小・伸長するなどした上で、別の実験結果として使用した。)
   改ざん:画像の加工(電気泳動の画像を切り貼りして、連続した実験結果を示す画像を合成した。)

 

  (認定理由)

   1)画像解析結果
    ○画像の流用
      異なる実験結果を示すとされる画像同士の画像一致率が非常に高く、同一の画像であると判断した。
    ○画像の加工
      本来連続していなければならない領域に不自然な切れ目や直線状のアーチファクト(不連続なノイズ構造)が検出されていること。画像の一部領域のみ輝度が不自然に一定となっているため、その部分のみ画像の情報が消失していること。
   2)元准教授が投稿論文用の画像編集について自らが単独で行ったことを認めていること。関係者から投稿論文用の画像編集を元准教授が行ったとの証言があったこと。
   3)原画像について、元准教授から提出されなかった原画像があること。
    また、原画像として提出された画像には、画像一致率が低いため、原画像ではないと考えられる画像があること、提出された画像について、形状が全く異なるので原画像であるとは判断できないものがあること。
   4)原画像、画像データを含む実験ノートの保存に著しい不備があり、元准教授は捏造及び改ざんの疑いを覆しうる客観的根拠を提出できなかったこと。

 

3.不服申立ての概要、再調査結果
 調査結果に対し、平成29年11月13日元准教授から書面により不服申立てがあったが、不服申立ては、不正認定を覆す新たな客観的・科学的証拠が具体的に示されておらず、また、従来の聞き取り等で主張された内容の繰り返しであり、合理的な新たな主張ではないため、却下した。

 

4.特定不正行為に直接関連する経費の支出
 捏造及び改ざんを認定した論文4編のうち3編について以下の支出があった。
 ・日本学術振興会からの科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)42,683円(英文校正料)
 ・科学技術振興機構からの研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)47,627円(英文校正料)
 ・文部科学省からの運営費交付金487,228円(論文校正費、論文出版・印刷・プロセス費、オープンアクセス出版掲載料)
 ・公益財団法人からの研究助成金341,525円(論文校正費、論文掲載料)

 

◆研究機関が行った措置

1.競争的資金等の執行停止等の措置
 平成29年5月31日から元准教授の予算(平成29年度交付を受けている科学研究費助成事業及び個人に配分された研究費)について執行停止した。なお、平成29年度交付を受けている科学研究費助成事業の研究課題については、平成29年9月30日付け元准教授の退職に伴い、研究代表者となっている課題は廃止届を、研究分担者となっている課題は分担者の変更届を配分機関へ提出し、それぞれ承認済みである。

 

2.論文の取下げ勧告
特定不正行為が認定された論文4編について、取り下げること及び当該論文を既に引用している著者へその旨の連絡をすることを元准教授へ勧告した。

◆発生要因及び再発防止策

1.発生要因
 元准教授の研究倫理意識の低さからくる研究データの保存の不徹底(原画像の破棄、画像を切り貼りしたことを示す枠の不表示、再実験をせず過去のデータを使用すること)、研究者としての未熟さによる研究内容の正確性の確保の不徹底(実験の原理・意味の不理解、実験ノートの重要性の認識不足、サンプル名・抗体名・実験日等の記録の不十分さ)が考えられる。
 また、元准教授の研究教育指導教員としての役割の認識の不足(学生を自分の代わりに手を動かす存在としている実態、学生に研究をまとめて発表させる指導の不実施)により、研究に関わった者が複数いたにもかかわらず、研究成果について多角的、客観的な検討や確認をする機会及び体制が構築できず、元准教授による不正を防げなかったことも、要因の一つである。

 

2.再発防止策
 (研究不正防止に向けた研究倫理順守意識の向上)
  研究活動不正防止推進委員会が中心となり、研究不正防止に関する関係規程、行動規範、ガイドラインの周知徹底を図る。
  研究倫理教育については、大学では平成26年度から外部講師等を招いた研究倫理セミナーの開催、及び平成27年度から全教職員へCITI-Japanが提供する教材を使ったe-Learning受講の義務付けを実施している。
  研究倫理セミナーについては、今後は教員の受講を必須とする。また、同セミナーの重点項目として、「研究指導教員の義務と責任」、「研究者の社会的義務と責任」、「国際医学雑誌編集者委員会(ICMJE)統一投稿規定に示される著者としての資格をすべて満たすように、論文の責任著者が努めなければならないこと」について周知徹底する。

 

 (大学院生に対する研究教育指導体制の強化)
  研究の基礎教育を専攻単位、コース単位でも行うことにする。各研究科において具体的対策を検討する。
  研究科において、大学院生一人に対して、指導教員の他に副指導の役割を担う教員を配置し、研究指導体制を強化するとともに、いわゆる「風通しの良い」研究環境を整える。

 

 

 

 

◆配分機関が行った措置

  科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)、研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)について、捏造、改ざんと直接的に因果関係が認められる経費の支出が各々42,683円、47,627円あったため、返還を求めるものであり、また、科学研究費助成事業(科学研究費補助金・学術研究助成基金助成金)及び研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)の成果として執筆された論文であることから、当該資金への申請及び参加資格の制限の対象となる。このため、資金配分機関である日本学術振興会及び科学技術振興機構において、経費の返還を求めるとともに、資格制限の措置(平成30年度~平成34年度(5年間))を講じた。

 

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究環境課

研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874
メールアドレス:jinken@mext.go.jp

(科学技術・学術政策局研究環境課研究公正推進室)