研究活動における不正行為(盗用)の認定について(2017-03)

【基本情報】

番号

2017-03

不正行為の種別

盗用、不適切なオーサーシップ

不正事案名

研究活動における不正行為(盗用)の認定について

不正事案の研究分野

薬学

調査委員会を設置した機関

大学

不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名

教授

不正行為と認定された研究が行われた機関

大学

不正行為と認定された研究が行われた研究期間

告発受理日

平成29年2月21日

本調査の期間

平成29年6月14日~8月4日

不服申立てに対する再調査の期間

なし

報告受理日

平成29年10月26日

不正行為が行われた経費名称

なし

 

 

【不正事案の概要等】

◆不正事案の概要

1.告発内容及び調査結果の概要
 本件は、教授が共著者となり平成26年2月に発表された論文1報について、盗用等を行っていると指摘する匿名による告発を受け、大学における研究活動上の不正行為防止等に関する規程に基づき、予備調査の後、調査委員会を設置し、告発対象の論文と引用されたとする論文について照合し比較するとともに、関係者からの事情聴取等により調査を実施した。
 調査の結果、研究活動における特定不正行為である「盗用」が行われたものと認定した。

 

2.本調査の体制、調査方法、調査結果について
 (1)調査委員会における調査体制
    3名(内部委員1名、外部委員2名)
 (2)調査の方法等
  1)調査対象
   ア)対象者:教授
   イ)対象論文
    告発者から不正行為の疑いがあるとの指摘があった論文1報
  2)調査方法
    告発者から指摘のあった論文と他論文との類似性を解析ソフトにより比較するとともに、同教授及び論文関係者から聞き取り調査した。
 (3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論
    告発者から研究活動における不正行為の疑いがあると指摘があった同教授が関与した論文に関し、調査委員会による調査結果を踏まえた大学の結論は以下のとおりである。

 

  (結論)
   当該論文と盗用元とされる論文の比較及び同教授の弁明を検証し、大学における研究活動上の不正行為防止等に関する規程及び「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」で定義する特定不正行為である「盗用」が行われたものと認定した。

 

  (認定理由)
   当該論文と盗用元とされる論文を比較するとイントロダクションは全く一緒で、ディスカッションの構成も同様であり半分位の類似が認められ、全体で40%の類似が確認されたこと。

 

  (「盗用」以外に調査の過程で判明した事実)
   オーサーシップに関して、全く論文作成に関わっていない者を筆頭著者としていたことは、不適切な点であると認められた。

 

3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
 特定不正行為(盗用)と認定された論文の作成過程において、公的研究費からの支出はなかった。

◆研究機関が行った措置

1.競争的資金等の執行停止等の措置
 競争的資金等の因果関係が認められる経費の支出がなかったことから、執行停止等の措置は講じていない。

2.同教授に対する大学の対応(処分等)
 不正行為にかかる調査結果報告を受け、懲戒委員会を設置して同教授の懲戒事由の該当性等について審議し、学内規程に基づき、平成29年10月5日付で停職3か月の懲戒処分を行った。

3.論文の取下げ
 学長から同教授に対し、平成29年10月5日付で当該論文の取下げ勧告を行った。

◆発生要因及び再発防止策

(発生要因)
 本件は、同教授の論文執筆に際しての適切な引用手続等に関する認識不足から生じたことによる。
 大学では研究活動における不正行為への対応等に関するガイドラインを踏まえ、平成27年から全教員、大学院生、公的研究費に携わる職員に対し、研究倫理教材ウェブシステム(CITI Japan e-learningプログラム)の履修を義務づけ、また、平成28年1月に大学における研究活動上の不正行為防止等に関する規程を制定し、研究不正に対する教職員の意識の向上と啓蒙に努めている。
 同教授は、平成24年に他大学から教授として採用され、翌年に当該論文を投稿しているが、当時は、研究倫理教材ウェブシステム(CITI Japan e-learningプログラム)の履修は義務付けられていなかった。このため、研究データの新規性から論文として成立し、文章の類似性に関しては論文盗用等の研究不正に当たらないと認識していたことが要因と考えられる。

 

(再発防止)
 大学は、今後も全教員、大学院生、公的研究費に携わる職員に対して、研究倫理教材ウェブシステム(CITI Japan e-learningプログラム)受講の義務づけを徹底するとともに、受講管理を厳格に行うこととしている。
 また、今回の論文盗用を踏まえ、外部専門家による研究倫理に関する講演会を開催し教職員の研究不正に対する意識の向上と啓蒙を図っていく。
 今後、教職員・学生など大学の全構成員に対して、研究倫理についての研修・教育を徹底し、今後このような事態が生じることのないよう、全学を挙げて取り組む。

 

 

 

 

 

◆配分機関が行った措置

 本件は競争的資金による経費の支出がなく、かつ平成25年に不正が行われた事実であることから、研究機関及び研究者に対する競争的資金の返還並びに研究者に対する競争的資金への申請及び参加資格の制限は行わない。

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究環境課

研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874
メールアドレス:jinken@mext.go.jp

(科学技術・学術政策局研究環境課研究公正推進室)