駒澤大学准教授による研究活動上の不正行為(二重投稿)の認定について

【基本情報】

番号

2023-13

不正行為の種別

二重投稿

不正事案名

駒澤大学准教授による研究活動上の不正行為(二重投稿)の認定について

不正事案の研究分野

経済学

調査委員会を設置した機関

駒澤大学

不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名

駒澤大学 経済学部 准教授

不正行為と認定された研究が行われた機関

駒澤大学

不正行為と認定された研究が行われた研究期間

告発受理日

令和5年4月14日

本調査の期間

令和5年5月25日~令和5年11月30日

不服申立てに対する再調査の期間

報告受理日

令和6年2月2日

不正行為が行われた経費名称

基盤的経費(基盤的経費への補助として大学に配分されている私学助成の一部を含む) 

 

【不正事案の概要等】

◆不正事案の概要

1.告発内容及び調査結果の概要
 令和5年4月13日、准教授が著者である論文に二重投稿の疑いがある旨の告発があった。予備調査の結果を受けて本調査を行うこととし、調査委員会を設置した。調査の結果、論文1編について二重投稿が行われたと認定した。
 
2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について
(1)調査委員会による調査体制
  6名(内部委員3名、外部委員3名)
 
(2)調査の方法等
 1)調査対象
  ア)調査対象者:駒澤大学 経済学部 准教授
  イ)調査対象論文:2編(国内の学術誌:2018年(先行論文)、国内の学術書籍:2020年)
 2)調査方法
  ・告発内容の確認
  ・対象論文の掲載誌の巻号、刊行年月日、出版書籍の発行年月日、出版の経緯
  ・調査対象者及び関係者からの聞き取り(ヒアリング)調査
  ・調査対象者からの弁明
  ・研究費の使途に関する調査
 
(3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論
 (結論)
  1)認定した不正行為の種別
   二重投稿
  2)「不正行為に関与した者」として認定した者
   駒澤大学 経済学部 准教授
 
 (認定理由)
  准教授は、学術誌へ投稿した先行論文と実質的に同じ論文を、同一の内容であることを認識しながらも引用・転載の記載を明確に付さず、出版書籍に掲載する原稿として編者へ提出し、その後の出版物刊行の過程で先行論文と同一の論文であることが付記されているかの確認を行わなかったため、研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことによる二重投稿を認定した。
 
3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
 基盤的経費(基盤的経費への補助として大学に配分されている私学助成の一部を含む)による研究成果であるが、不正行為を認定した論文の作成過程において、直接関係する経費の支出は認められなかった。

◆研究機関が行った措置

1.論文の転載
 先行論文についての転載申請勧告及び不正行為を認定した論文について転載元の掲載勧告を行った。
 
2.被認定者に対する大学の対応(処分等)
 准教授に対し、今後大学の就業規程等に基づく処分を検討予定。

◆発生要因及び再発防止策

1.発生要因
 二重投稿を認定した論文が掲載された書籍は、最新の研究成果を求めるものでなく、複数の研究者が執筆し、学部生・大学院生等の初学者向けのテキストとして企画されており、最新の研究成果でなくてもよいとの認識から、准教授自身が投稿を予定している学術雑誌へ提出した論文を、書籍の原稿として提出したことに起因している。
 しかしながら、当該書籍は、あとがきの内容や、特定の講義の受講者のみが購入できるなどの特別な事情があるものではないこと、明らかに初学者向けのテキストであるとわかるタイトルもつけられていないことなどから、広く一般に流通する書籍として研究者を読み手として想定した学術書の性質を持つ書籍であり、「研究成果の発表」にあたると判断される。
 准教授は、大学が取り組む研究倫理教育を受講しており、二重投稿が不適切な行為であることを認識していたことはヒアリングにおいて発言しているが、当該書籍は、複数の著者により構成されるものであり、編者が全体の構成について責任を負っているため、引用・転載の記載は、あとがきなどにおいて編者または出版社の編集者が記載するものと認識していた。
 ヒアリング時に、准教授は、書籍出版までの過程において同一論文が学術雑誌へ掲載されたことを編者に口頭で伝えたと発言しているが、学術雑誌へ投稿したものと同一の論文であることを明確に記さず、出版原稿の最終確認の段階においても既発表論文であることを自身の注釈や参考文献のなかで明確にしておらず、著者として、あとがきなど本全体の構成において転載のクレジットが付されているかの確認を怠ったことは、研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったと言わざるを得ない。
 
2.再発防止策
 大学が実施する研究倫理教育の中で、今回のような書籍である出版物と学術雑誌との二重投稿についても、具体的な例示を用いて研究者へ周知する。
 また、令和5年度より論文剽窃チェックが可能なシステムを導入したため、この活用方法についても十分に周知し、自己盗用、二重投稿についても改めて意識向上を図る。

 

◆配分機関が行った措置

 特定不正行為が認定されていないため、研究者に対する措置は講じない。

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究環境課

研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874
メールアドレス:jinken@mext.go.jp

(科学技術・学術政策局研究環境課研究公正推進室)