【基本情報】
番号 |
2023-09 |
不正行為の種別 |
改ざん |
不正事案名 |
大阪大学教授による研究活動上の不正行為(改ざん)の認定について |
||
不正事案の研究分野 |
材料工学 |
調査委員会を設置した機関 |
大阪大学 |
不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名 |
大阪大学 産業科学研究所 教授、准教授、大学院基礎工学研究科 元大学院生 |
||
不正行為と認定された研究が行われた機関 |
大阪大学 |
不正行為と認定された研究が行われた研究期間 |
平成21年度~令和2年度 |
告発受理日 |
令和2年12月17日 |
本調査の期間 |
令和3年2月19日~令和4年7月19日 |
不服申立てに対する再調査の期間 |
- |
報告受理日 |
令和5年11月7日 |
不正行為が行われた経費名称 |
科学研究費助成事業、ナノテクノロジープラットフォーム事業、共同利用・共同研究拠点(物質・デバイス領域共同研究拠点) |
【不正事案の概要等】
◆不正事案の概要 |
1.告発内容及び調査結果の概要 令和2年12月16日、大阪大学に所属する研究者2名に対して、特定不正行為が疑われる旨の告発があった。予備調査の結果、本調査を行うこととし、調査委員会を設置した。調査の結果、論文2編について改ざん(特定不正行為)が行われたと認定した。 2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について (1)調査委員会による調査体制 5名(内部委員2名、外部委員3名) (2)調査の方法等 1)調査対象 ア)調査対象者:大阪大学 産業科学研究所 教授、准教授、大学院基礎工学研究科 元大学院生 イ)調査対象論文4編(海外の学術誌:2015年(2編)、2018年(1編)、2020年(1編)) 2)調査方法 教授、准教授へのヒアリング、ヒアリング後の書面質問(生データの提出依頼を含む)、ヒアリング及び書面質問に基づく委員会による分析(生データを用いた解析の再現等)を行った。さらに、委員会による分析で疑義が生じた点について、教授、准教授への再ヒアリングや准教授による生データからの論文データの再現実証、共著者の関与の確認、関与が明らかとなった共著者(元大学院生)へのヒアリングを行った。 (3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論 (結論) 1)認定した不正行為の種別 改ざん 2)「不正行為に関与した者」として認定した者 大阪大学 産業科学研究所 教授、准教授、大学院基礎工学研究科 元大学院生 3)「不正行為に関与していないものの、不正行為のあった研究に係る論文等の責任を負う著者」として認定した者 大阪大学 産業科学研究所 教授 (認定理由) 調査対象論文1編(2020年)について、実験から得られた生データを用いるべきところ、データ解析ソフトを用いた平滑化処理をしていたことや、平滑化処理で置き換えることができなかったデータは手作業でデータの変更が行われていたことは、論文では一切触れられていなかった。さらに、論文のグラフは安定性のない実験結果から抽出した期待値に近いデータを組み合わせてみせており、再現性が保証できない。このことから、教授、准教授、元大学院生による改ざんを認定した。 また、調査対象論文1編(2015年)について、論文に記載された解析手法では論文に掲載された図が再現できないことを准教授自らが認めており、また、その手法では他者にも再現できなかった。准教授は3回目の再現実験で図が再現できたとし、科学的妥当性を主張したが、その手法は論文に書かれた手法とは明らかに異なっていた。また、実験ノートに解析手法の記録がなかった。これらのことから、准教授による改ざんを認定し、責任著者である教授を「不正行為に関与していないものの、不正行為のあった研究に係る論文等の責任を負う著者」として認定した。 (不服申立て手続) 調査結果を通知したところ、教授、准教授から不服申立てがなされたが、不服申立ての内容を審査した結果、再調査の必要はないと判断した。 3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について 科学研究費助成事業、ナノテクノロジープラットフォーム事業、共同利用・共同研究拠点(物質・デバイス領域共同研究拠点)(運営費交付金特別経費)による研究成果であるが、不正行為を認定した論文の作成過程において、直接関係する経費の支出は認められなかった。 |
◆研究機関が行った措置 |
1.論文の取下げ 教授、准教授及び元大学院生に対し、不正行為を認定した論文の取り下げ勧告を行った。また、不正行為を認定しなかった調査対象論文1編について、閲覧者に誤解を与える部分があり、教授及び准教授に対し論文の修正を求めた。 2.被認定者に対する大学の対応(処分等) 教授、准教授について、大学の就業規則を適用して処分を行った。 |
◆発生要因及び再発防止策 |
1.発生要因 今回の調査において、調査対象論文(2020年)に関しては、データ解析ソフトの平滑化機能を用いて生データの処理を行っており、論文誌の投稿規程等にもある、実験から得られた生データに対してどのような処理を行って図を作成したかを論文に記載しなかったこと、一部のデータは手作業にて置き換えられていたこと、複数のサンプルから抽出したデータを組み合わせて使用したことが明らかとなっているが、それらのことについて論文中では一切触れていなかった。調査対象論文(2015年)に関しては、実験ノートに解析方法の記録がないこと、実験から得られた生データから、論文に掲載した手法では図を再現することができなかったことが明らかとなった。さらに、元大学院生については、論文の発表後に研究倫理教育を受講していたことが明らかとなった。またヒアリング等を通じて、生の実験データを尊重するという姿勢と認識が研究室全体として欠如した状況にあったことも判明した。 これらのことから、データや資料を適切に記録・管理する、適切な研究方法のもとでデータや資料を分析・解釈する、研究成果を誠実に発表するといった研究者倫理の欠如、及び研究活動を行う前に研究倫理教育の受講が徹底できていなったことが発生要因である。 2.再発防止策 大学では、教員・研究員、研究補助者に対しては、時期を問わず 3 年に 1 回程度としていた研究倫理教育の受講頻度を改め、採用時及び 3 年に 1 回以上の研究倫理教育の受講を義務付けることとしている。また、大学院生に対しても、それぞれの課程の在学時に受講することとしていた研究倫理教育の受講時期を、それぞれの課程の入学時に受講を義務付け、研究倫理教育の強化を図っている。 これらの受講回数の改善に加えて、研究室主宰者や研究指導教員の役割及び適切なデータ・画像処理等に関する受講科目や教材等について改めて周知徹底を行うなど、本件により明らかとなった課題について特段の対応を実施する。 |
◆配分機関が行った措置 |
科学研究費助成事業について、改ざんと直接的に因果関係が認められる経費の支出はなかったため、返還を求めるものではないが、改ざんが認定された論文は科学研究費助成事業の成果として執筆された論文である。このため、資金配分機関である日本学術振興会において、資格制限の措置(教授:令和6年度~令和11年度(6年間)、准教授:令和6年度~令和11年度(6年間)、元大学院生:令和6年度~令和11年度(6年間))を講じた。 |
研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874
メールアドレス:jinken@mext.go.jp