【基本情報】
番号 |
2023-05 |
不正行為の種別 |
改ざん、不適切なオーサーシップ |
不正事案名 |
岩手医科大学教授による研究活動上の不正行為(改ざん等)の認定について | ||
不正事案の研究分野 |
歯学 |
調査委員会を設置した機関 |
岩手医科大学、日本女子大学 |
不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名 |
岩手医科大学 歯学部 教授、日本女子大学 家政学部 教授 |
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不正行為と認定された研究が行われた機関 |
岩手医科大学、日本女子大学 |
不正行為と認定された研究が行われた研究期間 |
平成29年度 |
告発受理日 |
令和4年1月20日、令和4年3月2日 |
本調査の期間 |
令和4年3月23日~令和5年6月30日 |
不服申立てに対する再調査の期間 |
- |
報告受理日 |
令和5年8月7日 |
不正行為が行われた経費名称 |
科学研究費助成事業 |
【不正事案の概要等】
◆不正事案の概要 |
1.告発内容及び調査結果の概要 岩手医科大学、日本女子大学、他4大学に所属またはかつて所属した教員が共著者となっている論文について、文部科学省を通じ不正行為の疑いがある旨の告発があったことを受けて、岩手医科大学研究不正行為調査委員会において、日本女子大学、他4大学と合同で予備調査を実施した。予備調査の結果を受けて本調査を行うこととし、岩手医科大学と日本女子大学による合同調査委員会を設置した。本調査の結果、論文1編について改ざん(特定不正行為)、不適切なオーサーシップを認定した。 2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について (1)調査委員会による調査体制 9名(内部委員4名、外部委員5名) (2)調査の方法等 1)調査対象 ア)調査対象者:岩手医科大学 歯学部 教授、日本女子大学 家政学部 教授、その他共著者2名 イ)調査対象論文:1編(海外の学術誌:2017年) 2)調査方法 ・告発内容の確認、予備調査結果の確認、本調査の方針 ・著者の役割分担の整理 ・調査対象論文、実験ノート、実験データの確認 ・先行研究と調査対象論文との比較分析 ・調査対象者及び関係者からの聞き取り(ヒアリング)調査等 (3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論 (結論) 1)認定した不正行為の種別 改ざん、不適切なオーサーシップ 2)「不正行為に関与した者」として認定した者 (改ざん) 岩手医科大学 歯学部 教授 (不適切なオーサーシップ) 岩手医科大学 歯学部 教授 3)「特定不正行為に関与していないものの、特定不正行為のあった研究に係る論文等の責任を負う著者」として認定した者 日本女子大学 家政学部 教授 (認定理由) 歯学部教授は、調査対象論文に掲載された写真を撮影した実験に使用した細胞が、当該論文に掲載されたグラフを作成したデータを取得した実験に使用した細胞と異なっているにもかかわらず同じ細胞であると記載した。そのため、細胞増殖に関し、同一の細胞を使用した別の実験の結果であるとの誤解を与えることとなり、論文の構成及び根幹の部分に影響を及ぼしていると判断した。このグラフと写真は、当該論文発表以前に行われた学会発表時点では別の細胞を使用した実験の結果として発表されており、実験ノートや写真データを確認すれば容易に防げた誤りであることから、研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことによる改ざんを認定した。 家政学部教授は、責任著者として、全体的な構成見直し、加筆修正、必要な確認などを行う責務があるにもかかわらず、歯学部教授が執筆した部分が適切な記載かどうかについて、十分な確認を怠ったことから、特定不正行為には関与していないものの特定不正行為のあった研究に係る論文等の責任を負う著者として認定した。 また、当該論文に掲載されたグラフの実験を直接担当した研究者が著者として記載されていないことから、歯学部教授について、不適切なオーサーシップに認定した。 3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について 不正行為を認定した論文について以下の支出があった。 ・科学研究費助成事業 165,737円(英文校正料、論文掲載料、海外送金手数料) |
◆研究機関が行った措置 |
1.論文の取下げ 被認定者に対し、不正行為を認定した論文の取り下げ勧告を行った。 2.被認定者に対する大学の対応(処分等) 歯学部教授については、岩手医科大学において、就業規則等に基づく懲戒を検討する予定。 家政学部教授については、日本女子大学において、学内規則に即して処分を検討する予定。 3.競争的研究費等の執行停止等の措置 岩手医科大学において、歯学部教授に対し、研究費の使用中止を検討する予定。 |
◆発生要因及び再発防止策 |
1.発生要因 1)実験ノート等との確認不足 歯学部教授は、筆頭著者として実験及び論文執筆を担当しており、実験ノートや写真データを確認すれば容易に誤記載が防げたにもかかわらず、十分な確認を怠った。 2)研究公正・研究倫理の軽視 歯学部教授は、研究倫理教育を受講していたにもかかわらず、研究公正・研究倫理を軽視したことにより、安易に論文に誤った記載をした。 3)責任著者が担うべき任務の懈怠 家政学部教授は、当時の研究倫理教育を受講していたにもかかわらず、全体的な構成見直し、加筆修正等、責任著者としての論文の記載内容についての十分な確認を怠った。 4)オーサーシップの認識の誤り 歯学部教授は、研究グループの責任者として、著者として加えるかどうか判断する責務があったが、オーサーシップの認識を誤り、実験を直接担当した研究者を、著者としての貢献が認められるにもかかわらず、あくまで研究補助者という立場であり論文の作成に貢献していないとして著者に加えなかった。 2.再発防止策 (1)岩手医科大学 1)研究公正・研究倫理に対する意識の向上 ア)毎年度実施している「コンプライアンス教育に係る研修会」において、今回の事例を基に、研究者として遵守すべき法令や関係規則を理解できる内容として実施し、基本的な研究者倫理意識の一層の向上を図る。 イ)研究公正・研究倫理に関するe-learningの受講を再度周知・徹底する。 2)不正行為防止に向けた論文投稿の基本的ルールの周知・徹底 次の点に留意した不正行為防止に向けた論文投稿の基本的ルールを取りまとめ周知・徹底を図る。 ア) 論文に研究データを公表する際は、必ず実験ノート、生データ等を確認すること。確認が不十分な場合、研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことによる不正行為と認定される場合があること。 イ)責任著者は、論文投稿にあたり、共著者と協力し公表するデータの基となる実験ノート、生データ等を再度確認し、正確性を確保する責務を担っていること。 ウ)適切なオーサーシップに関する考え方を提示すること。 (2)日本女子大学 1)家政学部教授には、論文公表にあたっては、論文投稿前に内容を熟読し最終確認をする、実質的寄与度により著者やその順序を決めるなど正しいオーサーシップを実践すること、また、公表するデータの基となるオリジナルデータ・実験ノート等を確認する等、内容の正確性を担保し、学術研究成果の信頼性及び公正性を確保するよう指導し、研究倫理教育を再受講させる。 2)学内全体としては、今回の事案を周知するとともに行動規範(研究倫理)を改めて周知徹底する。 3)研究不正防止に関する全学的な取り組みの周知・徹底はもとより、研究行動規範に係る責任者(学部長、研究科委員長等)が、教授会・研究科委員会等を通じ所属する全教員に、具体的な不正事例をあげながら研究行動規範に対する意識向上や論文作成時・投稿時における責任著者の役割、およびそれが論文全体に対して一定の責任を負うことについて再確認する。 |
◆配分機関が行った措置 |
特定不正行為(改ざん)が認定された論文は、科学研究費助成事業の成果として執筆された論文であり、かつ、改ざんと直接的に因果関係が認められる経費の支出があった。このため、資金配分機関である日本学術振興会において、経費の返還を求めるとともに、実施する事業への申請及び参加資格の制限措置(歯学部教授:令和 6 年度~令和 9 年度(4年間)、家政学部教授:令和 6 年度(1年間))を講じた。 |
研究公正推進室
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