【基本情報】
番号 |
2022-08 |
不正行為の種別 |
捏造、改ざん |
不正事案名 |
名古屋大学における研究活動上の不正行為(捏造、改ざん)の認定について |
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不正事案の研究分野 |
神経科学 |
調査委員会を設置した機関 |
名古屋大学 |
不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名 |
名古屋大学 元大学院生、環境医学研究所元教授 |
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不正行為と認定された研究が行われた機関 |
名古屋大学 |
不正行為と認定された研究が行われた研究期間 |
平成28年~令和元年 |
告発受理日 |
-(再調査) |
本調査の期間 |
令和3年9月6日~令和4年5月25日 |
不服申立てに対する再調査の期間 |
- |
報告受理日 |
令和4年10月18日 |
不正行為が行われた経費名称 |
戦略的創造研究推進事業(CREST) |
【不正事案の概要等】
◆不正事案の概要 |
1.告発内容及び調査結果の概要 令和2年度に行われた学術論文における不正行為に関する調査(2020-09)の結果、改ざん(特定不正行為)が認定された論文について、当該論文の新たな図表に不正行為の疑義が生じたため、予備調査の結果を受けて再度本調査を行うこととし、公正研究委員会の下に調査専門委員会を設置した。本調査の結果、新たに捏造、改ざん(特定不正行為)を認定した。 2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について (1)調査委員会による調査体制 4名(内部委員2名、外部委員2名) (2)調査の方法等 1)調査対象 ア)調査対象者:名古屋大学 環境医学研究所 元教授(責任著者)、元大学院生、その他共著者3名 イ)調査対象論文:論文1編(海外の学術誌:2019年) 2)調査方法 ・対象論文、前回調査における論文訂正勧告、委員会に提出された訂正原稿及び責任著者から出版社に提出された訂正原稿の精査 ・実験ノート・オリジナル画像ファイルの精査、関係者へのヒアリング ・画像解析を行う専門業者に画像不正に関する調査を依頼し報告書を検討 (3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論 (結論) 1)認定した不正行為の種別 捏造、改ざん 2)「不正行為に関与した者」として認定した者 名古屋大学 元大学院生、環境医学研究所 元教授 3)「不正行為に関与していないものの、不正行為のあった研究に係る論文等の責任を負う著者」として認定した者 名古屋大学 環境医学研究所 元教授 (認定理由) 対象論文及び出版社に送付した訂正原稿の4か所の図及びグラフにおいて、不適切な画像の使用、同一画像の使い回し、実験事実を反映しないグラフの提示、実験内容やその結果の科学的妥当性の判断に重要な画像に対する、事実に反する表記や科学的妥当性を損なう写真の使用があり、捏造、改ざんに該当すると認定した。 元大学院生は、対象論文の捏造、改ざんが認められた箇所を担当する著者として、実験結果を公正に提示する責務を負っていたがこれを果たさなかったことから、研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことによる捏造、改ざんを認定した。 元教授(責任著者)は、対象論文については、不正行為に関与していないものの、不正行為のあった研究に係る論文の責任を負う著者と認定した。また、出版社に送付した訂正原稿については、研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことによる捏造、改ざんを認定した。 (不服申立て手続) 元教授(責任著者)から異議申立てがあり、検討の結果、再調査(再審理)の必要性は認められないと判定された。 3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について 不正行為を認定した論文について以下の支出があり、令和2年度に実施した調査(2020‐09)に基づき科学技術振興機構に返還した。 ・戦略的創造研究推進事業(CREST) 計594,915円(論文掲載料) |
◆研究機関が行った措置 |
1.論文の取下げなど 論文の撤回を勧告した。 2.被認定者に対する大学の対応(処分等) 大学の規則に基づく懲戒処分の検討を勧告した。 3.競争的資金等の執行停止等の措置 令和2年5月22日から戦略的創造研究推進事業(CREST)の使用を停止したうえで、同日付で研究契約を解除、未執行の委託研究費については、見合いの間接経費とともに、令和3年3月22日に大学から科学技術振興機構に返還した。 |
◆発生要因及び再発防止策 |
1.発生要因 ・責任著者の研究室において、公正研究を遂行するための教育体制や、実験ノート記録ならびに実験データ管理を指導する教育体制と管理体制が構築されていなかったこと。 ・対象論文の中で新たに不正を同定したにもかかわらず公正研究委員会に報告することなく出版社に訂正依頼を送付しており、責任著者の公正研究に関する倫理の欠如が疑われたこと。 ・細心の注意を払って作成をするべき訂正画像に不正行為が含まれており、責任著者の科学的な事実を軽視する姿勢が示されていたこと。 ・元大学院生は、当時、どこからが不正行為に当たるのかの認識が不十分であった可能性があり、細胞や脳組織の顕微鏡画像の撮影及び担当した図表作成においても、論文発表を急ぐべき状況にあったことから、相当に混乱した状況で行わざるを得なかったという事情があったこと。 ・実験ノートの記録と研究データの管理が十分にできておらず論文作成時に根拠がない画像を用いたこと。 ・責任著者ならびに他の教室員による公正研究に関する指導がされていなかったこと。 ・責任著者は、研究室運営の責任者でもあり、高い研究倫理観を有し研究者の範たるべく行動するべきであったが、本来の責務を果たしてこなかったこと。 2.再発防止策 1)教員及び学生を対象に、実験ノートの作成と保管及び生データを保管することの重要性を改めて周知徹底し、不正行為を行うことによるリスクを伝え、学内研究者の不正行為防止への意識を高める。 2)論文公表にあたって責任著者は共著者と協力して公表するデータの基となる生データ・実験ノートを再度確認し、公表しようとする内容の正確性を担保する。 3)科学的な事実を解明する公正な研究が行われるように、部局の研究倫理教育責任者は、定期的に研究資料等が適切に保存・管理されているかを確認し、その結果を研究倫理推進総括責任者に報告する仕組みを整備し、再発防止を図ることを求める。 4)不正行為に関与したと認定した研究者が所属していた研究科において、大学院博士課程の1年生に義務付けている生命倫理と研究倫理に関する講義において、本件も含む過去の事例等を使いどこからが不正行為に当たるのか認識させるように努める。 5)公正研究に関わる委員会(予備調査委員会・調査専門委員会・公正研究委員会)は、今回の2回目の調査という異例の事例を教訓とし、指示していない訂正の有無も含めて確認するなど、さらに細心の注意を払い調査を行う。 |
◆配分機関が行った措置 |
特定不正行為(捏造、改ざん)が認定された論文は、戦略的創造研究推進事業(CREST)の成果として執筆された論文であり、かつ、戦略的創造研究推進事業(CREST)について捏造、改ざんと直接的に因果関係が認められる経費の支出があった。そのため、資金配分機関である科学技術振興機構において、当該資金への申請及び参加資格の制限措置を講じた。(因果関係が認められた経費についてはすでに返還済み。) |
研究公正推進室
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