令和5年度女性の多様なチャレンジに寄り添う学びと社会参画支援に関する有識者会議(第1回)議事要旨

1.日時

令和5年11月10日(金曜日)15時30分~17時30分

2.場所

オンライン開催
 

3.議題

(1)令和5年度「女性の多様なチャレンジに寄り添う学びと社会参画支援事業」について(中間報告)
(2)令和6年度概算要求について

 

4.出席者

委員
大槻座長、乾委員、小山内委員、島委員、矢島委員

文部科学省
安里男女共同参画共生社会学習・安全課長、鈴木男女共同参画学習室長、田才女性政策調整官、廣山男女共同参画推進係長

 

5.議事要旨

(1)令和5年度「女性の多様なチャレンジに寄り添う学びと社会参画支援事業」について、委託事業者より中間報告が行われた。委員からの主な質問や意見は以下のとおり。
 
【京都女子大学】
(委員)
 出願状況も非常に多く、事業内容についても企業や各大学の強みを活かし、受講生一人一人に寄り添った内容となっており、事業全体として素晴らしい。特に、「効果的なプログラム運営の工夫」として、パワーポイント講習会を実施されたとのことだが、就労の有無に関わらず、プレゼンの機会がない方もいるため、良い取組である。
 また、受講生の居住地が広範にわたっていて素晴らしいが、どのような広報活動をしたか教えてほしい。
職場体験等の実践的プログラムについて、電気通信事業者のほか、就労移行に関する施設・事業所を設定された理由を教えてほしい。
 本事業に関し、自治体からの視察もあったとのことだが、自治体がどのような点に関心や目的を持っていた方教えてほしい。

(回答)
 本事業の受講に当たっては、オンライン面接や入試選考の際に、パソコンの基礎スキルがあるかどうかを質問していたが、パワーポイントに関しては受講生の3分の1がプレゼンをする程の自信が無いということが分かったため、講習会を実施することとした。受講生35名のうち21名の方がリーダー以上の管理職、幹部職以上の役職ではあるが、それでもスキルには自信がないようだった。
 広報活動については、本学卒業生など約1,000人に対してダイレクトメールを送った。また、フリーペーパーのリビング新聞を活用し、福岡、東京、京都でフリーペーパーによる告知を行った。さらに、本プログラムの企画委員に参画している企業を通じて、社員等に告知をしていただいた。リビング新聞については非常に効果が高いため毎年、掲載しているが、普通の新聞を購読しない方にとっても、家に届くリビング新聞を手元に何日間か置いて時間があるときにじっくり読むという傾向があり、毎回一定の効果がある。
 職場体験については、本プログラムにおいて、共同参画社会と、視座を高めるという観点で、ダイバーシティー&インクルージョンの視点が欠かせないことや、企業でも障害者雇用の推進が課題となっていることを踏まえ、就業支援として実績のある施設・事業所から協力をいただくこととした。これら企業の体験に行った受講生からは、「非常に視野が広がった。」という期待どおりの回答があったほか、「今後、仕事を進める上でのヒントになった。」というお話もいただいている。
 自治体の視察については、本プログラムや本学が取り組むリカレントへの体制など全般的なことについて興味があったとのこと。自治体では、大学とも連携しながら、県ぐるみでリカレントのプラットフォームを構築されようとしているようで、そのヒントになる話が聞きたかったということで視察に来られた。

(委員)
 今回、各大学のこれまでの取組をベースとし、複数大学の連携によって充実したプログラムが組めたことで受講生からの期待も高く、応募者が募集人数よりも多かったのは大変素晴らしい。今後、多くの女性がこうした学びにアクセスするにはどうすれば良いのかが課題だと思うので、他の大学でもこうしたプログラムを導入していただくために、運営にどんな課題があるのかということや、女性たちのニーズごとにどのようなプログラムが有効だったのかということを報告書に取りまとめていただき、全国の多くの女性がこうした学びにつながるための情報提供をお願いしたい。

(委員)
 まず、本プログラムの志願者は優秀な方が多かったという説明があったが、どのような点でそのように感じたのか。
また、今回のねらいが自己効力感とキャリアへの挑戦意欲を高めることとなっている。プログラム修了後これを測定するとのことだが、開始時には何か測定したのか。受講者アンケートでは「自信を持ちたい」などの動機コメントが多くありそこから推量はできそうだが、より分かりやすくビフォー・アフターがあると効果的であろう。
 入学前の自己紹介やコーディネーターとの対話等、入学前の時点で自分を振り返る機会が用意されていて、素晴らしい。おそらく成果報告会や修了後の効果測定でもそれに対応した機会になると思われる。一方、マインド醸成を狙うプログラムの場合、学んだことを実践に移して振り返りを行うというようなプロセスが重要になると思うが、そうした機会はあるのか確認したい。

(回答)
 まず、志願者が優秀だと感じた点については、現在の役職や経歴はもとより、面接のときの発言内容が理路整然としている方が非常に多かった。本学の他のリカレントコースと比較しても、本プログラムは特に優秀な方が多かったため、合否判定に苦労した。
 入学時の志望動機では、本人のキャリアビジョンを書く項目があり、各人のキャリアへのチャレンジを確認している。また、受講中の振り返りについては、授業中の議論や、ロールモデルセミナーでの対話を予定しているため、これらの中で受講者のコメントや授業後の振り返りシートでチェックをしたい。

(委員)
 例えば、キャリアプランへの自己評価や管理職への意欲、自己効力感など、修了後に測定しようとしている項目については、受講前の具体的な数値は取っていないということか。今回は仕方ないが、今後は同じ項目で数値の比較ができるようにすべき。

(回答)
 受講前は数値を取らないが、受講後はアンケートにより数値も取る予定である。

(委員)
 職場体験は、どのような目的で、どの点を見てもらうために、場の設定をされたのか教えてほしい。

(回答)
 職場体験は、受講者本人が働く企業や組織とは異なる組織を見て、そこで働く方のお話を聞くことで、自分の視座を高めてキャリア構築を前向きにしていくというマインドセットが大きな目的である。職場見学では、企業によって実施内容が異なっており、組織それぞれに独特のキャリアを歩む女性管理職がおり、グループワーク形式での意見交換会や施設見学などが行われた。就業支援施設では、キャリアチェンジをされた方の話や発達障害のある子供のスクール事業の話を聞いたり、職員との意見交換会を実施されたりする中で、女性管理職の働き方についての視野を広げることができた。

(委員)
 受講生35名のうち、本プログラムに関わる大学の卒業生は何名含まれていたか。

(回答)
 京都女子大学の卒業生は3名程である。他の大学も少数である。

(委員)
 卒業生に偏ることなく、多数の応募があったのは、多くの方から必要とされているということである。本プログラムのような取組を広げるため、実施するための工夫点などを報告書に盛り込んでいただきたい。


【株式会社Ridilover】
(委員)
 当初は、アンコンシャス・バイアスを軸にした事業を実施する計画だったと思うが、有識者会議の中で委員から出た意見によって、その軸の部分が薄まったという印象が強く、全国フォーラムの内容にも大きく影響している。NWECが平成30年に実施した調査でも、やはりアンコンシャス・バイアスが女性の登用に影響を与えているという調査報告もあった。女性が管理職にならないということに対して、有識者会議では学校教員の個人の問題という意見もあり、フォーラムの内容を見てもアンコンシャス・バイアスの解消につながるような内容があまり含まれていない。これは事業実施後の報告書や普及啓発の冊子にも関係してくると思うので、もう一度、この点について議論していただきたい。

(委員)
 「自社メディアでの特集記事」に、端的に現れていると思うが、全体的に「女性教員、頑張れ」というメッセージに聞こえてしまう。この特集記事では、女性がどうやって障害を乗り越えたか、どうやって両立したか、やりがいは何かという点が中心であり、それらも重要ではあるが、もうバイアスはない、構造的な阻害要因はない、だから女性、頑張れと、全体がそういう方向に流れているような気がする。それが無意識なのか、意識的なのかとか、そういう議論も重要であるが、やはり阻害要因、構造的な要因があって、それをバイアスと言っている面もある。それが意識化されないから、深刻な意味で、無意識のバイアスという言葉があるので、その視点は重要である。

(委員)
 アンコンシャス・バイアスが存在しないとは考えにくい。アンコンシャス・バイアスで議論せず、働き方の問題に注力するのであればまだわかるが、女性の意識の問題に持っていかれたら、進むべき方向性から逆行するようになってしまうので、整理をし直していただきたい。

(委員)
 そもそもこの事業自体が、アンコンシャス・バイアスに焦点を当てて募集し委託したものであって、そこがずれてしまうのであれば、根本的に問題であると思う。他の委員が仰るように、現在の枠組みの中で管理職になっている方が、アンコンシャス・バイアスがないと言うのは原理的に当然なことでもある。そのため、本来重要度が高いのは、キャリアを諦めた方とか、駄目だと思って管理職になれなかった方の意見のほうであろう。
 アンコンシャス・バイアスというのはそもそも何のことなのか、どのように捉えて定義しているのかという部分について、例えば能力に対する思い込みなのか、キャリアに対する思い込みなのかなど、有識者は何に対して課題が無いと思っているのか明確にないと、個人的な意見によって、データ的なエビデンスをひっくり返しているような形になってしまう。
 一方で、現在、課題認識のない人をターゲットにする視点は非常に良いと思う。むしろ、例えばリーダーや多様性の活用の仕方、多様性を活用できる管理職をというような、かえって「女性管理職」という言葉を使わないようなフォーラムにすることで、実際にはアンコンシャス・バイアスを持っている方々を引っ張り込むことはできる可能性はある。そのため、全体タイトルやリード文、副タイトルに「女性管理職」を用いず、メインは多様性やリーダーシップの新しい在り方などにすることは考えられる。
 ただし、女性教員をエンパワーメントするという内容のみでは、当初の事業目的とは乖離するので、問題は女性の方にあるわけではなく、人事権を持つ人たちの方にあるという前提に立って記事を作り、フォーラムを運営することが必要だと思う。

(委員)
 民間でも、アンコンシャス・バイアスは無いと主張される場合には、いくつかタイプがある。例えば、女性が子供を持って時間制約が発生する場合に差が生じるので仕方のない問題であり、男性か女性かという問題ではないから、これはアンコンシャス・バイアスではないという主張などである。しかし、時間制約のある人が能力発揮できない場合は、働き方の問題に加えて、そういう人にはこのような仕事しかできないというアンコンシャス・バイアスに基づく業務配分や評価の問題が生じている可能性が高く、これらもアンコンシャス・バイアスの問題である。これを理解する必要がある。

(委員)
 本事業の目的に照らして、どのくらい軌道修正をかけられるかという点では、国立女性教育会館が行った調査研究結果を活用するとか、昨年・今年に東京都が行った教員と生徒のアンコンシャス・バイアスに関する質問紙調査の結果を活用することもできる。今年の分はまだ報告書ができていないが、昨年の報告書から、教員にもアンコンシャス・バイアスはまだ存在するという論拠になると思うため、このようなデータに基づく説明をしていただくことが重要である。
フォーラム第3部のディスカッションでは、ブレイクアウトルームに分かれて参加者同士で話し合うという設定をしているが、自身が講座を行っている経験から、オンライン講座のブレイクアウトルームは議論するには時間が短く、進行が難しい。また、上手く進まない場合は参加者が退出してしまうこともあるため、進め方を十分に練る必要がある。

(委員)
 知らない人同士が集まるフォーラムでは、例えば講演だけなど、希望する部分のみ参加して退出する人が相当数いる。講義や研修を何回か行った上で関係性ができている中で実施するのなら問題ないが、1回限りのフォーラムで実施するにはリスクがある。参加するハードルは高くなるが、ディスカッションまでの参加を条件に募集するとか、各グループにファシリテーターを置けば、ディスカッションができると思う。

(委員)
 私も実際にオンライン講座を実施して、同じ問題を何度か経験したが、参加者が退出してしまうのはある程度仕方がなく、参加してくれた人に成果を得ていただくようにすれば良い。ブレイクアウトルーム内での対話内容を明確にした上で各ルームに送るなど効果的な手法はある。
 また、第3部でのブレイクアウトルームが終わった後、全体の進行に戻ってくるところに魅力的なコンテンツを置き、戻ってきたくなるような形にする工夫も必要である。


(2)令和6年度概算要求について、事務局より説明を行った。委員からの主な意見は以下のとおり。
(委員)
 今、日本社会の中でも何が正しいのかということの理解が混乱し、誤った情報も流布されている中で、子供たちに、性やジェンダーに関する正しい情報を提供することは大変重要だと思っている。
 先日、都立高校のキャリア教育の一環で、私の仕事やダイバーシティー、ライフプランについてお話をした際、女子生徒から「都立高の男女別定員についてどう思うか。」という質問があった。まさに当事者である都立高の生徒からは真摯に、どういうことなのか知りたいという切実さがあった。女性に関するポジティブ・アクションに対してはバッシングがひどいが、男性が優遇されていたケースというのはあまり問題にされず、すっと消えていくということもある。やはりこのようなことが、正しく情報提供され、教育の場で話し合われることが必要である。
 また、男子生徒からは「ダイバーシティーの必要性が説かれる一方で、行き過ぎたフェミニズムという問題もSNSで流れているが、それについてどう思うか。」という質問もあった。フェミニズムにしても、あるいは女性蔑視にしても、中には過激なものもある。日本ではどちらかというと、女性蔑視での過激な意見や、それによって非常に傷ついている人が多いと思っているが、男女両方ともワーク・ライフ・バランスやキャリアアップが望める社会になるために、女性対男性ではなくて男女が共に社会や企業を変えていくという方向に向かうことが必要、といったお話をした。日本の子供たちには、やはり性教育、ジェンダー教育が足りていないし、その中で今、日本社会の中で混乱が生じていることを強く感じるため、ぜひそういった視点で、子供たちに対するアプローチやプログラムの更なる充実をお願いしたい。

 

(以上)

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