令和4年度女性の多様なチャレンジに寄り添う学びと社会参画支援に関する有識者会議(第2回)議事要旨

1.日時

令和5年3月2日(木曜日)13時~16時

2.場所

オンライン開催

3.議題

(1)令和4年度「女性の多様なチャレンジに寄り添う学びと社会参画支援事業」について(最終報告)
(2)その他

 

4.出席者

委員
大槻座長、乾委員、小山内委員、島委員、矢島委員

文部科学省
安里男女共同参画共生社会学習・安全課長、鈴木男女共同参画学習室長、髙木女性政策調整官、廣山男女共同参画推進係主任、星野男女共同参画推進係員

5.議事要旨

(1)令和4年度「女性の多様なチャレンジに寄り添う学びと社会参画支援事業」について、委託事業者より最終報告が行われた。委員からの主な質問や意見は以下のとおり。
 
○京都女子大学
(委員)
・女性の生き方、働き方が多様化している中で、参加者の属性を絞って必要なプログラムを構築したことで成果が出ている。
・令和5年度からは事業を有料化して自走するとのことだが、参加者の受講料について教えてほしい。
・本プログラムは、企業自身にとっても経営課題の解決にもつながっているので、受講料を高く設定しても良いのではないか。来年度にシンポジウムを実施する際も、引き続き女性の登用が課題であれば、女性管理職のために投資する必要性についてしっかり働きかけてほしい。
・本事業は、大企業向けには、個々の企業単位の社内研修として有料化できる可能性もある。
大企業では、自己投資支援として社員1人につき年間数万円など、自己投資の費用負担を行う制度を設けているところもある。一方、中小企業では、個々の企業単位で研修を実施することは困難である。企業というより、自治体等で予算化して実施してもらうことが考えられる。
・コース修了時のアンケートでは、88.9%の受講生が「自信がついてきた」と回答しているが、具体的にどのようなプログラムが自信につながったと考えているか。 
(回答)
・受講料については、他大学で年間24万円のプログラムがあり、本学は半期のプログラムであるため12万円で設定することを考えている。民間企業や教育ベンダーも参考にしたが、料金水準が高かった。
・プログラムについては、ランチタイムを利用してタイプの異なる女性リーダー・管理職をゲストスピーカーに迎えたロールモデルセミナー(全6回、6人が登壇)が、受講者の背中を押すプログラムとなった。コース修了時のアンケートでは、「自分のキャリアを考えるのに役立ったか」という項目において、キャリアへの有益性は100%だった。また、プログラムの最初の方にあるキャリアデザインの科目でも、学長がジェンダーについての話をしたところ、自身のアンコンシャス・バイアスに気づいたなどの声が多く、反響があった。
・また、「男性に混ざって管理職としてのスキルを学ぶことに抵抗があったが、女性だけで集まって学ぶことにより心理的安全性が確保されて安心して受講できた。受講する勇気が持てた。」という声もあり、環境とプログラムの2点が受講生の自信につながったと考える。
 
(委員)
・受講生は、管理職・管理職候補として、高学歴で同質的な方であるにも関わらず、難易度の評価については「やや難しかった」が37%、「やや簡単だった」が11.1%と、回答が分かれている。「やや難しかった」の評価は必ずしも悪いものではなく、少し高めの要求をすることで成長を促すということもあるが、受講生が難しさを感じたところについては、どう考えるか。
(回答)
・ほとんどの授業にグループワークを取り入れており、様々な企業から受講生が集まるため、共通言語が少ない状態でチームワークを構築していく中に難しい部分があったようだ。グループワークについては、相互作用があり、様々な視点が得られたと満足度は非常に高かった。
 
(委員)
・受講生の追跡調査について、令和4年度では「大学のリカレントで学んでいる」と回答した人が3割近くいる。高い割合だと思うが、過去の調査はどのくらいの割合だったのか。
(回答)
・例年は1割くらいで、令和4年度は高い割合となっている。このほか、通信講座や民間の研修等で学習している人は毎年1割くらいいる。大学のリカレントで学ぶ人からは、「リカレントで学ぶと、学び癖がつく。さらに発展した学びを自分のキャリアと結び付けていきたい。」という話を聞いた。

 (委員)
・リストラ等の影響により、しばらく社員研修を行えていなかった企業もあるようだが、リカレント教育を進めるに当たって、社員研修を行う一番の責任者は企業という姿勢は崩さない方が良い。特に女性社員研修は、社員が自分自身で行えば良いという風潮にならないように注意する必要がある。
 
○福岡女子大学
(委員)
・インターンシップ企業と受講生のミスマッチの理由として、受講者側と企業側とでそれぞれ求めるものが変わってきているということだが、来年度はインターンシップによる実践を行わず、講座等の座学による教育に特化して事業を行うのは、当初目指していたものが達成できるのか。
(回答)
・ミスマッチについては、例えば建設業の企業は、肉体労働の分野で女性を採用して今後をリードしてほしいと思っていたが、受講生は事務を希望していたなどがあった。また、企業と受講生をマッチングさせるためのキャリアカウンセラー費用も負担となっていた。
・受講生にインタビューをしたところ、講座内容への好意的な感想がとても多かった一方、インターンシップにつながらなかったので、大学で見直しを行い、再就職の準備としての座学に集中し、仲間づくり、自分自身の振り返り、模擬面接、企業リサーチ方法など体系的な講座を作ることにより、最終的に再就職につなげていくことを考えている。

(委員)
・受講生には、自分で情報を得るのが難しい人、ジェンダーの問題に一層とらわれている人が多い印象がある。その中で、受講生から「仕事も生活の一部」という感想が出てきたのは大事なことである。受講生の子供などは、親が子にとって一番身近なロールモデルになるので、親の生き方、考え方に影響される部分があると思うため、このような女性たちを対象とした学びは大切である。
 
(委員)
・今後どのようにして自走していくのか。 
(回答)
・委託を受ける前は、インターンシップでもらえる給与くらいの額を受講料に設定していた。今後インターンシップは行わないが、保育室の用意や講師への謝金などの費用がかかるので、受講料の設定を予定している。リカレントで学び、力を付けた女性を送り出すということで企業からの出資を求めているが、即戦力がほしいという企業の考えと噛み合わず、難航している。
・男女共同参画センターが無料で2講座2・3コマくらいを行っているので、大学では体系的なプログラムとして12コマあることの価値を伝える必要がある。
 (委員)
・人材会社等に声をかけてみてはどうか。

(委員)
・他講座より講義数が多いなど、受講生は時間をかけて参加することになるので、その時間に見合う就職、転職を示すことが必要。成果を見ると、無期パートなどを含めれば就職率は高いようだが、一人でも安心して暮らしていける水準の処遇での雇用なのかは気になる。
(回答)
・過去の受講生が女性センターの講座で登壇し、自らの経験を話したことがあり、これを聞いた女性センターの参加者が感銘を受けて本学のプログラムに参加した事例もあった。入口・出口とも女性センターと連携を取っていくことで受講生を獲得できると思う。また、過去の受講生では、正社員での雇用につながった事例もあるため、その実績も伝えたい。

(委員)
・インターンを無くして上手くいくようにも思う一方で、インターンシップを行ってドラフト会議をするというのがこの事業の良いところだったので、インターンシップ、ドラフト会議の再開について可能性を探ってほしい。
 
〇山梨大学
(委員)
・インターンシップで受講生、受け入れ企業ともにWin-Winの関係はできてきているので、個々の企業を超えて、山梨県全体を盛り上げるなど、次のステップに進んでいたら教えてほしい。
(回答)
・企業への取組としては、企業懇談会を行っている。また、インターンシップは現在働いている受講生だけでなく、キャリアを中断した女性を対象とした講座の受講生も行っている。人手不足の問題がある中、インターンシップを受け入れ、一旦キャリアを中断した女性たちの能力に気付いたという企業も出てきた。懇談会では女性社員の活躍や研修の事例紹介、企業同士のネットワークづくりを行っている。今後、女性の能力を活かすということについて企業が自ら考えるようになると、より一層、山梨県全体を盛り上げていけると考える。
(委員)
・女性の県外流出は全国各地で起こっている大きな問題である。クローズアップして企業に伝えていかないとあまり意識してもらえないと思う。
 
(委員)
・インターンシップ生の目標「今後に向けて」というのは自分自身のことか。自分自身のことはもとより、もう少し大きな視野で考える場にしていただけると良い。
(回答)
・「今後に向けて」は、個人、企業のどちらも含んでいる。プログラムの最初の方に、自分自身のことだけでなく、受講を通して企業のこれからについても考えてほしいという話をしている。受講生の感想では、社内に広めたいというものもあった。

(委員)
・このプログラムは、個々の企業単位の女性の育成というより、地域づくりを目標にしているところに特色がある。受講生・プログラム送り出し企業・インターンシップ受入れ企業の三者がお互いに利益があり、未来の山梨をつくるリーダーをネットワーク化することなどを目的としており、その土台が出来始めていること、中小企業が中核となって参加していることが素晴らしい。正社員としてキャリアアップしていく女性たちと、キャリアを中断した女性たちが同じ地域の中で一緒に育っていく環境を作ってほしい。
 
〇国立女性教育会館
(委員)
・女性が管理職にならない要因のひとつに、仕事だけでなく家庭生活の役割も担っていることがある。この課題を解決しながら管理職に就いている教員の事例も紹介されているのか。
(回答)
・キャリア形成のプロセスの中で、小さい子供がいるときにどのように向き合ったかについて述べられている事例もある。しかし、教員の働き方の現状として、小さい子供がいる中で管理職になるのは難しい状況である。今回の研修では、個人としてどう乗り越えるかよりも、働きやすい職場を作る必要性を人事関係者や仕組みを作る層に伝えることを目的としている。そのためロールモデルには、管理職としてジェンダー平等を作っていく意識の高い方を選び、どのような支援があれば良かったか、自分がどんな立場でミドルリーダーを育てていくかなどについても答えてもらっている。
 
(委員)
・参加者の中にアンコンシャス・バイアスを持っていたと思われる参加者はいたのか。また、研修はアンコンシャス・バイアス解消につながったのか。
・また、教育長、教育委員、人事担当者などの参加が伸び悩んだことについて、アンコンシャス・バイアスを持つ人には広報だけでは参加に結びつかないと思うが、参加を必須にする方法などあるか。
(回答)
・アンコンシャス・バイアスへの気づき、解消については、アンケートの記述の中に、この研修を受けて、改めてアンコンシャス・バイアスが学校の中にあることと、自分がアンコンシャス・バイアスを持っていたことに気づいたという記述が複数見られた。
・広報については、メールを送るときに、ターゲットを明確にした文章を考え、確実に届くように工夫をするなど考えている。文科省、教育委員会が通常行っている教育プログラムやネットワーク活動などと連携していくことが大切である。
 
(委員)
・全国フォーラムで取り上げた学校、教育委員会等の取組で、現段階で拡がっているものはあるか。
(回答)
・アンケート回答を見ると、ICTを使った働き方改革について興味を持っている方が多く、自分の自治体でも参考にできるという記述もあった。 
 
〇その他
事務局より、令和5年度予算案について報告した。委員からの主な意見は以下のとおり。
・女性や子供を抱えた女性の貧困の問題が深刻なため、現在職を持っていない女性への支援も必要である。一方で、こうした層の女性たちの就業が差し迫った問題になっており、腰を落ち着けて学ぶというアプローチはしにくいという課題もある。次年度以降の事業で対象としないということであれば、省庁間連携も含めて、他の手法による支援を検討していただきたい。
・本年度の実証事業においては、3大学ともに、内省支援が非常に大きな役割を果たしていた。最近、効率的な知識提供が強調されるリスキリング事業等も多いが、実質的な効果を上げるには、受講者へのカウンセリングや振り返り、メンタリングといった内省支援の取組が大きな役割を持つ。今後の事業を実施するうえでも、こうした点に配慮している事業を採択できると良い。
 
以上

お問合せ先

総合教育政策局男女共同参画学習・安全課

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メールアドレス:danjo@mext.go.jp

(総合教育政策局男女共同参画学習・安全課)