平成22年度要求額:2,100百万円
(平成21年度予算額: ‐ 百万円)
事業開始年度:平成22年度
事業達成年度:平成26年度
研究振興局研究振興戦略官付(渡辺 正実)
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感染症が人類に対する脅威となっていることに鑑み、「新興・再興感染症研究拠点形成プログラム」(平成17年度~平成21年度、文部科学省)(以下「第1.期プログラム」)において整備した新興・再興感染症研究拠点の更なる充実・強化を図ることにより、永続的な研究活動を進める基盤を確立する。また、国内外の他の研究機関との連携を深めつつ、基礎研究、臨床研究及び応用研究を継続的に進め、我が国並びに相手国における知見、技術の集積、人材育成等を図ることにより、国際貢献を果たしつつ、日本国民ひいては人類の健康と安全を守ることに寄与する。
第1期プログラムは、SARS(平成15年)や高病原性鳥インフルエンザ(平成16年)の流行が契機となって発足したが、1か国で発生した新興・再興感染症が爆発的に世界に広がっていく可能性は依然として変わりはなく、本年の新型インフルエンザ(A/H1N1)の流行を見ても、本取組の緊急性・重要性は論を待たないところである。現在、日本に存在しない感染症であっても、地球環境の変化、人・物の移動等の拡大に伴う日本国内への侵入の可能性は避けられないこと、また、日本人の海外活動、とくにアジア・アフリカ等、経済発展の顕著な途上国での日本人の経済活動や国際支援活動が広がっていることなどから、日本国民にとって決して無関係ではなく、感染症の脅威は、益々大きなものとなっている。
第1期プログラムにおいて、国内の大学(北海道大学、東北大学、東京大学、東京医科歯科大学、大阪大学、神戸大学、岡山大学、長崎大学)や国立国際医療センター、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究所の連携のもと、8カ国(タイ、ベトナム、中国、インドネシア、フィリピン、インド、ザンビア、ガーナ)に計12カ所の研究拠点を開設し運営を軌道に乗せるまで成功した。各研究機関等の努力と協力により、幅広い領域の専門家が一体となって現地研究者・専門家と共に研究を進めるという、かつてない研究体制が構築された。
今後は、基礎研究のみにとどまらず、我が国の感染症対策の臨床研究者や疫学研究者とも連携し、真に我が国の感染症対策に資するネットワーク形成に進む段階に来ており、研究拠点の永続化が課題となる。このためにも、引き続き研究体制を維持し、人材養成と社会への情報発信を行うとともに、拠点間のより一層の連携化はもとより厚生労働省関係機関や海外機関との連携を含めた感染症研究ネットワーク機能や協力関係の強化を行い、予防・診断薬や新薬の開発など具体的な新興・再興感染症対策の強化の実現に資することが期待されている。
本プログラムでは、上記の目的を達成するため、次のような取組を行う。
○第1期プログラムにおいて設置した新興・再興感染症研究拠点を、永続的な研究基盤として確立するために、感染症研究ネットワーク機能や協力関係を強化するため、「感染症研究ネットワーク支援センター」(以下「支援センター」)の役割を「支援」から「推進」へと機能の拡充を行い、実行力のある体制の構築を進める。
○特に、インフルエンザに関する研究については、複数の拠点を活用したコンソーシアム型共同研究を進める。
○このような活動を通して、各研究拠点協働で共通のカリキュラムの構築等、教育システムの強化を図り、マニュアルやテキストとして、知見を蓄積していくこと等により、我が国並びに相手国の人材育成を図る。
【概念図】
第1期プログラムにおいて設置した新興・再興感染症研究拠点を充実・強化することにより、わが国の感染症対策を支える海外研究拠点として永続的に活動を進める基盤を確立する。また、国立感染症研究所、パスツール研究所、WHO等の国内外の他機関との連携を深めつつ、基礎研究、臨床研究、応用研究を継続的に進め、我が国及び相手国における知見、技術の集積、人材育成等を図ることにより、国際貢献を果たしつつ、国民の健康と安全を守ることに寄与する。
第1期プログラムについては、「研究拠点の整備が順調に行われ、拠点を利用した研究についても順調に進められている」というA評価であった(達成目標10‐1‐3)。さらに、「22年度予算要求への考え方」として、「平成21年度が事業最終年度のため、事後評価及び今後のあり方について、それぞれ有識者委員会で検討」する旨が記載されているところ、有識者委員会では、「引き続き各海外研究拠点を活用し、新興・再興感染症の基礎的知見の集積につとめ、国民の暮らしの安心・安全の確保に向けて、さらなる研究費の確保を含めて、感染症研究を強力に推進していくこと」が期待されている。
○第3期科学技術基本計画に基づく分野別推進戦略(ライフサイエンス分野)において、戦略重点科学技術として「新興・再興感染症克服科学技術」が選定されており、感染症対策のような人類共通の課題への対策にも貢献することの重要性が示されている。
○総合科学技術会議においてとりまとめられた「科学技術外交の強化に向けて」(平成20年5月19日)において、第1期プログラムは、科学技術外交を推進するために取り組むべき施策の一つとして取り上げられており、ODA等のわが国の支援で整備された各国・地域の拠点等を活用・設備の充実を図り、開発途上国のニーズに応じた共同研究や人材育成を実施することとされている。
○平成20年5月に横浜で開催された第4回アフリカ開発会議(TICAD4)において宣言された「横浜行動計画」の中で、第1期プログラムは、アフリカ開発を進める上で重要な役割を担うプロジェクトとして位置づけられている。
本事業は、これら方針に沿ったものであり、国として積極的に推進することが必要である。
第1期プログラムでは、8か国12か所に研究拠点を開設し運営を軌道に乗せるまで成功した。しかし、これら拠点が海外拠点ネットワークとして我が国の感染症対策に真に資するためには、
といった課題を解決していく必要がある。
これら課題は個別の大学の自主運営で解決できるものではなく、国による政策誘導が不可欠である。
さらに、各拠点における基礎研究は、疫学的な調査研究が含まれており、ある程度の規模で継続的に行われることが重要である。また、感染研等からの国内ニーズを踏まえて、政策的に研究対象を設定する必要がある。
このため、本事業の中で、政策的に資源配分を決定し、研究を継続させることが不可欠である。
本事業は第1.期プログラムを受けて、第2.期プログラムとして展開される事業である。
本事業とSATREPS事業との連携を図る観点から、本事業において実施される基礎研究のうち、相手国ニーズに基づき、発展的な展開が見込まれるものについては積極的にSATREPS事業に応募し、当該国の研究人材の育成を含む研究ポテンシャルの向上や研究成果の適用による保健衛生の向上を目指すなどの社会実装を目指すこととする予定。また、感染症研究推進センターにおいては、本事業のみならず、SATREPS事業を含めた我が国の感染症研究に関する情報を広く集約し、感染症対策や更なる感染症研究の進展へとフィードバックしていく予定。
また、このような体制で本事業を推進していくことにより、国立感染症研究所や厚生労働省で取り組まれている感染症対策との密接な連携を図っていく予定。
○科学技術基本計画(第3期):第2章 P.14
○分野別推進戦略(2006年3月28日閣議決定):1. ライフサイエンス分野 P.15‐16、別紙1.‐2
○科学技術外交の強化に向けて(2008年5月19日総合科学技術会議):第1章 科学技術外交に関する基本認識 P.5、第3章 科学技術外交の具体的かつ戦略的な推進 P.8、第4章 科学技術外交を推進するために取り組むべき施策 P.11
○TICAD4.成果文書「横浜行動計画」(2008年5月30日アフリカ開発会議発出):別表 3.保健
○新型インフルエンザ対策行動計画(平成21年2月改訂鳥インフルエンザ等に関する関係省庁対策会議):各論
○骨太09:第1章 危機克服の道筋 P.2、第2章 成長力の強化 P.6、11、第3章 安心社会の実現 P.15
○総理指示(2009年9月18日)6.
(参考)民主党マニフェスト2009 P.19
第1期プログラムにおいて、8カ国に計12カ所の研究拠点を開設し、幅広い領域の専門家が一体となって現地研究者・専門家と共に研究を進める研究体制を構築した。引き続きこの研究体制を維持し、人材養成と社会への情報発信を行うとともに、拠点間のより一層の連携化はもとより厚生労働省関係機関や海外機関との連携を含めた感染症研究ネットワーク機能や協力関係の強化を行うことで、予防・診断薬や新薬の開発など具体的な新興・再興感染症対策の強化に資することが見込まれる。
永続的な感染症研究活動を進める基盤を確立し、我が国及び相手国における知見、技術の集積、人材育成等を図ることにより、国民の健康と安全を守ることに寄与し、上位目標である「国民への成果還元を抜本的に強化する」ことに必要な効果が得られると期待される。
(内訳)
○感染症研究ネットワーク機能や協力関係の強化を行う上で、支援センターの役割を「支援」から「推進」へと機能の拡充を行い、我が国の感染症研究に関する情報を広く集約し、各拠点に対してフィードバックしていくことによって、拠点横断型共同研究や緊急時の対応等の体制構築、現地研究機関等との共同研究等を効率的に進めることができる。
○さらに、推進センターにおいて集約した我が国の感染症研究に関する情報を国立感染症研究所等へ提供していくことで、感染症対策との密接かつ効率的な連携を図ることができる。
○引き続き、ODA等我が国の支援で整備された各国・地域の拠点等を、新興・再興感染症研究拠点として活用しつつ、日本国内では入手できない研究に必要な検体(ウイルス等)や疫学的な情報の取得、動物への先回り調査、診断技術や治療法開発のための現地の患者をターゲットとした臨床研究等を行う上で効率的である。
第1期プログラムで設置した8か国12か所の海外研究拠点を、海外拠点ネットワークとして我が国の感染症対策に真に資するためには、
といった課題を解決していく必要がある。これらの課題は大学や民間の自主運営で解決できるものではなく、国による政策誘導と適切な支援が必要不可欠である。
さらに、各拠点における基礎研究は、疫学的な調査研究が含まれており、ある程度の規模で継続的に行われることが重要である。また、感染研等からの国内ニーズを踏まえて、政策的に研究対象を設定する必要がある。
このため、本事業の中で、政策的に資源配分を決定し、研究を継続させることが不可欠であり、代替手段は存在しない。
本事業を行う主体は、第1期プログラム開始時に公募され、専門家による審査を経て決定されたものであり、公平性は担保されている。
第1期プログラムの開始は、SARSや鳥インフルエンザの流行が契機となったが、1か国で発生した新興・再興感染症が世界に広がっていく可能性は、依然として変わりはなく、本年の新型インフルエンザ(A/H1N1)の流行を見ても、本取組の重要性は論を待たないところである。現在、日本に存在しない感染症であっても、地球環境の変化、人・物の移動等の拡大に伴う日本国内への侵入の可能性は避けられないこと、また日本人の海外活動、とくにアジア・アフリカ等、経済発展の顕著な途上国での日本人の経済活動や国際支援活動が広がっていること等から、日本国民にとって決して無関係ではなく、感染症の脅威は、益々大きなものとなっていることから、本事業は積極的に推進すべきである。
以上から、本事業は来年度以降実施すべきであると判断する。平成22年度概算要求に反映予定。
特になし
国の直轄事業として、新興・再興感染症の発生国等に研究拠点を構築し、我が国の研究者による研究活動を継続的に推進するに当たっては、これらの海外拠点の活動が我が国の感染症対策においてどのような役割を担うべきかを明確にする必要がある。
特になし
特になし
本事業の推進に当たっては、感染症研究推進センター(仮称)において国内外の感染症研究に関する情報を広く集約し、感染症対策を担当する厚生労働省及び関連機関へ提供していくなど、緊密な連携体制を構築していく予定。
大臣官房政策課評価室
-- 登録:平成22年02月 --