平成22年度要求額:270百万円
(平成21年度予算額:173百万円)
事業開始年度:平成21年度
事業達成年度:平成23年度
初等中等教育局教科書課(森 晃憲)
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教育の機会均等の趣旨に則り、障害等の有無にかかわらず児童及び生徒が十分な教育を受けることができる学校教育を推進する。
具体的には、多くの児童生徒のニーズに対応した標準規格に基づく拡大教科書等を充実するとともに、ボランティア団体等に提供している教科書デジタルデータの提供仕様を充実することによって、教科用特定図書等を必要とする児童生徒に速やかに、かつ、確実に給与されるよう、教科用特定図書等の普及の更なる促進を図る。
弱視の児童生徒の多くは、検定教科書の活用が困難であることから、検定教科書の文字や図形等を拡大等により複製した拡大教科書等を用いての指導が行われており、これまでも小中学校及び特別支援学校に在籍する弱視の児童生徒に無償給与してきたところであり、また、その普及を促進するため、文部科学大臣の書簡により教科書発行者に対して教科書デジタルデータの提供及び拡大教科書の発行を要請してきたところである。
しかしながら、教科書発行者や拡大教材製作会社から発行されるものは依然として少なく、多くがボランティア団体によって製作されており、また、教科書発行者から提供されるデジタルデータの種類・内容は十分ではない状況にある。
以上のような背景から平成20年6月に「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律(平成20年法律第81号。以下「法」という)」が成立し、同年9月に施行された。同法は、教育の機会均等の趣旨にのっとり、障害のある児童生徒のための「教科用特定図書等」の普及の促進等を図り、児童生徒が障害その他の特性の有無にかかわらず十分な教育が受けられる学校教育の推進に資することを目的としている。同法において具体的に国が行うこととして(1)教科書デジタルデータの提供等に係る援助(2)標準規格の策定・公表とそれに基づく標準教科用特定図書等の発行に関する援助(3)小中学校の通常学級における教科用特定図書等の無償給与(4)障害その他の特性の有無にかかわらず使用できる、いわゆるユニバーサルデザイン教科書の普及のための必要な措置等が規定されている。
また、同法の制定と並行して、同年4月に、視覚障害教育の専門家や教科書発行者、ボランティア団体等の関係者により構成される拡大教科書普及推進会議を立ち上げ、多くの弱視児童生徒のニーズをカバーできる拡大教科書の標準規格の策定や教科書デジタルデータの円滑な提供方法、高等学校段階における弱視生徒への教育方法・教材のあり方等について検討を行い、同年12月には、小中学校段階を対象とした具体的方策について同会議の「第一次報告」が公表され、更に平成21年3月に、高等学校段階における拡大教科書の普及促進について「第二次報告」が公表された。
〈参考:予算措置による平成20年度の拡大教科書の給与実績〉
給与人数 | 給与冊数 | 実績額 |
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638人 | 約13,000冊 | 約8,800万円 |
(注)通常学級に在籍する弱視児童生徒数:1,739人(平成17年文部科学省調査)
教科書編集実務担当者等を対象に、標準規格の趣旨・留意点等の拡大教科書作成に係る研修会を開催し、支援を行う。
市販されている拡大教科書等の見本本を、全国の教科書センターや視覚障害特別支援学校に展示するとともに、新たに拡大教科書、点字教科書等に関する発行情報を集めたサイトを開設するなど、引き続き学校関係者等への周知を図る。
標準規格に基づく高等学校の拡大教科書の製作に関し、教科書発行者へ支援を行う。
高等学校の通常学級における弱視生徒への指導充実を図るため、拡大教科書等に関する指導の手引きを作成する。
新学習指導要領に対応した教科用特定図書等の普及推進方策について引き続き検討する。
教科書デジタルデータの提供先をボランティア団体等だけでなく、高等学校を対象とすることに伴う管理運営体制の強化を図る。
教科書発行者からデータ管理機関に提供された教科書デジタルデータについて、点字教科書及び音声読み上げ教材などを製作するボランティア団体等にとってより使い勝手のよいデータへの変換作業を行う。
教科書そのもののデジタルデータを教科書発行者が保有していることを踏まえ、保有するデジタルデータから、拡大教科書や点字教科書に限らず、さらには音声読み上げソフトや電子教科書などのより多様な形態の媒体に展開していく「ワンソースマルチユース」の実現に向けた調査研究を行う。
データ管理機関が提供する教科書デジタルデータをもとに、ボランティア団体等が効率的に拡大教科書等の編集を行うことができるよう、データ活用の手引書を増補するとともに、引き続き全国で講習会を開催する。
教科書発行者による標準規格に基づく拡大教科書等の発行状況等
提供データの他用途への転用を防止するためのシステムの整備状況
教科書発行者による標準規格に基づく拡大教科書等の発行や教科書デジタルデータの提供が促進されることにより、拡大教科書等を必要とする児童生徒に速やかに、かつ、確実に給与されること。
本事業の効果は、事業後の拡大教科書等の発行状況等について検証することにより把握する。
特になし
平成20年6月に制定された、「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律(平成20年法律第81号。以下「法」という。)」においては、通常学校に在籍する障害のある児童生徒に対する拡大教科書等の無償給与について規定する(法第9条及び第10条)とともに、国における施策の推進について示されたところであり、また同法が採決された際には、
(1)拡大教科書等の供給・普及の促進という国の責任を果たすためには、教科書発行者による拡大教科書等の発行が重要であることにかんがみ、その発行が一層促進されるよう、必要な措置を講ずること。
(2)教科書発行者からの教科書デジタルデータの提供については、その提供が円滑に行われるとともに、提供されたデジタルデータが適切に管理・活用されるよう必要な支援措置を講ずること。
その際、拡大教科書等を作成するボランティアにとって使い勝手のよいデジタルデータが提供されるよう、適切な処置を講ずること。
等といった内容の附帯決議を受けている。
また、平成20年4月、文部科学省に設置した拡大教科書普及推進会議(視覚障害教育の専門家や教科書発行者、ボランティア団体等の関係者により構成される)の「第一次報告(平成20年12月)」、「第二次報告(平成21年3月)」において、法の趣旨を適切に踏まえた拡大教科書等の普及充実を図るための取組が文部科学省において行われることが必要であると報告されている。
国としては、これらを受け、現在の諸問題を早急に検討・解決し、視覚に障害のある児童生徒に拡大教科書を普及充実させることで、障害のある児童生徒に対する教育における機会均等の保障を担保していく必要がある。
法においては、国は教科用特定図書等の普及を促進するために、必要な措置を講ずることとされており、具体的には教科用特定図書等の発行を促進するために、教科書デジタルデータの提供に係る助言・援助、標準的な規格の策定・公表等を行うこととされている。
一方、教科書発行者は、発行する検定教科書等の教科書デジタルデータを文部科学大臣又は文部科学大臣が指定する者に提供することに加え、国が策定・公表した標準規格に適合した教科用特定図書等の発行に努めることとされている。
以上のように、国と教科書発行者がそれぞれの役割に応じて分担・協力しながら、それぞれの責務を果たすことにより法の目標である教科用特定図書等の普及の促進が果たされるものである。
拡大教科書等については、平成16年度から、通常学級に在籍する視覚に障害のある児童生徒に対して、予算措置によって無償給与を行っている。
決議事項(抜粋)
一 拡大教科書等の供給・普及の促進という国の責任を果たすためには、教科書発行者による拡大教科書等の発行が重要であることにかんがみ、その発行が一層促進されるよう、必要な措置を講ずること。
二 教科書発行者からの教科書デジタルデータの提供については、その提供が円滑に行われるとともに、提供されたデジタルデータが適切に管理・活用されるよう必要な支援措置を講ずること。その際、拡大教科書等を作成するボランティアにとって使い勝手のよいデジタルデータが提供されるよう、適切な処置を講ずること。
1.)拡大教科書普及推進会議第一次報告
第3章 教科書デジタルデータの提供について(P22~28)
第4章 今後の普及啓発方策等について(P29~32)
2.)拡大教科書普及推進会議第二次報告
第3章 教科書発行者等による拡大教科書の発行量の確保(P9~12)
第4章 教科書デジタルデータの提供範囲の学校への拡大(P13~19)
第6章 今後の普及啓発方策等(P22~25)
本事業により得られる教科書デジタルデータの提供拡大や標準規格に基づく拡大教科書等の発行の促進等といった成果を通じて、必要とする児童生徒に拡大教科書等を速やかに、確実に給与することが可能となる。
本事業で得られた成果により、障害のある児童生徒の障害の状態に応じた体制整備を行い、一人一人のニーズに応じた特別支援教育を推進することで、確かな学力を身につけることができる。
本事業の予算規模は270百万円である。
(内訳)
本事業の実施により、教科書発行者による標準規格に基づく拡大教科書等の発行数が増えるとともに、教科書発行者からボランティア団体等への教科書デジタルデータの提供が充実することにより、ボランティア団体等による教科書デジタルデータを活用した拡大教科書等の発行数が増える。
そのため、拡大教科書等の発行数が増えることで、必要とする児童生徒に拡大教科書等を速やかに、確実に給与することが可能となる。
本事業の予算規模(270百万円)に対して、アウトプットとして、
1.教科書発行者による自社版標準拡大教科書の発行が促進されるとともに、2.拡大教科書等を作成するボランティア団体等の負担が大幅に軽減される。
といった成果を得られることを見込むと、本事業のインプットとアウトプットの関係は効果的と判断する。
本事業は、大部分について国の委託事業により行うが、地方自治体の事業として実施することとした場合は、当該自治体における調査研究のみであり、様々な障害の状態がある児童生徒の実態等を踏まえた成果の活用が困難であり、本事業における十分な効果が期待できない。
さらに、法の趣旨及び拡大教科書普及推進会議報告を踏まえると、国において教科用特定図書等の普及を促進するために、必要な措置を講じ、障害のある児童生徒に対する教育の機会均等を保障していく必要がある。
本事業は、法の趣旨に基づき拡大教科書等を必要とする児童及び生徒に確実に給与することを最終目的とするものであり、公平性の観点から問題はない。
法は平成21年度において使用される検定教科用図書等及び教科用特定図書等から適用されており、本事業は優先的に行う必要がある。
当該評価結果を踏まえ、平成22年度概算要求を行う。
特になし
特になし
特になし
特になし
大臣官房政策課評価室
-- 登録:平成22年02月 --