平成21年度要求額:6,632百万円
(平成20年度予算額:5,541百万円)
事業開始年度:平成20年度
事業達成年度:平成24年度
国宝・重要文化財(建造物)の保存のためには、適切な周期で修理を繰り返し実施する必要がある。時宜を得た修理を実施することによりその適切な保存と活用を図り、国民生活の文化的向上に寄与することを目的とする。
また、伝統的建造物群の保存修理は、我が国の歴史的景観保存の中核をなす事業であり、地区内には多くの国民が生活を営んでおり、地区を形成する木造建築の保存には定期的な修理が不可欠である。
文化財建造物の保存修理は明治30年の古社寺保存法の制定によって本格的に始まり、国庫から保存金が支出され、昭和4年の国宝保存法制定以降は補助金として支出され実施されてきた。文化財保護法では、国宝・重要文化財の保存修理は、所有者又は管理団体が行うものとされ、所有者等がその経費の負担に堪えない場合、国は保護法第35条に基づいて補助金を交付して保存の万全を図っている。
明治30年以来今日までに約2,200棟以上において根本修理が実施され、また多くの維持修理が実施され、国宝・重要文化財建造物の保存が図られている。
また、伝統的建造物群の保存修理は、昭和51年度から国庫補助事業を行っている。昭和50年に設けられた歴史的集落・町並みの保存制度である伝統的建造物群保存地区制度により、現在83地区が選定され年間200件余りの補助事業を実施し、歴史的風致向上のための修理修景により美しい国土の形成に貢献している。
平成15年度 | 平成16年度 | 平成17年度 | 平成18年度 | 平成19年度 | |
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予算額 | 4,073百万円 | 4,102百万円 | 3,861百万円 | 3,756百万円 | 3,956百万円 |
事業の実績(竣工) | 42件 | 69件 | 70件 | 38件 | 51件 |
平成15年度 | 平成16年度 | 平成17年度 | 平成18年度 | 平成19年度 | |
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予算額 | 638百万円 | 643百万円 | 640百万円 | 629百万円 | 655百万円 |
事業の実績 | 276棟 | 266棟 | 284棟 | 271棟 | 272棟 |
文化財建造物の修理は、建物を部材単位に解体し、補修後また組立直す解体修理等の根本修理と屋根葺替、部分修理、塗装などの維持修理に分類できる。建物の破損状況に応じて適切な修理を実施する。
また、伝統的建造物群の保存修理では、耐震性能向上のための補強と定期的に実施する必要がある伝統的建造物の修理、歴史的風致の維持・向上のための伝統的建造物以外の建造物の修景を進める。
平成21年度においては、保存修理(一般)及び伝統的建造物群保存修理とも適切な周期による修理ができるよう事業の促進を図る。補助金の額:補助対象経費の50パーセント
伝統的建造物群の適切な周期での保存修理
修理修景件数 毎年300件を目指す。
事業完了後に補助事業者から報告される実績報告書により把握する。
達成目標12‐2‐2「今後の課題及び政策への反映方針」において、「地方公共団体が実施する公有化事業へ補助等を行うことで、史跡等の適切な保存、管理、整備及び公開を推進する」と記述されており、本事業の拡充は不可欠である。
我が国には木造として世界最古の法隆寺金堂をはじめ、数多くの木造建造物が保存されている。これは建物が良質な材料を使用し、かつ優れた施工技術で建てられただけでなく、各時代のたゆまない保存管理のたまものである。
文化財建造物の保存は、適切な周期、適切な材料、適切な技術で修理を繰り返すことが必要であり、適切な周期で保存修理を実施しないと文化財としての価値を大きく損なうこととなる。
しかしながら、現状では適切な周期による保存修理ができない状況であり、我が国の貴重な文化財を次世代に確実に継承するためには、建造物保存修理予算の拡充が必要である。
文化財建造物の修理は多額の経費を要するため、所有者負担は極めて重い。所有者には檀家や信者等が少ない社寺や年金生活の民家所有者等も多く、修理についてこれ以上の所有者負担を求めることは難しい。
また、都道府県・市町村による所有者への修理経費支援(随伴補助)も、地方財政の縮小により困難となっている。さらに、本事業は、災害の復旧修理事業にも対応しているが、近年、地震・台風・大雨等の災害が多発していることから、国費負担の迅速な充実が必要不可欠である。
なお、「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第2次基本方針)」(平成19年2月9日閣議決定)において、文化財建造物等の有形の文化財について、「その種別や特性に応じて計画的に保存・修復を進める」ことを基本施策として定めており本事業の拡充が不可欠である。
国宝・重要文化財は、我が国の歴史、文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであり、国はこれを適切に保護し次世代へ継承していく必要がある。本事業は、国庫補助事業として行うもので、文化財保護法第35条において、「重要文化財の管理又は修理につき多額の経費を要し、重要文化財の所有者又は管理団体がその負担に堪えない場合その他特別の事情がある場合には、政府は、その経費の一部に充てさせるため、重要文化財の所有者又は管理団体に対し補助金を交付することができる。」としている。
また、同法第146条において、「国は、重要伝統的建造物群保存地区の保存のための当該地区内における建造物及び伝統的建造物群と一体をなす環境を保存するため特に必要と認められる物件の管理、修理、修景又は復旧について市町村が行う措置について、その経費の一部を補助することができる。」としている。
○建造物防災施設等(一般)(文化庁文化財部参事官(建造物担当))
重要文化財(建造物)については火災等の災害から守るために防災施設の設置事業を行っているが、新たに指定された建造物に消防法上、防災施設の設置義務が生じ、新規設置を進める必要がある。また、既存設備の老朽化に伴う更新は急務である。
重要文化財(建造物)の防災施設(自動火災報知設備、消火設備、避雷設備等)の新設・更新を行う。
(平成21年度要求額 798百万円、事業開始年度:昭和25年度、事業達成年度:平成25年度)
本事業と同様に文化財建造物を対象とした事業として、「建造物防災施設等(一般)」を国庫補助事業として実施しているが、両者は文化財建造物の修理事業と防災施設の設置工事と対象事業が異なるが、文化財建造物を適切に維持・管理することなどについては、互いに連携することで文化財の次世代への継承・発展に寄与する。
「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第2次基本方針)」(平成19年2月9日 閣議決定)
「第2 文化芸術の振興に関する基本的施策」
「2.文化財等の保存及び活用」(抜粋)
「・有形の文化財について,その種別や特性に応じて計画的に保存・修復を進める。また,地域の多様な文化財を包括的に保存するための施設等の整備,建造物の安全性の向上,防火・防犯・震災対策,伝統的建造物群保存地区をはじめ文化財集中地域等における総合的な防災対策の検討など,防災対策の充実を図る。その際,科学的な調査研究の成果を生かした取組を推進する。」
本事業は、目標が達成された後も絶えることなく継続して行うことが必要である。
しかし、当面の達成年度である平成24年度には対応の迅速化を図り、文化財建造物の保存修理は目標である毎年、根本修理13件、維持修理50件を達成することが見込まれる。
また、伝統的建造物群の保存修理は目標である毎年300件を達成することが見込まれる。
文化財は、我が国の歴史や文化の理解に欠くことのできない貴重な資産であり、適切な管理を図るため普段からの努力が求められている。適切な周期での保存修理は重要である。
本事業の実施により、計画的な保存修理が実施され、達成目標12‐2‐2にある文化財建造物の保存修理の促進、ひいては文化財を後世に引き継ぎ、国民の文化的向上に資するという成果に結びつくものと考えられる。
本事業の予算規模は6,632百万円である。
(内訳)
各都道府県から多くの保存修理の要望があるが、現状では要望に十分応えていない。適切な修理の周期は、根本修理が約150年、維持修理が約30年、また伝統的建造物群の保存修理は、大規模修理が約100年、維持修理が約30年、修景が約40年である。
重要文化財建造物2,338件、伝統的建造物群約9,300棟であるが、保存修理予算を拡充し、適切な周期による保存修理により、我が国の貴重な文化財の次世代への継承を図る。
本事業の予算規模(6,632百万円(建造物保存修理5,609百万円、伝統的建造物群保存修理1,023百万円))に対して、アウトプットとして、重要文化財及び伝統的建造物群の保存修理が促進され、インプットとアウトプットの関係は適切と判断する。
本事業は国の補助事業により行うが、地方自治体の事業として実施することとした場合には、文化財としての価値を損ねないよう慎重な設計監理、伝統的な技術・技能、植物性資材を必要とするなどの文化財の特殊性からして多大な経費のかかり、保存修理の促進が図れない。
本事業は、全都道府県からの要望を踏まえ、緊急性を考慮し交付先を決定しており、公平性は担保できていると判断する。
国宝・重要文化財建造物の価値を維持していくためには、適切な周期で保存修理をしていくことが必要である。危機的状況にある文化財を護るため、保存修理を緊急に推進することは優先すべき政策と考える。
21年度概算要求に反映する。
評価結果は妥当。
大臣官房政策課評価室
-- 登録:平成21年以前 --