88.安全・安心科学技術プロジェクト(拡充)【達成目標10-8-2】

平成21年度要求額:1,283百万円
  (平成20年度予算額:625百万円)
  事業開始年度:平成19年度
  事業達成年度:平成23年度

主管課(課長名)

  • 科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当)安全・安心科学技術企画室(西田亮三)

関係課(課長名)

事業の概要等

1.事業目的

  安全・安心に関する重要研究開発課題に関する研究開発を通じて、国家安全保障、国民生活の安心と安全確保に貢献するとともに、安全・安心に関する知・技術の共有化を進め、関連研究者等のネットワークの構築を図る。

2.事業に至る経緯・今までの実績

  第3期科学技術・基本計画においては、基本姿勢として「社会・国民に支持され、成果を還元する科学技術」を掲げるとともに、経済的価値のみならず安全・安心な社会の構築への貢献など社会的価値の創出のための研究開発の重要性を指摘している。これを踏まえ、文部科学省科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会安全・安心科学技術委員会において「安全・安心科学技術に関する研究開発の推進方策」について検討を行い、本事業を平成19年度から開始した。昨年度は、同委員会で「安全・安心科学技術の重要研究開発課題について」取りまとめ、これを踏まえた新たな課題の研究開発(地域の安全・安心の確保に係る研究開発)を平成20年度より開始した。

3.事業概要

  本事業は、大学、独立行政法人、民間等の国内の研究機関を対象として研究開発の提案を公募し、外部有識者で構成される「安全・安心科学技術プロジェクト審査委員会」の審査を経て研究課題を採択する。採択された研究課題は外部有識者で構成される「安全・安心科学技術プロジェクト推進委員会」の指導・助言のもと最長3年間、研究開発を推進する。
  平成21年度は、以下の研究開発等を実施する。

(1)重要研究開発課題の研究開発

1.テロ対策等に係る研究開発(拡充)

  これまで蓄積された基礎研究の成果を安全・安心な社会の構築に積極的に活用するため、大学・研究機関が現場と連携して、テロ対策等に係る研究開発を平成19年度より実施。平成21年度においても、引き続き、危険物探知技術等について、新規公募を実施。

2.地域の安全・安心の確保に係る研究開発(拡充)

  地域社会において安全・安心を確保するため、地域社会を具体的なユーザーとして、現場で技術開発を行う事業を、平成20年度より開始。平成21年度においても、医療、インフラ保護等の新たな課題に対応するための、新規公募を実施。

3.国家の安全・安心の基盤となる科学技術(新規)

  国家の安全・安心(ナショナルセキュリティ)の観点から重要な基盤的科学技術(情報セキュリティ技術、国際的な核不拡散確保技術)を推進。実施にあたっては、政府全体を俯瞰した検討の枠組みの構築に配慮。

(2)安全・安心に関わる知・技術の共有化

  テロ対策等に関する情報を整理・蓄積するとともに、ニーズを持つ官庁、現場とシーズを持つ研究者の情報ネットワークを構築する。
 安全・安心科学技術プロジェクト運営の仕組み

4.指標と目標

  本事業では、単なる基礎的な研究開発に止まることなく、社会への実装を推進するとともに、課題解決に向けた取組の政策への反映を通じて安全・安心な社会の実現に貢献することを目標とする。そのため、事業の実施に際してはユーザーとなる関係省庁や地方公共団体等との連携を図る。具体的には以下の通り成果の展開に努める。

(1)重要研究開発課題の研究開発

1.テロ対策等に係る研究開発

  危機管理の現場に研究開発成果が実装されることを目標とする。課題終了時に、技術レベルや実装の見通しについて検証する。各年度に研究開発の進捗状況を把握する。

2.地域の安全・安心の確保に係る研究開発

  地域の安全・安心に研究開発成果が貢献すること及び他の地域に波及することを目標とする。課題終了後に、技術の確立状況や波及の可能性について検証する。各年度に研究開発の進捗状況を把握する。

3.国家の安全・安心の基盤となる科学技術

  政府全体の目標の達成に貢献することを目標とする。課題終了時に、目標達成への寄与について検証する。

(2)安全・安心に関わる知・技術の共有化

  情報ネットワークが構築されること及びこのネットワークが我が国の危機管理に資することを目標とし、情報の収集・発信状況や情報ネットワークの構築状況等について検証する。

事業の事前評価結果

A.19年度実績評価結果との関係

  達成目標10‐8‐2において、1これまで順調に実施されてきた事業を継続して実施すること及び2「安全・安心科学技術プロジェクト」はニーズの高い分野について積極的に拡充する必要があるとしている。

B.必要性の観点

1.事業の必要性

  科学技術の貢献については、今後は、国民の安全・安心の確保など公共的価値を生み出す分野への貢献が期待されており、そのためには、技術シーズをユーザーニーズにつなげることを支援することが必要である。それぞれのテーマを実施する必要性については、以下のとおり。

(1)重要研究開発課題の研究開発

  1.テロ対策等に係る研究開発
  国際的なテロの脅威が高まるなかで、他国の技術をそのまま受け入れるのではなく、我が国におけるテロの脅威の程度や特徴を踏まえ、我が国としてテロ対策を着実に実施することが必要。そのためには、我が国の科学技術を活用し、自国の技術でテロ対策に関する製品を開発することが必要である。

  2.地域の安全・安心の確保に係る研究開発
  災害対策や医療問題等の地域社会の抱える課題を解決するためには、地域社会の制度・組織の改善だけではなく、例えば災害時の情報共有システムのような科学技術を活用したシステムを開発し利用することも有効である。こうした地域の公的機関をユーザーとする技術開発の分野は、地域単独の取組では難しく、また、非効率的であるため、科学技術や研究機関を積極的に活用していくための仕組みを国が支援することが必要である。

  3.国家の安全・安心の基盤となる科学技術
  サイバーテロ等から、国家の安全・安心を確保するためには、科学技術を活用した効果的・効率的対策が重要である。そのため、その基盤となる科学技術における国家的なニーズの解決に向けて産学官の技術力を活用し、結集していく仕組みを推進することが必要である。

(2)安全・安心に関わる知・技術の共有化

  テロ対策等に係る情報は公表されていないことが多く、有識者も限られており、知・技術の共有化がこれまで進んでこなかった。技術シーズをユーザーニーズにつなげるためには、研究開発と同時に知・技術の共有化を進めることが必要である。

2.行政・国の関与の必要性(官民、国と地方の役割分担等)

  国民の安全・安心を確保するための研究開発については、市場規模が大きくないために民間の研究開発に任せていては十分に取り組みが行われないものや、研究者の自由な発想に基づく研究では必ずしも実用に結びつく研究が行われないものが含まれるため、このような研究開発については国が主導して積極的に進めることが必要である。その際、国内のあらゆる研究開発機関の能力を活用するため、公募により広く研究課題の提案を募ることが重要である。また、社会での実装に向けて、ユーザーとして想定される関係省庁等のニーズを着実に拾い上げ、研究開発に反映していくとともに、課題の効果的な解決に向けて政策に反映していくことが必要なため、国が実施することが必要である。

3.関連施策との関係

1.主な関連施策

  ○社会技術研究開発事業(独立行政法人科学技術振興機構)
  本事業では現在、安全・安心に関わる研究開発プログラムとして「犯罪からの子どもの安全」および「ユビキタス社会のガバナンス」を設定し、現場で問題解決に取り組む人たちと研究者が協働して、防犯活動への科学的知見や手法の導入およびユビキタス社会の情報セキュリティ確保の手段を研究するとともに、社会に役立つ効果的で持続的な取り組みとなるよう、多くの関与者に開かれたネットワークをつくり、社会問題の解決に必要とされる制度的・社会的方法論を含む、横断的・俯瞰的アプローチによる研究開発プログラムを推進している。(事業開始年度:平成13年度)

2.関連施策との関係(役割分担・連携状況)

  ○社会科学技術研究開発事業(独立行政法人科学技術振興機構)
  科学技術振興機構の社会技術研究開発事業において、安全・安心に関わる社会問題については現在、「犯罪からの子どもの安全」および「ユビキタス社会のガバナンス」研究開発プログラムを設定し、自然科学のみならず人文・社会科学の知見も活用しつつ、研究者および関与者の間で意見交換を行い、知識の共有化を図りつつ研究開発を実施しているところ。安全・安心科学技術プロジェクトの「地域の安全・安心の確保に係る研究開発」においては、災害時における地域の安全・安心確保に係る科学技術や医療、インフラ保護等の安全・安心に係る技術開発を実施している。(事業開始年度:平成13年度)

4.関係する施政方針演説、審議会の答申等

・「第3期科学技術基本計画」(平成18年3月28日閣議決定)及び「分野別推進戦略」(平成18年3月28日総合科学技術会議)

  記載事項(抜粋)

  総合科学技術会議は、以下のような視点から、各分野内において基本計画期間中に重点投資する対象を「戦略重点科学技術」として選定し、最終的に分野別推進戦略に位置付ける。
  1.「近年急速に強まっている社会・国民のニーズ(安全・安心面への不安等)に対し、基本計画期間中において集中投資することにより、科学技術からの解決策を明確に示していく必要があるもの。」

・「経済財政改革の基本方針2008」(平成20年6月27日閣議決定)

  記載事項(抜粋)
  また、我が国の人材力、技術力、資金力、文化力などの強みをいかして、環境、安全・安心等に対する潜在的ニーズを突破口とする新たな需要を創出するとともに、国際競争力を強化することにより、成長をけん引する。

・「革新的技術戦略」(平成20年5月19日総合科学技術会議)

  記載事項(抜粋)
  これまでの蓄積の上に、食料制約を緩和できる技術、希少な資源を代替・回収する技術、環境負荷を減ずる製造プロセス技術、感染症対策技術等、国民の安全・安心を確保する技術を更に発展させ、成長の制約要因を除去し、我が国産業の国際競争力強化を図るとともに、これら技術を核に世界に貢献する。

・「長期戦略指針「イノベーション25」」(平成19年6月1日閣議決定)

  記載事項(抜粋)
  第5章1.(2)中長期的に取り組むべき課題 2)安全・安心な社会形成

・「安全に資する科学技術推進戦略」(平成18年6月14日総合科学技術会議安全に資する科学技術推進PT)

  記載事項(抜粋)
  安全に資する科学技術の推進にあたっては、持続的な研究開発により多様な科学技術の萌芽を生み出し、新規の科学技術の活用とともに、既存の科学技術を積極的に活用し、技術開発の期間短縮化・早期実用化を促進させる研究開発体制を構築する。また、府省連携・産学官連携による横断的な課題解決や公的部門における新技術の活用促進を行う。

・「安全・安心科学技術に関する研究開発の推進方策について」(平成18年7月科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会)

  記載事項(抜粋)

  3.安全・安心科学技術に関する文部科学省の果たすべき役割
  危機対応を担う関係府省等が、既存の取組に加えてより効果的・効率的な対処技術を獲得するためには、これらの関係府省等のニーズと大学や産官の研究機関で生み出される科学技術シーズを連携させ、実効的な研究開発を実施することが大きな鍵となる。この点で、文部科学省は、科学技術に関する基礎研究及び共通的な研究開発、関係行政機関に重複して設置することが多額の経費を要するため適当ではないと認められる施設及び設備を必要とするものに関すること、科学技術に関する研究開発で多数部門の協力を要する総合的なものに関することを任務としており、このような総合的・横断的な科学技術の研究開発の効果的・効率的な推進のために果たすべき役割は多大である。

  5.安全・安心に資する成果創出を目指した新たな研究開発の仕組みの構築について
  テロ、犯罪などに使われる科学技術を用いた手段の高度化・巧妙化、益々複雑化が進む社会における災害対応、安全性の一層の向上等の観点から、旧来用いられている技術に加え、多様な科学技術研究開発の知を最大限に活用し、科学に裏打ちされた研究開発を推進する。

・「安全・安心科学技術の重要研究開発課題について(検討のまとめ)」(平成19年7月25日科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会安全・安心科学技術委員会)

  記載事項(抜粋)

  • テロ・犯罪等で使用される危険物の検知・処理
  • 災害情報通信システムの開発

C.有効性の観点

1.目標の達成見込み

  テロ対策等に資する技術について、テラヘルツ波を活用した封筒内違法薬物・危険物検知装置の実証実験が税関で実施されるなど、成果の還元が進んでいる。また、平成19年度から開始した課題については、現場のニーズを踏まえた研究開発が順調に進捗しており、研究開発の成果の社会実装が期待される。

2.上位目標のために必要な効果が得られるか

  ニーズを踏まえつつ、現場と連携した技術開発を進めることにより、科学技術的知見の現場における活用が図られる。

D.効率性の観点

1.インプット

  本事業の予算規模は1,283百万円である。

  (内訳)

  • 研究開発委託費 1,275百万円
  • その他 8百万円

2.アウトプット

(1)重要研究開発課題の研究開発

  安全・安心に関する重要研究開発課題に関する研究開発を通じて、国家安全保障、国民生活の安全・安心確保へ貢献するとともに、安全・安心に資する科学技術推進のための拠点の整備、関連研究者等のネットワークの構築が促進される。

(2)安全・安心に関わる知・技術の共有化

  国際会議やセミナーの開催、ホームページの作成等を通じて、テロ対策等に関する情報が蓄積・発信される。

3.事業スキームの効率性

  本事業においては、外部の有識者・専門家で構成される審査委員会と推進委員会を設置し、その下で研究課題の審査及び研究開発が行われるため、効率的な事業の実施が可能である。また、我が国の研究開発力を最大限活用するため、大学、独立行政法人、民間等の国内の研究機関を対象として広く研究開発の提案を公募することで、優れた研究課題を選定・実施することが可能。

4.代替手段との比較

  「B.必要性の観点」の2.で述べた通り、国民の安全・安心を確保するための科学技術については、国が主導して積極的に進めることが必要な研究開発が存在するため、当該研究開発の推進については代替手段は無い。

E.公平性の観点

  本事業は、全ての研究開発機関を対象に公募し、公表の審査基準に基づき、外部有識者が審査を行うため、公平である。

F.優先性の観点

  国民の安全・安心を確保することは、国の責務である。第3期科学技術基本計画等の閣議決定などにおいても、安全・安心に関する科学技術を積極的に推進することが求められているため、優先的に実施する必要がある。

G.総括評価と反映方針

  国民の安全・安心を確保するための科学技術の推進の重要性を踏まえ、積極的に推進する。平成21年度においては、地域の安全・安心の確保に係る研究開発を拡充するとともに国家の安全・安心の基盤となる科学技術の推進に新たに取り組むため、平成21年度予算要求に反映する。

指摘事項と対応方針

指摘事項

1.事業に対する総合所見(官房にて記載)

  評価結果は妥当。ただし、国として真に行うべき研究開発を明確にし、それに対するより具体的かつ定量的な目標及び指標を設定して進める必要がある。

指摘に対する対応方針

  定量的な目標及び指標について今後検討していく。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成21年以前 --