平成21年度要求額:3,650百万円
(平成20年度予算額:2,000百万円)
事業開始年度:平成15年度
事業達成年度:平成24年度
中間評価実施年度:平成22年度
細胞移植・組織移植によってこれまでの医療を根本的に変革する可能性のある再生医療を実現化すべく、科学技術・学術審議会ライフサイエンス委員会幹細胞・再生医学戦略作業部会等における議論を踏まえ、ヒトiPS細胞を中心に、ヒトES細胞、ヒト体性幹細胞を用いた再生医療研究を総合的に推進するヒトiPS細胞等研究拠点を整備するとともに、幹細胞の操作技術に関する開発等を推進する。以って、パーキンソン病、脊髄損傷、心筋梗塞等の現在の医療では治療の難しい難病・生活習慣病に対する細胞治療に加え、様々な疾患の原因解明や創薬に応用できる可能性への道を開くことにより、患者のQOLと国民福祉の向上に寄与する。
平成15年度からの10ヵ年計画で実施されており、平成15年度から平成19年度の5年間を第1期とし、経済活性化のための研究開発プロジェクト(リーディングプロジェクト(我が国の経済を活性化する観点から、産学官の関係者が一体的に推進し、そのポテンシャルを最大限に活用して行う研究開発プロジェクト))として実施された。その結果、移植用適用外臍帯血を研究用に提供開始、ヒトES細胞からの有用細胞の産生、脊髄損傷等のモデル動物の細胞移植治療成功等を通じ、我が国の再生医療研究の躍進に貢献した。特筆すべき成果として、京都大学の山中伸弥教授によるiPS細胞樹立は国際的にも非常に高く評価されており、患者の自己組織を用いてヒトiPS細胞を確立する技術を確立したことの意義は非常に大きい。本課題の成果は、発生学、再生科学の進歩に大きく貢献するだけでなく、細胞治療に加え、様々な疾患の原因解明や創薬に応用できる可能性への道を開くものである。
平成20年度からは第2期として、キーテクノロジー研究開発の推進(社会のニーズを踏まえたライフサイエンス分野の研究開発)として、第1期の成果及び再生医療に関する研究の現状を踏まえ、国民への効率的な成果還元のため「ヒト幹細胞を用いた研究」を中心とした研究開発を通じた再生医療の実現を目指すこととしている。特に、ヒトiPS細胞の樹立成功を受け、同細胞を活用した再生医療の実現について、拠点整備事業を含めた研究を強力に進めることとしている。
平成21年度においては、平成20年度に整備したiPS細胞等研究拠点に対する支援をさらに強化・拡充し、iPS細胞の標準化を行うとともに、細胞誘導の技術講習会や培養トレーニングプログラムの実施、さらには疾患特異的なiPS細胞の樹立・提供を行う「iPS細胞技術プラットフォーム」の構築、及び知的財産の管理体制強化を目指す。
ヒト幹細胞を用いた研究を通じて、細胞移植・組織移植によってこれまでの医療を根本的に変革する可能性のある再生医療の実現化を目指し、「研究用幹細胞バンク整備領域」「幹細胞操作技術開発領域」「幹細胞治療開発領域」の3領域を設け事業を推進するとともに、ヒトiPS細胞を用いた研究を強力に実施するための拠点整備事業を実施する。
日本発の成果であるヒトiPS細胞研究を加速するため、再生医療研究を総合的に推進できるヒトiPS細胞等研究拠点を整備する。平成21年度は、細胞の標準化、細胞誘導の技術講習会、培養トレーニングプログラムの実施、疾患特異的iPS細胞の樹立・提供を行う「iPS細胞技術プラットフォーム」の構築、及び知的財産の管理体制強化のために、平成20年度に整備したiPS細胞等研究拠点(京都大学、慶應義塾大学、東京大学、理化学研究所)に対する支援をさらに強化・拡充する。
第1期で整備された臍帯血等の提供を引き続き実施するとともに、研究者のニーズに応じた新たな幹細胞を提供するバンクを整備する。
世界をリードし、イノベーションを創出するiPS細胞等の新規細胞創出や培養・増幅技術開発等を推進する。
iPS細胞等の幹細胞を用いた前臨床研究レベルでの難病、生活習慣病等に対する細胞移植・組織移植技術開発を推進する。
疾患特異的iPS細胞の樹立数
文部科学省が実施する他の関連施策と連携し、再生医療の実現化に向けた拠点整備等を実施し、パーキンソン病、脊髄損傷、心筋梗塞等の現在の医療では治療の難しい難病・生活習慣病に対する革新的医療技術を開発することにより、先端的医療の実現に資する知見の蓄積、技術の開発、またそれに必要な環境の整備を図る。
19年度の実績評価の結果を受け、「革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略(平成19年4月 文部科学省、厚生労働省、経済産業省策定)」、「iPS細胞研究等の加速に向けた総合戦略(平成19年12月 文部科学大臣決定)」、「iPS細胞研究等の加速に向けた総合戦略の具体化(平成20年3月 文部科学大臣決定)」等を踏まえて、研究用幹細胞バンク事業を推進して広く研究者のニーズにあわせた幹細胞を提供するとともに、iPS細胞関連技術等の世界をリードする細胞操作技術や、脊髄損傷をはじめとした治療法を臨床につなげるための研究開発等を着実に進めることとしている。
特に、20年度においては、ヒトiPS細胞等研究拠点を整備するとともに、上記3領域に分けた個別課題を支援し、再生医療の実現化に向けて取り組んでいるところであり、21年度においては、整備したヒトiPS細胞等研究拠点に対する支援をさらに強化・拡充する予定。
再生医療は、細胞移植や組織移植によって、これまでの医療を根本的に変革する可能性を有するものであり、難病・生活習慣病等に対して、新たな治療法を実現し、患者のQOLと国民福祉の向上をもたらす先端医療である。
昨年11月、日本の研究チームが、世界で初めて、生命の萌芽である胚を滅失することなく、成人の皮膚細胞から様々な細胞に分化する能力を持つヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)を作り出すことに成功したという論文が発表された。
iPS細胞については、平成18年8月に日本の同じ研究チームがマウスの細胞からの樹立に成功して以降、ヒトの細胞での樹立に向けて国際的な競争が行われていた。我が国の研究チームの成功は、世界に誇れる日本発の成果であり、再生医療の実現に向けた大きな第1歩であるため、今回の成果を受け、国際競争が進む中で、我が国の研究を加速させ、また再生医療技術の開発などを日本全体で戦略的に進めていくことが求められている。
係る状況の中で、文部科学省においては、科学技術・学術審議会ライフサイエンス委員会幹細胞・再生医学戦略作業部会等における議論を踏まえ、ヒトiPS細胞を中心に、ヒトES細胞、ヒト体性幹細胞を用いた再生医療研究を総合的に推進するヒトiPS細胞等研究拠点を整備するとともに、幹細胞の操作技術に関する開発等を推進し、再生医療を実現化していく必要がある。
本事業では、こうした再生医療の実現化を目指し、世界に誇る画期的な成果であるiPS細胞をさらに発展させるとともに、ヒト幹細胞を用いた前臨床研究を強力に推進し、研究成果の社会還元を図ることとしており、逸早い国民生活の向上を目指して、日本全体としての研究体制を構築して、戦略的に研究を推進する必要がある。
なお、本研究分野は、世界的にも競争の激しい分野であり、製薬・医療機器開発等による経済の活性化、難病患者等の医療費削減効果も見込まれることから、積極的に推進する必要がある。
世界でも比類なき高齢化社会を迎えている我が国において、国民が健康で快適な生活を送るためには、難病・生活習慣病等に対して、細胞移植や組織移植等のこれまでの医療を根本的に変革する可能性を有する再生医療を実現し、患者のQOLと国民福祉の向上に資するよう、国が責任を持って主導的に関与する必要がある。加えて、再生医療を推進し、研究成果の社会還元を加速することは、研究開発力の向上を通して、健康科学技術産業の国際競争力を高めることや、今後高齢化が進行する世界に対して、国際的に貢献することにも資するものである。
また、総合科学技術会議からも、iPS細胞研究の中核的な拠点の整備や、iPS細胞研究の推進に必要な研究資金の確保に向けて、国の支援の必要性が指摘されている(「iPS細胞研究の推進について(第一次とりまとめ)」(平成20年7月 総合科学技術会議iPS細胞研究WG)。
○理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(以下、理研CDB。文部科学省発生・再生科学総合研究事業運営費交付金)
生物における発生・再生の制御システムを解明し、発生生物学の新たな展開を目指した基礎研究を推進するとともに、細胞治療・組織再生などの医学的応用につながるテーマのモデル的研究等を推進し、得られる成果を広く応用分野に向けて発信する。
(事業開始年度:平成20年度)
○戦略的創造研究推進事業 CREST「人工多能性幹細胞(iPS細胞)作製・制御等の医療基盤技術」(独立行政法人科学技術振興機構)
近年著しい進歩の見られる、iPS細胞を基軸とした細胞リプログラミング技術の開発に基づき、当該技術の高度化・簡便化を始めとして、モデル細胞の構築による疾患発症機構の解明、新規治療戦略、疾患の早期発見などの革新的医療に資する基盤技術の構築を目指す研究を対象とするもの。
具体的には、ゲノミクス・染色体構造・エピジェネティクス解析を通じたリプログラムおよび細胞分化機構の研究、遺伝子導入の制御などの研究、リプログラムを誘導する化合物のハイスループットスクリーニングを行う研究、先天性疾患の患者細胞から作製された多能性幹細胞を用い疾患発症機構の解明を目指す研究などが含まれる。
(事業開始年度:平成20年度)
○戦略的創造研究推進事業 さきがけ「iPS細胞と生命機能」(独立行政法人科学技術振興機構)
iPS細胞を樹立する技術によって大きなブレークスルーがもたらされると考えられる分野、すなわち、細胞のリプログラミング、分化転換、幹細胞生物学などを対象とする。これまでにはない自由で創意に満ちた発想による基礎研究とともに、医療などに将来貢献できる基礎研究も対象とする。
具体的には、1)リプログラム機構の分子レベルでの解析に基づくリプログラミング技術の高度化・簡便化、2)幹細胞分化転換過程の解析と人的調節、3)iPS細胞を用いたエピジェネティック過程の分子機構解析、4)iPS細胞を駆使する疾患発症機構の解析、5)ヒト疾患モデルの構築などの研究が含まれる。
(事業開始年度:平成20年度)
再生医療に深く関連する施策・事業としては、独立行政法人理化学研究所発生・再生科学総合研究センター、独立行政法人科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業CREST・さきがけが存在する。
理研CDBでは、発生・再生のメカニズムに関する基礎研究の推進を目的として、動物等を用い、発生・再生のメカニズムの原理の解明を目指している。またJSTのCREST・さきがけでは、上述の通りiPS細胞を基軸とした細胞リプログラミング技術の開発のような革新的医療に資する基礎研究・基盤技術の構築を目指す研究を対象としている。一方、再生医療の実現化プロジェクトでは、国直轄のプロジェクトとして幹細胞を用いた再生医療の実現を目的とし、ヒトへの応用の技術開発のため、幹細胞バンクの整備や幹細胞操作技術の開発、幹細胞治療法の開発を目指しており、より臨床応用を見据えた施策である。
加えて理研CDBは、本事業における「ヒトiPS細胞等研究拠点」となっており、基礎研究から前臨床研究まで一貫して強力に推進することにより、研究成果の社会還元を図ることが可能となり、事業の効率化・有効性が確保される。
さらに、再生医療の実現化プロジェクト(理研CDB含む)及びJSTのCREST・さきがけ等で構成される「iPS細胞等研究ネットワーク」において、知的財産権、研究成果の公開、機密保持等の観点に関する共通的なルールを定め、以ってiPS細胞等研究を基礎研究から前臨床研究まで連続的かつ総合的に推進することを可能にする。
記載事項(抜粋)
7.おわりに
iPS細胞研究は、日本が世界に誇る画期的な成果であるが、海外との競争は激化している。この日本発の優れた成果を更に発展させ、国民生活の向上に結びつけるためには、研究を進めやすい環境作り(研究費、研究環境、体制、制度、知的財産環境の整備など)が不可欠である。
今後、この研究の更なる発展は、我が国の科学技術政策にとっての試金石とも言える。総合科学技術会議としては、引き続き、この研究を支援し、研究の進展に応じて必要な措置を講じていく。
記載事項(抜粋)
1.経済成長戦略
【具体的手段】
3 革新的技術創造戦略
3 革新的技術特区(スーパー特区)
平成20年度は、第一弾として先端医療開発特区を創設する。新たに、上記の仕組みに加え、研究開発費を確保し、最先端の再生医療、医薬品・医療機器の開発・実用化を促進する。
記載事項(抜粋)
1.革新的技術の戦略的推進
(1)革新的技術によって目指す成長
(2)健康な社会構築
世界でも比類なき高齢化社会を迎えている我が国において、国民が健康で快適な生活を送ることを可能とする技術の実現により、国民生活の質の向上を目指す。このような技術の普及・展開を通じ、今後20~30年遅れで訪れると見込まれる諸外国の高齢化社会にも活かされるよう、我が国が強い知能ロボット技術を活かした生活支援ロボット技術、医療工学技術、iPS細胞を利用した再生医療技術などを更に強化し、健康・医療産業を我が国のリーディング・インダストリーに育て上げる。
記載事項(抜粋)
1.趣旨
「先端医療開発特区」は、最先端の再生医療、医薬品・医療機器について、重点分野を設定した上で、先端医療研究拠点を中核とした他の研究機関や企業との複合体を選定し、研究資金の特例や規制を担当する厚生労働省等との並行協議等を試行的に運用し、より開発の促進を図ることを目的とする。
記載事項(抜粋)
2.平成20年度の具体的な推進方策
文部科学省では、総合戦略策定後、日本全国の研究推進に向けた環境整備や各種研究資金の投入等を通じて、iPS細胞研究等の加速に向けた緊急措置を着実に遂行してきたところであり、平成20年度においても引き続き支援を続けていくこととする。
また、文部科学省は、「再生医療の実現化プロジェクト」及びJST戦略的創造研究推進事業「iPS細胞等の細胞リプログラミングによる幹細胞研究戦略事業プログラム」を通じて支援する研究機関・研究者等を包含した一体的な研究推進体制を構築し、iPS細胞研究等の効率的・効果的な推進に資するよう研究成果や知的財産権に関する情報等の一元化を図るための環境を整備する。
記載事項(抜粋)
〈第三 活力ある経済社会の構築〉
(技術革新の加速)
まず第一に、他国の追随を許さない技術を持ち続けることを目指す、「革新的技術創造戦略」を展開します。
昨年、京都大学において、人間の皮膚から万能細胞を作ることに成功し、世界を驚かせました。環境関連の技術のみならず、バイオ技術や医療関連技術を含め、これからの日本の成長を支える研究開発に重点的に予算を配分するとともに、民間の研究開発投資を促進するため、研究開発税制の拡充を行います。世界最高水準の研究拠点の整備を進めるとともに、研究成果を適切に保護し、成長につなげていくため、知的財産戦略を着実に実行します。
記載事項(抜粋)
1.今年度中の緊急支援策
(3)iPS細胞等を用いた再生医療実現に向けた研究加速
文部科学省は、「再生医療の実現化プロジェクト」の一環として、iPS細胞を用いた治療開発や、細胞操作技術開発(分化誘導等)を加速すべく、早急(平成19年12月中を目途)に公募を開始する。
2.来年度以降の措置
(3)iPS細胞等を用いた再生医療実現に向けた研究加速
文部科学省は、「再生医療の実現化プロジェクト」の一環として、iPS細胞を用いた治療開発や、細胞操作技術開発(分化誘導等)の開始に必要な研究費を支援する。
記載事項(抜粋)
2.技術革新戦略ロードマップ
(1)社会還元を加速するプロジェクトの推進
3.早急に開始すべき社会還元加速プロジェクト
「生涯健康な社会」を目指して
失われた人体機能を補助・再生する医療の実現
記載事項(抜粋)
3.戦略の具体的内容
第1部.国民自らがそれぞれの立場に応じて行う健康対策
3.メタボリックシンドローム対策の一層の推進(メタボリックシンドローム克服力)
(3)脳卒中、心筋梗塞等の治療の推進
2.脳と心臓のダメージを最小限に抑えるための治療方法の開発・再生医療による治療法の研究開発の推進
第2部.新健康フロンティア戦略を支援する家庭・地域・技術・産業
2.人間の活動領域の拡張に向けた取り組み(人間活動領域拡張力)
2.先進的予防・診断・治療技術の開発
3.医療・福祉技術のイノベーション(研究開発力)
また、研究開発力の向上は、健康科学技術産業の国際競争力を高めることや、今後高齢化が進行する世界に対して国際的に貢献することにも資するものである。このため、有病者、障害者、高齢者等のニーズを踏まえ、既にある技術、改良や使い方に係る技術の改良などの「汎用技術」、使用者が少なかったり、健康リスクが高い等の事業リスクが高い技術、遺伝子治療、再生医療、遺伝子診断技術(バイオマーカー等)、ナノテクノロジー(超小型化医療機器等)等を活用した「革新的技術」の開発・普及の推進を図る(以下略)
記載事項(抜粋)
1.研究資金の集中投入
(1)医薬品・医療機器開発につながる予算への重点化・拡充等(平成19年度ら措置;文部科学省、厚生労働省、経済産業省)
記載事項(抜粋)
1 ライフサイエンス分野
3.戦略重点科学技術
(2)戦略重点科学技術の選定
2.「臨床研究・臨床への橋渡し研究」
【研究開発内容】
生活習慣病、免疫・アレルギー疾患、精神疾患等に対応した、疾患診断法、創薬や再生医療、個人の特性に応じた新規医療技術の研究開発などについて、国民へ成果を還元する臨床研究・臨床への橋渡し研究を強化する。
再生医療は、細胞移植や組織移植によって、これまでの医療を根本的に変革する可能性を有するものであり、難病・生活習慣病等に対して、新たな治療法を実現し、患者のQOLと国民福祉の向上をもたらす先端医療である。
このため、再生医療の実現化を目指す本事業により、先端的医療の実現に資する知見の蓄積、技術の開発、またそれに必要な環境の整備を図ることが可能となり、細胞治療に加え、様々な疾患の原因解明や創薬に応用できる可能性への道を開くことにより、目標の達成が見込まれる。
本事業においては、幹細胞・再生医学戦略作業部会における議論を踏まえ、再生医療の実現化に向けた拠点整備等を実施し、パーキンソン病、脊髄損傷、心筋梗塞等の現在の医療では治療の難しい難病・生活習慣病に対する革新的医療技術を開発することにより、上位目標である『「研究成果の実用化のための橋渡し」を特に重視し、国民への成果還元を抜本的に強化する』ことが促進される。
平成21年度要求額:3,650百万円(平成20年度予算額:2,000百万円)
細胞移植・組織移植によってこれまでの医療を根本的に変革する可能性のある再生医療を実現化すべく、ヒトiPS細胞を中心に、ヒトES細胞、ヒト体性幹細胞を用いた再生医療研究を総合的に推進できる研究体制を有する拠点を整備するともに、幹細胞の操作技術に関する開発等を推進する。
本事業については、幹細胞・再生医学戦略作業部会における議論等を踏まえ、他の関連施策との役割分担を明確にしつつ、拠点による取組と個別課題による取組を連携させることとしている。加えて平成20年4月には、大学及び理化学研究所並びに各省庁の研究機関を含むiPS細胞等研究ネットワークが立ち上げられ、iPS細胞研究に関する効果的かつ有機的な連携体制が構築された。さらに平成21年度には「iPS細胞技術プラットフォーム」の構築に向けて、iPS細胞等研究拠点(京都大学、慶應大学、東京大学、理化学研究所)に対する支援を強化することによって、より集中的かつ効率的な研究の推進体制を確保することが可能となり、事業スキームの効率性は担保される。
再生医療の実現化プロジェクトでは、国直轄のプロジェクトとして幹細胞を用いた再生医療の実現を目的とし、ヒト応用の技術開発のため、幹細胞バンクの整備や幹細胞操作技術の開発、幹細胞治療法の開発を目指しており、臨床応用を見据えた施策である。一方、理研CDBでは、発生・再生のメカニズムに関する基礎研究の推進を目的として、動物等を用い、発生・再生のメカニズムの原理の解明を目指している。またJSTのCREST・さきがけでは、iPS細胞を基軸とした細胞リプログラミング技術の開発のような革新的医療に資する基礎研究・基盤技術の構築を目指す研究を対象としている。
さらに、再生医療の実現化プロジェクト(理研CDB含む)及びJSTのCREST・さきがけ等で構成される「iPS細胞等研究ネットワーク」において、知的財産権、研究成果の公開、機密保持等の観点に関する共通的なルールを定めることによる、iPS細胞等研究を基礎研究から前臨床研究までを包括した一貫性のある施策である。
本事業は競争的資金制度に基づき実施し、全国の大学、研究機関等を対象として、公募により研究拠点等を選定しており、公平性は担保できると判断する。
世界でも比類なき高齢化社会を迎えている我が国において、国民が健康で快適な生活を送ることを可能とする再生医療等の技術の実現により、国民生活の質の向上を目指すことは、政府全体の喫緊の課題である。
世界に誇る画期的な成果であるiPS細胞をさらに発展させ、国民生活の向上に結びつけるためには、研究費や研究体制等の研究を進める環境作りが不可欠であると総合科学技術会議においても指摘されており(「iPS細胞研究の推進について(第一次とりまとめ)」(平成20年7月 総合科学技術会議iPS細胞研究WG)、同細胞を活用した再生医療の実現化を目指した研究を、日本全体で戦略的に進めていく本事業の優先度は極めて高い。
「iPS細胞等の研究加速に向けた総合戦略」等にもとづく、幹細胞・再生医学研究における予算の新規・拡充要求並びに幹細胞・再生医学研究体制の強化に伴う幹細胞・再生医学研究推進室の新設の要求並びに及び室長(振替1名)、室長補佐、幹細胞・再生医学研究企画係長及び幹細胞・再生医学研究推進係長(新規3名)の要求。
評価結果は妥当。ただし、定量的な指標を設定して進める必要がある。また、関連施策と連携し、効果的・効率的に研究開発を推進する必要がある。
科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 ライフサイエンス委員会において事前評価を実施。
1.については「指標と目標」及び「関連施策との関係」において対応済み。また、指標については、本事業の性質も十分考慮した上で、定量的な指標を検討していく予定。
大臣官房政策課評価室
-- 登録:平成21年以前 --