74.研究開発基盤整備補助金【先端研究施設共用促進】(新規)【達成目標9-3-2】

平成21年度要求額:5,000百万円
  (平成20年度予算額:‐百万円)
  事業開始年度:平成21年度
  事業達成年度:平成25年度
  中間評価実施年度:平成23年度

主管課(課長名)

  • 研究振興局研究環境・産業連携課(田口 康)

関係課(課長名)

事業の概要等

1.事業目的

  多額の国費を用いて整備された研究開発施設等のうち、広範な分野又は多様な研究等で利用が可能なものについて、独創的・先端的な基礎研究からイノベーション創出に至るまでの我が国の科学技術活動全般の高度化及び国の研究開発投資の効率化を図るため、これらの共用の促進を図る。

2.事業に至る経緯・今までの実績

  研究開発施設等は、独創的・先端的な基礎研究からイノベーション創出に至るまでの科学技術活動全般を支える基盤として不可欠なものであることから、その整備や効果的な利用を促進する必要がある。第3期科学技術基本計画(平成18年3月閣議決定)においても、科学技術振興のための基盤の強化が大きな方向性として位置付けられ、世界最高水準の研究成果を創出するために、最先端の研究施設については、国が責任を持って整備並びに共用を推進すべきこととされている。
  先般、第169回通常国会において可決された「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律」(以下、「研究開発力強化法」という。)においても、国は、研究開発施設等の共用及び知的基盤の供用の促進のために必要な施策を講ずるものとされている。
  これまで、「特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律」(平成18年7月1日施行)に基づき、大型放射光施設SPring-8・X-FEL及び次世代スーパーコンピュータについては、重複して設置することが多額の経費を要するため適当でないと認められる大規模な研究施設であって、先端的な科学技術の分野において比類のない性能を有し、科学技術の広範な分野における多様な研究等に活用されることにより、その価値が最大限に発揮される施設として、国による基本方針の策定、国による登録機関への交付金の交付等が定められ、施設の共用が図られている。
  一方、大学、研究開発型独立行政法人等が保有する研究開発施設等の中にも、多額の国費によって整備され、広範な分野や多様な研究に活用可能なものが多数あるが、利用者支援体制など共用のための体制の未整備、国の時限的プロジェクトの終了や運営費交付金の削減に伴う運転資金の不足などの理由で十分に活用されていない。
  これらのうち一部については、平成19年度より開始した先端研究施設共用イノベーション創出事業(産業戦略利用)により産業利用のための体制整備(運転費の一部支援、利用者支援のための人員の配置等)を図っているが、支援施設は約20施設程度ありで不十分である。また、現在、共用が可能となっている研究開発施設等についても、知的財産などの研究成果の取り扱いや課金体制の整備を含めたさらなる共用体制を構築することにより、研究開発施設等の徹底活用を図ることが喫緊の課題となっている。
  以上のような要請や課題に対して、最適かつ早急に対応する必要がある。

3.事業概要

  大学・研究開発型独立行政法人等が保有する研究開発施設等のうち、以下の要件(注)を満たすものを文部科学省に設置される予定の研究開発基盤整備補助金審査評価会(仮称)において交付対象施設を決定し、当該施設設置者に対して、当該施設の一部(又は全部)の共用を行うために必要な経費を「研究開発基盤整備補助金【先端研究施設共用促進】」として交付を行う。事業開始後、研究開発基盤整備補助金審査評価会(仮称)を事業開始3年目の中間評価をはじめ適宜開催し、各機関の取組状況等の把握を行い、交付対象施設等を見直す予定である(図1 事業のしくみ)。

要件(注)

  1. 国の資金により整備したもので、整備に高額な費用を要し、費用対効果等の観点から、民間企業等が独自で整備することが困難なもの
    • 整備費の総額が数億円~数百億円規模の施設
  2. 先端的な科学技術の分野において高い性能を有するもの
    • 科学と技術の一体化が他の分野に比べ顕著である分野等において、同種の機能を有する施設の中でも他施設と比べて高い性能を有する施設
  3. 科学技術の広範な分野又は多様な研究等に活用されるもの
    • 特定の分野に特化することを目的とする施設ではなく様々な分野の研究において利用可能な汎用性の高い施設、又は基礎研究から産業技術開発までを含めた幅広い研究において利用可能な施設
  4. 共用により、当該施設の価値が最大限発揮されると期待されるもの
    • 当該施設の本来の設置目的が損なわれず新たな用途にも活用可能な施設。本来の設置目的を達成し、他の目的にも活用すべきと考えられる施設

    図1 事業のしくみ

  図1 事業のしくみ

4.指標と目標

指標

  交付対象施設における産業界による利用割合、有償利用割合

目標

  大型放射光施設SPring-8の実績値(共用開始10年目の平成19年度の共用BLの全利用課題数1,519件、産業界の利用課題数300件、有償利用件数110件より、産業界の利用割合20パーセント、有償利用割合7パーセント)を目標とする。初年度は、有償利用による共用体制構築、2年度以降は、毎年、産業界の有償利用による課題数の増加を図り本目標を達成する。

効果の把握手法

  文部科学省に設置される予定の研究開発基盤整備補助金審査評価会(仮称)による評価並びに交付対象施設及びその施設設置者に対する調査。

事業の事前評価結果

A.19年度実績評価結果との関係

  達成目標9-3-2「今後の課題及び政策への反映方針」において、「先端研究施設共用イノベーション創出事業(産業戦略利用)の採択機関に加え、先端研究施設を有する独立行政法人や大学等の当該施設の共用を行うために必要な経費を交付することによって、当該施設の産業界等への共用促進を図っていくことを検討していく。」とされており、研究開発施設等の産業界等への共用を促進し、施設の徹底活用を図ることを検討する。

B.必要性の観点

1.事業の必要性

  多額の国費を用いて整備された研究開発施設等のうち、広範な分野又は多様な研究等で利用が可能なものについて、独創的・先端的な基礎研究からイノベーション創出に至るまでの我が国の科学技術活動全般の高度化及び国の研究開発投資の効率化を図るため、これらの共用の促進を図る必要がある。

2.行政・国の関与の必要性(官民、国と地方の役割分担等)

  我が国において、多額の国費によって整備されたが、必ずしも共用を目的として整備されたものでない研究開発施設等の民間企業への共用を促進するため、国が各機関における共用体制の整備を促し、共用に必要な経費を支援する必要がある。また、仮に施設利用のための課金体制が整っていたとしても、産業界にとって、トライアルユースなしに有償利用をすることは、経済的リスクが大きく敷居が高いことを踏まえ、国は施設の有効活用を図るための必要な経費を負担する必要がある。
  施設設置者は、共用体制その他の必要な体制の構築を行い、産業界等の利用に供するために必要な業務を実施し、産業界等に対しても適切な使用料の負担を求める。

3.関連施策との関係

1.主な関係施策 施策目標 9‐3

  ○先端研究施設共用イノベーション創出事業(産業戦略利用)(文部科学省)
  大学・研究開発型独立行政法人等が保有する研究開発施設等の共用を進めるため、施設の利用時間を適切な範囲で確保して産業界から共同研究や施設利用等の提案を募るとともに、その共用に係る体制を構築するための経費を支援することにより、産業界に対して、具体的な技術課題の解決のための環境を提供し、イノベーション創出を促進する(平成20年度予算額3,109百万円の内数、事業開始年度:平成19年度、事業達成年度:平成23年度)。

2.関連施策との関係

  先端研究施設共用イノベーション創出事業(産業戦略利用)は、産業界への共用を通じてイノベーションを創出することを目的として、国家的・社会的課題に対応した具体的な技術課題を解決のために戦略分野を国が決定し、共用体制の構築のための経費や、産業界によるトライアルユースに係る運転経費などを時限的に支援する事業である。
  一方、本補助金は、先端研究施設共用イノベーション創出事業(産業戦略利用)等を通して、施設の共用が有効であるという認識が高まったことや、研究開発力強化法において、研究開発施設等を保有する機関の共用に対する努力義務が位置付けられていることにより、各機関が共用を通じて、広範な分野における成果創出を目指すために、共用に必要な経費を安定的に補助するものである。施設設置者は、有償利用による収益を、新規利用者の開拓に向けた経費に充当することで、自らの共用へのインセンティブが付与されるとともに、産業界からの投資が促進されることが期待される。

4.関係する施政方針演説、審議会の答申等

・「第3期科学技術基本計画」(平成18年3月28日閣議決定)

  記載事項(抜粋)

  国立大学法人や公的研究機関等においては、機関内での設備の共同利用等に積極的に努めるなど既存設備の有効活用を進めるとともに、機関の枠を超えた共同利用、競争的資金等による研究終了後の設備の再利用など、研究設備の効果的かつ効率的な利用を促進する。

・「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律」(平成20年6月11日公布)

  関連条文(抜粋)

第三十五条
  • 一.国は、研究開発に係る施設及び設備の共用の促進を図るため、広く研究者等の利用に供するために必要な施策を講ずるものとする。
  • 二.研究開発法人及び国立大学法人等は、その保有する研究開発施設等のうち研究者等の利用に供するものについて、可能な限り、広く研究者等の利用に供するよう努めるものとする。

C.有効性の観点

1.目標の達成見込み

  図2に示されているとおり、他施設に先駆けて共用体制の構築が推進されてきた大型放射光施設SPring-8については、年々産業界による利用割合が増加しており、共用による施設の有効利用が図られていることや、図3に示されているとおり、産業界の利用の増加に伴い、有償利用件数も増加傾向であることが分かる。
  先端研究施設共用イノベーション創出事業(産業戦略利用)を実施中の17機関についても、共用体制が整備され、外部利用者の利用割合が増加しており、有償利用件数の増加も十分に見込まれる。
  本事業の実施により、さらに多くの研究開発施設等において共用体制が構築されるとともに、共用によりイノベーションにつながる成果の創出が促進され、目標は達成されると考えられる。
  図2 SPring-8の産業利用率の推移

  図2 SPring-8の産業利用率の推移

図3 SPring-8の有償利用件数の推移

  図3 SPring-8の有償利用件数の推移

2.上位目標のために必要な効果が得られるか

  本事業を通じて、科学技術振興のための基盤である研究開発施設等の共用体制が構築され、施設の徹底的な利用が期待されることから、上位目標である施策目標9‐3の「科学技術振興のための基盤の強化」が達成される。

D.効率性の観点

1.インプット

  本事業の予算規模は、5,000百万円である。

  【算定根拠】

  研究開発型独立行政法人及び国公立大学の研究開発施設等のうち、共用により施設等の能力を最大限発揮できる施設について、共用に供することができるマシンタイム、オペレーターの人数等を加味して、以下の支援規模が必要である。

  • 1.5億円以上の規模の支援 6施設程度
  • 1~1.5億円未満程度の規模の支援 6施設程度
  • 5千万円~1億円未満程度の規模の支援 8施設程度
  • 5千万円未満程度の規模の支援 50施設程度

  (注)文部科学省調べ

2.アウトプット

  平成21年度に、交付対象施設を70施設程度として、その後、毎年の施設の新設、改修等を踏まえて数施設程度の追加を行うことで、継続的に、国内の研究開発施設等の産業界への共用により施設の有効活用が推進され、研究開発投資の効率化が図られる。

3.事業スキームの効率性

  研究開発施設等に対して補助金を交付することで、当該施設における共用体制が強化され、施設の安定運用が図られる。また、適切な有償利用体制の構築により得られた収益については、さらなる共用のための経費や新規利用者の開拓に向けたトライアルユースのための経費に充当されることで、施設の徹底活用が図られるとともに、産業界からの投資も促進されると考えられることから、効率性の観点から妥当である。

4.代替手段との比較

  先端研究施設共用イノベーション創出事業(産業戦略利用)は、具体的な技術課題の解決のために、施設の運転経費等を支援する国からの委託事業であるのに対し、本事業は、共用という自主的な行為を促進し、相対的に長期にわたって補助金を交付するため、安定的に大学、研究開発型独立行政法人等が保有する研究開発施設等の有効活用を図ることが可能である。なお、本事業は、研究開発施設等の運転経費の不足等により、共用体制の構築のための経費を確保することが難しい状況下で、施設設置者が体制の構築を図るものであることから、税制などの他手段による実施は不適切である。

E.公平性の観点

  本事業は、我が国が保有する研究開発施設等を対象として、大学・研究開発型独立行政法人等に対して広く公募する。その上で、外部の専門家によって構成される研究開発基盤整備補助金審査評価会(仮称)により、各機関からの申請計画に基づき、交付対象施設を決定する予定であり、公平性は担保される。

F.優先性の観点

  先に述べたとおり、本事業については、研究開発力強化法等において、その必要性が強く求められている。
  また、国費によって整備された研究開発施設等のうち、各機関における運営費交付金あるいは競争的資金によって運転費が措置されているものについて、運営費交付金が一律削減される一方で、各プロジェクトにおいては終了年度が定められている現状を鑑みれば、本事業を早急に開始することで各施設等の安定運用を図る必要があり、本事業の優先性は極めて高いといえる。

G.総括評価と反映方針

  平成21年度概算要求及び機構・定員要求(施設共用係長)に反映。

指摘事項と対応方針

指摘事項

1.事業に対する総合所見(官房にて記載)

  評価結果は妥当。ただし、可能なものについては定量的な目標を設定する必要がある。

指摘に対する対応方針

  年度毎の目標については、大型放射光施設(SPring-8)の実績値及び毎年度の交付対象施設における産業界による利用割合、有償利用割合の実績値等を踏まえ、可能な限り早期に設定する。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成21年以前 --