72.政策や社会の要請に対応した人文・社会科学研究推進事業(拡充)-近未来の課題解決を目指した実証的社会科学研究推進事業-【達成目標9-1-3】

平成21年度要求額:209百万円
  (平成20年度予算額:149百万円)
  事業開始年度:平成20年度
  事業達成年度:平成24年度
  中間評価実施年度:平成22年度

主管課(課長名)

  • 研究振興局振興企画課学術企画室(門岡 裕一)

関係課(課長名)

事業の概要等

1.事業目的

  近未来において我が国が直面する経済的、社会的な諸課題の解決に向け、様々な機関等により集積されたデータを活用した経済・社会の分析など、実証的な研究方法に基づくとともに、その研究成果を課題解決のための選択肢として社会へ発信することを目指した社会科学のプロジェクト研究を大学等への委託を通じて実施することにより、「経済・社会の活性化」と「社会の安全・安心」の両立を視野にいれた「国民の生活と福祉の向上」に資する。
  研究者に対し、実証的な研究方法と社会提言を義務付けることにより、我が国の人文学及び社会科学研究の在り方を、実証志向、社会志向へと促す。

2.事業に至る経緯・今までの実績

  少子化などを原因とする日本経済の経済活力の減退や、現在の労働市場を取りまく諸課題など、社会的課題の解決には、社会や経済のあり方に関する従来の経験や既存の知識のみならず、課題に関する新しい認識の枠組みの創出が必要であり、とりわけ、社会科学を中心とした諸学の協働により、課題の解決に向けた実証的な研究を行う必要が高まっている。
  また、現在、科学技術・学術審議会に「人文学及び社会科学の振興に関する委員会」を設置して、人文学及び社会科学の研究成果の社会還元などについて審議が行われている。同委員会の「「人文学及び社会科学の振興について」審議経過の概要」(平成19年8月)においては、人文学や社会科学研究において、「政策や社会の要請に応える研究」を積極的に推進していくことが必要であるとの提言がなされている。
  このように政策や社会の要請に対応した人文・社会科学研究を行うことが必要不可欠であることから本事業が開始された。
  なお、事業開始年度の本年度は3~6課題を採択する予定である。

3.事業概要

  設定された研究領域の下で、近未来において我が国が直面する経済的、社会的な諸課題の解決に向け、様々な機関等により集積されたデータを活用した経済・社会の分析など、実証的な研究方法に基づくとともに、その研究成果を課題解決のための選択肢として社会へ発信することを目指した社会科学のプロジェクト研究を公募し、課題の採択、大学等研究機関への委託を通じて実施する。
  平成21年度は、現在設定している企業の生産性や雇用に関する研究領域(豊かな経済活力を生む社会経済制度の設計、生活の豊かさを生む新しい雇用システムの設計)に加え、日本経済、社会の状況も踏まえ、例えば金融や、財政、国際経済をテーマとする新領域を設定し、新規課題の採択、大学等への委託を実施する予定。平成22年度以降は、前年度までに採択したプロジェクト研究の進捗状況の管理や、研究の中間評価、最終評価を実施するとともに、引き続き、新規課題の採択、大学等研究機関への委託を実施する予定。

事業概念図

スキーム図

4.指標と目標

  • 本事業の目標は、「社会のニーズに基づく現代的な課題に対応した総合的・融合的な研究を振興し、優れた成果を創出する」とする。
  • また、本事業においては、事業の中ですべての研究プロジェクトが外部有識者による中間評価、最終評価を受けることとなっている。当該中間評価、最終評価においては、優れた成果の創出が期待できるのかという観点からの評価も行われる予定であるため、適切と判断された研究プロジェクトの数等をもとに目標に対する達成度を判断する予定である。

事業の事前評価結果

A.19年度実績評価結果との関係

  特になし

B.必要性の観点

1.事業の必要性

  • 少子化などによる日本経済の経済活力の減退や、現在の労働市場を取りまく諸課題など、これら社会的課題の解決には、社会や経済のあり方に関する従来の経験や既存の知識のみならず、課題に関する新しい認識の枠組みの創出が必要であり、とりわけ、社会科学を中心とした諸学の協働により、課題の解決に向けた実証的な研究を行う必要が高まっている。
  • また、現在、科学技術・学術審議会に「人文学及び社会科学の振興に関する委員会」を設置して、人文学及び社会科学の研究成果の社会還元などについて審議が行われている。同委員会の「「人文学及び社会科学の振興について」審議経過の概要」(平成19年8月)においても、人文学や社会科学研究において、「政策や社会の要請に応える研究」を積極的に推進していくことが必要であるとの提言がなされている。
  • さらに、本事業の実施による研究成果を課題解決のための選択肢として社会へ発信することにより、「経済・社会の活性化」と「社会の安全・安心」の両立を視野にいれた「国民の生活と福祉の向上」に資することが期待される。
  • このように政策や社会の要請に対応した人文・社会科学研究を行うことが必要不可欠であることから本事業が開始された。

2.行政・国の関与の必要性(官民、国と地方の役割分担等)

  以下の点より、本事業は国が行うべき重要な責務であると考える。

  • 本事業は、近未来において「国」が直面する経済的、社会的な諸課題の解決に向けた実証的な研究を委託するものである。
  • 本事業は、政策や社会の要請に対応する公益性の高い事業であるため、収益性を求める民間団体等が行うよりも、国が行うことがより適している。
  • 本事業は、日本国内すべての研究資源(大学等研究機関)を活用することを想定しており、地方公共団体が本事業を行う場合、活用できる研究資源が限定される可能性があるため、国が行うことがより適している。

3.関連施策との関係

1.主な関連施策 達成目標9‐1‐3

  ○世界を対象としたニーズ対応型地域研究推進事業(研究振興局振興企画課学術企画室)

  • 我が国との関係で重要な地域について、社会的・政策的ニーズに対応したプロジェクト研究を実施し、その成果を社会に還元することにより、日本と対象地域との「協働」、「相互理解」さらには「共生」に資すること及び人文・社会科学の新たな展開と発展に資することを目的とした「世界を対象としたニーズ対応型地域研究推進事業」を実施した。(事業開始年度:平成18年度)

  ○異分野融合による方法的革新を目指した人文・社会科学研究推進事業(独立行政法人日本学術振興会)

  • 他分野の研究方法等の導入等を視野に入れ、異なる分野の研究者による共同研究(「総合研究」)を進めることにより、方法論的な観点から既存の知の体系の根源的な変革や飛躍的な進化を目指す。
      (事業開始年度:平成21年度(予定))
2.関連施策との関係
  • 本事業と「世界を対象としたニーズ対応型地域研究推進事業」は、共に政策や社会の要請に対応した研究を支援するタイプの事業であり、「社会のニーズに基づく現代的な課題に対応した総合的・融合的な研究を振興し、優れた成果を創出する」という共通の目標の達成に寄与している。しかし、本事業は、我が国が直面している「経済社会問題」を主な研究対象とし、「世界を対象としたニーズ対応型地域研究推進事業」は我が国との関係で重要な「地域」を研究対象しており、その研究対象が異なっている。
  • また、日本学術振興会において、人文・社会科学の学問としての発展を目的として、研究手法の革新と、そこから既存の知の体系の根源的な変革や飛躍的な進化を目指す事業を平成21年に概算要求する予定である。この事業に対して本事業は、人文学・社会科学の学術学問としての発展ではなくというよりも、人文学・社会科学を活用して近未来の課題解決のための提言を得ることを目的としているという点で日本学術振興会の事業と異なる。

4.関係する施政方針演説、審議会の答申等

・人文・社会科学の振興について(平成14年6月11日科学技術・学術審議会 学術分科会報告)

  記載事項(抜粋)

  1.課題設定型プロジェクト研究の推進
  グローバル化、情報化が進む中、特に民族、宗教、精神生活、社会規範や制度をめぐる問題など、現代社会において人類が直面している問題の解明と対処のためには、人文・社会科学の各分野の研究者が協働して学際的、学融合的に取り組む研究を進め、その成果を社会への提言として発信する必要がある。

・長期戦略指針「イノベーション25」(閣議決定)(平成18年6月1日)

  記載事項(抜粋)
  技術の進歩や社会の変化に伴う諸課題や、人間の心理、価値観等に関する諸課題等、現代社会における様々な問題の解明と対応に向けて、人文・社会科学を中心とする学際的・学融合的な研究の取組を推進し、その成果を社会への提言として発信する。

・「人文学及び社会科学の振興について」審議経過の概要(平成18年8月 科学技術・学術審議会 学術分科会 学術研究推進部会 人文学及び社会科学の振興に関する委員会)

  記載事項(抜粋)

  • 今日、政策や社会の要請に応える研究の重要性が高まっているが、そのような研究の推進に当たっては、実証的な研究方法が不可欠である。
  • 今日、人文学及び社会科学の知見を活用して取組むことが期待されている政策的、社会的課題としては、(中略)少子・高齢化問題などの近未来において我が国が直面する課題が考えられる。
・「ワーク・ライフ・バランス」推進の基本的方向‐多様性を尊重し仕事と生活が好循環を生む社会に向けて‐(平成19年7月 男女共同参画会議仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する専門調査会)

  記載事項(抜粋)

  2.取組の方向性
  ワーク・ライフ・バランス実現に向け、その手法や効果等の研究の蓄積が必要である。このため、多様な学問領域の融合と産業界との連携・協力により、大学・研究機関等におけるワーク・ライフ・バランスの研究拠点形成を図るなど、ワーク・ライフ・バランスに関する学際的な研究の推進を図る。

C.有効性の観点

1.目標の達成見込み

  • 本事業は、平成20年度開始であるため具体的な達成度の判断については今後検討を要するが、実施に当たっては、大学等研究機関により提案された課題について、外部有識者による審査を行い、事業目的に相応しい課題を選定するため、目標の達成は見込まれると判断している。

2.上位目標のために必要な効果が得られるか

  • 本事業は、近未来において直面する様々な社会的課題の解決のための社会提言等につながる研究成果を得ることを目指し、人文学・社会科学を中心とした諸分野の研究者を結集したプロジェクト研究を実施するものである。実施に当たっては、大学等研究機関により提案された課題について、外部有識者による審査を行い、事業目的に相応しい課題を選定するため、本事業が得ようとしている効果が十分得られ、達成目標の実現に資するものと判断している。

D.効率性の観点

1.インプット

  • 平成21年度予算:209百万円

  (内訳)

    • 諸謝金:125千円
    • 職員旅費:808千円
    • 委員等旅費:477千円
    • 庁費:263千円
    • 科学技術試験研究委託費:207,500千円

2.アウトプット

  • 本事業の実施により様々な社会的課題の解決のための社会提言等につながる研究成果を得られる。

3.事業スキームの効率性

  • 本事の予算規模(209百万円)に対して、アウトプットとして、大学等研究機関への公募により提案された課題について、外部有識者による審査の上、事業目的に相応しい課題を選定し、社会提言等につながる研究成果を得られることを見込むと、本事業のインプットとアウトプットの関係は効果的と判断する。

4.代替手段との比較

  • 以下の点より、本事業は国が行うべき重要な責務であると考える。
    • 本事業は、近未来において「国」が直面する経済的、社会的な諸課題の解決に向けた実証的な研究を委託するものである。
    • 本事業は、政策や社会の要請に対応する公益性の高い事業であるため、収益性を求める民間団体等が行うよりも、国が行うことがより適している。
    • 本事業は、日本国内すべての研究資源(大学等研究機関)を活用することを想定しており、地方公共団体が本事業を行う場合、活用できる研究資源が限定される可能性があるため、国が行うことがより適している。
  • なお、本事業については、競争的資金に係る庶務の経験と実績のある日本学術振興会に業務の一部を委託することにより効率化を図っている。

E.公平性の観点

  • 本事業は、公募を行い大学等研究機関により提案された課題について、外部有識者による審査を行い、事業目的に相応しい課題を選定することになっており公平性は担保できると判断する。

F.優先性の観点

  • 本事業は、政策や社会の要請に応える研究の重要性が高まっていることを踏まえて、近未来において我が国が直面する様々な社会的課題の解決のための社会提言等につながる研究成果を得ることを目指して研究を実施するものであり、優先性が認められる。

G.総括評価と反映方針

  • 21年度概算要求に反映

指摘事項と対応方針

指摘事項

1.事業に対する総合所見(官房にて記載)

  評価結果は妥当。ただし、本事業が適切に実施されていることを測るための定量的な指標を設定する必要がある。

指摘に対する対応方針

  本事業が適切に実施されていることを測るための定量的な指標については、現在も中間評価、最終評価において、適切と判断された研究プロジェクトの数等をもとに目標に対する達成度を判断する予定であるなど、定量的な指標の設定を予定している。しかし、今後も事業が適切に実施されていることを測るためのより適切な指標を検討する。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

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