71.科学研究費補助金(拡充)【達成目標9-1-2】

平成21年度要求額:217,176百万円
  (平成20年度予算額:193,200百万円)
  事業開始年度:大正7年度
  中間評価実施年度:平成22年度

主管課(課長名)

  • 研究振興局学術研究助成課(山口 敏)

関係課(課長名)

事業の概要等

1.事業目的

  人文・社会科学から自然科学までの全ての分野にわたる基礎から応用までのあらゆる「学術研究」(研究者の自由な発想に基づく研究)のうち、ピア・レビューによる審査を経て採択された独創的・先駆的な研究を対象に必要な助成を行うことにより、競争的環境の形成に貢献しつつ、大学等の研究者の自由な発想に基づく研究を幅広く推進するとともに、若手研究者の人材養成にも寄与し、科学技術創造立国の基盤を形成する。

2.事業に至る経緯・今までの実績

  科学研究費補助金は、大学等の学術研究を推進し、我が国の研究基盤を形成するための基幹的な経費として、学術研究に対する長期的視野に立った助成を行ってきている。本事業により研究を支援した研究者の中から国際的な学術賞が数多く輩出するなど、着実な成果を上げており、我が国を代表する競争的資金として定着している。
  平成19年度の予算額は1,913億円で、約5万6千件の課題を採択している。

3.事業概要

  多様性を確保する「基盤研究」を中心として、若手研究者を支援する「若手研究」、国際的に高い評価を得ている研究を支援する「特別推進研究」、研究成果の社会への公開を支援する「研究成果公開促進費」など、多様な研究に応じた研究種目を設定して、学術研究への支援を行う。
  特に、平成21年度は、第3期科学技術基本計画の方針等に則り、挑戦的研究、若手研究者への投資、多様性を確保する「基盤研究の充実」により革新的な学術研究の促進を図るとともに、間接経費が未措置の研究種目への30パーセント措置の早期実現を図ることとしており、具体的には、研究分野の枠に収まらない新興・融合領域や異分野連携、ハイリスク研究を推進する「新学術領域研究」を拡充し、挑戦的研究を強化する「萌芽研究」の充実などを図ることを検討している。

4.指標と目標

効果を把握するための指標

  • 研究成果の発表状況(研究成果として報告のあった研究論文数、図書数、産業財産権数)
  • 科学技術政策研究所「科学技術システムの課題に関する代表的研究者・有識者の意識定点調査」における「研究者の自由な発想による公募型研究費(科学研究費補助金など)」の必要度・「科学研究費補助金の使いやすさ」の指数

達成年度までの目標

  • 科学研究費補助金の予算額の拡充
  • 1課題あたりの必要額を充たしつつ採択課題数の増加
  • 間接経費が未措置の研究種目への30パーセント措置
  • より研究者にとって使いやすい制度の構築

事業の事前評価結果

A.19年度実績評価結果との関係

  9‐1‐2「今後の課題及び政策への反映方針」において、第3期科学技術基本計画の方針等に則り、挑戦的研究、若手研究者への投資、多様性を確保する「基盤研究の充実」により革新的な学術研究の促進を図るとともに、間接経費が未措置の研究種目への30パーセント措置の早期実現を図ることとしている。

B.必要性の観点

1.事業の必要性

  我が国が持続的に発展していくためには、多様な学術研究の推進など、イノベーションを絶え間なく創造する環境作りが必要である。科学研究費補助金は、人文・社会科学から自然科学まで全ての分野にわたる基礎から応用までのあらゆる学術研究を支援するものであり、イノベーションの種を生みだし、ひいては我が国全体の社会経済発展に資するものとして必要な事業である。

2.行政・国の関与の必要性(官民、国と地方の役割分担等)

  科学研究費補助金が支援の対象とする学術研究は、科学技術創造立国の基盤を形成するものであり、我が国全体の社会経済の発展に資するものであることから、極めて公益性が高い。したがって、学術研究の推進については、民間や地方ではなく国が牽引していく必要があり、政府が積極的に関与していくことが必要である。

3.関連施策との関係

  特になし

4.関係する施政方針演説、審議会の答申等

○「第3期科学技術基本計画」(平成18年3月28日 閣議決定)

  記載事項(抜粋)

  第3章 科学技術システム改革

  2.科学の発展と絶えざるイノベーションの創出

  (1)競争的環境の醸成

  1.競争的資金及び間接経費の拡充
  研究者の研究費の選択の幅と自由度を拡大し、競争的な研究開発環境の形成に貢献する科学研究費補助金等の競争的資金は、引き続き拡充を目指す。競争的資金を獲得した研究者の属する機関に対して研究費の一定比率が配分される間接経費については、全ての制度において、30パーセントの措置をできるだけ早期に実現する。

○「経済財政改革の基本方針2008」(平成20年6月27日 閣議決定)

  記載事項(抜粋)

  第2章 成長力の強化

  1.経済成長戦略

  3 革新的技術創造戦略

  1.革新的技術戦略
  優れた革新的な技術シーズを特定し、資源の重点的・集中的投資を図りつつ、それにふさわしい研究開発体制を整備して、スピード感をもって発展させ、イノベーション創出につなげる。

  • 研究開発初期段階からの戦略的な知的財産の創造・保護・活用を始め、出口を見据えた研究開発のマネジメントを実現するとともに、革新的技術を持続的に生み出す環境を整備する。

  「戦略実行プログラム(別紙)」

  3.革新的技術創造戦略

  (1)「革新的技術戦略」の実行

  • 革新的技術が絶え間なく生み出される環境づくり、特に革新的技術のシーズを生み育てる研究資金供給(挑戦的かつ高い目標設定の基礎研究への投資等)、未知の分野に挑戦する人材の確保(トップクラス人材の流動性確保と育成・獲得等)
○「教育振興基本計画」(平成20年7月1日 閣議決定)

  記載事項(抜粋)

  第3章 今後5年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策

  ◇大学等の教育研究を支えるとともに,高度化を推進するための支援
  大学等における教育研究の質を確保し,優れた教育研究が行われるよう引き続き歳出改革を進めつつ,基盤的経費を確実に措置する。あわせて,人材の育成や大学の教育研究の高度化に資する科学研究費補助金等の競争的資金等の拡充を目指す。その際,科学研究費補助金の間接経費について,30パーセントの措置をできるだけ早期に実現する。

C.有効性の観点

1.目標の達成見込み

  「第3期科学技術基本計画」の方針に基づき、科学研究費補助金の拡充が引き続き図られる見込み。また、予算の増に伴って、採択件数も増加し、研究成果として報告のあった論文数も着実に増加する見込み。
  なお、科学技術政策研究所による調査(「優れた成果をあげた研究活動の特性:トップリサーチャーから見た科学技術政策の効果と研究開発水準に関する調査報告書」平成18年3月)によれば、被引用度上位10パーセント論文の46.5パーセントが科学研究費補助金を使用した研究の成果である。

2.上位目標のために必要な効果が得られるか

  約56,000件(平成19年度実績)にものぼる研究者の自由な発想に基づく研究の支援を実施することにより、人文・社会科学から自然科学までのあらゆる分野における基礎研究が推進されるとともに、科学の発展と多様なイノベーションの創出が図られる。

D.効率性の観点

1.インプット

  • 要求額の内訳
    • 独創的・先駆的な研究の重点的推進 135,331百万円
    • 若手研究者育成・支援の充実 28,630百万円
    • 間接経費の充実 49,262百万円
    • 計画の着実な推進等 3,953百万円
  • 合計 217,176百万円

2.アウトプット

  約56,000件(平成19年度実績)の研究者の自由な発想に基づく研究の支援を実施する。

3.事業スキームの効率性

  科学研究費補助金においては、ピア・レビューによる公正な審査により、規模に応じた適正な配分を決定しており、効率的で効果的な支援が行われている。

4.代替手段との比較

  優れた学術研究(研究者の自由な発想に基づく研究)を適切に支援するためには、欧米同様に研究経験者が制度運営に関わり、ピア・レビュー(専門分野の近い複数の研究者による審査)により配分先を決める必要があるとともに、国が行うべき事業を委託する委託費などの方式ではなく、あくまでも研究者の活動を支援する補助金として交付することが重要である。このような科学研究費補助金の目的は、現行の方式以外では達成できない。

E.公平性の観点

  科学研究費補助金の審査は、プログラム・オフィサー(PO)制度に基づく、延べ6,000人に及ぶ専門分野の近い複数の研究者によるピア・レビュー方式で行われており、研究種目の特性に応じた審査結果の開示も行っていることから、公平性については問題がない。

F.優先性の観点

  科学研究費補助金は、人文・社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり、基礎から応用までのあらゆる独創的・先駆的な「学術研究」(研究者の自由な発想に基づく研究)をピア・レビューによる審査を経て支援することにより、競争的環境の形成に貢献しつつ、若手研究者向け研究種目の充実により、次代を担う若手研究者の人材養成にも寄与し、科学技術創造立国の基盤を形成するものである。我が国が持続的に発展していくためには、イノベーションの絶え間ない創出が必要であるが、イノベーションは、大学等における基礎研究による重厚な知的蓄積があってこそ生み出されるものであるため、大学等における多様な学術研究を支援する科学研究費補助金は、他の事業に優先して重点的に推進すべきである。

G.総括評価と反映方針

  21年度概算要求に反映。

指摘事項と対応方針

指摘事項

1.事業に対する総合所見(官房にて記載)

  評価結果は妥当。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成21年以前 --