64.理数学生応援プロジェクト(拡充)【達成目標7-1-1】

平成21年度要求額:332百万円
  (平成20年度予算額:150百万円)
  事業開始年度:平成19年度
 事業達成年度:平成23年度

主管課(課長名)

  • 科学技術・学術政策局基盤政策課(川端 和明)

関係課(課長名)

事業の概要等

1.事業目的

  理系学部を置く大学において、理数に対して強い学習意欲を持つ学生の意欲・能力をさらに伸ばすことに重点を置いた取組を行うことにより、将来有為な科学技術関係人材を育成する。

2.事業に至る経緯・今までの実績

  「第3期科学技術基本計画」では「効果的な理数教育を通じて理科や数学に興味・関心の高い子どもの個性・能力を伸ばし、科学技術分野において卓越した人材を育成していく必要がある」として、「大学入学者選抜の影響に関わらず才能ある児童生徒の個性・能力の伸長を図ることができるよう、高等学校と大学の接続、いわゆる高大接続の改善を進める。具体的には、高等学校段階において顕著な実績をあげた生徒がアドミッション・オフィス(AO)入試等の方法により適切な評価が得られるようにする」とされている。
  また、「長期戦略指針「イノベーション25」」(平成19年6月1日閣議決定)においても、「意欲・能力の高い理数系学生を選抜するための入試方法開発及び実践、これらの学生の才能を開花させるためのカリキュラム開発や実践・早期の研究室配属・学会参加等の取組の促進」をすべきとされている。
  このように、理数に対して強い学習意欲を持つ生徒や、理数に優れた能力を有する生徒を対象とし、適切に評価し受け入れる入試方法や、学部段階においてその意欲・能力を更に伸ばすための特別の教育プログラムは十分ではないという問題意識があり、それらを踏まえ、平成19年度から本事業が開始され、平成20年度は計10大学において事業が実施されている。

3.事業概要

  理系学部を置く大学(短期大学及び大学院大学を除く)において、1)入試等選抜方法の開発・実践、2)教育プログラムの開発・実践、3)意欲・能力を伸ばす工夫した取組等、理数分野に関して強い学習意欲を持つ学生の意欲・能力をさらに伸ばすことに重点を置いた取組を行う(注)。平成21年度は、地域的なバランスや大学の置かれた環境、取組の特色ごとの研究開発に必要な規模等を考慮し、計20大学(新規10大学)で本事業を実施する。なお、本事業は文部科学省から各大学への委託によって実施する。

  (注)医師、看護師、弁理士等の特定職業人育成を目的とした取組は除く。

事業スキーム図

4.指標と目標

  事業を実施する大学の理系学部において、理数に対して強い学習意欲を持つ学生の受け入れに適した入試方法の開発・実践及び当該学生の意欲・能力をさらに伸ばすことに重点を置いた取組が行われることにより、優れた能力を有する科学技術関係人材の育成が図られることを目標とする。
  以下のような指標を用い、過去との比較、施策対象者と非対象者との比較等を行いながら総合的に判断する。

指標・参考指標(例)

  • 本事業によるプログラムを受講した学生の意欲向上度(アンケート)
  • 研究対象の取組への参加学生と非参加学生との意識変化比較(アンケート)
  • 本事業によるプログラムを受講した学生とそれ以外の学生の進路比較
  • 申請件数及び選定件数
  • 研究実施学部への志願者数の変化
  • 大学(学部)の意識変化(アンケート)
  • シンポジウム等における参加大学数
  • 事業終了後も同様の取組を実施している大学数
  • 協力を得られる学生に対する卒業後の追跡調査 等

事業の事前評価結果

A.19年度実績評価結果との関係

  達成目標7‐1‐1「今後の課題及び政策への反映方針」において、大学学部段階において理数に興味・関心の高い学生の科学技術に関する能力の向上を図るための「理数学生応援プロジェクト」を充実させることとしている。

B.必要性の観点

1.事業の必要性

  我が国が科学技術創造立国として持続的な発展を遂げ、安全・安心で質の高い生活環境を構築していくためには、科学技術・学術活動を先導する優れた人材を養成・確保していくことがきわめて重要な課題である。
  現在、将来の科学技術をリードしうる人材を育成するため、高等学校等を対象にスーパーサイエンスハイスクール支援事業等を推進し、理数が得意な子どもの意欲・能力を伸長する環境を提供しているところである。
  スーパーサイエンスハイスクールの教育プログラムを受けた者や国際科学オリンピックで活躍する者等の意欲・能力を大学学部段階で伸ばしていくためには、適切な評価により大学に受け入れ、広い視野、研究推進能力、研究開発技能の育成など、大学院での研究活動につながる基本的・基礎的な力及び学生の意欲・能力を更に伸ばすための取組を実施することが必要である。
  また、このような国の施策の方向性を踏まえた取組の実施を希望する大学に対して、その立ち上げを支援することでその後のプログラム展開における大学の自助努力を促し、ひいては、理数に対して強い学習意欲を持つ学生の意欲・能力を更に伸ばす教育を行う大学の顕在化を図る必要がある。
  事業開始以降、平成19年度は採択予定枠3大学の募集で37大学、平成20年度は採択予定枠4大学の募集で29大学の申請があり、国公私立を問わず本事業に対して多くの大学が意欲を示している。
  平成21年度は地域的なバランス、大学の置かれた環境、取組の特色に応じた研究開発に必要な規模等の点で充実を図るため、20大学(新規10大学)で本事業を実施する必要がある。

2.行政・国の関与の必要性(官民、国と地方の役割分担等)

  本事業は国の委託事業として実施され、各大学において取組が行われるものである。仮に、事業を実施するか否かの判断を個々の大学に委ねた場合、初等中等教育段階で育まれた理数に優れた意欲・能力を持つ学生を適切な評価により受け入れ、その意欲・能力を更に伸ばすための教育プログラムを開発するなどの本事業の求める取組が実施されない可能性がある。また、国の委託事業とすることで、この事業の成果等は広く社会に情報提供されるので、全国的な普及・定着が期待できる。以上のことから、本事業は国の事業として実施される必要がある。

3.関連施策との関係

1.主な関連施策

  ○スーパーサイエンスハイスクール支援事業(文部科学省)
  先進的な理数教育等を実施する高等学校等を「スーパーサイエンスハイスクール」として指定し、観察・実験等を通じた体験的な学習、問題解決的な学習、課題研究の推進や理科、数学に重点を置いたカリキュラムの実施を支援することにより、将来の国際的な科学技術関係人材の育成を推進する。(事業開始年度:平成14年度)

  ○国際科学技術コンテスト支援事業(文部科学省)
  科学技術分野に特筆すべき才能を持つ生徒の個性を伸長し、またこれを社会的に正当に評価する基盤を整備するため、国際大会につながる国内での科学技術コンテストの開催、国際大会への生徒の派遣、国際大会の日本開催等を支援する。(事業開始年度:平成16年度)

  ○質の高い大学教育推進プログラム(文部科学省)
  大学設置基準等の改正等への積極的な対応を前提に、各大学・短期大学・高等専門学校から申請された、教育の質の向上につながる取組の中から特に優れたものを選定し、広く社会に情報提供するとともに、重点的な財政支援を行うことにより、国全体としての高等教育の質保証、国際競争力の強化に資することを目的とする。(事業開始年度:平成20年度)

2.関連施策との関係(役割分担・連携状況)

  本事業は、「スーパーサイエンスハイスクール支援事業」や「国際科学技術コンテスト支援事業」等を通じて理数に対する強い学習意欲・能力(課題解決能力・研究推進力等)を持った生徒を適切な評価方法により受け入れ、その能力を大学学部段階においてさらに伸ばし、大学院段階に導くものである。
  「質の高い大学教育推進プログラム」は大学設置基準等の改正等への対応を前提に、教育の質の向上につながる優れた取組を選定・支援することで国全体の高等教育の質保証を目的とするものであり、その取組の分野・内容は大学が自由に設定できるものである。一方、本事業は将来の有為な科学技術関係人材の育成を目的としており、対象を理系学部に限定し、高校から優れた者を受け入れる入学選抜方法や、そのようにして受け入れた意欲・能力のある者を更に伸ばしていく教育課程や教育方法、効果的な教育環境など、様々な工夫を総合的に要請するものであり、その目的や求めるものを異にしている。

4.関係する施政方針演説、審議会の答申等

「第3期科学技術基本計画」(平成18年3月28日閣議決定)

  記載事項(抜粋)

  第3章 科学技術システム改革

  1.人材の育成、確保、活躍の促進

  (4)次代の科学技術を担う人材の裾野の拡大

  2 才能ある子供の個性・能力の伸張

   効果的な理数教育を通じて理科や数学に興味・関心の高い子どもの個性・能力を伸ばし、科学技術分野において卓越した人材を育成していく必要がある。

  大学入学者選抜の影響に関わらず才能ある児童生徒の個性・能力の伸長を図ることができるよう、高等学校と大学の接続、いわゆる高大接続の改善を進める。具体的には、高等学校段階において顕著な実績をあげた生徒がアドミッション・オフィス(AO)入試等の方法により適切な評価が得られるようにする。

「長期戦略指針「イノベーション25」」(平成19年6月1日閣議決定)

  記載事項(抜粋)

  第5章 「イノベーション立国」に向けた政策ロードマップ

  1.社会システムの改革戦略

  (1)早急に取り組むべき課題

  3)大学改革
  意欲・能力の高い理数系学生を選抜するための入試方法開発及び実践、これらの学生の才能を開花させるためのカリキュラム開発や実践・早期の研究室配属・学会参加等の取組の促進

C.有効性の観点

1.目標の達成見込み

  高等学校等を対象に推進している「スーパーサイエンスハイスクール支援事業」が、生徒の科学技術に関する能力の向上に効果を発揮していること、また平成20年度の本事業への応募大学数が採択予定枠に比して多く、本事業への期待・取組の意欲が高いことが確認できていることから、成果が期待できると判断した。

2.上位目標のために必要な効果が得られるか

  本事業は理数に優れた生徒を適切な評価方法により受け入れ、その能力を更に効果的な教育により伸ばしていくことを目的としており、本事業が効果を上げることにより、理数に強い学習意欲を持つ学生に適した進路の拡大が図られ、優れた科学技術関係人材の育成、確保、活躍の促進に寄与するものと考えられる。このことから施策目標7‐1の「科学技術関係人材の育成及び科学技術に関する国民意識の醸成」の達成に対する貢献度は高く、本事業を実施することが妥当と考えられる。

D.効率性の観点

1.インプット

  本事業は、1)生徒の理数に対する意欲・能力を適切に評価し、選抜するための入試等選抜方法の開発・実践、2)学生の意欲・能力を更に伸ばすための教育プログラム開発・実践、3)早期研究室配属や国内外の学会等への参加等、学生の意欲・能力を伸ばす工夫した取組等に係る経費として、320百万円(16百万円かける20大学)、また、委託大学の選定・評価等のための有識者からなる企画評価委員会運営などに係る経費として10百万円を予定している。
  (概算要求額332百万円、諸謝金1,859千円、職員旅費4,662千円、委員等旅費4,955千円、庁費524千円、科学技術人材養成等委託費320,000千円)

2.アウトプット

  本事業の実施により、全国の理系学部を持つ大学のうち、約7パーセント(全国の理系学部を持つ大学約300大学あたり20大学)において、以下の活動について優れた取組事例が得られることが見込まれる。

  • AO入試(実験、実技、プレゼンテーション、レポート、討論、受賞歴、面接等による評価・選抜)、推薦入試(評定平均値、受賞歴、面接等による評価・選抜)、転学部・転学科・転コース等一般入試を経て入学した在学生を対象とする評価・選抜(転入学を含む。)等、生徒の理数に対する意欲・能力を適切に評価し、選抜するための入試等選抜方法の開発・実践
  • 専用カリキュラムの編成、高度な専門教育、専門英語教育の実施、特別講義・集中講義の実施、アドバンス実験・実習の実施等、一般学生と共通の授業科目履修に加え学生の意欲・能力を更に伸ばすための教育プログラムの開発・実践
  • 早期の研究室配属(指導担当教員の指名)、国内外学会参加、国内外先端研究施設・工場等視察、低年次からのインターンシップ、学習・修学支援チューターの配置等、学生の意欲・能力を伸ばす工夫した取組

  また、ホームページの開設や会議等の場での事業紹介等により、優れた取組が全国的に普及・定着することが期待できる。

3.事業スキームの効率性

  本事業は国の委託事業として実施するが、全国の大学からの公募というスキームを用いることにより、各大学間において企画内容の競争が行われ、質の高い企画が実施されることにつながるものである。また、優れた取組事例や事業成果等を文部科学省のHPやシンポジウム、会議等の場で広く社会に情報提供することとしているので、全国的な普及・定着が期待できる。

4.代替手段との比較

  本事業は国の委託事業として実施するが、例えば、国立大学法人運営費交付金や私立大学等経常費補助金の基盤的経費により実施することとした場合には、投入される資源量は、本事業費相当額の節約が見込まれるものの、事業を実施するか否かの判断は個々の大学の裁量に委ねられるため、事業実施の確実性がなく、また、事業成果等が広く社会に情報提供されないことから、全国的な普及・定着とならない可能性があり、本事業ほどの活動量が期待できない。
  また、「質の高い大学教育推進プログラム」で実施することとした場合、当該事業は大学が自由に設定できるものであるため、将来の有為な科学技術関係人材の育成のために理系学部において高校から優れた者を受け入れる入学選抜方法の開発や、そのようにして受け入れた意欲・能力のある者を更に伸ばしていく教育課程や教育方法、効果的な教育環境など、本事業が総合的に要請している取組が行われる確実性がない。

E.公平性の観点

  本事業の支援拠点は、北海道から沖縄までの全国を対象にする予定であり、公平性は担保できると判断する。

F.優先性の観点

  上記のとおり、本事業は各種提言等においてその必要性が認められており、また、科学技術関係人材育成において初等中等教育段階から大学、社会人に至るまで連続性をもった取組を推進するために重要である。そのため、本事業は他の事業に優先して実施されることが妥当であると考えられる。

G.総括評価と反映方針

  21年度概算要求に反映。

指摘事項と対応方針

指摘事項

1.事業に対する総合所見(官房にて記載)

  評価結果は妥当。ただし、定量的な指標を設定する必要がある。

指摘に対する対応方針

  今年度から実施予定の中間評価も踏まえ、定量的な指標の設定について検討していく予定。

お問合せ先

大臣官房政策課評価室

-- 登録:平成21年以前 --